どーか誰にも見つかりませんようにブログ

人知れず世相を嘆き、笑い、泣き、怒り、呪い、足の小指を柱のカドにぶつけ、ＳＯＳのメッセージを発信し、場合によっては「私は罪のない子羊です。世界はどうでもいいから、どうか私だけは助けて下さい」と嘆願してみる超前衛ブログ。

カテゴリ：オトナの話 > 現代思想と性

或る時期から「ＬＧＢＴ」と呼んでいたものが「ＬＧＢＴＱ」になり、更には「ＬＧＢＴＱ＋」へと変節してきた事を認識している。呼称を変えるとか、名前を変えるというのは、実は狡いテクニックだよなと感じている。仮に誰かが言い間違いをしたら、その途端に「あなたの言葉は間違っている！　この議論に参加する資格はない！　そもそも認識が出来ていない！」となり、「その言葉の定義はこうである！」と自分でつくったルールを相手に押し付けることができる。仮に批判しようとする者があった場合、その頻繁に呼称・名称をしていれば常に批判を跳ね返し易くなる。

例えば「旧統一教会」の現在の正式名称なんてのがある。あれなどは憶えたくないし、憶える事に自分のメモリーを割かねばならないのは苦痛と感じる。長ったらしい名前で、どうもやっている事と正反対みたいな名称を正確に記憶というのは余りにも非生産的なので、それを正確に記憶しろと言われても、どうしても拒絶してしまうものだ。

しかも、相手が言い間違えれば、これみよがしに「あなたが発している、その言葉の定義を述べてみよ！　あなたは、その用語の意味を理解できていない！」という喧嘩無双だって可能になってくる。実は相手に主導権を握らせないテクニックになっている。これは「名称がないと、その事象を語ることができない」とか「ロゴス思考で認識するにもロゴス化するには名称が必要になるので、名前がないと思考ベースに乗せることができない」という法則性を利用した小狡いテクニックのようにも思える。

もしかしたら次から次へと新しい概念や、新しい言葉を作り続けることで、無双しているだけなのではないのだろうか。もし【風】というものに語ろうにも風というものに、その名称がなかったならば風について論じる事も評することもできない。その「風」という、その抽象的概念を想起できなくなってしまうカラクリがあるのだ。

また、「ルール決定権とは即ち支配権である」とも言える。ルール決定権を掌握している側は、ルールを変更してしまう事で自在にゲームの主導権を握れてしまう。ルールを改変してしまう事で、ゲームそのものをコントールできてしまうのだ。「おんどりゃ、誰に断わって、ここで商売してんじゃ、ああん？」というのは、勝手に、その者がその場所は自分の縄張なので店を出すにはショバ代が必要なんじゃ、それなのにワシに断りもなく店を出してんじゃねぇぞ、痛めつけられてぇかのか、コノヤロー」の意である。「オレこそが、この街のルールそのものなんじゃぞ。文句があるならかかってこんかい！」と、そういう勝手を孕んでいる。

このルールの決定権を掌握してしまう事というのは、支配権と直接的につながっているのだ。


ジェンダー関連は非常に用語が複雑化してしまっているので、以下にまとめておくこととします。


クィア…一般的な性のカテゴリーに入らない人たちの総称。

ノンバイナリー…性自認が男女のどちらにも属さない人。

アジェンダ―…これも自認する性のない人と推認できる。「ア」＋「ジェンダー」で「ジェンダーのない人」の意になる。

アセクシャル…これも「ア」＋「セクシャル」になる。

パンセクシャル…「パン」＋「セクシャル」になる。すべてのセクシャリティの人を性的対象にする性的指向。

デミセクシャル…精神的なつながりを感じる相手だけに性的な欲求をいだく性的指向。

トゥースピリット…男女両方の魂を持つ人。


デッドネーミング…トランスジェンダーの人たちを出生時の名前。出生時の名前で呼ぶと、それは「デッドネーミング」なので失礼になるの意で使用されているという事だろうか。

ミスジェンダリング…誤った人称代名詞でその人を指すこと。これは「彼と呼ばれたい」という生物学的女性があった場合に、その人を「彼女」と呼ぶのはミス（誤り）であるという意味のよう。本人の求めに応じて「彼」と呼ぶべきという考え方から登場した言葉と思われる。


ジェンダー・ノンコンフォーミング…性に関する旧来の概念に合致しない人のこと。

ジェンダー・クエスチョニング…性自認や性的指向が決まっていない人のこと。

ジェンダー・ディスフォリア…性別違和。生物学的な性への違和感のこと。

ジェンダー・フルイド…性自認が流動的で状況に応じて変化する人のこと。

ジェンダー・エクスパンシヴ…性別の区別がないこと。


トランス・フォビア…トランス嫌悪。トランスジェンダーを嫌悪する人のこと。


トランジション…性別移行。医学的処置によって外見を変えること。

ディストランジショナー…性別移行後に後悔し、元の性別へ戻そうとしている人、もしくは再移行した人のこと。

ディジスター…一度はトランスジェンダーと自認したが後に撤回した人。

思春期ブロッカー…思春期に訪れる第二次性徴を抑制する薬もしくは措置のこと。「思春期を一時停止する」という意味合いからの「ブロッカー」であり、実質的にはホルモン剤の一種であるリュープリンという薬剤によって、第二次性徴を一時停止させる療法のこと。性別移行に踏み切る前に成長を一時停止させる療法であるが、化学的閉経を誘発するほど強い薬を用いる。医学論文によると、このリュープリンは第二次性徴を一時停止される薬品であるが、この思春期ブロッカーを服用した子供のほぼ全員が結局はホルモン療法を受けるようになっているという。

シスジェンダー…生まれ持った性別と自認する性別が一致する人。トランスジェンダーの対立概念として造られた言葉。米国では学校教育の場でも、この言葉が使用されているという。

今後も追加していくかも知れませんが、一先ず、ここまで。
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アビゲイル・シュライアー著・岩波明監訳『トランスジェンダーになりたい少女たち』（産経新聞出版）を読み進めていくと、或る事実に行き着いてしまう。実は、セラピストも精神科医も当事者が「私は生物学的な性別と性認識する性別とが合致せず、性別違和を感じている」と申告した場合、その申告を肯定する事が既にガイドラインになっているのだという。

引用で補うと以下のようにになる。

トランスジェンダーの治療で広く普及している医療の標準�犢猟螢吋↓瓩�書くシナリオなのだ。その標準は、精神医療従事者は――多くの証拠に反し、ときには問題に対する自身の考えと逆であっても――性別違和に対する患者の自己診断だけでなく、患者の認識の正確さも�犢猟雖瓩垢襪海箸魑瓩瓩討い襦�つまり、性別違和で自分で女性をだと思っている男性患者はほんとうに女性だと認めなければいけない。（『トランスジェンダーになりたい少女たち』153〜154頁）

おそらく頭が混乱するか、注意深く理解しようとすると一発では理解できないようなニュアンスを孕んでいる。更に補足するように引用すると、以下にようになる。

これは共感を超えて、�狄搬里寮�別が異なっている�瓩箸いΥ擬圓了廚い海澆鯒Г瓩襪茲�精神科医に一足飛びに求めている。肯定ケアは医師に偽りを認めることを強いているのだ。十代の少女が少年として見られるほうが気分が楽だということではなく、実際に男性だと認めることを。（同154頁）

「ジェンダー肯定ケア」がガイドラインの標準になっており、間違っても「君が性別違和を感じたりするのは、思春期特有のものであり、気のせいなのでは？」のように対応してはいけないという事なのだ。まぁ、以前に日本でも「新型うつ病」なるものがあって、その際、患者が自分で「ウツなんです」と言ってきたら、基本的にはその主張を受け入れざるを得ないという話は話題になったと思う。というのは「あなたはウツではありません」と診断する訳にはいかないから。自殺されたら医療ミスだと大騒ぎされるし、そうではなくとも「あそこのクリニックの対応はサイテーだった！」のような炎上ネタをばら撒かれてしまうのが現代のＳＮＳ社会でもある。しかし、現在、米国で起こっている「ジェンダー肯定ケア」の問題は、どうも全体を取り巻くようにして出来上がっているらしい。

この肯定ケアという標準は、ほとんどの国際認定機関で採用されている。米国医師会、米国内科学会、米国小児科学会、米国心理学会、米国小児内分泌学会のすべては�犢猟螢吋↓瓩髻↓爛肇薀鵐好献Д鵐澄辞瓩伴�認しているか�狎�別違和�瓩伴�己認識している思春期や青春期の若者たちを治療する際の標準としているのだ。（同155頁）

この問題を、著者は次のようにたとえ話で噛み砕いている。

神経性無食欲症の患者を同様の方法で治療すると思ってほしい。身長一六七センチ体重四三キロの少女がやってきて、医師にこう言う。「自分が太っているのはわかっています。�爛妊岫瓩辰童討鵑任�ださい」米心理学会はこのやせすぎの少女も�猗酲��瓩砲佞�まれるように�猴�解を修正する�瓩海箸魄綮佞望�励しているのだ。そして、患者にはこう対応するよう促している。「あなたが太っていると思うなら、太っているんです。あなたの実体験を支持します。おデブさん、これでいい？」（同156頁）

これは確かに説明が難しい問題でもある。著者は例え話で説明しようと、神経性無食欲症の少女の話とは別に、12歳のアフリカ系アメリカ人の少女が自分は白人であると主張して名前も本名ではなく、その少女が呼んで欲しいという名前で呼ぶことになるのかという比喩で、この「肯定ケア」の問題を提起している。これは実際に落語とかコンニャク問答になりかねず、思春期少女が展開する「ほんとうの自分」、それが性自認になってしまっている訳ですが、それにとことん付き合う事を意味している。付き合っているだけならいいが、当の体制そのものがつくっているガイドライン等が性自認に基いたジェンダー思想になってしまっているので、実はそのままホルモン療法などの性別移行へと恣意的に誘導しているという事を指摘している。

説明するのもなんだか非常に虚しい話になってきますが、「これは医療やセラピーと言えるのか？」の問題になってきてしまうように思えるのだ。バカボンのパパの口調で、

「実は精神科医やセラピストらは、単にメンヘラ少女の御機嫌取りをしているだけっていう事はないんでしょうな？」

と言ってしまいそうになる。しかも、これらの一連は「性自認の問題にかかわる事だから」として保護者らに連絡することなく、勝手に学校や医療機関がやっているという問題らしい。引用箇所などは面白味のない文章で読むのも苦痛かと思いますが、要は、「あなたはこうだっていうけど、それは気の所為なのでは？」と言う事を厳しく規制しているポリティカル・コレクトネスに繋がっているという事だ。

つまり、「気のせいでは？」のように言ってはいけないという事なのだ。「君の言う通りだ。君は女性の身体を持っているが君が自分を男性だと思うなら男性なのだよ。どうしたいかね？　ホルモン療法や外科的手法があるけど…」のように応じてしまっているだけって事ですよ。

継ぎ接ぎの引用なので、以下だけでは意味は完結しませんが、流れとしては以下に繋がっている。

米国心理学会が用語について、そしておそらくはそうした人々に対する治療方法についても放置し、政治の世界に入っている。生物学よりもポリティカル・コレクトネスに導かれたガイドラインが患者によって最善なのかどうかは疑問を抱く価値があるだろう。（同159頁）

それらは「医療行為」とか「セラピー」なのかさえ、私であったら怪しんでしまうかな。だったら、最初に患者にも打ち上げるべきだ。「私はあなたの言っていることを、ただただ、肯定ケアというガイドラインに沿って受容します。受容するだけだし、ガイドラインに沿って対応しているだけなんですよ」って、きちんと説明しない事こそが罪のような気がするよ。相手の不安心理につけこんで、善人ぶってダマしているだけ、そういうのは避けたいからねぇ。
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今回は以下の話の続きという事になります。

拙ブログ：トランスフォビアの深層

何故、カルフォリニア州では性自認教育というガイドラインが教育現場に導入されたのかという問題について、性自認教育に肯定的な教師たちは「ＬＧＢＴＱの子供への暴力や嫌がらせ、精神的苦痛を防ぐために、この性的指向と性自認に関する教育はすべて必要だった」と主張しているという。

