どうも、4年COXの土方です。
最近はサイクリングにハマっています。
風を切って見知らぬ土地に行くのが楽しいです。カロリーも消費できて一石二鳥ですね。
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艇庫から40分くらい漕ぐとこんな景色が見られます。美しい苗色に癒やされますね。


さて、今回は引退前最後のフリーブログということで、僕がこの3年半で得たこととインカレに向けた思いを述べようかと思うのですが、今日はどうやら避暑合宿日記の担当がいないようなので、最初に山中湖の様子を簡単にお伝えしようと思います。

8/13(土)
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今日の朝食

今日は台風の影響で乗艇ができませんでした。代わりに大部屋を借りて陸トレをしました。
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エルゴをする男子付きフォア・なしフォアクルー。
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その横でウェイトをする女子付きフォアクルー。COXの青木も一緒にトレーニングしています。
室内でできることも限られていますが、皆集中していい練習ができているように思いました。

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スタッフ・マネは、初日からいてくれた岩垣に加えて、昨日から堀と野海が、今日から吉田が来てくれています。そしてコーチとして、向井さんと太田さんが来てくださっています。
遠路はるばるありがたいです。

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室内の写真だけなのも味気ないので、昨日早朝の乗艇で撮った写真を貼ります。富士山がめちゃくちゃ大きくて感動です。


さて本題に戻って、まずは、僕が漕艇部での活動を通して学んだことについて書こうと思います。

僕が漕艇部に入部したのは、新人期のブログに書いたような気もしますが、「努力ができる人になりたかったから」です。
僕は小学校から高校まで野球をやっていました。
自分で言うのも恥ずかしいですが、僕は割と器用な方で、練習ではそこそこ良いパフォーマンスを発揮していたと思います。
しかし、いざ試合になるとエラーを連発していました。その度に「練習で本番並みの緊張感で練習できていないからだ」と考え(コーチからもそうアドバイスされ)、改善を試みてきましたが、結局引退試合までその癖は治りませんでした。
そんな自分を変えたくて、日本一という高い目標を目指して真剣に活動している漕艇部なら、きっと何か得られるのではと思ったのが、入部の決め手でした。


それから3年半、ボート部で様々な経験を積んできましたが、最高代になってようやく自分なりに納得のいく学びが得られました。

僕がたどり着いた結論は、「頑張るためには頑張りすぎないことが重要」ということです。

どういうことか、いくつか例を挙げて考えてみようと思います。

まず身近なところからいくと、ダイエットがあります。
世の中には様々なダイエット法が流布しています。食事についてだけでも、カロリー/糖質/脂質制限、断食、1食置き換え、etc. とめちゃくちゃあり、「たった1週間で〇〇kg減!」などと謳われているのをよく目にします。
自分もCOXとして様々な減量方法を試しましたが、なんとか直前に一気に55kgまで落とせても、減量の苦しさに耐え兼ねて、レースが終わったらすぐにリバウンドし、継続的な体重減少は達成できませんでした。
そこで最近は、基本に立ち返って健康的な食事・運動・睡眠を心がけたところ、緩やかな体重減少ですが、減量によるストレスがかなり抑えられ、(自分比で)長期的に痩せることができています。

次にトレーニングについて考えてみましょう。
体力を伸ばすと聞いて、皆さんはどういうトレーニングを思い浮かべるでしょうか。
色々あるとは思いますが、追い込むようなトレーニングや、毎回出し切ることを思いつく人が多いのではないでしょうか。
その発想は半分正しく、半分間違いであると考えます。
確かにエルゴをゴリゴリ引いたり、すごい長距離を漕いだりなど、きついトレーニングを積むと、特に初心者はぐんぐん記録が伸びると思います。
しかし、追い込むことは身体的にも精神的にも負荷の高いことです。怪我をして長期的に離脱をしたり、心が燃え尽きてトレーニングを積めない時期が続けば、今まで頑張ってきた分が台無しになります。例え怪我がなかったとしても、きついトレーニングだけでは頭打ちが来る可能性が高いです。(追い込むトレーニングを全否定しているわけではありません。それが全てではないという話です。)
最近の研究でも、トップアスリートは毎回追い込む系の練習をしているわけではないことが分かっていますし、そういう方向でトレーニングデザインが組まれていると思います。(調べれば色々出てきます)

ダイエットとトレーニングについて話しましたが、2つに共通することは、「短期的に最大の成長をもたらす取り組みは、長期的な成功を約束しない(むしろ矛盾する)」ということです。
すなわち、長期的に見て最大の成長速度で成長したいなら、時に頑張りすぎないように自分を律する必要があると学びました。


