2009年05月

2009年05月31日

栗本薫について

先日、作家の栗本薫が亡くなった。

中学生の時、先輩から借りた『グインサーガ』がきっかけで、彼女の作品にのめりこんだ。
『グインサーガ』『魔界水滸伝』『伊集院大介シリーズ』『ぼくらのシリーズ』四つのシリーズを中心に読み、更にさまざまな独立系小説も読んでいった。
また、中島梓名義で書いた評論やノンフィクションなどもずいぶん読んでいる。
高校時代には北九州を本拠地とするファンクラブ『AURA』に所属し、同人誌にも参加していた。
栗本薫は、僕がもっとも多くその作品を読んだ作家である。

数年前から、彼女の作品を読まなくなっていた。
以前ほどの面白さを感じることができなくなっていたところへ、彼女の言動に反感を覚えることが何度もあり、それをきっかけにグインサーガを購入することもやめてしまった。

時折、『グインサーガ』のあとがきを立ち読みをしていたので、癌が再発していたのは知っていた。
しかしそれは、すでにファンではなくなり、彼女に対して乾いた気持ちしかなくなっていた自分の気持ちを再確認するだけのことだった。

だから、彼女の死を知ったとき、自分が強いショックを受けていることにとても驚いた。
僕はもう栗本薫の小説を読まなくなっており、彼女に対して好意を持てずにいたが、それでも彼女が生き延び、憎たらしい婆さんとしてこの世界(の僕から遠い場所)で生き続けてほしかったのだと気付いたのだ。

栗本薫がただいま現在、物言わず、思考せず、物語らない骸になっているということが、まだ僕に染みてこない。

usubakagerounikki at 22:32|PermalinkComments(1)TrackBack(0) 人物 | よしなしこと

第八回朗読バーのお知らせ

さて、次回は駒場東大前S.GRAVITYでの開催です。
開催日は六月十四日(日)、詩のボクシング神奈川大会の翌日です。
開始時間は午後三時から。
さらに、朗読バー終了後の午後七時から、缶詰バーなる企画も開催されます。
こちらもぜひ御参加くださいませ。

↓前回の模様
http://blog.livedoor.jp/usubakagerounikki/archives/52244553.html

第八回朗読バー
日時:2009年6月14日(日) 15:00〜

場所:駒場東大前「S.GRAVITY(エスグラビティ)」
 目黒区駒場2-1-3苗場ビル102号
 電話:03−3467−0340
 京王井の頭線 駒場東大前駅 西口徒歩30秒 赤い扉が目印のお店
PCサイト
http://r.gnavi.co.jp/p458600/
携帯サイト
http://mobile.gnavi.co.jp/p458600/

参加費等はありません。
お店で飲食をしていただければ結構です。
途中入店、途中退出OKです。

基本的には声を出す場です。
読むのは、詩でも小説の一節でも短歌でも童話でも日記でもエッセイでも歌詞でも都々逸でも他人の作品でも賃貸借契約書でもドライヤーの取り扱い説 明書でも般若心経でも広辞苑でも第8暗黒星雲から受信した毒電波でも落語でも徳川埋蔵金のありかを示した古文書でも義太夫でも遺言状でも生産量計画書でも 結婚式のスピーチでもヴォイスパフォーマンスでも三行半でも『リングにかけろ』の最終回でも大相撲番付表でもネクロノミコンでもホーミーでも猿の鳴き声で もビーフストロガノフのレシピでも円周率でも西友のチラシでも選挙演説でも情けない話略してナサバナでもどうしても出せなかったあの人へのラブレターでも ドレミの歌の音階でも自分が生まれた日の新聞記事でも元素周期表でも詩のボクシング決勝戦で読むはずだった作品でも怪談でも日本産カメムシの名前リストで も社史でも四畳半襖の裏張りでも決起趣意書でも今朝見た夢の内容でも焼酎の名前の羅列でも初級スワヒリ語講座でも定額給付金の申請書でも飯田線の全駅名でも競馬中継でもコーランでも何でも構いません。
希望があれば即興詩もやります。

気楽に声を出して楽しむのが目的です。
マイクもステージもありません。
楽器鳴り物OKです。
「カラオケスナック朗読版」くらいの気持ちでどうぞ。
もちろん聴くだけのお客さんも歓迎します。