有名な例があるとの事で、そのケースに触れていきます。

1996年にウィスコンシン州アッシュランドでジェイミー・ナボズニーという中学生に起こった事件があるのだという。

この箇所は慎重を期して（それと、文章そのものが私と非常に相性が悪いので）引用とします。

ナボズニーは公立の中学校、高校に通っているあいだずっと、執拗に心身とも傷つけられ、暴力をふるわれ、�爛曠皚瓩筬爛�マ掘り�瓩覆鋲雲�愛者を侮蔑するあらゆる言葉を浴びせられ、暴力をふるわれ、恥をかかされ、小便をかけられていた。それもすべて、同性愛者であることをいっさい隠そうとせず振る舞っているという罪を犯したからだという。彼に対する他の生徒の仕打ちはおぞましく、悲劇的で容赦がなかった。同級生たちは彼を殴るためだけに存在する屈曲自在の筋肉の塊と化していたとしか思えないほどだ。

しかし、同級生たちがナボズニーに見せた残忍さよりはるかに悪辣だったのは、彼が保護を求めたいくつもの学校の校長たちの慈悲のかけらもない無関心だった。学年がかわっても、いじめは続いていたが、どのカウンセラーもどの校長もいじめを止める手だてを打たなかった。あるとき、ナボズニーと同じクラスの男性生徒何人かが彼を地面に押したおしてレイプする真似をし、ほかの生徒がそれを笑ってみていたということがあった。ナボズニーはその一件を校長に訴えたが、校長は彼に、もし�爐海譴�らも同性愛者だと公言し続ける�瓩里覆蕕弌△曚�の生徒から今回のような扱いを�犲�けるもの�瓩隼廚辰討�いたほうがいいと言いはなった。中学二年生の終わり、ナボズニーは自殺を試みた。

ナボズニーは成人すると、自分を守らなかった学区相手に訴訟を起こした。控訴審で第七巡回区控訴裁判所は、ナボズニーが何度も助けを求めたにもかかわらず、学区が彼の苦境の訴えに耳を貸さなかったのは、アメリカ合衆国憲法修正第十四条で認められた平等な保護を受ける権利の侵害にあたると断じた。（『トランスジェンダーになりたい少女たち』120〜121頁）

悲惨な話といえば悲惨な話なのは間違いない。しかし、既に日本人である我々は2019年に発生した旭川14歳少女イジメ自殺事件をはじめ、陰湿で悪質なイジメ事案を知ってしまっているので感覚としてピンとこないところがあるし、もう一点、このケースでは「同性愛者であることを公言していた」という問題が率直に言えば日本人の感覚ではつかみにくいのも実際であろうと思う。それがイジメの原因なのであれば「同性愛者であると公言する事を控える」という対処を考えるのが現実的な対応ではないのかなという気もする。また、こういう部分で常に「自己主張型の権利主義」と衝突してしまう訳ですが、他者との共生に重きを置くのであれば、不必要なアウティングは避けるというのが、伝統的な日本人の思考方法であろうとも思う。からかわれるのが嫌なのであれば、わざわざからかわれる材料を提供しないという具合に発想し、そう対処する。

うーん、きっと、ここで西洋リベラル型というのは「いいえ、そういう事を言っているのではありません！　これは法律や権利の問題なのです！」のように展開するのでしょう。しかし、思うのだ。この問題で、どちらが実際に即した対応だろうか？　思うに、こういう問題こそ、実際主義、リアリズムを採択すべきで、いじめ問題を語って原理原則の理想を語るというのは、少なくとも私は感心しない方であろうなと思う。「同性愛者だからといって、イジメられる謂われはないのだから、堂々と公言しても守られるべき」という理想型の思考方法をされてしまうと、感覚的にも、ついていけないところがある。飽くまでも、いじられている側が被害者である訳ですが、いじめのようなものはどこにでも起こってしまうというのがリアルだからこそ、それを回避する事も怠って欲しくないと考える訳です。

この理屈は「深夜のスラム街に露出の激しい服装で若い女性が出掛けるようなものだ」という言い回しで、ずっと昔から言い続けられてきたものであると思う。原理原則からすれば、襲う側が悪いに決まっている。そんな事は言うまでもない大前提の話だ。その上で、そもそも我が身を危険に晒すような事をするのは愚かな事ですよという意味合いで現に使用されてきた言い回しであろうと思う。また、この話については和田秀樹著『テレビの大罪』でも取り上げられていたと思う。当時の福田康夫総理がオフレコ発言として「クロヒョウ発言」をしてバッシングされた事がありましたが、実際問題からすれば、「加害者と被害者のどちらが悪いか？」という比較をしているのではなく、「この世の中には絶望的なレベルで悪い奴がいる世の中なのだから、被害に遭いたくなければ注意が必要だよ」という主旨の警句として発せられているのに、これまでにも度々、炎上してしまっている類いの話でもある。

話を『トランスジェンダーになりたい少女たち』に戻すと、ジェンダー思想教育に賛成している教師たちは、こうしたイジメ事案があったので「ＬＧＢＴＱの子供への暴力や嫌がらせ、精神的苦痛を防ぐために、この性的指向と性自認に関するする教育はすべて必要だった」と展開している。

著者のアビゲイル・シュライダーは、一定以上の評価をした上で、次のように続けている。

いじめ防止法を可決させた連邦議会議員や教師、性自認および性的指向に関する教育を実践している教育委員会は〜略〜ＬＧＢＴＱを自認する生徒の幸福を真剣に考えていると、わたしは信じて疑わない。とはいえ、問題に対処するために取られた方策が改善の域をはるかに超えてしまった場合、立案者の意図からそれているのは明らかだ。

それゆえ、聖職者のたゆみない情熱によって行なわれる性自認と性的指向の教育が、秘めた目的のための口実だと言われるのだ。生徒に自分は同性愛者やトランスジェンダー、パンセクシャルだと思うよう強要していい理由はどこにもない。それに、生徒が女の子の身体をした男の子、あるいは男の子の身体をした女の子かもしれないと勝手に思っていい理由もまったくない。〜略〜学校マニュアルの言葉を借りて、「トランスジェンダー・アイデンティティの表明や、性の枠を拡大した振る舞いは人間形成の健康的かつ適正で典型的な一側面である」と生徒に教える理由もない。

必要なのは、クラスメートに対して慎み深さや礼儀正しさ、親切心を示すよう生徒に言いつづけることだけだ。行動規範に従え。〜略〜ほかの人の体形や宗教、セクシャリティなどの違いを指摘する行為は寛大さとも寛容さとも無縁だ。悪い行ないは即座に罰せられるべきだ。

〜略〜

万が一、嘆かわしい行為がジェイミー・ナボズニーの事件にあったような、加重暴行レベルにまでエスカレートしたら、その生徒を退学処分にするか、警察の手に委ねるかするだろう。（同122〜123頁）

何故、このような話になっているのかというと、既に性自認教育のガイドラインが整ってしまっているから――という事になる。

中学校では次のような按配らしい。

教師への指示にはこうある。「生徒に立って、ぐるりと二回まわって、すわるように言う。そのあと『みなさん、自分がいまと違う性になったところを想像してみましょう』と言う。もしうまく想像できない生徒がいれば、教師はもう少し踏み込んで行ってみる。『もしいまと違う性になったら毎日の生活でどんなことが変わってくるでしょうか？』と尋ねる。生徒たちの答えを黒板に書き、質問をする。『べつの性になったら、どんな気持ちがするでしょうか？　べつの性になったら、どんな楽しみがあるでしょうか？　あなたの生活のなかで、べつの性になっても変らないものはなんでしょうか？』」

畳みかけるように質問が続く。自認する性が定まっていない人の立場になって考えてみよう。あなたは完全に女性だろうか？　自信をもってそうだと言えるだろうか？

〜略〜

唯一のルールは、性的二型（生物の生殖器以外の性別による違い）をすべて除外することだ。教師と性的指向の選択肢を数多く提示し、生徒が賢明な選択（つまり、シスジェンダー以外の選択）をしたら、うれしそうに驚いたふりをする。生徒にそのビッグニュースを家族に伝えるよううながしてはいけない。（同114〜115頁）

なんだか、カルト臭がするというのは、こういう部分にある。しかし、高校になると、更に過激な性自認プログラムが行なわれているという。

もっとも評価の高い健康教育カリキュラムのなかの三つのうち高校生向けのものは性自認と性的指向に関する内容をふくんでいて、かなり扇情的かつ露骨で過激だ。思春期の若者を興奮させてオーガズムを感じさせようとしているのか、あるいはセックスに嫌悪感をいだかせようとしているのかと思うほどだ。アナルセックスも何度も奨励されるので、作成者は自分たちがそれを考案したと思いこんでいるのではないかと勘ぐる人も出てきそうだ。副教材では、フィスティング（拳を膣または肛門に入れる行為）や口による肛門への刺激が、想像の余地がないほど説明される。登場しない穴はひとつもない。（同115〜116頁）

まぁ、このあたりになってくると狂気を感じなくもない。そんな事をいちいち公立学校で教える必要性があるのかなって思うけどね。

でも、思い当たることってたくさんあるかな。教育現場の学校では体罰禁止は仕方がないにしても、口頭注意であったとしても自己申告次第では「精神的虐待が行なわれた」みたいなジャッジになってしまうものと思う。日本でも「叱らない子育て」が奨励されているので苦慮している親も多いだろうし、「泣き叫んでいる子供があれば、躊躇せずに通報せよ」と政府が宣伝しているけど、こういうのって多分に相互監視を煽る。これは実質的には大衆迎合型全体主義が為せる「不寛容」なのになって思ってる。

著者のアビゲイル・シュライダーは、この結論として「いじめ防止の取り組みというのは性自認教育を行なうための口実にすぎない。わたしがそう確信するに至ったのは…」という風にも綴っており、つまり、「いじめ対策」として性自認教育がは行なわれているという説明には納得していない事が分かる。

拙ブログ：「世俗社会の処し方」という知
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冒頭から引用します。

性的指向及び性的倒錯研究の世界に於いてレイ・ブランチャード博士は大家である。兄がいると、あとから生まれた弟たちが同性愛者になる確率が高くなるという説に出会ったことがあるなら、あなたはブランチャードの博士の研究を知っていることになる。〜略〜男児を続けて産むと、男性特有の抗原を攻撃する抗体が母親にでき、次に妊娠した男性の胎児で性分化を妨げるという理論だ。（『トランスジェンダーになりたい少女たち』190〜191頁）

詳しくは知らなかったけれど、竹内久美子さんの著書で似たような話があったような気がする。蜜蜂に於ける働き蜂とはメスであり、女王蜂に卵に産ませる為にせっせと働くのが働き蜂なのだ。リチャード・ドーキンスの利己的遺伝子論（利己的ＤＮＡ論）では、その利己的なＤＮＡに操られている主体は自らの複製（コピー）をつくる為にのみ、行動しているというというのが利己的遺伝子論であったが、この働き蜂は自分の為ではなく、女王蜂の遺伝子コピーをつくる為に働いているではないかとなる。しかし、それは錯覚であり、実は女王蜂と働き蜂とは遺伝子的には姉妹であり、つまり、同じ遺伝子を保有している。女王蜂が卵を産めば産むほど、実は働き蜂にとっても自分のＤＮＡの複製をつくっている事を同じになる。比較的、初期に利己的遺伝子論として紹介されていたと思いますが、その延長戦上で兄弟が既に結婚をしていて子を儲けている場合、その弟は同性愛者になる確率が高いという話は紹介されていた記憶がある。つまり、私は、そのブランチャード博士の仮説とやらに知らぬうちに接していた側の人間だという事になる。（当ブログでは「肥大化する性意識」と題したシリーズの後半で記した記憶がある。）

さて、先を続けます。

ブランチャードは小児性愛でも革新的な研究を行なっている。勃起判定テストを使って、思春期の子供にとても惹かれる男は、思春期まえの幼い子供に惹かれる男や、身体的に成熟した人に惹かれる男とは異なることを立証した。つまり、十四歳の少女を追い求める男は犯罪者かもしれないが、小児性愛者ではないということだ。（同191頁）

