18日付の読売新聞のくらし面（17面）に掲載されていた「人生案内」は「子ども産みたいが相手いない」という相談＆回答でした。以下に引用します。
30代前半の保育士。４人姉妹で、年齢は30〜40歳前後ですが、誰一人結婚しておらず、彼氏もいません。家で恋愛の話をしないため、婚活中かどうかもわかりません。全員が結婚できず、両親に孫の顔を見せられなかったら、こんな親不孝なことはないと思います。「絶対に子どもを産みたいけれど、相手がいない」と焦ります。
20代後半から婚活を続けてきましたが、出会うのは付き合いたいとも友達になりたいとも思わない変な男性ばかり。相性もあいませんでした。付き合った人はモラハラがひどく、男の人を信じられません。夫はいらないから精子提供を受けて子どもを産み、一人で育ててよいとまで思えます。
自分磨きも十分していて、真面目に働き、貯金もしているのに。なぜ神様は、こんなに不公平なのでしょうか。
回答者は家族社会学の山田昌弘教授で、その回答が以下。
あなたは何のために婚活をしているのでしょう。お手紙からは、子どもをもって親に孫の顔を見せる以外の理由は書かれていません。相手の男性は単に精子提供者で世間的にスペックがそろっていればよいのですか。
付き合った人や婚活で出会った人があなたに合わなかった。これは単に運が悪かったということですますことができるかもしれません。結婚相談所でカウンセリングを受ければ、相手に求める条件を見直したり、出会いを増やしたりしてみてはどうか、などとアドバイスをもらうケースでしょう。
ただもんだいはそこにはないような気がします。あなたは、男性を自分の希望をかなえるための道具とみなしている。それが相手に伝わってしまうのではないでしょうか。
そのような考えがよくないと言っているわけではありません。欧米で事例があるように、精子提供を受けるのも一案ではあります。
でも、あなたには、これから人生をいっしょに過ごすパートナーとして男性を見てもらいたいです。そう考えて出会った相手とコミュニケーションをとってみると、婚活もまた別の形が見えてくるのではないでしょうか。そうしてもらえれば、婚活の提唱者である私にとっても喜びなのですが。
丁度、先々週末ぐらいにＺ世代男性であったか20代男性と括っていたか失念してしまいましたが、要は「女嫌い」という意味でのミソジニー増加しているというトピックスを目にしたばかりでもあったので色々と感じるものがあった。もう、「マテリアル・ガール」が世に放たれてから40年近くが経っている。もう、愛なんてものは幻想と確定し、そこにあるのはペットのお見合いのようなペアリング的な感覚であったり、この「人生案内」のように「パートナーは要らないけど、子供だけは欲しい」というようなケースであったりする。
マイケル・サンデル著『完全な人間を目指さなくてもよい理由』（ナカニシヤ出版）あたりでは、精子バンク事情についても触れられてたので、実際問題のところ、およそ20年ぐらい前から「これでいいのか？」とは深部では語られてきた問題のような気もする。ただ、あまり表立って語られない内容であり、日本では、この山田昌弘教授が「婚活」を提唱し、なんとなく定着した。しかし、米国ともなると精子バンクがビジネスとして存在し、そこで、お好みの精子をチョイスできるという。人気になるのは勿論、高学歴や知能指数などのスペックとなりますが、それ以外にも選択できる項目に肌の色や瞳の色、髪の色があるという。人気になるのは米国あたりであっても白い肌に青い瞳、そして金髪になるのだそうな。
マイケル・サンデルが論じていたのは、今後は技術的に色々な繁殖方法が可能になってしまうだろうが、そうすると技術的に可能であれば、人々のニーズに応えるべきとなり、どんどんそういった方向へ向かうが、そうなると結局は倫理的な問題にぶつかることになる、と、実は白熱教室ブーム以前の著書で、熱を入れて指摘していた問題でもある。
よく言われるように、生まれてきた者には生まれてこようという意志もないし、親を選択することもできない。他方、親は自分の好みの精子を選択して我が子を持つ事になる。しかし、これをやってしまうと結局のところ、親は、その子にとっての神のような存在になってしまい、おそらく、親は思い通りの子を自力で獲得した気になってしまうだろうという問題がある。そこに神の配剤のようなニュアンス、言い換えれば「これは天からの授かりものである」といった要素がなくなってしまう事で、更に人々は苦しむ事になる可能性があるという。思い通りになる予定だったのに、そうなるとは限らず、そうならなかった場合、誰が責任を負うのかという問題になってくる。