朗読用のテキストをいくつか用意しますが、それほど多くありません。手持ちの詩集等を持参していただくと助かります。

なんと、S.GRAVITYに椅子が導入されました!
これで長丁場の朗読バーに疲れた方も安心です。

缶詰バーは、缶詰に限り持ち込みアリという企画。
この企画のために、昨日は都内の物産館を巡り歩いて御当地缶詰をいくつか購入してきました。

みなさまの御参加をお待ちしております。
よろしくお願いします。


お店の「S.GRAVITY」について少し御説明を。
・カウンターのみの小さなスタンドバーです。
・でもマスターが美味いと思えば、焼酎でも日本酒でも入れる店です。
・チャージなし、ほとんどのお酒は500円〜700円です。
・缶詰メニューが豊富です。
・クレープがとても美味しいです。
・カレーがメニューに載ることもあります。
・立ち飲みバーですが椅子も常備されています。
・ただし、お店が混雑してきたときには、申し訳ありませんがお立ち願います。
・店内禁煙です(お店の外に灰皿があります)。

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2009年05月19日

第一回朗読ピクニック レポート

五月十六日は、新宿御苑で朗読ピクニックを開催してきた。
内容はいつもの朗読バーと同様で、飲み食いおしゃべりをし、そして朗読をする。
芝生にシートを敷き、花見のように車座になっての数時間だった。
終日曇天だったが、幸い雨にもならず、日光で肌を灼かれることもなかった。
風が強くて肌寒かったのには閉口したのだが。

少し早めに到着して参加者を待っていると、少し離れたところに妙な集団がいた。
十数人の男女が同じ方向を向いて座り、彼らと相対して一人の女性が紙を持って読み上げているのだ。
もしや…朗読をしている?
ちょっとどきどきしたが、そのうち女性は紙を離し、変なポーズをとりはじめた。
他の人たちも同じポーズをとっている。
どうやら、青空ヨガ教室だったようだ。
その後、朗読ピクニックの参加者が来るたびに、彼等を見て驚いていた。
そりゃあ、芝生の上でシェーのポーズや_| ̄|○ のポーズをとっている集団がいたらびっくりするだろう。

今回の朗読記録は以下の通り。

あしゅりん:ピーター・ジョーンズ(大島健夫 訳)『キルケリー』
カマコ:自作『無題』
あしゅりん:大島健夫『請求書のブルース』

以上。
三篇。
いや、ピクニックが楽しくって楽しくって。
参加者がほぼ仲間内だったし。
なんというか、朗読するのを忘れていたというか。
あはははは。

あまりに楽しかったので、秋にも朗読ピクニックをやることに決めた。
次回はもうちょっとたくさん朗読したいけど、まあそれはそのときの気分で。

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2009年05月10日

フェイス19

フェイス19

童顔ではある。
両頬のえくぼなど可愛らしいものだ。
しかしこの虚無的な目、刻まれた傷、穏やかな笑みを浮かべる口元。
きっと過去にいろいろあったのだろう。

フェイス18


usubakagerounikki at 16:44|PermalinkComments(0)TrackBack(0) フェイス 

まとめてイベント告知

来週の土曜日は朗読ピクニックの主催、日曜日は奥田睦子言動展示の観察に行きます。
朗読ピクニック告知
奥田睦子言動展示の告知が含まれる日記

さらに、もうちょっと先のイベント予定をまとめて告知しておきます。
僕が主催するイベントと、僕が観に行くイベント、両方を書いています。
まだ詳細が決まっていないイベントもありますが、日程が近付いてきたら再度告知いたします。

詩のボクシング神奈川大会本戦 観戦
6月13日(土)13:00〜
関内ホール

朗読バー&缶詰の会 主催
6月14日(日)朗読の部・15:00〜 缶詰の部・19:00〜
駒場東大前 S.GRAVITY

奥田睦子言動展示 観察
6月21日(日)
第一部 17:00〜18:00
第二部 19:00〜20:00
喫茶室ルノアール ニュー銀座店
要予約

詩のボクシング山口大会本戦 観戦
7月11日(土)開始時間未発表
開催場所未発表

谷中七福神巡りをあえて夏にやる 主催
7月19日(日)10:00〜
JR田端駅北口改札集合

朗読バー 主催
7月20日(月・祝)13:00〜
駒場東大前 S.GRAVITY

usubakagerounikki at 16:35|PermalinkComments(0)TrackBack(0) イベント 

2009年05月06日

第五回詩のボクシング神奈川大会予選会 短観

あらためて、詩のボクシング神奈川予選会について、予選通過選手の感想を書いておこう。
なお選手名は耳で聞いただけの人もおり、間違いがある可能性がある。
また、楠かつのりコミッショナーのブログで選手のコメントが読めるので参考にされたい。
「楠かつのりブログ・三々五々」

