◆地球外生命起源説（パンスペルミア説）
ＤＮＡの二重らせんモデルの考案者といえば、クリック＆ワトソン（フランシス・クリック＆ジェームズ・ワトソン）で、ノーベル生理学・医学賞の受賞者である。なんで、そんな事を私のような者が知っているのかというと、科学ライター竹内久美子さんの著書を愛読してきたから。
そして竹内久美子さんの著書の中で、読者からの質問に答えるという主旨で、或る時に「クリックは生命の起源は地球外にあると提唱しているようですが、クリックのような人物が、そんなバカげた事を主張しているとはどうしても思えません。クリックが地球外生命起源説を提唱しているというのは本当ですか？」という質問があった。竹内久美子さんの回答は大雑把に回想すれば「そのような論文を発表しているのは確かなので本当です」というぐらいの返答であり、読んでいる限りではなんともツレないものだなと感じた事がありました。
しかし、ヒストリーチャンネルの看板番組「古代の宇宙人シーズン12」の第157回では、キャロライン・コーリーなる未来学者が登場して遺伝子操作の解説をする中で重要な指摘がありました。ヒトの遺伝子の不可解な部分を説明するクダリで、フランシス・クリックの名前が持ち出されたのでした。吹替版で視聴している訳ですが、記憶に頼って再現すると、次のような話であった。
「フランシス・クリックは、ヒトのＤＮＡを分析している内に、そのＤＮＡには90億年分ぐらいの蓄積があると分析したのよ。ここで、みんな、何か、おかしな事に気付かない？」
「……あ。わかった。地球の歴史は46億年だ！」
「そうなのよ！ 地球の歴史が46億年なのに、ヒトのＤＮＡの蓄積が90億年もあるのは変なのよ。だから、クリックは地球外生命起源説を唱えていたの」
スタジオのメンツも「おお！」と声を上げていましたが、私もテレビの前で驚くこととなった。そういう事なのであれば、そりゃ地球外生命起源説は、かなり有利に思える。かなり有利であるにもかかわらず、ずーっと異端視されてきたという事になる。
念の為、確認しておくと、ビッグバン仮説によって宇宙ができたのが約137億年前だとされ、地球の年齢については放射性元素による年代測定によって約46億年とされている。
何故、地球外生命起源説が異端視されてきたのかといえば、通説では「生命の起源は海から」のように語られてきたから。また、カール・セーガンらの系譜にしても、原始大気と呼ばれる原始期の地球に稲妻の刺激が加わり、生命が誕生したと考えられてきたから。それは1930年代から、しばらく、有力視されてきたという経緯がある。当初、原始大気と仮定さていたのはメタン、アンモニア、水素、水であり、その仮想原始大気に電極で火花を散らす稲妻の代用となる刺激を加えるとアミノ酸が生成できたから。原始大気にスパークを与えると、偶然の確率でアミノ酸が生成できるのだから、きっと、そのようにして生命が誕生したのだろうと考えられてきた。その後、窒素や二酸化炭素が加わるとアミノ酸が生成できない事が分かり、仮定するところの原始大気はメタンとアンモニアに人気が集中することになり、そうした実験から生命の起源を探る研究がカール・セーガンの時代まで続いたという。おそらく1980年頃までは熱心に続いていたのだ。アミノ酸が生成できる。もう少しの筈だと考えられていた訳です。
しかし、ここに大きな変革が起こった。それがワトソン＆クリックによる二重らせんモデルの発見という事が関係している。私の説明では不完全なものになるので割愛しますが、ＤＮＡの二重らせんをつくるには、その名も「ワトソン・クリック塩基対」が必要となる。そしてＤＮＡ（デオキシリボヌクレオチド）は情報をＲＮＡ（リボヌクレオチド）に転写し、元のＤＮＡらせん構造を複製してゆく。
そうなった時に生命の定義も変わらざるを得なくなった訳です。アミノ酸の生成は、アミノ酸の生成であり、それは生命の誕生ではないと分かってしまった。生命体とはＤＮＡとＲＮＡを持って自己を複製していくという機能を持っている。メタンやアンモニアに色々な刺激を与えてみたところで、偶然に塩基配列を伴なったＤＮＡやＲＮＡが生成されるという状況が必要だという事になってしまう。この辺りの説明には2021年刊行の小林憲正著『地球外生命』（中公新書）を参考としていますが、大雑把に大雑把を重ねて説明すれば、そういう話になる。
