25日放送のBS-TBS「関口宏の一番新しい近現代史」で取り上げられていたのは真珠湾攻撃についてであった。
先の日米首脳会談の際、日本人ジャーナリスト・千々岩某氏の発した質問への返しで、トランプ大統領が「日本ほど奇襲に詳しい国はない」と返した一コマがあった。少し時間が経過してしまっているものの、その際にもネット上の記述から感じ取れる部分に違和感を感じていた。不穏な質問をしたという趣旨でテレビ朝日所属の千々岩氏への批判的な声が上がった事、それとドナルド・トランプの機転の利いた返しに対しての賞賛と、そんなものしか目にしなかった。しかし、そこには違和感があった。というのは、もう25年前とか30年前なのかも知れませんが、その頃、保守的な言説は明らかにマイノリティであった時代、「いやいや、真珠湾攻撃というのは、ホントはアメリカ側は既に無線を傍受して暗号も解読していたのだから本来的な意味での奇襲攻撃ではなかったんですよ」という見解があったのだ。日本の世論はタカ派的な言説がすっかり支配的になっているのに、その話を誰もしないので違和感を感じたのであった。
例えばですが、週刊文春側が資料を提供して手塚治虫が著した漫画『アドルフに告ぐ』には、その真珠湾攻撃史観で描かれていたと思う。トランプ大統領のあの答弁は、日本が卑劣な奇襲攻撃を仕掛けたという筋書きで語られていた。にもかかわらず、これだけ右派的な言説が支配的になっている言論空間で誰も何も発しないというのは、やっぱり、昨今、タカ派的な発言で幅を利かせている保守陣営には決定的な何かが足りないよなぁ…と感じざるを得なかった。おそらく、彼らは「テレビ朝日」であるとか「TBS」といった看板に反応して、パヨクを攻撃することで自分が偉くなったかのような感覚を得ているだけだ。つまり、マウントを獲りに行って悦に入っているだけの論陣に見えてしまう訳だ。
結局のところ「テレ朝を叩いてるオレは正義なんだぜ」とか「オールドメディアを批判しているオレって正しいんだぜ」という感覚である事が見透けてしまっている。昨今の右派ポピュリズムに傾斜しているのは写真週刊誌やスポーツ新聞の記事なんじゃないのかな。
そして25日放送の「一番新しい近現代史」の中で晴らされる事となった。事実関係の検証的なものが番組内で行なわれていたのだ。
真相を断定するには到らないが、どうも当時の大日本帝国は宣戦布告をするつもりであった。しかし、外務省と軍部とが電報を伝えるタイミングをギリギリまで遅らせるように迫り、実際には攻撃開始の僅か30分前に米国側へ伝えるようにしてしまった。在ワシントン大使館には4000語からなる宣戦布告文を土曜日の夜に送られ、それを翌日の日曜の朝に翻訳して文書化して米国側に伝えた。その頃には既に真珠湾攻撃は終わっていた。つまり、意図的に奇襲作戦を仕掛けたものではなく、飽くまで不作為によって奇襲攻撃になってしまったものだと考えらえる――と、そのように説明されていた。
その経緯は十年ぐらい前に別のテレビ番組でも視たような記憶がある。つまり、それが最も真相に近いものだと考えられる。
同番組のコメンテーターである岩間陽子氏は、そもそも当時、奇襲攻撃は珍しくなかったという文脈の中で「独ソ戦も奇襲攻撃でしたし」とフォローしていた。また、この「一番新しい近現代史」シリーズでは過去に保阪正康氏がレギュラーコメンテーターであった頃にも真珠湾攻撃を巡る箇所で「奇襲攻撃だったかどうかに注目が集まってしまいますが、戦争の始まり方というのは実際には曖昧なものなんです」という具合に応じていた。どこから「真珠湾攻撃は卑劣な奇襲攻撃であった」という言説が生じたのかというと、どうも80年前の米国だという。そこを今回は小泉悠氏が口にしていた。当時のルーズベルト政権(同番組的にはローズベルト)は参戦に舵を切りたかったが、世論は戦争に反対していた。一気に世論を変える為に、殊更に卑劣な奇襲攻撃を日本が仕掛けてきたと政治的プロパガンダを打ったと思われる。その政治的プロパガンダが、80年後となる現在でも未だに有効に作用してしまっている。プロパガンダを仕掛けられた側の敗戦国国民は未だに「(大日本帝国は)卑劣な奇襲攻撃を仕掛けた」と信じてしまっている。なんとも物凄く複雑な問題なのだ。