この箇所の文章は、どうも混乱しやすいので要注意だ。念の為に読み下しておくと、おそらくは「思春期の子供＝14歳」という意味だ。それを念頭にして改めて読み下すと「14歳の少女を追い求める男は犯罪者かも知れないが、小児性愛者ではない」の箇所が、すんなりと落ちてくる。余計に混乱させてしまうかも知れませんが「14歳の少女を追い掛ける男」は「思春期前の幼い子供に惹かれる男＝小児性愛者」とも、「成熟した者に惹かれる男」とも、どちらとも異なるという事を述べているのでしょう。（私に惑わされることなく、ご自分のペースで、ゆっくりどうぞ。）

――引用を続けます。

一九八〇年代から一九九〇年代にかけて、ブランチャードは性転換症（用語は当時のまま）を理解するために、今日でも利用され学者のあいだで議論されている類型論を展開した。ブランチャードの味方によれば、性別違和の�狒甦�発症�瓩鉢犖經�発症�瓩龍菠未枠�妙だが、プラトンの言葉を借りれば�犲�然は節目で切り分けるものではない�瓩箸いΔ海箸澄�ブランチャードは性別違和を二種類に分けることを提案した。（同191頁）

この箇所も文章の繋ぎ方が私の感覚とはズレているので〈念には念〉で確認すると、以下のような意味になる。自然界の節目というものは節目正しく区切れるものではなく、実際には際（きわ）は微妙なものであるが、便宜上、ブランチャードは、性別違和を２種類に分けることを提案した、の意だ。

その類型２パターンは、以下になる。

同性愛的性転換症候…この型は、児童期に性的違和が発症し、柔弱な男子または雄々しい女子で、同性愛者として成長する。例えば、ドラァグクイーン等。

自己女性愛性転換症…この型は、思春期に性的違和が発症し、自分が女装することを考えたり、女装した姿を想像すると性的に興奮する異性愛の男性。例えば、五十代で女性に性転換し、女性と結婚した男性など。

後者の「自己女性愛性転換症」はブランチャードの造語であり、カタカナでは「オートガイネフィリア」というらしい。

この分類を展開させた事により、ブランチャードには様々な怒りの矛先が向けられるようになったと説明されている。

しかし、この仮説というのは相応に裏付けもあり、それは『トランスジェンダーになりたい少女たち』の序盤に記されていた。元々、そんなに性的違和を訴えるケースは多くなかったものが、近年、4000％増とか4400％増のように異常に増加しているという現象が起こっていたのだ。古くから知られていた性的違和は男児が幼少期に発症させるものが多く、しかも幼少期であるが故に両親などの保護者も、「おや、この子は少し違うかも知れないぞ」と、何某かの兆候を実際に感じ取れるものであったという。しかし、トランジェンダーブームを起こしているのは思春期の少女であり、どういう訳か西側諸国、特に米国と英国で爆発的に性的違和を訴える思春期少女が増えてしまい、ホルモン療法、外科的な乳房切除まで行ってしまっているという現象を洗い直しているところからスタートしている。「絶対に」とまでは言い切れないが、基本的には性的違和は幼少期に発症するものだと考えられてきた、その筋の理論の蓄積があるので、そうした２類型が提案されたという経緯になっている。ただし、ここでは思春期少女ではなく、五十代になった異性愛者の男性がトランスジェンダーになったというケースの話をしている。（因みに、現在では【性転換症】という言葉の使用も問題視されているらしい。）

もう一人の学術的心理学者であり、性同一性障害の専門家だというＪ・マイケル・ベイリーの話になる。2003年に、このベイリーは『クイーンになろうとする男』という著書の中で、先述のブランチャードの「オートガイネフィリア」についての解釈を紹介した。それは「オートガイネフィリア」について好意的な記したものであった。当初、この『クイーンになろうとする男』はラムダ文学財団が主催するトランスジェンダー賞の最終候補に残るほど好評であったが、後に空気が変わったという。

あれやこれやと先を察する事が出来る方も多いでしょう。つまり、どうも「オートガイネフィリア」の問題が何か関係しているらしい。そのオードガイネフィリアを巡ってのトランスジェンダー活動家らの動向が関係していた――。

その後、空気が変わった。

トランスジェンダー活動家がこの本は自分たちに好ましくないと判断したのだ。〜略〜ブランチャード博士は騒動を思い出して言った。現状から逃れられない男性は同情されるかもしれない。だが、性的に興奮した男性はみっともない――危険であるかもしれないのだ。

トランスジェンダー活動家はラムダ文学財団の候補作選出に抗議する数千人分の署名を集めたラムダ文学財団の審査員はすぐに考えを変え、当初はたしかにトランスジェンダー差別をしていると判断し、最終候補からはずした。（同192頁）

更に引用します。

ベイリーはラムダ文学賞のノミネートを奪われただけでなかった。大学関係者の活動家がベイリーはノースウエスタン大学の倫理規定に反したと非難し、ベイリーの在職権を取り消すよう攻撃的な運動をはじめたのだ――調査対象からインフォームド・コンセントをとりつけず、治験審査委員会の許可もとらなかった（非学術書の場合はどちらも不要）という詭弁や、性転換症研究の対象者と性的な関係をもったという、より深刻な告発に基づいて。最後の重大な告発は証明されなかった。証拠がなくてもおおやけで主張されただけでベイリーの評判を傷つけるには十分だった。（同192頁）

この攻撃は「オートガイネフィリア」に端を発してる訳です。何故、ここが問題になるのかという問題は、この４〜５年でしょうか、日本でも週刊新潮あたりが取り上げてきていた問題、２〜３年前頃からはインターネット空間でも、その問題は取り上げらている。例えば、女子トイレや女湯といった場所の問題になってくる事が予想できるから。トランス女性とは生物学的には男性である訳ですが、そのトランス女性が女子トイレや女湯を利用するとなると、ごくごく一般的な人たちはどう思うだろうか？　その問題になってくる訳です。仮にトランス女性が生物学的な男性を性的対象にしているのであれば、問題はないとなる筈なのですが、性的関心がまったくないとも限らないという厄介な問題が転がっている。ここは慎重に引用しましょう。

トランスジェンダーの男性が異性愛者で、女性の格好をするという想像や、女性の姿形全般に性的興奮を覚えるとしたら、議論の本質は変わり、女性の安全な場所にトランスジェンダーを自認する男性への出入りを認める可能性は支持されなくなる。（同193頁）

ここで一度、引用を切断しましたが、引用文は続けです。

それでも、オートガイネフィリアの存在を否定するのは難しい。多くの性転換者が女性とだけ恋愛関係になっているからだ。ベイリー博士によれば、オートガイネフィリアが存在する事実を隠したり否定したりすることは誰のためにもならず、とりわけオートガイネフィリアの人々のためにもならない。「おそらくオートガイネフィリアの人々が人生の計画を立てるときに役立つことをわたしたちが学ぶ妨げとなっているのです。つまり」トランスジェンダーの患者が行なうかもしれない外科手術の選択肢について「きちんと追跡調査をしていないということです」（同193頁）

ブランチャード博士によれば、

症状がいくつか重なったからといって、必ずしもふたつの異なる状態がひとつの疾患になるわけではない。女の子になりたいと思ってボーイフレンドができた少年と、自分が女性になった姿を想像すると性的に興奮する男性はどちらも性別違和を経験しているが、だからといってそれぞれの原因は一つではない。（同193頁）

となる。この箇所の問題は「性別違和」を感じているのは同じであっても、入口も違えば出口も異なるという話をしている。ブランチャード博士は元々はその道の権威であったので、性転換をしたいという衝動が複雑である事を充分すぎる程に知っているのだという。今回は触れ切れませんが、実はジェンダーフルイドという言葉があり、「性自認は流動的に入れ替わったりする」という事を掴んでいるのだという。これが何を意味しているのかというと、性転換をした後に「あ。やっぱり、オレは▲だった」となり、更に「やっぱり、△だった」のように固定されていないケースがあるという。なので、ブランチャード博士が権威であった時代には性転換の診察対象は成人のみに限定し、しかも原則的には二年間ほどの観察期間を経てから性別適応手術を行なっていたのだという。

この問題について、ブランチャード博士は次のように語ったという。

「美容外科以外で、患者が診断をくだして治療法を指示する医療なんて考えられません。そんなものは存在しない。医師が診断をくだし、医師が治療法を指示するのです。言葉の魔術かごまかしなのか、ジェンダー（活動家）はこの件を政治問題にしました」（同195頁）

どうでしょう？　『トランスジェンダーになりたい少女たち』の刊行に対しては猛抗議が起こり、カドカワは刊行を断念したのであった。トランスジェンダーを嫌悪している差別主義者の書籍であるかのように考えられていた。しかし、思いの外、丁寧に事情を説明している印象を受ける。ごくごく当たり前の話だろうといえば、当たり前の話でもある。ホントに、この著者は一人で取材して、これを著書にまとめ上げたというのは、その凄まじいバイアスを考慮すると、凄い勇気と凄い労力だよなと痛感する。

途中で割愛してしまいましたがブランチャード博士が何故、若者の性別違和については診察対象としていなかったのかというクダリもあった。

実は性自認は流動的である事を知っていたが故に、そうしていた。もし、思春期の少年少女が自ら性的違和を申し出て、両親や友人らの前でも自分の性自認を公言してホルモン療法なり、外科的性別移行なりに進んでみたものの、「あ。やっぱり、違ってたかも」と後悔したとしても、おそらく、「私が間違っていました」と自分の非を認めるのは精神的なハードルが高く、おそらくは言い出せずに苦悩する事になる。幼少時から発生する典型的な性別違和を訴える性同一性障害のケースでは、例えば男性でありながら自己認識では女性なので、仮に近所のコンビニへ買い物へ行くだけでも周囲の眼が気になって精神的重圧を受けてしまうという繊細な神経の人たちであるという。そんな人たちが周囲の反対を押し切って性転換を選択しておきながら事後に「実は私は間違っていました」と言い出せなくなる公算が高い。なので、結局、早計で性転換を行なってしまえば、その者は生涯、性別移行の後悔を引き摺るような人生を歩むことになってしまうのは自明だから、未成年者の性別違和については性別移行の対象としては診察してしなかったという。成人の場合でも原則的には２年間は観察期間を設けていたというのだから極めて慎重に対応していたという事でもある。

そこまで確立されていた性同一性障害の研究体制を、先鋭化した活動家たちがぶっ壊してしまい、診察するのも自分、治療法を選択するのも自分という、そうしたシステムにしてしまったという事らしい。自己申告制。ブランチャード博士のイライラは、それらの事情を薄々は知っていながら自己申告制で性別移行までさせてしまうという現状、そうした現状に甘んじている専門医らに向いているという。

著者のアビゲイル・シュライアーが、それらの気持ちを代弁している。

「痛みますか？　パーコセット（鎮痛剤、オピオイド系薬剤のひとつ）を処方しましょう」

「不安な気分？　テストステロンを処方します。外科医に紹介状も書きますよ」

言われてみると、あれもこれも、まるで現代社会の壊れ方の縮図みたいなものだ。このトランスジェンダーの迷宮の話は、病める西側諸国の縮図そのもののように感じなくもない。
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「Ｚ世代」という分類法に関しては、おそらく国際標準に合わせて、そのような呼称になっており、現存する日本人の学者らが命名した訳ではないらしい。「ゆとり世代」や「さとり世代」等の命名は日本ローカルなそれであったのに対して、そうなっている。知っている人は知っている話なので、蛇足になってしまいますが、これらの呼称の問題で混乱が生じやすいのも現代社会を象徴するワードであろうと思う。

欧米では「Ｘ世代」という言葉を以前から使用されてきており、具体的には「60〜80年代初頭」に生まれた人たちの事を指している。そして「Ｚ世代」とは西暦2000年代初め頃以降に生まれた人たちの事を指している。おそらく、その中間に「Ｙ世代」が置かれているものと推認もできますが、近年、やたらと使用されるようになったのは「Ｚ世代」についてであるという事、それを今一度、確認しておくべきだと思う。