まぁ、既に不同意性交罪が設けられており、事後になって一方から「同意していなかった」と申し立てられた場合、そこで明確な合意の意志の確認があったかどうかで犯罪に問えるような法律になってしまっているのだ。現在、お笑い芸人の性加害問題の話題で盛り上がっていますが、ホントは不同意性交罪にまつわる一連で、既に問題は出ていたと思うよ。ごくごく限られた当事者間、その内の心の内の問題にまで法律が介入し、わざわざ強制性交罪から不同意性交罪に名前も内容も変えてしまった訳で、これじゃ、もう、若者たちは恋を囁かなくなると思うよ――と。若者たちでさえ、そうなるのだから中高年以上ともなれば完全に論外ですぜ、と。このテの問題というのは、何か根本的な部分からして凄まじいレベルで間違っているような気がする。
浅野孝雄著『古代インド仏教と現代脳科学における心の発見』（産業図書）の117頁には、ヴェーダの哲人であるヤージュニャヴァルキヤの言葉が紹介してありました。その引用になります。
「バラモンたちは、ヴェーダの学習により、祭祀により、布施により、苦行により、断食によってそれ〈アートマン〉を知ろうとします。それさえ知れば、聖者となるのです。遊行者たちは、まさしくそれを〈天上の〉世界として求めつつ、遊行するのです。まことにこういうわけで、昔の知者たちは〈我々にはこのアートマンがあるのに、この（天上の）世界があるのに、子孫を持って何になろう〉と考えて子供を望みませんでした。彼らは息子を得たいという願望、世界を得たいという願望から離脱して、乞食（こつじき）の遊行生活をしたのです。実に息子を得たいという願望は、財産を得たいという願望と同じであり、財産を得たいという願望は、そのまま世界を得たいという願望なのです。これらはいずれも願望であることには変わりがありませんから」。
手掛かりになるものは「利己的ＤＮＡ論」でしょう。ダーウィン以来の衝撃であろう内容なのに、今どきの言論トレンドは逃げてばかりになっていると思う。世間的に「正しい」とされている価値観の殆んどは幻覚みたいなものであり、それに惑わされている人が多数のような気もするけどね。
30代前半の保育士。４人姉妹で、年齢は30〜40歳前後ですが、誰一人結婚しておらず、彼氏もいません。家で恋愛の話をしないため、婚活中かどうかもわかりません。全員が結婚できず、両親に孫の顔を見せられなかったら、こんな親不孝なことはないと思います。「絶対に子どもを産みたいけれど、相手がいない」と焦ります。
20代後半から婚活を続けてきましたが、出会うのは付き合いたいとも友達になりたいとも思わない変な男性ばかり。相性もあいませんでした。付き合った人はモラハラがひどく、男の人を信じられません。夫はいらないから精子提供を受けて子どもを産み、一人で育ててよいとまで思えます。
自分磨きも十分していて、真面目に働き、貯金もしているのに。なぜ神様は、こんなに不公平なのでしょうか。
（神奈川・Ｋ子）
回答者は家族社会学の山田昌弘教授で、その回答が以下。
あなたは何のために婚活をしているのでしょう。お手紙からは、子どもをもって親に孫の顔を見せる以外の理由は書かれていません。相手の男性は単に精子提供者で世間的にスペックがそろっていればよいのですか。
付き合った人や婚活で出会った人があなたに合わなかった。これは単に運が悪かったということですますことができるかもしれません。結婚相談所でカウンセリングを受ければ、相手に求める条件を見直したり、出会いを増やしたりしてみてはどうか、などとアドバイスをもらうケースでしょう。
ただもんだいはそこにはないような気がします。あなたは、男性を自分の希望をかなえるための道具とみなしている。それが相手に伝わってしまうのではないでしょうか。
そのような考えがよくないと言っているわけではありません。欧米で事例があるように、精子提供を受けるのも一案ではあります。
でも、あなたには、これから人生をいっしょに過ごすパートナーとして男性を見てもらいたいです。そう考えて出会った相手とコミュニケーションをとってみると、婚活もまた別の形が見えてくるのではないでしょうか。そうしてもらえれば、婚活の提唱者である私にとっても喜びなのですが。