石川厚志選手
「もう春ですよ」「モウハルデスヨー」という二人の会話の繰り返しから始まる。
少しづつフレーズを変えながらも、二人の短い会話が続いていくという単調な構成は変わらない。
しかしこれが非常に魅力的な朗読であった。
石川選手のしっとりした声で「もう春ですよ」、少し裏声で呪文のように「モウハルデスヨー」。
会話のみで誰が話しているとも説明がないおかげで、だんだんこの世ならぬモノの会話のような気もしてくる。
単調な構成がこの不思議な雰囲気を醸し出す重要な要素になっているのだ。
最後は、「ほう」「ホーホケキョ」と鶯の声ですうっと終了。
バレエ曲『ボレロ』を連想した。

山田高ノ介選手
第三回東京大会に出場している。
今回は、テレビ番組でやっていたフォークゲリラを懐古する番組について語った。
学生運動の時代にフォークゲリラ活動に参加していたタレントが、すっかり若き日の思い出を語るスタンスだったことをきっかけに、「現代はきっと彼等が思い描いた理想郷になっているんだ」と皮肉る。
東京大会でも感じたが、怒りの表現が似合う選手である。

内藤選手
「あなたはまだ体を売っているのでしょうか」と語りかける。
「あなた」は、夢のためのお金を稼ぐために売春をしていたようだ。
売春がよくないことで、それで稼いだお金で夢を実現させるのはいかがなものか、という論調がずいぶんとステロタイプに聞こえた。

大島健夫選手
第三回神奈川大会に出場している。
そのときは一回戦負けを喫しており、敗者復活戦に選ばれたが勝ち進むことはできなかった。
しかし、敗者復活戦に選出されたくらい観客を魅了したということで、事実あれから二年経った今でも「ああ、あのミミズの詩を詠んだ人!」と憶えている人は多い。
今回は、貧しい家庭の父子が、デパートの京都物産展へ試食品を食べに行く風景を描いたもの。
じんわりとした寂しさと、ツボを心得た笑いは、低く通る大島選手の声と相まって非常に心地よかった。

タラチャン選手
四十五歳年上の白熊の紳士について語った作品。
メルヘン調な内容なのだが、白熊紳士の過去についてのディテールが妙に詳しくて面白かった。

カマコ選手
第四回神奈川大会に出場している。
自分の恥をさらす自虐ネタを得意とするカマコ選手、今回の作品は痔の手術の体験記である。
カマコ選手の特徴は、自虐ネタなのに嫌ったらしさがなく、むしろ爽やかに感じることさえあることだ。
ただ今回は、テキストはよかったものの、滑舌やリズムが今ひとつであったために、重要な部分が少々わかりにくかったように思う。

生松真輝選手
「あなた」に対して、笑おうと呼びかける作品。
体感だが、おそらく三十秒程度の朗読時間だった。

新井ゆーいちろー選手
椅子の上に立っての朗読。
大人の価値観への反発のようにも思えるテキストだが、なんだかやる気のなさそうな投げやりな話し方と「○○にもわからない」の繰り返しに惹きつけられた。
少し前にボンジョルノクマンが使った「ガンジャマン」というモチーフを使って、「ガンジャマンにもわからない」というフレーズを挿入したのはいい選択だったと思う。

芹澤みづき選手
首の短いキリンと、心をなくして胸に穴があいた少女の物語を、童話風に語っている。

テツシノサカ選手
第六回全国大会に出場している。
スピード感と不安定な魅力は健在。

OBAMA☆KANEZASHI選手
第四回神奈川大会に出場した、友人代表KANEZASHI選手である。
昨年は、パーティーでのスピーチという設定で決勝戦まで行った実力者だ。
今回の予選では、現在の自分をアメリカのオバマ大統領と比較することによって描き出している。
オバマ大統領を持ってくることで、単なる自分語りで終わらずに、わかりやすくて笑える作品にしているのはさすがである。

イソダミズト選手
どのような朗読だったか記憶にない。
メモには「文学 名前」とのみ記してある。

もこもこ選手
第七回全国大会に出場している。
兄が就職試験の最終面接の最後にされた質問について語られている。
もこもこ選手の愛らしさもきちんと出されており、なかなか面白かったが、終盤になって突然シュールな展開が始まり驚いた。
最終的には、それもちゃんと全体の流れに乗っていたことがわかるが、やはり構成がアンバランスであることは否めない。