何故、Ｚ世代というワードが、これほどまでに頻繁に使用されるようになったのか。おそらくはデジタル・ネイティブ世代であるという事が強調されてきたような印象がある。イアン・ブレマーらのシンクタンク「ユーラシアグループ」のような団体でさえ、Ｚ世代という言葉を使用しており、しかも、これを2014年のリスクの第10位として掲げていた事は記憶に新しい。こう述べると、「Ｚ世代がリスク材料だなんて差別的でけしからん」のような反応が起こってしまうのが昨今の情報環境だったりするのですが、ユーラシアグループが「Ｚ世代」をリスクとして挙げた理由についても、薄々は見えている筈で、どうもＳＮＳへの依存が高いＺ世代の人たちは、あちらに動くかと思えば、こちらに動くといった予想不能な動向を持っているという具合に分析されているので、いい方向へ転ぶ事も考えられるが、ひょっとしたら悪い方向へ転ぶ可能性もあるという意味合いで「リスク」として捉えられているという分析であったと思う。

新聞の国際面などに目を通している限りでは、現在の国際情勢について概ね米国のＺ世代はまともな反応をしてくれているように感じている。パレスチナのガザ地区で起こっている問題は、高齢世代ほどイスラエル寄りであり、若年層ほどイスラエルに対して避難の声を上げているという問題がガザ侵攻が始まった当初から確認できているし、先述したＺ世代は中々に積極的にネタニヤフ政権の暴走に正当な抗議活動を展開させている。では、そうした傾向は日本のＺ世代にも当て嵌まるのかという問題がある。私見では当て嵌まりそうもないなと感じている。日本の場合は或る種の言論統制みたいな空気支配が起こっているので、抗議活動をするという文化そのものを、その上のＸ世代ですら持っておらず、こうなるのも必然といえば必然であった。ただ、興味深いことに米国の世論調査などでも60代、70代と高齢になるにつれてイスラエル支持が増えて、50代、40代がとんとんで、30代や20代の人たちは鋭敏に反応している事は確認できてしまう。しかも、これが小さな規模ながら、勇敢な抗議活動になっているところもあり、大学から処分を食らったとか、企業内定を取り消されたとか、果ては勤めていた大手ＩＴ企業を解雇された――といった言論闘争を展開している。それらの事によって間接的にイスラエル・ロビーが米国政府や米国社会に深く食い込んでいること、また、そこに既得権益層が形成されていて、自由主義を最大の武器にしてきた米国を大きく揺さぶっている。大学生らが、こうした抗議運動に身を投じているのは民主主義の健全性を守るという意味合いでは「希望」のようにも思える。ウォールストリート占拠運動があったのは2011年であったようなので、もう随分と昔の話になってしまっているのですが、将来を有している若者らが、まだ、完全には政治的関心を失っていない〈健全さ〉の残滓を目撃しているような気分になる。

この辺りの話は、ロバート・レッドフォードとメリル・ストリープ、トム・クルーズが共演した映画「大いなる陰謀」の文脈そのままであろうと思う。同作では、政治学の老教授役をロバート・レッドフォードが演じているが、単位を獲得する事だけに主眼を置いている大学生たちに対して内心では深い落胆を感じている。そんな中、皮肉なことに政治をリアルで起こっている出来事だと捉えている学生に出会う。国際紛争に対して、本気で取り組むべきだという意志を持っている学生二人組が登場する。老教授は思わず肩入れしてしまうが、その二人の学生は純真であるが故に「僕たちは大学を辞めて、志願して軍隊に入ります」と言い出してしまうのだ。老教授は思う。「政治に関心を持ってくれている事に感激し、君たちのような学生にこそ、次代を託したいという気持ちがある。しかし、彼らは本当に戦場へ行く気なのか？」という複雑な感情が沸き起こる。老教授は思いとどまるように説得を試みるが、その二人の大学生は大学を辞めて戦地に赴く。その後、その二人の大学生には悲劇的な死が待っているのですが、老教授のジレンマとして同問題を描いたあたりに妙を感じた。政治的無関心な学生たちよりも、政治に関心を持って自らも行動する学生こそが望ましいと憂いてきたが――というジレンマなので、正解らしい正解がある訳でもない。しかし、ロバート・レッドフォード自らが演じてみせた〈老教授のジレンマ〉は表現方法として秀逸だったと思う。


さてさて、長い長い前ふりを経て、ここからがＸ世代とＺ世代の比較である。この問題には日米差があるし、必ずしもジャストフィットする比喩にはならない。しかし、他方で同時代性を確認して「そうだったよね」と、Ｘ世代を覚醒させる話が鏤めれられている。以下、アビゲイル・シュライアー著『トランスジェンダーになりたい少女たち』（産経新聞出版）に沿って。

Ｚ世代は、それ以前の世代と比較すると遥かに寛容だという指摘が心理学者から為されているという。酒やタバコといった典型的な非行行為も少なく、十代少女に於ける妊娠中絶率も下降線を辿ってきているという。米国に於けるティーンの動静という意味では、何十年か昔のこと、「中学校のトイレでフェラチオする生徒の多さ」が問題視された事があったという。具体的にいつ頃なのかは記述されていないものの、そういう時代さえ米国ではあったらしい。つまり、一時的には、そこまで荒廃していたそうで、さすがに荒廃について議論され、今日的な状況に辿り着いたという。

「中学校のトイレでフェラチオをする生徒たち」が多く散見したという状況、もう、その光景をリアリティを以って認識する事さえ難しい。若干の誇張があり、そうした例が２〜３件も目撃された事で社会問題になったという程度の事柄であろうか。しかし、分かりませんやね。私の個人的な経験では10〜15年前、その方は現役の小学校の教師だったのですが、立ち話として10分程度の雑談している中で「最近の子はマセてるんですよ」みたいな流れになった事があった。その際、「✕✕先生が放課後に三階の音楽室へ行って扉を開けてみたら、そこでキスをしている男の子と女の子とを目撃して、会議になった事があった」という話を聞いた事がある。嘘をつく必然性はゼロ、しかも、その小学校は町中にある小学校ではなくて、かなりの郊外にある小学校の話だったので「あ。そういう話ってホントなんだ」と内心では少し驚いた記憶がある。私ぐらいの世代の小学生だった頃の記憶からすると、男子児童と女子児童とは実際には反目しておらずとも、少なくとも表面上では対立関係を形成していたような気がする。子供ながらに「男のクセに女と遊んでらぁ！」とか「Woo,Woo,　女にモテるよゥ」という具合のヒヤカシが当然に起こる時代だったので、小学生同士の男女が学校でキスをしているなんて、とてもとても想像がつかないのだ。

とはいえ、どこそこの中学校でＳＮＳを使用して援助交際が発覚した事例が２件あっただのと、そういう情報も近年になって耳に入るようになっていた。そういう事例が何件あったという具合につくられた疑いようがない資料を目にする事になったのだ。そして昨年ともなると「ウチの娘は学校へは行かないし、リスカで救急車を呼んだ事もあったし、大麻で補導までされてしまって…」なんて話を打ち明けられましたが、もう、そういう時代にまでなってしまっているのだ。また、その娘さんを見た事もあるのですがニコニコしている可愛らしい女子中学生であり、外見から受ける印象と、それら内情のギャップも凄い。そんな闇を抱えているだなんて、まったくまったくまったく分からない。また、中学生ぐらいの年齢で、そこまで行ってしまっているのかと、これも内心では驚いた。まぁ、報道ではそんな話もチラホラと耳にする訳ですが、埼玉の片田舎でもそんな事になっているのだ。このテの話は、秘匿すべき事柄なので語られないだけで、案外、深部では進行してしまっている問題なのかも知れないなとも思う。

『トランスジェンダーになりたい少女たち』に拠れば、2009年から2017年にかけて、自殺を考えたことのある高校生の数が25％増化したという。（25頁）勿論、この話は米国という事になるのでしょう。更に、2009年以降、十代女子全体で自傷行為におよんだ数が62％増加しているといい、10歳から14歳の女子に関しては、2010年以降、189％の増加となり、６年前から３倍に急増しているのだという。原因は何だと考えられているのかも実はハッキリしていて「原因はＳＮＳ」だと考えられているという。

iPhoneが発売されたのは2007年の事であり、その約10年後の2018年にはティーンエイジャーの95％がスマホを持つ時代となり、その内の45％が「ほぼ一日中、スマホをいじっている」という報告もあるという。ティーンエイジャーが接しているＳＮＳとは、TumblrにInstagramにTikTokにYouTubeであるという。そこでは拒食症やリストカット、自傷行為、自殺など促すようなコンテンツが投稿されているという。何故、それらの投稿が多いのかというと、苦悩を味わった自身の体験を語ると何百や何千といったフォロワーを獲得できるというような奇妙な現象が関係しているという。スマホの登場以来、拒食症やリスカ、自殺の数はどれも劇的に増えている。（25〜26頁）

「スマホでＳＮＳ」と「拒食症にリスカ、自傷行為など」との関連を示す決定的な証拠は示されていませんでしたが、それを指摘している心理学者の名前として「ジーン・トゥエンギ」、「ジョナサン・ハイト」という名前が挙げられている。イギリス、アメリカ、カナダで起こっているのは性的違和を訴える少女たちが激増しているという現象であったが、この「性的違和を訴える思春期の少女が増えている」という現象も、拒食症やリスカと似たような性質を持っているのではないか――という訳です。

この話、思い当たらぬものではないかも知れない。かつて当ブログでは中村うさぎさんの文章を引用する形で「美醜のヒエラルキー」に触れた事がある。ＳＮＳの問題にしても、フォロワー数を増やす事を競い合う、競い合わせているという性質のものだ。これは「いいね」を集めるような競争をしている、させているという事ですが、これは重複だ。兎にも角にも共通しており、この依存症になる事を知っていて旧facebook社（現メタ社）が大騒動を起こした通りでもある。「あなたの性自認は絶対に男性（女性）で間違いないですか？」のように尋ねられたとしても、本気も本気で、その自認するところの性について答える事は、真剣に考えれば真剣に考えるほど、実は難しいというのが実相なのではないのか？　――そういう疑念も沸いてくる訳です。先の質問は生物学的な性別を尋ねているのではなく、あなたが自認するところの性別を尋ねられているのだ。13歳や14歳といった年齢で一体全体、自分の事なんてクリアに語れるものだろうか。分かるものだろうか。そういう問題にまでなってきてしまう。ひょっとして、そのように問われるが故に自分が何者か分からずに迷子になってしまっているという事ではないのか？

このトランスジェンダー問題のややこしいところとして「トランスジェンダー」と「同性愛者」とは異なるという問題が転がっている。確かにピンと来ない方も多いと思う。「私は生物学的には女の子なのだけれども、性自認するところでは男の子なの」と言われたが、そう告げられた方は、「ああ、この子は男の子なのか。では恋愛対象は生物学的な女の子になるという事だな」と連想しがちなのだ。しかし、ここに決定的な違いが浮かび上がる。彼女たちは自身の性自認に違和感を持っているのは同性愛者とは限らないというのだ。だから、その違和感を訴えた少女は別に男の子になって女の子と恋愛関係になりたいとか、女の子に性的欲情をするだとか、そうしたものが伴っていないのだ。だから、これまた、ややこしいことにアセクシャルであるとかノンバイナリーであるとか、そういった言葉が必要になってきてしまっているという事なのだ。

生物学的な性を語っていた時代、異性愛者をヘテロセクシャルと呼び、同性愛者をホモセクシャル、どちらも性の対象にできる人たちをバイセクシャルと呼んでいた。或る時期からＬＧＢＴという用語に切り替えて報じられるようになり、この１年ぐらいでは急激に「Ｑ」と「＋」が加わって「ＬＧＢＴＱ＋」という呼称が使用されるようになっているという訳です。

この「Ｑ」が示しているのは「クィア」であり、これは「一般的な性のカテゴリーに入らない人たちの総称」という事になる。また、「生物学的な性と性自認する性とが一致する者」を「シスジェンダー」と呼ぶ。トランスジェンダーとシスジェンダーとクィアを並べれば、すべての人を網羅できるようになっているのでしょう。（どれかしらに当て嵌まる事になるの意。）

トランスジェンダーという性自認の問題を抱える思春期少女の診察をしているセラピストのサーシャ・アヤドという人物が紹介されている。このサーシャは、著者のアビゲイル・シュライアーに次のように語ったという。

「わたしのところへ来る女性の患者はみな、こういったことを言います。『男になりたいと思っているかどうかは自分でもわからない。ただ女でいたくないと思っているのは確かなの』と」（31頁）