なので、ずーっと、もしかしたら現在でも、生命の起源は地球に決まっているじゃないかという考え方が主流になっていて、地球外生命起源説は異端視されてきた。しかし、どうでしょう？ よくよく考えてみると、年がら年中、隕石だの、火球だの、そんなものが降り注いでいるみたいだし、何某かの自然環境下で生命が誕生したと考えるよりも、隕石だとか火球に乗って「生命の素みたいなものが地球外から地球に到来したんじゃないの？」と無責任に言い放ってみても、そんなに確率的な有利不利はないようにも思える。〈地球上の生命は、この地球上で生起したものであらねばならぬ〉――という決めつけの方こそ、怪しい。確度もないままに、そう頑なに思い込んでしまっているというのが実相ではないのだろうか。きっと、そう言えてしまうと思う。
また、「古代の宇宙人シーズン12」では特別編として俳優のウィリアム・シャトナーを迎えての討論会が行われ、そこでもフランシス・クリックについての言及があったので追記します。
パンスペルミア説には、隕石に付着した何かが偶然に地球に生命をもたらせたとする地球外生命起源説と、もう一つ、意図的に何者かが自分のＤＮＡを宇宙にばら撒くという行為をした事に起因するという意図的パンスペルミア説があるという。後者の意図的パンスペルミア説は、かなり、ぶっ飛んでいるように聞こえますが、フランシス・クリックは、まさしく、その意図的パンスペルミア説であったという。
ＤＮＡの仕組みを理解できてしまうと、それが天文学的な確率だと分かってしまうのだという。その討論会には、三つの工学博士号を持っているというトラヴィス・タイラーという物理学者も出席していましたが、「まさしく天文学的な確率じゃないと生命は誕生しない」と認めるような発言をした。その後、参加者の誰かが著名な学者の名前を挙げて、著名な学者も、その確率について言及したことがあると説明した。いわく、
「ゴミ置き場の上を竜巻が通ったら、その場にあったガラクタよって偶然にボーイング747が組み上がっていたぐらいの確率だ」
フランシス・クリックは、こう言っていたらしい。
「何者かがロケットに自分の種を積み込んで、宇宙にばら撒いたのだろう」
◆更なる一歩、神と人
つい先ほど「地球外から飛来した生命は隕石に付着して」と述べましたが、それは表面に付着していようが、隕石の内部に閉じこもっていようが、どちらでもいい。要は地球外から流入したとか飛来したとか、そういう事を指している。そして地球の歴史が始まるのは、46億年前からという事になる。なのに、ＤＮＡの蓄積が90億年分の進化の痕跡があったなら、それは、おかしいじゃないかとなる。当然、何かがミッシングリンクがあるのだろうと考える事になる訳です。
そしてキャロライン・コーリーは、遺伝子操作の話を切り出すという展開となった。「既に我々地球人はＤＮＡの切り貼りをしていますよ」、と。これは我々も薄々は承知の事柄かも知れない。既に中国では、世界で初めて遺伝子編集ベビーの誕生を主導して、既に双子の姉妹が産まれたと発表して世間を驚かせた事があった。その医師は投獄されたが、既に釈放になっているという。また、医療目的なのであれば、遺伝子エンハンスメント、つまり、ＤＮＡの改変も許されるのではないかという倫理の問題にもなっている。
更に、ホモ・サピエンスは類人猿から進化してきたと考えられてきたが、そこにも一つ問題を提起する事が可能だという。サルなど類人猿の染色体は48本であるが、何故かヒトは46本である。霊長類と呼ばれる仲間たちも48本なのに、何故にホモ・サピエンスの染色体は46本なのかという問題が提示される。
そして、この辺りの話になってしまうと私には裏付けようにも調べようがないのですが、同番組内では、「ヒトの第２番染色体には結び目が施されている」という指摘が為される。ホント？ ウソ？ その中間ぐらい？
ここから一気にエーリッヒ・フォン・デニケンの後継者を自称している「古代の宇宙人」のホスト役であるジョルジョ・ツォカロスがニンマリと笑顔になる。現在では「宇宙人飛来説」という呼称が使用されているが、デニケンまで遡ると、その系譜は1960年代に大ブームを巻き起こした『未来の記憶』を踏襲するものであり、つまり、異星人は既に地球にやってきており、我々が神と呼んでいるものは高度の文明を有していた異星人であるという仮説に基づいている。