吉川詩歩選手
第三回千葉大会や第二回神奈川大会、高校生大会in巌流島などに出場している。
自分が「屍だった」というモチーフを繰り返し語る内容。
抽象的な寓話のような感触を持ちつつ、切実なイメージが強く伝わってくる。
声の出し方やテンポもしっかり考えられていることがわかる。
二年ぶりのエントリーだったが、着実に実力を着けていることが感じられた。

篠塚義成選手
統計学について語り始める。
統計学を用いることで、どのような売り方をすればその商品が売れるのかあらかじめ予測がつくということを説明した上で、それらに対する怒りを表現する。
結果の予測できる手垢のついた表現をすることを断罪し、まったく統計学的でない瑞々しい表現をこれでもかと連ねていく。
朗読の仕方は決してうまいとは言えないが、自らの切実な心情と、それを表現するための冷静が、うまく噛みあっている。

市毛友里選手
第二回、第三回神奈川大会に出場している。
市毛選手は、テキストの内容もさることながら、その声と雰囲気によってテキストの価値を何倍にも高めることのできる選手である。
不気味とさえ言える発声と間は、普通の状況を一瞬に変容させる。
今回は、その部分を更に推し進めて、本当に特別なことが何もないある夕暮れの情景を、その朗読手法だけで奇妙な雰囲気漂う異界と化してしまった。
自分の特徴を認識している選手は、強い。


以上、十六選手の予選内容について記した。
選手のタイプ、年齢などバラエティーに富んでおり、本大会がとても楽しみである。

usubakagerounikki at 23:12|PermalinkComments(0)TrackBack(0)  | イベント

終日奥田睦子〜奥田睦子言動展示〜

終日奥田睦子

五月四日、大阪の池上邸で奥田睦子さんのイベント「終日奥田睦子〜奥田睦子言動展示〜」を主催してきました。

↓告知文

昨年十月、詩のボクシング東京大会でこの世界に出現し、その後三度にわたって東京に上陸した奥田睦子がついに大阪初登場。
なんと我らが池上宣久氏の自宅に出現し、何かする。

「終日奥田睦子 〜奥田睦子言動展示〜」

・展示場所:池上邸(環状線京橋駅 徒歩八分。東西線大阪城北詰駅 徒歩三分)
・展示日:2009年5月4日(月)
・展示時間:だいたい正午くらいから夕方まで
・観察人数:6人限定
・観察費:1,000円

観察を希望される方は、この日記のコメント欄にその旨を書き込んでください。
なお、都合により観察人員は先着順に六人までとさせていただきます。
悪しからず、御了承くださいませ。

※展示中の注意
・展示時間内ならいつ来ても、いつ帰ってもかまいません。
・飲食可です。飲食物の持ち込みも歓迎します。
・トイレ、休憩、外出などはいつでも御自由にどうぞ。
・携帯電話の使用も御自由に。電源は入れたままで大丈夫です。

↑以上、告知文


告知を読む限りでは、いったい何が起こるのかまったくと言っていいほどわかりませんね。
実際に、詩の朗読イベントと思ってこられたお客様もおいででした。
さらに言えば、スタッフも「展示の一環として奥田さんが料理を作って賄う」ということくらいしか、内容について把握していませんでした。

奥田さん含め、スタッフおよび観客で計九人。
最大でも十人の予定でしたので、そこは問題ありませんでした。
みなさん、御自分の都合に合わせて三々五々集まっていただけたのも、展示の流れとしてはありがたかったです。

お買い物に行った奥田さんが池上邸に入ってきたところから展示がスタート。
その時点での観客は一人ですが、スタッフも観察者に含まれます。
室内は、普段池上さんが生活しているそのままで、特に舞台が作られているわけでもなく、前夜に開催された麻雀大会の雀卓が出ていたり、和室には半分たたまれた布団が積んであったり。

奥田さんは、ときどき観察者に話しかけながら、エプロンをつけて料理を始めます。
池上さんに「おとうさん」と呼びかけるので一家の母親役をやっているのかと思っていると、なんだか素の奥田さんのようなセリフもでてきたりします。
そうこうするうちに、炊き込み御飯が仕込まれ、水菜と茸の炒め煮(かな?)が供されます。
僕達は、ビールなんか飲みながら料理をつつきます。
そうこうしているうちに、他の観察者もやってきてテーブルを囲みます。