そして、これはメンタル面にも大きく関係していると思います。

自分は今まで、何か壁にぶち当たったときは、それを超えるべく更に努力を重ねるべきだと考えてきました。今まで挙げてきた例で言うなら、「エラー癖を直すためにもっと練習を頑張らなくてはいけない」であったり、「エルゴが伸び悩んできたからもっと毎練習で追い込まなくてはならない」などですね。

しかし、このような考えは強迫的で非常に危うい上に、恐怖に支配され目的を見失ってしまう可能性があると考えます。

先日、コーチがオススメしていた本(*1)から一節を引用します。
・熟達への道は、ほぼ例外なく険しい。その道を歩むには、多くの時間と不屈の精神が必要とされる。
・人は、目新しいものや刺激の強いものに魅了される性質がある。「手っ取り早い解決策」や「ライフハック」の類いが魅力的に感じられるのはそのためだ。しかし、そのようなアプローチがうまくいくケースは、まったくないとは言わないまでも、めったにない。
・(合気道の達人ジョージ・レナードの言葉より引用)
強迫型の人間は、勝利至上主義の傾向がある。(中略)このような人たちは、たいてい目覚ましいスタートを切る。(中略)しかし、そのうちに後退や停滞の時期が必ずやってくる。すると、その状況を受け入れられず、ますます頑張る。(中略)早期に成果を挙げるために近道を選びたいという誘惑に負けてしまう。

ここで非常に興味深いと感じたのは、上述の「さらに頑張らねば」という考えが「誘惑に負けている」と表現されている点です。初めて読んだ時に衝撃を覚えました。

また、毎回限界値付近まで頑張るということは、どうしても頑張りきれなかったときが出てきて、その度に「追い込めなかった」という恐怖体験が植え付けられることになります。「エラーしてはいけない」と考えすぎて逆に動きが固くなってエラーしたり、エルゴで1セット目を突っ込んで途中で爆死するのを繰り返したりすることもこれに当たるでしょう。
これにより、自分に厳しくすればするほど恐怖の泥沼にハマっていくが、自分ではそれに気が付けずもがき続け、当初の目標(強くなることなど)と逆の方向に進んでいってしまうのではないでしょうか。
トレーニングに向き合うときには、「更に頑張らねば」と思ったときほど、その原動力が恐怖に支配されていないか、本当に強くなることに繋がるのか、冷静に立ち止まって考える必要があると学びました。


ここまで、「頑張りすぎること」の危険性について書いてきましたが、どうすれば長期的な思考で頑張れるようになるのでしょうか?
先述の本の中でも、
・長い道のりを歩めば、どうしても途中で退屈を感じるときがある。

と書かれています。誘惑に負けずにこれを乗り越えるには、何をモチベーションにすれば良いのでしょうか?

僕の考えた結論は、ありきたりな答えですが「目的」を大事にすることです。
言い換えれば、「なぜボート部で活動するのか」を自分の中ではっきりとさせ、内発的エネルギーによってすべての活動を捉えることです。
結果に対するエネルギー、そして勝つことが全てではないというエネルギーの両輪が揃うことで、目標に向かって忍耐強く成長を一歩ずつ積み重ね、結果的に大きな花を咲かせることができるのではないでしょうか。

そしてこの点において、東大漕艇部が提供できる大きな価値があると思っています。
日本一という大きな目標に向かって活動する中で、必ずどこかのタイミングで「なんで自分はボート部で活動しているんだろう?」と自問自答する瞬間が来るはずです。真剣に取り組んでいるからこそ、避けては通れない問いだと思います。
そのような時に、「目的」を真剣に話し合える仲間がいること、そしてお互いに助け合いながら、忍耐強く長い道のりを歩むことができることが、漕艇部の掲げる「豊かな人間性を育む」ことにつながるのではないでしょうか。


以上が、僕が漕艇部で得た最大の学びです。
最後に、インカレに向けた心持ちを書いて終わろうと思います。

僕は、日本一を目指す先輩たちのかっこいい姿に憧れて入部しました。そして入部してから幾度となく、情熱を抱いて周りを引っ張る姿に勇気づけられました。
今の僕は、後輩からそう思われるような姿を見せられているでしょうか。
自分で知る由もないですが、今一度大きな志に立ち戻り、インカレまで自信を持って一歩一歩積み重ねて行きたいです。
そして願わくば、そのような自分たちの姿が周りにエネルギーを与え、より良い東大漕艇部へと発展していってほしいと思います。

長くなりましたが、以上です。
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(*1)『パッション・パラドックス』ブラッド・スタルバーグ(著)、スティーブ・マグネス(著)、池村千秋(訳)
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