太古、天使たちがヒトの娘と交わって堕天使となったという伝承を伝えるという２世紀頃に書かれたという「エノク書」があったが、４世紀頃にエノク書は問題のある内容だとして偽書扱いとなり、異端の書となったものであるという。天使がヒトの娘と交合して子を設け、その子供たちは巨人であったという伝承だという。この辺りも実はチェックのしようがないのですが、或る程度までは堕天使についての記述などから確認する事が可能かも知れない。伝承上では実際に天使とヒトの娘とが性交渉をして子を設けたという意味であるように描かれているようですが、そこから一歩踏み込んでみれば、それは異星人と地球人との間に子供を設けたの意味となり、ひょっとしたら何かしらの遺伝子操作をしたという意味ではないのかと疑えるのではないか…となる。
既に現代人が実際に遺伝子操作をしている事からすると、太古に地球を訪れた異星人が、その星の生物に対して何かしらの遺伝子操作を施したという事はないのか――という訳ですね。そもそもピラミッドであるとか、ストーンヘンジであるとか、いやいや、最も理解に苦しむのはナスカの地上絵だろうというべきなのですが、ナスカの地上絵が存在している理由を、未だに我々は導けていない。デニケンが指摘したように、ごくごく常識的に考えればナスカの地上絵は、上空からしか見えない絵なのだ。フツウに考えれば、上空に存在する何者かに見せる為に描いたのだろうと考える事になる。
彼等の言い分はこうだ。アームストロング船長が人類の記念すべき一歩として月面に降り立った時に、月面到達を記念して星条旗を月面に立てた。そう、来訪者は、そこに来訪した証を残そうとする筈だ、と導く。或る種のモニュメントをきっと残していったのではないか。或いは、ピクトグラムだ。不思議な事に南米には空を飛行する神の伝承がある。その空から降りて来た神とは、実際には神ではなく、高度な文明を持っていた異星人の事を指していたのではないか、と仮説を立ててゆく。これも唐突に感じるかも知れませんが、後述することになるエゼキエル書には「金属っぽい」と表現される神が登場する。エゼキエル書の方は旧約聖書の方に収録されており、預言者にして特に重視される預言者でもある。
エゼキエル書って何よという方は、以下のリンクへどうぞ。
拙ブログ：「救世主」と「マゴグの地のゴグ」〜2013-08-29
異星人と我々とが遭遇しない理由については、実は大昔から論じられている。限定的な割合で、その星には生命体が存在していて、その生命体が知的生命体であり、宇宙空間を飛行するような高度な科学文明を持ったとして、果たして、知的生命体が知的生命体と出会うタイミングなんてものはあるのか？ その問題です。
おそらく、太古に地球に異星人は到来したが、そこには科学文明を持っているような生物は存在しておらず、到来した異星人は到来した記念にモニュメントを残した。そんな事が繰り返されたのではないか。それらが技術的に不可能ではないかと思われる超古代遺跡の正体なのではないか？ そしてそして或る時期に地球にやってきた異星人は、そこに生物を発見した。しかし、生憎、その生物は科学文明を持っておらず、サルに近い何かであった。その異星人は、異星人の大ボスを裏切って密かに若いメスのサルに自分たちのＤＮＡを受け継ぐ混血児を産ませるという掟破りを働いた。斯くして、その星には異星人の遺伝子操作を受けたサルが産まれ、そのサルたちは飛躍的に知能を高めていった。そんなシナリオを考えずにはいられないではないか――というのだ。
最後に、このテの何故にホモ・サピエンスの知能は急上昇したのかという問題にも触れていたと思う。ホモ・サピエンス史からすれば、その知能は、ずーっと平坦であったが、約５万年前から急上昇したと考えられるのだそうな。しかも、その急上昇具合は実に約100倍という急カーブでホモ・サピエンスは知性を急上昇させているという。うーむ。
エーリッヒ・デニケンが60年代か70年代にアメリカのテレビショウにゲスト出演した際のＶＴＲも「古代の宇宙人」の中で紹介されていましたが、そこでデニケンは先制パンチを放っていました。
「哲学者のショウペンハウアーをご存知ですか？ ショウペンハウアーは新しい仮説が主流になるまでには三段階があると語っているんだ。第一段階では批判する。第二段階になると無視する。そして第三段階になると、〈そんな事は、とっくの昔から知ってたよ〉ってね」
