おはようございます、大橋春人です。 ひたすらU2のニューアルバムを聞いています。


12月ももうすぐ後半ですが、塔11月号を読みます。 これで終わり!




まずは新樹集から。


朝までに何回弾けたのだろうあなたの中で昨日の花火は(魚谷真梨子さん) 


花火を見た翌日の朝に詠んだのだろう。「あなた」と主体の距離感がこの歌だけでは分からないが、恋人同士、あるいはそれに近い関係だと思う(一連の最後の歌からそう推測する)。 「花火」がいいなあ。少し切なさもある。 


恋人がわたしを文庫にしてくれた栞をくわえ続けて朝日(多田なのさん) 


ほとんど暗喩で組まれた歌。「文庫」、「栞」は暗喩であり、縁語の関係でもある。どのような暗喩だろうか。 「栞をくわえ」る行為はページを忘れないようにする行為だ。人に置き換えるとフラフラしない、記憶する、などと言えるかもしれない。「文庫」、すなわち本は記憶の総体として読めるだろうか。 「恋人」がいることで「わたし」が確かな存在になった、と読める。 


 溜まりいし落ち葉寄せつつ唐突に憎しみ覚えたりその人在らねど(沼寛子さん)


「落ち葉」?と思ったけど、作者はブラジルの方。日本が真夏であればあちらは冬なのだ。夏の歌が並ぶ中で「落ち葉」が現れて少し驚いた。 この歌の面白さは展開の面白さ。①落ち葉の掃除→②唐突な憎しみ→③憎しみの相手の不在に気がつく、という展開の荒々しさがいい。詰め込みすぎになりかねないところだが、うまくコントロールされている。 



 『永田和宏作品集I』評が面白い。篠野京さん、山下泉さん、谷岡亜紀さんによって書き継がれている。これ、角川短歌12月号の特集と合わせて読むといい。
ボリュームはすごくてお買い得! 


風炎集は上澄眠さん。「されたこと」。 

ああ「死ね」が多い世界だ ガラス張りのカフェのパンケーキがおいしい


傷つけたことを言葉にするときに仔牛の煮込みにナイフが入る 


人の悪意、また自分の中にある不寛容さ、他者への攻撃性をテーマにした一連。平易な口語で詠まれているからなおストレートにくる。 
一首目は「死ね」と「パンケーキ」の対比。明らかに真逆の存在だろう。しかし、「ガラス張りのカフェ」もまた外から見えるし、外に向ける存在だ。それは悪意の言葉と同じで、外から見えるし、外に向けるものだ。 
二首目、「ナイフが入る」のと「言葉にする」がうまく繋がっている。食卓の場面だ。「傷つけたことを言葉にする」のは許しを乞うことにつながるが、それでもなお「ナイフが入る」ことで他の存在を傷つけている。 人の悪意をストレートに詠んだ力作だと思った。 


誌面時評は色々言いたいことがあったので、先日方舟に投稿しました。力が入りすぎているので、たぶん没だと思いますが…。 


全国大会の報告。今年は郡山市。 残念ながら行けなかった。 これはやっぱり行って、読みながら思い出すものだなぁ。 来年は浜松なので、行きます。 
それにしても「夜の勉強会」、いいですね。鹿児島の時も岡山の時もぶっ壊れるまで飲んでたから来年は控えめにしないと(笑)


「歌集・歌書探訪」は濱松哲朗さん。 遠藤由季さんの『鳥語の文法』。 未読なので、お財布に余裕ができたら購入する予定です。 
このコーナー、確か今月で現メンバーは終わりだと思うのだけど、来年もありますよね?塔の人はもっと他の結社の人の歌集を読むべきだと思うのです。だからブックガイドとしてこのコーナーは便利。私はとても好きです。 


 9月号の歌を近藤真啓さんに取り上げていただきました。ありがとうございます。 9月号ちゃんと読んでないので、自分の歌に見えませんでした(笑) 詠んだの6月やもんなぁ。 


恋人に無視されている真夜中に飲むマヨネーズ何故あたたかい 

「マヨネーズを飲む」には意表を突かれたがあの星型の絞り口からにゅるにゅるっと出てくるチキソトロピー(非ニュートン)流体を思うと、「あたたかい」の形容が最適なように思えてくるから不思議である。 と、評をいただきました。ありがとうございます! それにしても変な歌やなあ。マヨネーズ嫌いなんやけどなぁ。無視されることもないしなあ。たぶん角川短歌賞の連作を作り終えて疲弊してたんでしょう。 あ、年末くらいに角川短歌賞の連作はこのブログにアップする予定です。 

 今月の編集後記、前田康子さんのコメントに吹いた。息子さんの髪型が大泉洋みたいになっていた、とのこと。「サイコロ5」とか「マレーシアジャングル探検」の時期の大泉さんくらいになってなら大変である。 

今月の私の歌。永田淳さんの選です。ありがとうございます! 

猫依存症のわたしが夏の死をひとつ見届け家路をたどる 


ひまわりの花立ち枯れてあたらしい地獄のような夕刻である 


ひぐらしの命しずかにしずむときああこんなにも早い夕暮れ 


壊れゆくものと暮らしてゆく日々を水をインコにやるように過ごす 

印象を変えたいときに掛けているレイバンのふち少し欠けてる 


「猫依存症」の歌は気に入っているので、掲載されて嬉しいです。 


 11月号には会費納入の振込用紙が入っています! 12月20日までに納入しましょう!