丁度、先々週末ぐらいにＺ世代男性であったか20代男性と括っていたか失念してしまいましたが、要は「女嫌い」という意味でのミソジニー増加しているというトピックスを目にしたばかりでもあったので色々と感じるものがあった。もう、「マテリアル・ガール」が世に放たれてから40年近くが経っている。もう、愛なんてものは幻想と確定し、そこにあるのはペットのお見合いのようなペアリング的な感覚であったり、この「人生案内」のように「パートナーは要らないけど、子供だけは欲しい」というようなケースであったりする。
マイケル・サンデル著『完全な人間を目指さなくてもよい理由』（ナカニシヤ出版）あたりでは、精子バンク事情についても触れられてたので、実際問題のところ、およそ20年ぐらい前から「これでいいのか？」とは深部では語られてきた問題のような気もする。ただ、あまり表立って語られない内容であり、日本では、この山田昌弘教授が「婚活」を提唱し、なんとなく定着した。しかし、米国ともなると精子バンクがビジネスとして存在し、そこで、お好みの精子をチョイスできるという。人気になるのは勿論、高学歴や知能指数などのスペックとなりますが、それ以外にも選択できる項目に肌の色や瞳の色、髪の色があるという。人気になるのは米国あたりであっても白い肌に青い瞳、そして金髪になるのだそうな。
マイケル・サンデルが論じていたのは、今後は技術的に色々な繁殖方法が可能になってしまうだろうが、そうすると技術的に可能であれば、人々のニーズに応えるべきとなり、どんどんそういった方向へ向かうが、そうなると結局は倫理的な問題にぶつかることになる、と、実は白熱教室ブーム以前の著書で、熱を入れて指摘していた問題でもある。
よく言われるように、生まれてきた者には生まれてこようという意志もないし、親を選択することもできない。他方、親は自分の好みの精子を選択して我が子を持つ事になる。しかし、これをやってしまうと結局のところ、親は、その子にとっての神のような存在になってしまい、おそらく、親は思い通りの子を自力で獲得した気になってしまうだろうという問題がある。そこに神の配剤のようなニュアンス、言い換えれば「これは天からの授かりものである」といった要素がなくなってしまう事で、更に人々は苦しむ事になる可能性があるという。思い通りになる予定だったのに、そうなるとは限らず、そうならなかった場合、誰が責任を負うのかという問題になってくる。
まぁ、既に不同意性交罪が設けられており、事後になって一方から「同意していなかった」と申し立てられた場合、そこで明確な合意の意志の確認があったかどうかで犯罪に問えるような法律になってしまっているのだ。現在、お笑い芸人の性加害問題の話題で盛り上がっていますが、ホントは不同意性交罪にまつわる一連で、既に問題は出ていたと思うよ。ごくごく限られた当事者間、その内の心の内の問題にまで法律が介入し、わざわざ強制性交罪から不同意性交罪に名前も内容も変えてしまった訳で、これじゃ、もう、若者たちは恋を囁かなくなると思うよ――と。若者たちでさえ、そうなるのだから中高年以上ともなれば完全に論外ですぜ、と。このテの問題というのは、何か根本的な部分からして凄まじいレベルで間違っているような気がする。
浅野孝雄著『古代インド仏教と現代脳科学における心の発見』（産業図書）の117頁には、ヴェーダの哲人であるヤージュニャヴァルキヤの言葉が紹介してありました。その引用になります。
「バラモンたちは、ヴェーダの学習により、祭祀により、布施により、苦行により、断食によってそれ〈アートマン〉を知ろうとします。それさえ知れば、聖者となるのです。遊行者たちは、まさしくそれを〈天上の〉世界として求めつつ、遊行するのです。まことにこういうわけで、昔の知者たちは〈我々にはこのアートマンがあるのに、この（天上の）世界があるのに、子孫を持って何になろう〉と考えて子供を望みませんでした。彼らは息子を得たいという願望、世界を得たいという願望から離脱して、乞食（こつじき）の遊行生活をしたのです。実に息子を得たいという願望は、財産を得たいという願望と同じであり、財産を得たいという願望は、そのまま世界を得たいという願望なのです。これらはいずれも願望であることには変わりがありませんから」。
手掛かりになるものは「利己的ＤＮＡ論」でしょう。ダーウィン以来の衝撃であろう内容なのに、今どきの言論トレンドは逃げてばかりになっていると思う。世間的に「正しい」とされている価値観の殆んどは幻覚みたいなものであり、それに惑わされている人が多数のような気もするけどね。