この言葉は色々と象徴になっている。サーシャに拠れば、トランスジェンダー少女の多くはマスターベーションの経験もないという。また、サーシャから離れるのだと思いますが、次の一文がある。

女性として生まれ、トランスジェンダーを自認する人のうち、陰茎形成術を実際に受けたり、受けたいと思っていたりする人はわずか一二パーセントだ。大半の人が男性の象徴と考えるであろうペニスを得ることは考えていない。（31頁）

拙ブログ：さすらいの女王の戦いに思う
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マルチナ・ナブラチロワといば、超有名な女子テニスプレーヤーであった。

二〇一九年二月、テニスの偉大な選手であり誇り高いレズビアンであるマルチナ・ナブラチロワはトランスジェンダーの選手に女子スポーツで競技させるのは生物学上の女子に不公平だとサンデー・タイムズ紙に書いた。するとトランス嫌悪（フォビア）だとレッテルを貼られ、スポンサーだったアスリート・アライから放りだされた。「トランスジェンダーのコミュニティは攻撃されています。わたしたちはトランスジェンダーを攻撃しつづけるどんな人々とも断固として戦います――たとえ相手がどんな人物で、どんな栄誉を称えられられていても」（『トランスジェンダーになりたい少女たち』222頁）

そう言われると、なんだか、そんなニュースの記憶が有るような、無いような。しかし、改めて事情を吟味すると、問題点というのも分かる気がする。先ず、ナブラチロワは自らがレズビアンである事を公言しており、その上でセクシャルマイノリティーを支援する団体（これを特別にアライと呼ぶらしい）に所属していたが、トランス女性（生物学的には男性）が女子スポーツに参加するようになって実際にトランス女性の活躍を目立ってしまっている現状を考慮して、そのように発言したものであったが、そのアライから追放されてしまったという事を意味している。

考えようによっては、批判をした者は「トランス嫌悪」だとラベリングされてしまい、そのまま、ホサレてしまうという或る種のキャンセルカルチャーらしきものになっている事に気付かされる。

余談ながら「コスビー・ショー」のジョー・コスビーも2014年に女性たちに薬を飲ませて強姦したという申し出が続き、翌2015年、テレビ局は再放送も中止にしたという。「コスビー・ショー」は、確か日本でも吹替版が放送されていたような記憶がある。そんな顛末になっていたのか…。念の為と思って、ウィキペディアを確認したところ、「薬を飲ませて強姦した」という部分についての記述は見つからず、真偽がどうだったのかは分からない。『トランスジェンダーになりたい少女たち』に拠れば「ビル・コスビーが薬を飲ませて強姦したという申し立てが続き、次第にそれを信じざるを得なくなった。」と説明しているのみである。なんだか、どこかで起こっている騒動とも似ているような気もしますけど…。

再び、先ほどのマルチナ・ナブラチロワの話に戻りますが、トランス女性（生物学的には男性）が女子スポーツ競技に参加するようになって、混乱が起こっている事については平均的な日本人であったとしても薄々は事情は知っているという感じでしょう。

しかし、その問題は通常、我々が感じ取れていない問題をも提起している。

トランスジェンダーが受け入れられている現代ではＬＧＢＴＱのすべてが恩恵を得ていると思うかも知れないが、多くのレズビアンは違うと言う。ここ十年で、レズビアンはレズビアン用のバーや出版物、女子大学、女性専用のトイレや更衣室が消えていくのを目にしてきた。そして、有罪の強姦犯がとつぜん女性だと�犲�認�瓩靴峠�子刑務所に収監されることや、男性として生まれた人物が被虐待女性のシェルターへの出入りを求めることも。（同220頁）

この辺りの事情になってくると、「ホントにそうなのか？」という反応になってしまう。更に、著者のアビゲイル・シュライアーは取材をしている中で、ティーン少女らの中に不可解なニュアンスがあった事を指摘している。それは、一部のトランスジェンダー少女たちの間では、「トランスジェンダー」というステータスは高いが、「レズビアン」のステータスは低いというニュアンスだという。ここも頭が混乱させられそうですが、

レズビアンはステータスが低いアイデンティティとして嘲笑されているのだ――じつは男になるはずだったことを認められない男っぽい女だと。

同級生の少女の多くが�爛肇薀鵐好献Д鵐澄辞瓩世伴�認しているイギリスの女子高校では、�爛譽坤咼▲鶚瓩榔�い言葉だと十六歳のライリーが教えてくれた。「とても表面上のことだけど、あまり格好よくないの」とライリーは説明した。「ポルノみたいで」」（同221〜222頁）

何やら米英のティーン少女らの間で、どうも理解しがたい価値観の転倒が起こっているらしい事に気付くでしょう。ステータスが高いだとか、ステータスが低いだとか何を言ってるんだ的な…。しかし、実は、この辺りの問題が「女性の名誉を損なっている」という話になっていく。つまり、トランスジェンダー大流行の中で、ジャンヌ・ダルクという存在は「女性でありながら」という部分で特に大きな意味を持っていた。しかし、トランスジェンダー思想が拡大してゆく中で、「生物学的な性別は関係ない」という考え方が浸透し、その付加価値を失っているのだという。故に、「実は男になるはずだったことを認められない男っぽい女」のような奇妙な認識になってしまっているらしい。

また、次のような一文もある。

妊婦（プレグナント・ウイメン）は次第に�倏タ叡罎凌有瓠淵廛譽哀淵鵐函Ε圈璽廛襦砲班集修気譴襪茲Δ砲覆蝓↓瑯喚瓩箸いΩ斥佞廊狒以�の穴�瓩箸いΥ�まわしい言葉で置き換えられた。（同223頁）

このテの呼称を変更する等は、近年では相次いで発生している訳ですが、生物学的な性別にはこだわらないという事は、こういう部分へも波及してしまっているらしい。

主要メディアは幼児のようによだれをたらし、目を見開いて興奮してそのあいまいな言葉を使っている。二〇一九年十月十九日、ＮＰＲ（非営利の公共放送製作会社）はこうツイートした。「月経がある人々はタンポンとナプキンの売上税だけで、年間およそ一億五千万ドルを支払っている」トランスジェンダーを包括する言葉では�狃�性�瓩廊犒邨个里△訖有瓩砲覆襦�若い女の子たちがどうしてそんなグループに入りたがるだろうか？

しかしながら、このようなトランスジェンダーを包括する言葉における女性らしさの低下は次第に一般的になっている。女性は�猴椣藜圻瓩△襪い廊狃亰譴里△訖有瓩覆匹班集修気譴襦�こうした言葉を使う人々はこのほうが繊細な言葉で生物学的な女性を表現できて、トランス女性が疎外感を味わわないと話す。だが、ほんとうの少女はどう感じるだろうか？（同224頁）

なるほど、そういう事になっているのか。確かに「背伸びをする人たち」というのは、不自然なまでに背伸びをする習性を持っているよなって思う。そのテの人たちは誰かを過剰に褒めると別のどこかに歪みが起こるという事が理解できず、単純二元化で思考してしまう人たちでもあるので、過度な配慮をしている内に、別の何者かのプライドを傷つけたりする。「トランス・フォビアだ」となじられる事を恐れるばかりに、その発言者本人的には気を利かせたつもりで、そちらへ配慮しようとして、生物学的な女性、つまり、当たり前な�狃�性�瓩箸い�性別に対して「月経のある人」とか「出血のある人」のような奇妙な言い回しをして、気を遣っているような気になっているという事なのでしょう。（おそらくは自己満足する為の方便であり、これはホワイトウォッシュやルッキズムなどにも共通しているかもね。そこまでして、理解のある人ぶりたい心理ってのは何だろうね。）

ここまで来ると、なんとなくイギリスの少女たちの間で「トランスジェンダーのステータスは高いが、レズビアンのステータスは低い」という思考も、ぼんやりと浮かび上がってくるかも知れない。性別違和を訴え出ている少女たちの多くは同性愛者ではないし、また、外科的手法によって陰茎形成術を欲している者、平たくいえば、ペニスを欲している者は僅かしかいない。性別違和を訴えて性別移行をしても、ペニスを欲しているのは僅か12％、実際に陰茎形成まで行くのは僅か３％だという。つまり、トランスジェンダーになりたい少女たちとは男性になりたいという訳でもないらしい。となると、何らかの性別に分類される事に対して、抵抗しているという事ではないのか？　つまり、「此処ではない何処かへ」的な。
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米国のリベラルな州を中心にジェンダー思想教育が取り入れられており、それは幼少期から始まっている。そして思春期の少女がトランスジェンダーを訴えるケースが、数年前と比較して440倍にも膨れ上がっているという現象が確認されている。学校では「ジェンダー肯定ケア」というガイドラインに沿って指導しているが、これ中々の曲者で、児童・生徒に問題があれば学校は保護者に連絡する義務を負っている。ところが、このジェンダー問題については「その児童・生徒の個人情報である」という解釈をしているのでオプトアウト（保護者への連絡）は行なわれない。

このオプトアウトの問題は日本でもしばしばイジメ調査などのシーンで教育委員会が「個人情報保護の観点から資料を公表できない」みたいな詭弁が罷り通っていますが基本的な構造は似ている。何故か、そうした制度は一般国民の側からすると逆手に取られてしまったりするのだ。また、高校生や大学生になってくると今度は「インフォームド・コンセント」が武器となって、またまた、保護者は医療機関やセラピストたちから疎外される。そういう制度でも適正にセラピーや医療が行なわれているのだろうと思いたいところですが、先述したように実はガイドラインは「ジェンダー肯定ケア」であり、児童や生徒が自己申告した性別違和を否定してはいけないという具合になっているのだ。なので、性別違和を訴えると、「その通り。君は性別違和だ」という具合に兎に角、肯定的に請け負い、保護者などと隔絶した状況のまま、性別違和を訴え出た少女らの自己申告のままにトランスジェンダーだと認定し、性別移行へと進行させてしまっている。

その先にある性別移行には段階があって先ずはホルモン療法をし、やがては外科的手法によって乳房切除や子宮摘出へと進んでいく。

少し引用します。

YouTubeには�爛謄好肇好謄蹈鵑梁任訴��瓩砲弔い討瞭芦茲�六千本以上あり、たやすく証言が見つかる。トランスジェンダーを自認する少女にとって、Ｔ（テストステロン）は麻薬のようなものなのだ。Ｔの投与を開始してまもなく、幸福感に襲われて友人すべてに――いや、世界中に――どんなにすばらしいものか話したくて仕方なくなる。

二〇〇七年、アメリカのジェンダークリニックは一カ所だった。現在はゆうに五十カ所を超えている。全米家族計画連盟、カイザー、メイヨーもすべてテストステロンを投与している。その多くが最初の診察で�爛ぅ鵐侫�ームド・コンセント�瓩亡陲鼎い董⊂匆霈�もセラピーも必要ない。医療で同意できる年齢は州によって違う。（『トランスジェンダーになりたい少女たち』241頁）

性別違和に不安を感じている少女らにとって、テストステロンは速効性があるらしい事が分かる。また、微妙なニュアンスながら、憑りつかれている不安から解放されるという意味では幸福感が起こり、その気持ちをＳＮＳで世界中に知らせたいという気持ちになるものだと考えられている。また、大人たちが把握している事情とは少し異なり、トランスジェンダーになりたい少女たちはＳＮＳに向かって何かを考え込んで後に突如として「私の自認する性別は女ではない」と言い出すというパターンがあるが、実はインターネット上には、「幼少時から自分の性別に違和感を持っていました。両親には言い出せませんでした」のように嘘をつけばテストステロンを投与してもらえるという具合の言説が流布している――というから、かなり気軽にそちらの道へ行ってしまっている可能性があるという。

既に日本でも「それでいいじゃないの？　何の問題があるの？」という具合の反論をする人も一定の確率で居そうな気がする。しかし、本当にリスクについて、このザルなルールで理解できているのかという問題がある。カルト宗教の信者は自分が間違っている訳はないとして、次から次へとイニシエーションを受け容れてゆき、邪魔者をサタン扱いするが、『トランスジェンダーになりたい少女たち』の著者は、謂わばエクソシスト（悪魔祓い）に挑んでいる。