その戦後レジームの呪縛から解かれぬまま、右傾化が起こって親米保守化してしまっているので、トランプ大統領の切り返しに対して「さすがはトランプ大統領、機転が素晴らしい! それに比べて質問したテレ朝はクソ!」のような反応をするイビツな右派的反応になってしまっている。
また、同番組では少し異なる角度でも真珠湾攻撃を回想していた。真珠湾攻撃は大きな成果を上げた。しかし、作戦では第三攻撃まで予定されていたのに何故か第三攻撃は実施されなかったという謎があるのだそうな。「何故、南雲司令官は第三攻撃を仕掛けなかったのか?」という謎だ。
小泉悠氏によれば、真珠湾攻撃では多くの艦船を沈没、破壊したが、実はドック、石油貯蔵施設までは破壊しなかった。また、多くの艦船を沈没させたが真珠湾というのは浅瀬の海であり、艦船は海中深く沈んだのではなく、艦船の上部は地上に露出した状態であったという。なので、米海軍は、それらの艦船を後に引き揚げて補修して、海軍を立て直したのだという。もし仮に第三攻撃を仕掛けてドックや石油貯蔵施設に対しても破壊を行なっていれば、米海軍が体制立て直しをするのはもっと膨大な時間がかかったと思われるが、何故、南雲司令官は攻撃命令を出さなかったのか――という謎があるらしい。
第三攻撃が実施されなかったのは事実らしく、何故、それが実施されなかったのかについては資料が残っていないので詳細は実際に不明だという。第一攻撃と第二攻撃で、充分に成果を上げたので、第三攻撃は必要なしと判断したのか、第三攻撃を仕掛けると米国側から反撃を受けて自軍に損傷が出ると判断したのか、そこら辺はまったく謎のままなのだという。
まぁ、戦争というのはプロパガンダに次ぐプロパガンダの世界であり、しばしば、正義は捏造され、真実は歪曲されてしまうって事でね。
先の日米首脳会談の際、日本人ジャーナリスト・千々岩某氏の発した質問への返しで、トランプ大統領が「日本ほど奇襲に詳しい国はない」と返した一コマがあった。少し時間が経過してしまっているものの、その際にもネット上の記述から感じ取れる部分に違和感を感じていた。不穏な質問をしたという趣旨でテレビ朝日所属の千々岩氏への批判的な声が上がった事、それとドナルド・トランプの機転の利いた返しに対しての賞賛と、そんなものしか目にしなかった。しかし、そこには違和感があった。というのは、もう25年前とか30年前なのかも知れませんが、その頃、保守的な言説は明らかにマイノリティであった時代、「いやいや、真珠湾攻撃というのは、ホントはアメリカ側は既に無線を傍受して暗号も解読していたのだから本来的な意味での奇襲攻撃ではなかったんですよ」という見解があったのだ。日本の世論はタカ派的な言説がすっかり支配的になっているのに、その話を誰もしないので違和感を感じたのであった。
例えばですが、週刊文春側が資料を提供して手塚治虫が著した漫画『アドルフに告ぐ』には、その真珠湾攻撃史観で描かれていたと思う。トランプ大統領のあの答弁は、日本が卑劣な奇襲攻撃を仕掛けたという筋書きで語られていた。にもかかわらず、これだけ右派的な言説が支配的になっている言論空間で誰も何も発しないというのは、やっぱり、昨今、タカ派的な発言で幅を利かせている保守陣営には決定的な何かが足りないよなぁ…と感じざるを得なかった。おそらく、彼らは「テレビ朝日」であるとか「TBS」といった看板に反応して、パヨクを攻撃することで自分が偉くなったかのような感覚を得ているだけだ。つまり、マウントを獲りに行って悦に入っているだけの論陣に見えてしまう訳だ。
結局のところ「テレ朝を叩いてるオレは正義なんだぜ」とか「オールドメディアを批判しているオレって正しいんだぜ」という感覚である事が見透けてしまっている。昨今の右派ポピュリズムに傾斜しているのは写真週刊誌やスポーツ新聞の記事なんじゃないのかな。