彼等はとまどっていたと思います。
なんらかの公演があると思って来てみれば、ホームパーティーの真っ最中だったのですから。
そのうち始まるのだろうと思っているのに、御飯はでてくるわ、セルフサービスの苺パフェ大会が始まるわ。
奥田さんはあまりしゃべらずに料理を作ったり、洗い物をしたりしているし、観察者同士で雑談をしたりしているし、池上さんなんか寝っころがって熟睡してるし。
でも、ときどき奥田さんは突然変な動きをしていたり、何か描きはじめたり自作の歌を唄ったりするし、参加費を徴収するときも、鞄から回覧板のようなものを取り出して「お家賃」として受け取ったりする。
とにかく、自分がどういうポジションにいていいのかわかりにくかったことでしょう。

しかし、こんな状態が何時間も続くうちに、不安定な状態ながらもみんなリラックスしてきます。
奥田さんそっちのけでわいわい語り、寝ている池上さんの鼻にこよりをつっこんでイタズラし、隣の部屋では女性同士でひそひそ語り合っていたり。
ときどき奥田さんが何かしてその状態を撹拌しますが、のんびりしたゆるい空気はそのまま継続されます。
いつのまにか片づけを終えた奥田さんが鞄に荷物を詰め込み、すうっと池上邸から出て行きます。
しばらくして戻ってきた奥田さんが「終了」と大きく書かれた紙を掲げて展示終了です。

それから場所を移して居酒屋で懇親会兼説明会。
展示の意図と、いったいあそこで何が起きていたのかを奥田さん本人に解説していただきました。
そこでのキーワードを抜き出すと「擬似ホームパーティー」「メタフィクションの登場人物にさせられる観察者」「フィクショナルなドキュメンタリー」といったあたりになるでしょうか。
現象としては「狐に化かされた」とでもいうような気がします。
お互いよく知らなかったり知っていたりする人たちが、その場だけは「ゴールデンウィークに遠方から集まった親戚同士」のような感覚になっていました。

強いて分類するなら、パフォーマンスアートとかインスタレーションということになるのでしょうか。
これまで現代芸術にはあまり近寄らなかったのですが、今回の展示に触れたことで、ちょっとそっち方面への興味も湧いてきています。

奥田さんは引き出しの多い人なので、いずれまたいろんな形の展示をプロデュースできたらいいなと思っています。


なお、富士栄秀也さんによって、東京での奥田さんの展示も予定されています。
御興味がおありの方はぜひどうぞ。

●「奥田睦子の言動展示@世田谷233 2009.05.17」
  公演1 開場16:30 17:00〜18:30
 公演2 開場18:40 19:00〜20:30

 出演者 
 広瀬犬山猫(リーディング)+馬場めぐみ(リーディング)+加藤チャーリー千晴(ヴァイオリン、鍵盤ハーモニカ) 30分
 奥田睦子 50分
 料金 予約1500円(1ドリンク付き)
    当日1700円(1ドリンク付き)
 ・ギャラリー名 : 世田谷233(せたがやにーさんさん)
・住所 : 〒154-0023 東京都世田谷区若林1-11-10
・電話番号→ 03-5430-8539

<最寄り駅>
東急世田谷線「若林」駅より、三軒茶屋に向かって線路の右側を徒歩約2分、田園都市線「三軒茶屋」駅より徒歩約10分です。世田谷線沿線にあり、電車からお店がしっかり見えます。
■世田谷線『若林』駅より 徒歩約2分です。環七をわたりバイク屋さんの路地を入ってしばらく歩いたところです。

広瀬 犬山猫
小中学校への教育実習、教員免許取得の後秋葉原のゲーム開発会社へ入社。
ゲームの企画・制作・広報・雑用などを担当。
最近の業務は歌舞伎町のホストクラブでのホスト研修。
俳句・和歌・短歌の定型や散文詩など執筆歴12年
詩のボクシング参加等、朗読歴10年
(第2回詩のボクシング全国大会出場)
SNS「現代詩フォーラム」でも作品公開中。(http://po-m.com/forum/myframe.php?hid=1997
ブログ小説「プロトコル」(http://yaplog.jp/inuyamaneco/
http://mixi.jp/show_friend.pl?id=234507


加藤チャーリー千晴
東京に生まれる。小学生の頃から即興を始める。国立音大卒業後、多数の演劇とダンスの音楽担当。
奇数月第3木曜日に武蔵小金井アートランドでIn the Mistsなる企画コンサートを主催。
http://mixi.jp/show_friend.pl?id=3999060