ＤＮＡの二重らせんモデルの考案者といえば、クリック＆ワトソン（フランシス・クリック＆ジェームズ・ワトソン）で、ノーベル生理学・医学賞の受賞者である。なんで、そんな事を私のような者が知っているのかというと、科学ライター竹内久美子さんの著書を愛読してきたから。
そして竹内久美子さんの著書の中で、読者からの質問に答えるという主旨で、或る時に「クリックは生命の起源は地球外にあると提唱しているようですが、クリックのような人物が、そんなバカげた事を主張しているとはどうしても思えません。クリックが地球外生命起源説を提唱しているというのは本当ですか？」という質問があった。竹内久美子さんの回答は大雑把に回想すれば「そのような論文を発表しているのは確かなので本当です」というぐらいの返答であり、読んでいる限りではなんともツレないものだなと感じた事がありました。
しかし、ヒストリーチャンネルの看板番組「古代の宇宙人シーズン12」の第157回では、キャロライン・コーリーなる未来学者が登場して遺伝子操作の解説をする中で重要な指摘がありました。ヒトの遺伝子の不可解な部分を説明するクダリで、フランシス・クリックの名前が持ち出されたのでした。吹替版で視聴している訳ですが、記憶に頼って再現すると、次のような話であった。
「フランシス・クリックは、ヒトのＤＮＡを分析している内に、そのＤＮＡには90億年分ぐらいの蓄積があると分析したのよ。ここで、みんな、何か、おかしな事に気付かない？」
「……あ。わかった。地球の歴史は46億年だ！」
「そうなのよ！ 地球の歴史が46億年なのに、ヒトのＤＮＡの蓄積が90億年もあるのは変なのよ。だから、クリックは地球外生命起源説を唱えていたの」
スタジオのメンツも「おお！」と声を上げていましたが、私もテレビの前で驚くこととなった。そういう事なのであれば、そりゃ地球外生命起源説は、かなり有利に思える。かなり有利であるにもかかわらず、ずーっと異端視されてきたという事になる。
念の為、確認しておくと、ビッグバン仮説によって宇宙ができたのが約137億年前だとされ、地球の年齢については放射性元素による年代測定によって約46億年とされている。
何故、地球外生命起源説が異端視されてきたのかといえば、通説では「生命の起源は海から」のように語られてきたから。また、カール・セーガンらの系譜にしても、原始大気と呼ばれる原始期の地球に稲妻の刺激が加わり、生命が誕生したと考えられてきたから。それは1930年代から、しばらく、有力視されてきたという経緯がある。当初、原始大気と仮定さていたのはメタン、アンモニア、水素、水であり、その仮想原始大気に電極で火花を散らす稲妻の代用となる刺激を加えるとアミノ酸が生成できたから。原始大気にスパークを与えると、偶然の確率でアミノ酸が生成できるのだから、きっと、そのようにして生命が誕生したのだろうと考えられてきた。その後、窒素や二酸化炭素が加わるとアミノ酸が生成できない事が分かり、仮定するところの原始大気はメタンとアンモニアに人気が集中することになり、そうした実験から生命の起源を探る研究がカール・セーガンの時代まで続いたという。おそらく1980年頃までは熱心に続いていたのだ。アミノ酸が生成できる。もう少しの筈だと考えられていた訳です。
しかし、ここに大きな変革が起こった。それがワトソン＆クリックによる二重らせんモデルの発見という事が関係している。私の説明では不完全なものになるので割愛しますが、ＤＮＡの二重らせんをつくるには、その名も「ワトソン・クリック塩基対」が必要となる。そしてＤＮＡ（デオキシリボヌクレオチド）は情報をＲＮＡ（リボヌクレオチド）に転写し、元のＤＮＡらせん構造を複製してゆく。
そうなった時に生命の定義も変わらざるを得なくなった訳です。アミノ酸の生成は、アミノ酸の生成であり、それは生命の誕生ではないと分かってしまった。生命体とはＤＮＡとＲＮＡを持って自己を複製していくという機能を持っている。メタンやアンモニアに色々な刺激を与えてみたところで、偶然に塩基配列を伴なったＤＮＡやＲＮＡが生成されるという状況が必要だという事になってしまう。この辺りの説明には2021年刊行の小林憲正著『地球外生命』（中公新書）を参考としていますが、大雑把に大雑把を重ねて説明すれば、そういう話になる。