そして25日放送の「一番新しい近現代史」の中で晴らされる事となった。事実関係の検証的なものが番組内で行なわれていたのだ。
真相を断定するには到らないが、どうも当時の大日本帝国は宣戦布告をするつもりであった。しかし、外務省と軍部とが電報を伝えるタイミングをギリギリまで遅らせるように迫り、実際には攻撃開始の僅か30分前に米国側へ伝えるようにしてしまった。在ワシントン大使館には4000語からなる宣戦布告文を土曜日の夜に送られ、それを翌日の日曜の朝に翻訳して文書化して米国側に伝えた。その頃には既に真珠湾攻撃は終わっていた。つまり、意図的に奇襲作戦を仕掛けたものではなく、飽くまで不作為によって奇襲攻撃になってしまったものだと考えらえる――と、そのように説明されていた。
その経緯は十年ぐらい前に別のテレビ番組でも視たような記憶がある。つまり、それが最も真相に近いものだと考えられる。
同番組のコメンテーターである岩間陽子氏は、そもそも当時、奇襲攻撃は珍しくなかったという文脈の中で「独ソ戦も奇襲攻撃でしたし」とフォローしていた。また、この「一番新しい近現代史」シリーズでは過去に保阪正康氏がレギュラーコメンテーターであった頃にも真珠湾攻撃を巡る箇所で「奇襲攻撃だったかどうかに注目が集まってしまいますが、戦争の始まり方というのは実際には曖昧なものなんです」という具合に応じていた。どこから「真珠湾攻撃は卑劣な奇襲攻撃であった」という言説が生じたのかというと、どうも80年前の米国だという。そこを今回は小泉悠氏が口にしていた。当時のルーズベルト政権(同番組的にはローズベルト)は参戦に舵を切りたかったが、世論は戦争に反対していた。一気に世論を変える為に、殊更に卑劣な奇襲攻撃を日本が仕掛けてきたと政治的プロパガンダを打ったと思われる。その政治的プロパガンダが、80年後となる現在でも未だに有効に作用してしまっている。プロパガンダを仕掛けられた側の敗戦国国民は未だに「(大日本帝国は)卑劣な奇襲攻撃を仕掛けた」と信じてしまっている。なんとも物凄く複雑な問題なのだ。
その戦後レジームの呪縛から解かれぬまま、右傾化が起こって親米保守化してしまっているので、トランプ大統領の切り返しに対して「さすがはトランプ大統領、機転が素晴らしい! それに比べて質問したテレ朝はクソ!」のような反応をするイビツな右派的反応になってしまっている。
また、同番組では少し異なる角度でも真珠湾攻撃を回想していた。真珠湾攻撃は大きな成果を上げた。しかし、作戦では第三攻撃まで予定されていたのに何故か第三攻撃は実施されなかったという謎があるのだそうな。「何故、南雲司令官は第三攻撃を仕掛けなかったのか?」という謎だ。
小泉悠氏によれば、真珠湾攻撃では多くの艦船を沈没、破壊したが、実はドック、石油貯蔵施設までは破壊しなかった。また、多くの艦船を沈没させたが真珠湾というのは浅瀬の海であり、艦船は海中深く沈んだのではなく、艦船の上部は地上に露出した状態であったという。なので、米海軍は、それらの艦船を後に引き揚げて補修して、海軍を立て直したのだという。もし仮に第三攻撃を仕掛けてドックや石油貯蔵施設に対しても破壊を行なっていれば、米海軍が体制立て直しをするのはもっと膨大な時間がかかったと思われるが、何故、南雲司令官は攻撃命令を出さなかったのか――という謎があるらしい。
第三攻撃が実施されなかったのは事実らしく、何故、それが実施されなかったのかについては資料が残っていないので詳細は実際に不明だという。第一攻撃と第二攻撃で、充分に成果を上げたので、第三攻撃は必要なしと判断したのか、第三攻撃を仕掛けると米国側から反撃を受けて自軍に損傷が出ると判断したのか、そこら辺はまったく謎のままなのだという。
まぁ、戦争というのはプロパガンダに次ぐプロパガンダの世界であり、しばしば、正義は捏造され、真実は歪曲されてしまうって事でね。