テストステロン補充療法をした場合、幸福感を得るのに時間はかからない。麻薬のように即座に効く。数ヵ月もすれば（月経があれば月経は止まり）、身体や顔に毛が生えてくる。下腹部からその下まで体毛がつながって道ができる。腿と腰と尻から肉が落ちる。少女の声は低くなりかすれ始めて、ニキビができる。鼻は丸く、顎は四角く、筋肉は逞しくなる。ホルモン療法を受ける少女たちは鏡で変わってゆく自分の姿を観察しているが、この頃になると小柄な男のように見え始めている。顎髭が生えて、大人の男のようになり、性衝動も強くなる。クリトリスも肥大化し、クリトリスが成長する場合にはベビーキャロットくらいの大きさにまで育つのだという。

まぁ、上記は身体が男性化している様子を述べたもの（同242〜243頁）の要約です。当たり前なのですが、男性ホルモンを投与しているのだから男性化が起こる訳です。そして、次には生物学的な女性の機能を喪失していくという過程がある。テストステロンの大きな副作用の一つは膣萎縮であり、これは膣が萎縮することを意味してる。膣に乾燥、裂け、縮みが起こり、仮に膣で性交すると痛みを伴うようになってくるという。（また、この性別移行の時期の少女は「意識が過剰になる」という。説明はありませんが、テストステロンとは本来は攻撃性と関係していると言われている。）

男性ホルモン投与後まもなく、永久的な変化が起こる。生物学上の少女が決断を後悔してテストステロン投与を中止しても、大きくなった身体や顔に生えた毛は残り、肥大化したクリトリスと低くなった声、おそらく男っぽくなった顔の造作さえ変わらないだろう。性別移行の効果を完全に残すためには大量のテストステロン投与を継続する必要があるが、そのいっぽうでテストステロンを除去しても思春期はもとには戻らない。

また、テストステロンは苦痛や不都合もともなう。膣萎縮が問題なのはこれまで述べてきた。そのほかに筋肉痛、子宮内膜症による痛みをともなう痙攣、発汗の増加、むら気、攻撃性などがある。長期間の影響としては糖尿病、脳卒中、血栓、がん、〜略〜心臓疾患の危険性が高くなる。全般的に死亡リスクが高くなるのだ。（同245頁）

心臓疾患は生物学的な男性と生物学的な女性を比較すると、実は男性の方が高い。しかし、テストステロンを投与してしまうと男性と同等程度に心臓疾患リスクが引き上げられることを意味している。また、膣萎縮は膣萎縮を経験したことによって妊娠機能を失ってしまうリスクが高いといい、且つ、五年以上もテストステロン投与をした場合は「がん」などのリスクが高くなるので、子宮摘出手術を医師の側から勧められる事があるという。妊娠するという機能については、かなり膣萎縮は大きく関係しているという。

なかなかのリスクがあるようですが、医療的性別移行をした後に、自殺願望が減少したという信憑性の高い調査結果は存在していないという。また、性別違和から一時的には解放されるものの、逆に性別違和が増してしまうケースもあるという。身体的な変化が起こっても、まだ、少女らには乳房も膨らみは残ってしまっているので通称「トップ手術」と呼ばれる乳房切除へと向かう。この先は、外科的医療による性別移行に入って行く。

ここで「乳房とは何か？」に直面する事になる。切除しても、再び乳房を再生できるというのは誤解であると『トランスジェンダーになりたい少女たち』の著者は指摘している。

乳房は脂肪組織の塊ではなく、一連の繊維腺構造がおおよその四分円に分れている。四分円のなかには多くの小葉があり、管でつながっている。乳房全体の構造は貯水タンクのようで、乳汁が管をとおって乳頭から出る。乳頭は性感帯の役割も果たし、脳を興奮させる。

生物学的な能力――この場合は性感帯と乳汁の分泌――のある健康な器官とよく似た肉の塊の違いはヒポクラテスの誓いに縛られている医師にはとても重要だった。（同248〜249頁）

※「ヒポクラテスの誓いに縛られているパトリック・ラパート博士」と、それに縛られることなく、美容整形の延長線上で性別移行を取り扱っている別の医学博士とを対比している表現になっている。ラパート博士によれば、仮に美容整形であっても基本的な人間の身体機能を台無しにして行なうのは美容整形であっても倫理的に問題であるという。「青い瞳にしたいからといって、視力を失わせた上で青い瞳に変える美容整形が認められる訳ではないの意。例え美容整形であったとしても元々ある身体機能を損なうような手術は倫理的に認められていないの意」

さて、乳房を切除して胸を平らにしたが、まだ、性別移行は完成していない。下半身が男性になっていないという訳です。通常「ボトム手術」とは陰核陰茎形成術と呼ぶらしい。

クリトリスを小さなペニスに似たぶらさがるものに形成する。硬くなったり挿入したりすることは考えられていないものの、クリトリスに尿道を通せるので、小さなペニスのように排尿できる（すべてがうまくいったとして想定して）。

〜略〜陰茎幹と尿管をつくるために、外科医は身体から皮弁をとらねばならず、たいていは上腕からとる（皮膚、脂肪、神経、血管をはがす）。それから移植先で感覚を戻すために神経をつながなければならない。

世界一の外科医が手術をすれば、見事な結果になると聞く。だが、大半の外科医は世界一とかけ離れている。とても頻繁に、まさにきょうも、この手術で合併症が起こっているのだ。

ペニスのような皮弁をうまく移植するのは決して簡単ではない。排尿の機能、ましてや陰茎が硬くなる機能をつくるのはとても難題だ。挿入できるほど硬くするのは、さらに難しい。勃起に似た効果をつくりだすために移植した陰茎にインプラントを挿入するために次の手術が必要になる。

新しい付属物に血が流れるようにすべての血管と大動脈をつなぐだけでも、時計職人の親方が真っ青になるほどの顕微鏡手術の技が必要になる。〜略〜新しい陰茎を血液を届ける橈骨動脈は顕微鏡下で頭髪の四分の一の太さの縫合糸を使って股間の動脈につなぐ。そして股間に直接血液を流すために、橈骨動脈に沿っている血管も同様につながなければならない。

血管の内側がわずかに傷ついても血小板は粘着するので、血栓ができるのは珍しくない。血栓ができると移植がうまくいかず、開いた傷口が炎症のせいで縫合できない。新しく形成された尿道にもリスクがある。尿が内側で漏れ、それが外の世界へと出るのだ。内部で尿が漏れると瘢痕（はんこん）組織ができて狭窄となり、結果として尿が流れずにしぶきとなって広がる。（同254〜256頁）

まぁ、この陰核陰茎形成術を希望している人はトランス男性の中でも僅か13％で、受けたという人になると僅か３％であるというので、ここまで行ってしまう性別移行は稀という事でしょう。
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アビゲイル・シュライアー著／岩波明〔監訳〕『トランスジェンダーになりたい少女たち』（産経新聞出版）から、その監訳に当たった岩波明氏の「解説」と題した文章から引用します。

最近、一九九〇年代に米国を中心に起きた「事件」として、「抑圧された記憶」の問題があげられる。〜略〜

この「偽の記憶」あるいは「抑圧された記憶」に関する問題は、トランスジェンダーをめぐる問題と似た構造を持っている。これは、専門家である心理療法家（医師やカウンセラー）が、意図せずに、患者のトラウマを「捏造」してしまったケースであり、後に大きな社会問題となった。というのは、心理療法家によって捏造された「偽りの記憶」によって患者の家族などが虐待の加害者として告発され、刑事事件となることが米国で続発した。その結果、数多くの無実の人が有罪判決を受け、服役することになった。

カウンセラーは、「心の悩み」を持った思春期の患者に尋ねる。「あなたは、子供の頃、虐待された経験があるのではないですか？」そうすると、何割かの患者は、それまで「忘れていた」虐待の体験を「思い出す」のである。その加害者は父親のこともあれば、家族の親しい友人であったりする。カウンセリングを続ける中で、虐待の記憶は次第に明確なものになり、患者は自分の精神的な不調が、そのような児童期の「トラウマ」が原因であることを自覚するようになる。しかしこのような虐待の記憶は、ほとんどが捏造されたものであることが後に証明された（『抑圧された記憶の神話』E．F．ロフタス、Ｋ．ケッチャム　誠信書房）。

これが〈全て〉でしょうねぇ。もう、なんというか、呆れたというか、絶望的な気分になった。これが分っていたのであれば、日々、我々を振り回している〈クソどうしようもない問題〉、その半分以上は、さほど労力も時間も気遣いも必要性なかったという事なのでしょう。今にして思えば、日本の場合ではＳＴＡＰ細胞騒動のときなどは、これが理解できていれば、あんなに大揉めもしなかったかも知れない。

この「解説」は『発達障害』（文春文庫）などの著書もある医学博士でもある岩波明氏が記した文章だ。幸いにも米英と事情が異なって、この日本ではトランスジェンダー少女の大流行は免れる事が出来たが――という話になってくる。

とはいえ、この問題は小さくない。元々は自閉症と呼んでいた何かがあり、それが後にアスペルガー症候群やアスペルガー障害などという名称になって広まったが、その後にアスペルガー症候群の提唱者であったハンス・アスペルガーなる人物がナチスドイツの協力者であった可能性がある等と政治的な問題となり、現在は「アスペルガー」という文言の使用は控えられるようになり、現在では「ＡＳＤ」や「自閉スペクトラム症」に変更になっているという。

また、多くの人が耳にした事があるであろう「性同一性障害」という名称も現在では「性別違和」という広いニュアンスに拡大されており、まさしくトランスジェンダー大流行という問題を惹き起こしたものとの関係を、かなり的確に指摘してみせたのが『トランスジェンダーになりたい少女たち』であった。同著は2020年に米国で大ベストセラーになったが、「活動家」と呼ばれる人たちからの激しい攻撃が頻繁に起こり、通販大手のＡｍａｚｏｎは一時的に広告を停止した。また、同著を置いていた図書館や書店にも抗議の電話が殺到したという。（日本でも４年遅れて出版された訳ですが、全く同じ問題が発生している。）

また、【医原性】（いげんせい）という言葉についても紹介されている。医原性とは「治療者によって引き起こされる」の意味であるという。同著が取り扱ったトランスジェンダーの問題については「医原性の側面も大きい」という表現を使用している。

何だか腰砕けになってしまいましたが、そういう事だ。しかし、これは小さな事ではないと思う。現に、インターネット空間もテレビの情報番組も、こうした実情を知らぬままに大騒ぎをし、誰かを吊るし上げている。政治家や知識人と呼ばれる人たちも実は同じレベルで、世論と一緒になって、もしくは世論を扇動するような形で近20年以上は延々と「ワッショイ、ワッショイ」とＳＮＳ民と一緒になって魔女狩りをやってきた人たちである事を忘れはいけない。口を開けば直ぐに「先進国では常識である」とか「そんな事では世界に取り残されてしまう」とか「あなたたちにはアプデが必要だ。（私には必要ないけどね）」とか、「ＯＥＣＤ加盟国中の最下位である」等と、碌に中身を論じることなく、ただただ欧米を真似る事こそが唯一の正義であるかのような態度の人たちの多さというのも気になる。

こうなってくると、ホントに正気を維持していくだけも、或いは情緒の平静を失わないようにするだけでも大変な時代になってきてしまっているよなって思う。読み終えてから半日ぐらいは脱力感を味わった。
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Ｅ．Ｆ．ロスタス、Ｋ．ケッチャム著／仲真紀子訳『抑圧された記憶の神話』（誠信書房）には、実際に医原性の問題で発生していた「偽の記憶」についての記述がある。

著者でもあるＥ．ロスタスとは「エリザベス・ロスタス」であり、実は元々からして「抑圧された記憶」という分野の研究の第一人者であったという。実際にレイプに遭遇した経験のある女性が心的外傷（トラウマ）を負い、それを誰にも打ち明ける事もなく苦しんできた事、そこには〈抑圧〉という効果が介在している事は確かで、その記憶について研究していた心理学者であるという。

しかし、或る時期から研究室に様々な手紙が届くようになったのだという。「今、私の家族は崩壊の危機に瀕しています」、「私は深刻な問題を抱えています」、「先生のご研究について詳しく伺いたいのです」のような穏やかな書き出しであるが、その書き出しに続いて、おぞましい内容が続いているというものだったという。