なので、ずーっと、もしかしたら現在でも、生命の起源は地球に決まっているじゃないかという考え方が主流になっていて、地球外生命起源説は異端視されてきた。しかし、どうでしょう？ よくよく考えてみると、年がら年中、隕石だの、火球だの、そんなものが降り注いでいるみたいだし、何某かの自然環境下で生命が誕生したと考えるよりも、隕石だとか火球に乗って「生命の素みたいなものが地球外から地球に到来したんじゃないの？」と無責任に言い放ってみても、そんなに確率的な有利不利はないようにも思える。〈地球上の生命は、この地球上で生起したものであらねばならぬ〉――という決めつけの方こそ、怪しい。確度もないままに、そう頑なに思い込んでしまっているというのが実相ではないのだろうか。きっと、そう言えてしまうと思う。
また、「古代の宇宙人シーズン12」では特別編として俳優のウィリアム・シャトナーを迎えての討論会が行われ、そこでもフランシス・クリックについての言及があったので追記します。
パンスペルミア説には、隕石に付着した何かが偶然に地球に生命をもたらせたとする地球外生命起源説と、もう一つ、意図的に何者かが自分のＤＮＡを宇宙にばら撒くという行為をした事に起因するという意図的パンスペルミア説があるという。後者の意図的パンスペルミア説は、かなり、ぶっ飛んでいるように聞こえますが、フランシス・クリックは、まさしく、その意図的パンスペルミア説であったという。
ＤＮＡの仕組みを理解できてしまうと、それが天文学的な確率だと分かってしまうのだという。その討論会には、三つの工学博士号を持っているというトラヴィス・タイラーという物理学者も出席していましたが、「まさしく天文学的な確率じゃないと生命は誕生しない」と認めるような発言をした。その後、参加者の誰かが著名な学者の名前を挙げて、著名な学者も、その確率について言及したことがあると説明した。いわく、
「ゴミ置き場の上を竜巻が通ったら、その場にあったガラクタよって偶然にボーイング747が組み上がっていたぐらいの確率だ」
フランシス・クリックは、こう言っていたらしい。
「何者かがロケットに自分の種を積み込んで、宇宙にばら撒いたのだろう」
◆更なる一歩、神と人
つい先ほど「地球外から飛来した生命は隕石に付着して」と述べましたが、それは表面に付着していようが、隕石の内部に閉じこもっていようが、どちらでもいい。要は地球外から流入したとか飛来したとか、そういう事を指している。そして地球の歴史が始まるのは、46億年前からという事になる。なのに、ＤＮＡの蓄積が90億年分の進化の痕跡があったなら、それは、おかしいじゃないかとなる。当然、何かがミッシングリンクがあるのだろうと考える事になる訳です。
そしてキャロライン・コーリーは、遺伝子操作の話を切り出すという展開となった。「既に我々地球人はＤＮＡの切り貼りをしていますよ」、と。これは我々も薄々は承知の事柄かも知れない。既に中国では、世界で初めて遺伝子編集ベビーの誕生を主導して、既に双子の姉妹が産まれたと発表して世間を驚かせた事があった。その医師は投獄されたが、既に釈放になっているという。また、医療目的なのであれば、遺伝子エンハンスメント、つまり、ＤＮＡの改変も許されるのではないかという倫理の問題にもなっている。
更に、ホモ・サピエンスは類人猿から進化してきたと考えられてきたが、そこにも一つ問題を提起する事が可能だという。サルなど類人猿の染色体は48本であるが、何故かヒトは46本である。霊長類と呼ばれる仲間たちも48本なのに、何故にホモ・サピエンスの染色体は46本なのかという問題が提示される。
そして、この辺りの話になってしまうと私には裏付けようにも調べようがないのですが、同番組内では、「ヒトの第２番染色体には結び目が施されている」という指摘が為される。ホント？ ウソ？ その中間ぐらい？
ここから一気にエーリッヒ・フォン・デニケンの後継者を自称している「古代の宇宙人」のホスト役であるジョルジョ・ツォカロスがニンマリと笑顔になる。現在では「宇宙人飛来説」という呼称が使用されているが、デニケンまで遡ると、その系譜は1960年代に大ブームを巻き起こした『未来の記憶』を踏襲するものであり、つまり、異星人は既に地球にやってきており、我々が神と呼んでいるものは高度の文明を有していた異星人であるという仮説に基づいている。
