iPhoneのホームボタンを押したってうまく反応してはくれない
寒々しい指でつないでゆく言葉九時の時報とともに既読に
またしても覗かれている心地して寝室に貼るSTAR WARS
神様が神様でないと知った日は隣の街の折れた鉄塔
都市ガスの灯す炎よ夕暮れの色より深い紅である
真夜中のテレビのあかり 本棚は静かに眠る雪のごとくに
寝床には種を蒔こうかしんしんと寝息は百合に秋桜になる
ベランダに遊ぶすずめを招き寄せ剥製にして声真似をしたい
手紙よりLINEの通知を待っている美しく咲く花にならない
小説の一節よりも深々と冬の夜明けに溺れてしまう
ネクタイはネクタイであり革靴は革靴である 氷点下なり
錆びた自転車に乗りたいなあまつさえアニメの主役みたいに飛んで
午前八時通勤列車に揺られてるみんな脇役の顔をしてる
満員の電車のなかで俺だけが知らぬ言葉もあるか あるらむ
A day in the lifeと思えば良い。メガネに届く男の肘も
繰り返し繰り返し来る朝である革靴を踏む革靴の群れ
思春期の少年のごとく伸びてゆくホテルを見たりその骨組を
もう二度と声変わりせぬわが喉を熱い鉛のごとく思いぬ
ここからが雪の峠と言うように積もる仕事を溶かしてゆけり
ネクタイを緩めうどんをすすりつつ猟師にならなかった理由を
安全ピン外れたような夕暮れに仕事終わりは静かに迫る
恋人と待ち合わせる喫茶店ぬるいコーヒーほどの不幸せ
昔からずっと一緒であったのだ砂糖はコーヒーにたやすく沈む
人はみな光であるかあるだろう別れ話を切り出しかねて
血を売りたい売ったお金でアブサンを溺れてしまうまで飲んでいたい
さかしらな空想を撃つ声がする会計はいつも通り折半
美術館通りを歩く知り合いに極力会わぬように黙って
言葉から冷え込んでゆくその次に足と指先もう帰ろうか
コンビニのコーンポタージュほどで良い骨の冷えないからだが欲しい
人体のようなホテルの肺あたり深夜に灯る薄明かりあり
以上です。うん、何がしたかったんだろう(笑)
双子作品である「街に出てゆく」(塔5月号掲載)の方がのびのびしてるなぁ。この連作、意図的に主体を不幸に見せようとしている気がする。しかも切実さがない。
もちろんフィクションです。仕事終わって街で待ち合わせしたらとんでもない遅い時間になる(笑)
来年も諦めずにだします。おー!