「八か月の闘病の末、夫がガンで亡くなったのですが……」とカリフォルニアに住む女性はつづる。「そのちょうど一週間前、私の末の娘（三十八歳です）から告発状をつきつけられました。夫が娘に暴行していたのに私は守ってやらなかった、と言うのです。打ちのめされています。そのようなことは決して事実ではありません」。フロリダに住む男性の手紙はこうだ。「私は七十五歳の元産科医です。四十九歳の娘から六億円の賠償を求められています。幼児期から十代にかけて、私が娘に性的虐待したというのです」。

メリーランドの女性は次のように書いてきた。「私どもは四年前に突然、どう考えてよいか分からないような理由で二十八歳の娘から告発されてしまいました。私たちが彼女に近親姦と性的虐待をしたというのです。娘は三か月の赤ん坊の頃、夫からレイプされ、幼児期には私から繰り返しレイプされたと言います。また二人の兄のうち一人は、彼女をずっとレイプし続けたと言います。娘の心が娘のものではなくなってしまったような、まったく悪夢のような状況です」。（『抑圧された記憶の神話』10頁）

そのような手紙、或いは電話でも似たような相談が寄せられるようになり、「捏造された記憶」の問題が解明されて行く事になったという。既に答えを言ってしまっているのかも知れませんが、どうも劣悪なレベルの医療関係者やカウンセラーが施したカウンセリングが、彼ら彼女らに性的虐待を受けたという過去の記憶を捏造するように誘導していたらしいという事実が明かされてゆく。

ある少女は４歳の頃から恐ろしい化け物の夢を見るようになり、その化け物の正体は祖母だと言い出した。事情は複雑で、その４歳少女の母親は「ペニスを持つ母親に襲われ、兄にレイプされ、父に十字架で暴行される」等の夢をみており、いつの間にか現実と夢の区別がつかなくなった。その母親の４歳の娘からすると祖父と祖母にあたる老夫婦が、娘と孫娘の記憶によって起訴され、裁判になった。その裁判では４歳の少女は次のように証言した。祖父母の性器を触るように強要され、また祖母については「私の性器に手をまるごと入れたり、頭をさえ入れた」、と。祖父母は部屋ほどもある機械のボタンを操作し、機械についている「手」によって痛い目に遭わされた――と。その子の母親の方は祖父母から性器と肛門に指を入れられたこと、地下の大きな檻に閉じ込められ、緑色の汚らしい液体をのまされたこと等を証言した。これら母娘による告発を裏付ける証拠は皆無であったが、1993年２月、共に61歳であった老夫婦には性的虐待、暴行、殴打などの複数の罪で有罪の判決が下った――。この話などは即座に誇大妄想であろうと一蹴できそうにも思えるが、実際に有罪になってしまったらしい。

４歳女児の証言は祖母が性器に手を丸ごと入れたとか、頭ごと入れたとか、色々と怪しむべき点があるのに米国の陪審制だと、そういう事を考えないのだろうか？　拷問マシーンとか地下室に虐待部屋でもなければ成立しないような証言にも思えますが、〈証拠はないのに有罪になった〉というから、おそろしい。　

内容的に絶望的に酷い。カウンセラーらによる誘導であった。カウンセラーらは【フラッシュバック】や【サバイバー】、【ボディメモリー】（身体記憶）、【インナーチャイルド】に【否認モード】といった言葉を使用して「あなたには抑圧された記憶があるのではないですか？　例えば両親から性的虐待を受けていたとか？」といった具合に誘導し、次から次へと近親相姦や性的虐待に遭ったという記憶を捏造していたものだという。（しかも実際には薬物投与も行っており、そんな状態の人たちを相手に、そうした誘導をしていたという。）

今にして思えば…と思うかも知れませんが、まぁ、言葉を呑み込むべきか。

しかも、これは真面目にカウンセリングをしていたと言えるのかというレベルだ。

「ところで◇◇さん、あなたはお父さんから性的虐待を受けていたんじゃないですか？」

のように切り出すのだという。尋ねられた側も何か間違えられているのではないかと戸惑っていると、カウンセラーは「思い出せるかどうかは関係ないのだ」等と言い出して、辛かった体験を切り離す為に「あなたは解離してたのだろう」等と語り出し、「真実の扉を開けるのです」とか「抑圧されている記憶を捜し出すのです」、挙げ句には「私は性的虐待を受けた女性を治療してきたが、あなたの場合、九五パーセントの確率で性的虐待の体験をしている、家に帰って何か思いだせないか様子を見るように」とやってしまっていたという。こんなの一発で「カルトじゃねーか！」と反応しても良さそうなのに、集団ヒステリーとして拡大してしまっていたというのが実相だったらしい。

アメリカの家庭では近親相姦や性的虐待が起こっているのか？　こうした性的被害に遭ったという告発は父親母親、そして兄弟、伯父伯母、隣人、牧師、両親の友人などへも波及していく傾向を持っているという。

「抑圧された記憶」を巡っては論争が起こったという。

一つ目の論陣はこうだ。彼女たちが思い出した抑圧された記憶は真実であるとし、子どもを性的野獣から守り、苦しい癒しの道を生きるサバイバーを助けているのだ、と。そして、その論陣は賛同しない人たちについては、反女性主義者、反児童主義者、反進歩主義者、汚れた者、幼児性愛者、悪魔信奉者だ等と展開していくので打つ手がないという。（このテの話をする人を目撃したら、この『抑圧された記憶の神話』の話を思い出すべし。また、この辺りの強引な排斥性の構造が『トランスジェンダーになりたい少女たち』とも酷似している。）

二つ目の論陣は懐疑主義者となる。しかし、この問題は先鋭化しており、毒舌家ともなると破壊的な手榴弾を投げる事も怖れない、そういった表現が実際に綴られて、次の箇所になる。

記憶回復療法専門のカウンセラーは妖精や怪獣が住むネバーランドで操業している。方向を誤った、訓練のない、熱心すぎる臨床家は現代の研究の光がほとんど届かなかったところで「お粗末な精神分析」に勤しみ、行き過ぎた単純化と過拡張、「相互参照」（訳注：近親姦的に、互いの意見を引用し合い、自説を固める）の罪を犯し、被暗示的なクライエントの心に偽りの記憶を植えつけて「カウンセリングの終身刑」に処し、家族を引き裂いているのだ、と。

このような論争はもはや学術的な議論、心が記憶を葬り、何年も後に意識へと持ち返すことができるかどうかという科学的な議論の域を越えている。抑圧という単純な概念から発生した問題は、今や、認知心理学における熱い論争の的の一つになってしまった。ちなみに他にどのような問題があるかと言えば、カウンセリングや法廷における催眠の役割、暗示の効果、社会的影響理論、今はやりの病名である外傷後ストレス障害（PTSD）と多重人格（MPD、米国精神医学会『DSM-�舷巴任氾�計マニュアル』によれば解離性同一性障害、DID）、インナーチャイルドと機能不全家族、ポルノ、悪魔崇拝、極端な流言、強迫的な道徳推進、宇宙人による誘拐、メディアが作り出す熱狂的騒ぎ、そして多数派による政治的正論（訳注：アメリカのタバコ追放運動など。正論だが少数派を認めない）などがホットな話題となっている。

弾が飛びかう。私は身を屈めて弾を避ける。記憶の可変性に関する研究は、私を懐疑主義者の列に並ばせる。（同50頁）

この著者でもあるＥ．タフロスも凄まじい批判にさらされたという。或るカウンセラーは「くれぐれもお気をつけて」と暗に強迫めいた手紙を送ってきたという。匿名で「悪魔崇拝者に協力していると告発する」という手紙が届いた事もあるという。電話の受話器を取ると「もしもし、子どもを憎む記憶博士のお宅ですか？」という静かな女性の声が聞こえたり、ラジオ番組に出演していると「ロスタフ博士について意見があるんですが。彼女は右翼キリスト教集団と関係があるんじゃないでしょうか。男性本位の父権族長制度を促進している集団と……」とアナウンスされる状況も経験したという。

そして保育園を経営していた夫婦が三人の幼児を性的虐待したという容疑で訴えられた。著者のロスタフ博士は、このケースでは男性の為に証言していた。というのは、子どもたちは当初は虐待を否認していたが何度もカウンセリングを受け、尋問官による集中的な事情聴取が行なわれた後、供述が変化していた事が明らかになった為であった。実際に一つの容疑は無罪判決となり、他の二つの容疑についても裁判官が却下した。ところが、その保育園を経営していた夫婦の夫の方が、或る晩、家の前の砂利道で何者かに大口径のハンドガンで胸を三発撃たれて惨殺されたという。

どうも本当に身の危険を感じながら、この論争に決着をつけたらしい。

なんだか、色々と分かってしまったところもありますかねぇ。さきほど引用した毒舌家の懐疑主義者のような気分になるのも分かる。いや、正直に言えば、私は毒舌家の言い分を物凄く分かってしまう方の人間であろうと思う。こういう話というのは怒りの感情も込み上げてしまうが、過去のノンフィクションの話なので、具体的に誰かを責めて怒りの感情を昇華させる訳にもいかないのが現実なので、結局、問題を理解できても、できたらできたで脱力感や無力感が大きいのだ。ヒトというのは、なんだかんだいって情動の生き物、感情の生き物だという部分があって、その部分は小さくない。腹立たしさを感じないなんていえば、それは大嘘になってしまう。

飽くまでカウンセラーらは意図せずして、そうした性的被害者へと誘導するようなカウンセリングを行なっていたという表現が使用されている。しかし、先に引用した文言などからすると、ホントに意図せずしてなのかどうかまで怪しんでしまうものであろうと思う。そう推測する材料としては、強烈なバッシング、身の危険を感じるレベルの事態となり、何やら殺人事件まで起こってしまっていた事が分かる。我々の意見に反対するなど許せないという強烈な何かがある。その何かとは「熱狂」や「るつぼ」を伴なった何かであり、それを「集団ヒステリー」と説明されている。
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『トランスジェンダーになりたい少女たち』の中には、捉えにくいトランスジェンダー少女たちの価値観について記されている箇所が何か所かあった。トランスジェンダー少女たちは、レズビアンはステータスが低いが、トランスジェンダーはステータスが高いのだと著者のアビゲイル・シュライダーに明かしたという箇所があった。その上で「レズビアン」という響きが「ポルノのようだから」なのだという。著者のアビゲイル・シュライアーは、トランスジェンダー少女たちは陰核陰茎形成術までは望んでいない事が大半である事から具体的に男性そのものになりたがっている訳ではない解釈し、おそらく、性自認として自分が女であると認める事への拒絶であろうと推理している。つまり、「私は少なくとも性自認上の女ではない」という考え方をしている。だから「レズビアンはスタータスが低いの。だってポルノみたいでしょ」という訳だ。

つまり、生物学的な女性である事を否認すべく、トランスジェンダー少女たちはブラストバインダーという危惧を使用して膨らんできてしまったバストの膨らみを平らにし、場合によっては「私はトランスジェンダーなの」と言い出し、ホルモン療法へ進行する。その先もあるが、ここまでの一連の流れから読める事は「女である事」に対しての否認であったり、否定である。性別二元論であれば、そのような行動をとるトランスジェンダー少女は男性になりたいのであろうと考えてしまうが、そうではない。

また、アビゲイル・シュライアーが明かしている逸話で、「女性という性別だって悪くないわよ。ほら、レディー・ガガだって、あんなに活躍しているじゃない」とトランスジェンダー少女に声を掛けているシーンがある。するとトランスジェンダー少女は「（トランスジェンダー少女らのサークルでは）レディー・ガガは蔑みの対象なの」という具合に明かしたという一節がある。

結局のところ、トランスジェンダー少女は、女でもなく男でもない何かになりたいのだ。これは驚くべき展開であろうと思う。日本でも「サバサバ系女子」などが現に流行しているが、おそらく、それと根を一緒にしているようにも思えてくるのだ。推察するに、どうも「男の子でもなく、女の子でもない自分たち」になろうとしているように思えてくるのだ。それが意味しているものは、中性もしくは無性という事になる。ジェンダー論の中に登場したアセクシャルやノンバイナリーといった用語は、昔からあった「彼には中性的な魅力があるね」という場合の「中性」、昔からあった訳ではないが敢えて日本語でいえば「無性」に当て嵌める事が出来てしまうと思う。