太古、天使たちがヒトの娘と交わって堕天使となったという伝承を伝えるという２世紀頃に書かれたという「エノク書」があったが、４世紀頃にエノク書は問題のある内容だとして偽書扱いとなり、異端の書となったものであるという。天使がヒトの娘と交合して子を設け、その子供たちは巨人であったという伝承だという。この辺りも実はチェックのしようがないのですが、或る程度までは堕天使についての記述などから確認する事が可能かも知れない。伝承上では実際に天使とヒトの娘とが性交渉をして子を設けたという意味であるように描かれているようですが、そこから一歩踏み込んでみれば、それは異星人と地球人との間に子供を設けたの意味となり、ひょっとしたら何かしらの遺伝子操作をしたという意味ではないのかと疑えるのではないか…となる。
既に現代人が実際に遺伝子操作をしている事からすると、太古に地球を訪れた異星人が、その星の生物に対して何かしらの遺伝子操作を施したという事はないのか――という訳ですね。そもそもピラミッドであるとか、ストーンヘンジであるとか、いやいや、最も理解に苦しむのはナスカの地上絵だろうというべきなのですが、ナスカの地上絵が存在している理由を、未だに我々は導けていない。デニケンが指摘したように、ごくごく常識的に考えればナスカの地上絵は、上空からしか見えない絵なのだ。フツウに考えれば、上空に存在する何者かに見せる為に描いたのだろうと考える事になる。
彼等の言い分はこうだ。アームストロング船長が人類の記念すべき一歩として月面に降り立った時に、月面到達を記念して星条旗を月面に立てた。そう、来訪者は、そこに来訪した証を残そうとする筈だ、と導く。或る種のモニュメントをきっと残していったのではないか。或いは、ピクトグラムだ。不思議な事に南米には空を飛行する神の伝承がある。その空から降りて来た神とは、実際には神ではなく、高度な文明を持っていた異星人の事を指していたのではないか、と仮説を立ててゆく。これも唐突に感じるかも知れませんが、後述することになるエゼキエル書には「金属っぽい」と表現される神が登場する。エゼキエル書の方は旧約聖書の方に収録されており、預言者にして特に重視される預言者でもある。
エゼキエル書って何よという方は、以下のリンクへどうぞ。
拙ブログ：「救世主」と「マゴグの地のゴグ」〜2013-08-29
異星人と我々とが遭遇しない理由については、実は大昔から論じられている。限定的な割合で、その星には生命体が存在していて、その生命体が知的生命体であり、宇宙空間を飛行するような高度な科学文明を持ったとして、果たして、知的生命体が知的生命体と出会うタイミングなんてものはあるのか？ その問題です。
おそらく、太古に地球に異星人は到来したが、そこには科学文明を持っているような生物は存在しておらず、到来した異星人は到来した記念にモニュメントを残した。そんな事が繰り返されたのではないか。それらが技術的に不可能ではないかと思われる超古代遺跡の正体なのではないか？ そしてそして或る時期に地球にやってきた異星人は、そこに生物を発見した。しかし、生憎、その生物は科学文明を持っておらず、サルに近い何かであった。その異星人は、異星人の大ボスを裏切って密かに若いメスのサルに自分たちのＤＮＡを受け継ぐ混血児を産ませるという掟破りを働いた。斯くして、その星には異星人の遺伝子操作を受けたサルが産まれ、そのサルたちは飛躍的に知能を高めていった。そんなシナリオを考えずにはいられないではないか――というのだ。
最後に、このテの何故にホモ・サピエンスの知能は急上昇したのかという問題にも触れていたと思う。ホモ・サピエンス史からすれば、その知能は、ずーっと平坦であったが、約５万年前から急上昇したと考えられるのだそうな。しかも、その急上昇具合は実に約100倍という急カーブでホモ・サピエンスは知性を急上昇させているという。うーむ。
エーリッヒ・デニケンが60年代か70年代にアメリカのテレビショウにゲスト出演した際のＶＴＲも「古代の宇宙人」の中で紹介されていましたが、そこでデニケンは先制パンチを放っていました。
「哲学者のショウペンハウアーをご存知ですか？ ショウペンハウアーは新しい仮説が主流になるまでには三段階があると語っているんだ。第一段階では批判する。第二段階になると無視する。そして第三段階になると、〈そんな事は、とっくの昔から知ってたよ〉ってね」