●「奥田睦子の言動展示@喫茶室ルノアール ニュー銀座店2 号室 2009.06.21」
公演1 開場16:30 17:00〜18:00
公演2 開場18:30 19:00〜20:00
 1公演8人限定先着順
 前日までに予約2000円(1ドリンク付き)
      当日2200円(1ドリンク付き)

プロフィール
91年 01年 ノンバーバル身体+顔面表現。
世界38都市の演劇ンスフェスティバルや劇場プログラムに招聘される。
08年10月 やおらバーバル表現を始める。
育ち盛り・出世魚・峠の犬。
バーバル/ノンバーバル、構成/即興問わず、独自の「言動展示」を育成中。

プロフィール補足
2008.10.04「詩のボクシング東京大会」@内幸町ホールに出場
2008.12.28 公演「2008年10月4日に内幸町ホールで行われた『詩のボクシング東京大会』に初出場、惜しくも準決勝で破れるもMVP級インパクトを残した奥田睦子、3ヶ月近い潜
伏を経て再び上方よりあの髪型で来襲、2008年12月28日、今度は新宿御苑に降臨、その秘密のベールを脱ぐ」@新宿御苑前クワトロエスプラス に出演(富士栄秀也プロデュース企画)
2009.02.11「即興PLANET5」@新井薬師前 Art Live Bar SPECIALCOLORS に出演(紙田昇、富士栄秀也共同企画)
2009.03.08 公演「奥田睦子茶房」@喫茶室ルノアール ニュー銀座店会議室2号室 に出演(富士栄秀也プロデュース企画)
2009.5.4 公演「終日奥田睦子〜奥田睦子言動展示〜」@大阪・池上邸 に出演(あしゅりんプロデュース企画)

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2009年05月03日

まゆ

昨日は、詩のボクシング神奈川大会予選に参加してきました。
打ち上げが終わったその足で深夜バスに乗り、今朝から関西に来ています。
今は池上さんのおうち。
隣の部屋では大マージャン大会が開催されています。

さて、もう御存知の方も多いと思いますが、今回の予選は通過することがかないませんでした。
残念ですが仕方がありません。

例によって今回僕が朗読した作品を掲載しておきます。


『まゆ』

眉毛が伸びる
気がつけば俺も四十代
そろそろ眉毛も伸び頃だ

ここんところに一本、特に長い眉毛が生えている
四センチは越えている奴だが、こいつがしょっちゅう向きを変える
上を向いたり、ななめになったり、下向きになって目をつついたり
寝癖がついてるのか、とも思ってみたが、寝てもいない、触ってすらいないのに、鏡を見るたび生えてる向きが違っている。
どうにも気になって、鏡をのぞきこんでいると
…ひょこっ
動いた、眉毛が
ひゅひゅんと回り、ひくひくと震える
これではまるで、まるで、触角じゃないか…

おもわず眉を押さえると、その下に、感触
何かが眉の下でうごめいている
出てこようとしている…
そのとき、俺は気付いた
眉は、繭だったのだ

眉毛が、いや触角がひときわ激しく震え
まゆをめりめりと押し広げて出てくる、溢れる、流れる、赤い、血、のような、はね
ふぁさり、と真紅のはねをみるみる伸ばし、黒い触角を振りながら、俺の顔から飛び立つ、蝶
呆然と蝶を見送る俺の眉が、また震える。
え、と思う間もなく、かさりかさりと這い出てくる純白のムカデ、緑のセミ、虎縞のクワガタムシ
がさがさ、きちきち、ぬるぬろり
コオロギ、ナメクジ、オニヤンマ
飛ぶもの、這うもの、土を掘るもの
得体の知れない、見たこともない虫どもが、俺の眉からあふれ出てゆく。

こんなに大量の虫が俺の中に詰まっていたのか。
俺の中にあると思っていた、内臓、筋肉、骨も、血も、脳も、すべては虫だったのか
て、ことは、虫が考えていたのか?
いま考えている俺は虫たちなのか?
それとも虫たちを包んでいた外側が俺なのか?
もはやからっぽになって、風にひるがえるこの皮が?
俺は、どこまでが俺なんだ?

虫たちは、ゆっくりと、空に、大地に、水中に、地下に、…世界に広がりはじめる
「あばよ、俺。これまで世話になったな。せっかく身軽になったんだから、自由に飛んでくれ」
折からの風を受け、皮は空気をはらんで空に舞い上がる。
「じゃあな、俺達。俺から解き放たれて、世界中に広がっていけ。
 いつか、地球の向こう側でまた会おう。
 そしてまた、ひとつの俺になろうや。
 それまで…あばよう」


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