テストステロン補充療法でトランスジェンダー少女たちの身体が変わっていく様子の描写がある。セクシャルな意味での最大のシンボルとは、生物学的女性であればバストの膨らみであり、生物学的男性であればペニスが在るという事でしょう。しかし、トランスジェンダー少女たちのこだわりは意外なところへ向かう。先述したようにトランスジェンダー少女はペニスは欲していない。丸みを帯びてしまったヒップから太股のラインを少年のようなすっきりとしたラインにしたがり、テストステロンを注入していると実際に、そのヒップラインと余計な脂肪がついていない細い太股を手に入れる事ができるのだという。

これは、つまり、性自認的にも性別学的にも「中性」もしくは「無性」になって、或る種の超越的なポジションを構築したい、そして既存のトランスジェンダーと呼ばれる人たちの仲間に自分も加わりたいという事ではないのだろうか？　人々を煩わしさに巻き込んでいる性差の問題に巻き込まれないで済むという最強のポジションだとも言える。

三浦展（みうら・あつし）さんの著書であったと思いますが、或る時期まで若者論を展開させると直ぐに名前の挙げられる人物であった。その三浦展さんは大学生らとの対話を通じてあれこれと論じていた訳ですが、当時の若い男子大学生らに好きな女性有名人は誰かと尋ねた際、「蒼井優」という名前が挙がったという。当時は「草食男子」のようなワードが流行していた事も背景にあった時代で、現在の女優・蒼井優さんは性的魅力の高い女優として認識されていますが、当時の蒼井優さんはあまり性的魅力の無い女優さんであるという認識であった。三浦展さんが「蒼井優さんには性的魅力は感じ取れないのでは？」と著書の中で掲げていたのですが、実は私も、それについては同意見だった。この辺りに明確な世代間ギャップが現れている。つまり、「草食男子」のようなワードが囁かれるようになる以前では、好きな異性有名人は尋ねられた際、かなり性的要素が強く、色気のある女性や男性から見て可愛らしいという意味で、コケティッシュな面のある女性有名人が人気上位であったが、或る時期からトレンドが変わっており、蒼井優さんのような、あまり性的な要素を強く訴えないようなタイプの人が人気になってきているのだ。

蒼井優さんは必ずしも「サバサバ系」という分類には該当しないように思う。しかし、キャラクターとして「サバサバ系」が持て囃されるようになったのは同じ時期であったような気がする。例えば「彼女はサバサバとした性格なので話し易く、好感が持てるじゃないか」的な。基本的には女性が女性に対して「サバサバ系」等と言い出したのだと思いますが、結局、これも中性・無性のトレンドであった事に気付かされる。

理想の上司に何年も連続して第一位に選出されているのは女優の天海祐希さんだ。おお、年齢は調べない方がいいかも知れない。調べてしまったら調べてしまったで、或る意味、凄い事だと驚くかも知れない。中性的なのか無性なのか、或いは、かなりサバサバ系だ。しかも、突出したレベルだ。もう一人、実は私がいの一番に思い浮かべたのは「長澤まさみ」さんであった。長澤まさみさんはキュートだし、コケティッシュだろって語る事も出来てしまうのですが、シルエットなどはかなりボーイッシュだし、演じる役も、おそらくは御本人もサバサバ系だ。むしろ、長澤まさみさんの場合は、あの顔面、あの姿形である事を前提にすれば、逆に、あれだけ色気を感じさせないで見えるという事は、非常に珍しいパターンのようにも見える。そう言われてみると、長澤まさみさんはベラボウな美人ですがヒップラインから太股までもが細く美しいラインを持っている。なんだか、もう反則級みたいな容姿の持ち主だよなと思う。

そして、今、日本では「ano」ちゃんが人気を博している訳でしょう？　ここまで論じた話は、完成形に近づいてきてしまっている。中性的というか無性というか、あのヘアスタイルに、あのシルエット、あの細長い手にあの細長い脚という事になる。そして分かり易い事に自称は「ボク」なのだ。年齢も性別も、あんまり彼女には関係が無さそうな気がする。

キューバ人のカメラマン、あの「世界一有名なポートレート」とされているチェ・ゲバラの写真を撮影したカメラマンを題材としたドキュメンタリー番組の中で、その老カメラマンが語ったワンシーンを記憶している。記憶任せに再現すると以下のような言葉であった。

「女性を被写体として撮影した写真で、世界で勝負しようと思ったら、キューバの女性ではダメなんだ。キューバの女性は素晴らしいよ。胸は大きくてお尻も大きい。肉感的、官能的なんだ。でも、世界で勝負するにはダメだ。パリじゃなくてもキビシイだろうが、世界の頂点パリで勝負にするとなると絶対に無理だ。モードじゃないとダメなんだよ。大きな胸や大きなお尻じゃダメなんだよ」


トランスジェンダー少女の考察は意外なところへ向かう。或る程度は『トランスジェンダーになりたい少女たち』の考察を参考にしますが、思春期の少女たちは複雑なスクールカーストがある中で、性自認の重要性を教え込まれるジェンダー思想を注入されている。実際には、大人だって自分が何者であるかなんて分からないのに、そういう問題を「性自認の問題」として教え込まれてしまっているのだ。そしてＳＮＳでは、おそらくポルノ動画を目にしている。少年がポルノ動画みるのと、少女がポルノ動画をみる感覚は、少しズレがあるかも知れない。アビゲイル・シュライアーに拠れば、米国では性交中に相手の首を絞める、いわゆる「窒息プレイ」のようなものはポルノ動画サイトではマニアックな特定のジャンルに区別されておらず、フツウのポルノ動画のジャンルでアップされているという。別に窒息プレイに限らず、ポルノ動画の多くでは生物学的女性は何だか恐ろしい目に遭わされていると感じ取っているのではないかとの指摘をしていた。思春期少女とか第二次性徴期になる前の少女、もしくはその時期から離れていない若い女性の感覚を、アビゲイル・シュライアーが分析してみせた箇所でもあった。「大人たちはこんな事をしている！　信じられない！」となる。

アビゲイル・シュライアーが言うには、自分たちの同世代の女性がポルノに接してしまうシチュエーションは兄弟が持っているポルノビデオを見つけてしまうであったり、友人が持っているポルノビデオが回ってくるといったものがポルノとの出会いであったが、今どきの少年少女は充分な性知識もない年齢でポルノ動画に接しているので、何某かのギャップがあると述べている。相手の首を絞めてみる程度の窒息プレイはノーマルなポルノのジャンルであり、マニアックなポルノともなると限りなく過激なポルノ動画がある。それも少年少女たちは視聴できてしまっていると思われるのが現代のＺ世代なのだ。むしろ、反動が起こっていないと考える方がおかしい。また、この辺りから「レズビアンはステイタスが低いの。なんだかポルノってイメージ」と語るトランスジェンダー少女の指摘と交錯しているような気にもなってくる。

米国に於けるＺ世代の話だ。Ｚ世代はそれまでの世代ほどパーティーに行かないし、友人と出掛けたりデートをしたりもしない。ドライブを楽しんだり、ショッピングモールに行ったり、映画を観に行ったりもしない。友人と会う時でも親に付き添ってもらう事が以前の世代よりも遥かに増えている。

性的にませているわけでもまったくない。相手が男子であれ女性であれ、キスをしたことがない子が多い。トランスジェンダーという性自認の問題を抱える思春期の少女の診察を主としているセラピスト、サーシャ・アヤドによると、彼女たちの多くはマスターベーションの経験もないという。彼女たちにとって、自分の身体は謎であり、心の奥底にある願望は眠ったままで本人もわかっていない。

しかし、彼女たちは痛ましいほど苦しんでいる。不安にさいなまれ、うつ状態にある。精神的に不安定な自分と、怖がっている。〜略〜彼女たちは不安定な自分と、ＳＮＳで理想とうたわれている魅惑的な女性とのあいだには、危険で深い溝があると悟っている。そして、その溝を埋めるのは不可能だと感じている。

インターネットのせいで、彼女たちは一日も、いや一時間も心が休まる時がない。十代らしく恋をしてときめいたり落ちこんだりしたいと思っているが、一日の大半はiPhoneを見て過ごしている。リストカットを試してみたり、食事を拒否してみたりする。（『トランスジェンダーになりたい少女たち』29頁）

上記の引用部分で「ＳＮＳで理想とうたわれている魅惑的な女性とのあいだには、危険で深い溝があると悟っている。」という箇所がある。ＳＮＳとは「いいね」の数を集める虚しいゲームであり、また、どういうタイプの魅惑的な女性が理想とされているのかも実際には分かってしまっており、その理想とされる女性と、自分との間には深くて危険な溝がある事も悟っているという。もし、実際にそうであれば、確かに今のような時代に思春期を送っている「そうでもない少女」が、思春期を地獄のように感じていたとしてもおかしくないだろうという話に繋がっている。

理想は先に挙げたように天海祐希さんや長澤まさみさんのような男性からも女性からも称賛される美の持ち主という事になる。そういう人たちが実在する。その事を今の時代の人間は知ってしまっている。逆立ちしても勝てそうもない。彼女たちこそ美醜のヒエラルキーの頂点かも知れない。そして次点になるのは男性に媚びを売ってモテるタイプの女性という事になる。これは一定の「カワイコちゃん」が当て嵌まる。これでもヒエラルキー的には、まだまだ上位の方だ。或る意味ではモテる人たちなので相応の人生設計も計算可能だ。しかし、そうした路線に反感を抱き「彼女たちの真似はしたくない」と考える抵抗勢力が登場がある。カウンターカルチャーの論理ですが、それした媚びる自分を許せずに拒絶する。これが女性でありながら女性を嫌悪してしまう心理、もしくは少女であるが、ああいうオトナの女にはなりたくないの心理ではないのかな。

実際に『トランスジェンダーになりたい少女たち』の中では「母親のようになりたくない」という心性からトランスジェンダーになる少女が紹介されている。主流の流れに対して、異なる流れをつくるのがカウンターカルチャーなのだから、そうなる。『抑圧された記憶の神話』の中でも母親に性的虐待をされたと訴えた娘たちの話がゴマンと紹介されていますが、その中には「母親を軽蔑していた」とか「母親みたいな女にはなりたくなかった」という強烈な言葉が紹介されている。そして実際に理想は分かっている。スーパーモデルのような美形で細身の人たち。それは肉感的な女ではない。女の同士の争いでは肉感的な女は男の性処理道具のオゲレツな何かだ。でも、現実問題からすれば、自分は、理想とする人たちのようにはなれない事にも気付いている。そのジレンマ。まぁ、凡そ、これに近い見解というのは『トランスジェンダーになりたい少女たち』にも記されていたと思う。

何かしらに行き詰まってしまった少年少女たちの話としては次のような症例があると昔から語られてきた。暴力行為の非行、引き籠もり、リストカット、拒食症、家出などがありますが、そのうち、リストカットと拒食症については比較的近年のものであり、しかも女性の比率が大半である事は昔から知られていたと思う。

これを思うと、大人たちが余計な環境をつくってしまったというのもあるのでしょう。それこそ、旧Facebook社は青少年に害悪があると分かっていながら、利益の追求を優先して「いいね」ボタンをつけたとされている。

志田未来さんが中学生ぐらいの役で話題になっていた頃、奇妙なインターネット掲示板に辿り着いてしまった事があった。やたらと志田未来さんの事を「ブス」とか「かわいくない」等と貶すようなカキコミが何件も何件も連続して投稿されていた。直ぐに察する事ができましたかね。カキコミをしているのは、おそらく当時の志田未来さんと同世代か、それ以下の少女たちだ。あまりにも周囲の大人たちが志田未来さんを誉めているので、それが面白くなくて、へそを曲げてしまっているだろうな、と気付いた。人間には、そういうネガティブな一面がある。兄弟や姉妹などでもそういうジェラシーのようなものはあるものだ。何の気なしに、Ａを誉めている時に、傍らにいるＢは比較されているかのように感じてしまう。傍らに自分がいるのに、周囲の人たちはテレビ画面の中のＡを誉めているのだから面白くない。それこそ、多感であればこそ、そうなってしまうものでしょう。
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