思考のカケラ

コンサルタントの備忘録

カテゴリ: ビジネスモデル

■Numeraiの取り組み
AIを活用したヘッジファンドとしてNumeraiが注目されています。
Numeraiは取引にあるアルゴリズムを使用しています。そのアルゴリズムは世界中のデータサイエンティストがNumeraiのプラットフォーム上で提出したモデルを集めてできたものなのです。このプラットフォームでは、Numeraiは素晴らしいモデルを構築したデータサイエンティストに対して、“Numeraire”トークンを報酬として渡しています。これは、ヘッジファンドとして初めての試みです。
 
◼最強のデータサイエンティストが集まるプラットフォーム
Numeraireはそれ自体が通貨ではなく、データサイエンティストが自分の機械学習モデルと、それらが実際の市場・取引においてどのような結果を残すかに「賭ける」ために使われます。そのような形式の「賭け」を行うことにより、データサイエンティストは成功をおさめたモデルに対する配当金のようなものを受け取ることが可能になります。Numeraireが大きな成功をおさめていけば、データサイエンティストに支払われる報酬も高額になります。現在では、報酬の額がNumeraiの事業開始当初の6倍になっているとのことです。
 
現在ではNumeraiは30,000人ものデータサイエンティストを抱えています。これは他のヘッジファンドが抱えるデータサイエンティストの100倍以上の数だと言われています。しかも、Numeraiは30,000人ものデータサイエンティストをなんと2年以内に集めています。これほどまでに急速にデータサイエンティストの数を増やすことができたヘッジファンドは他にはないでしょう。
 
■究極のAIは集合知で作る
Numeraiが作ったモデルとして「メタモデル」と呼ばれるものがあります。これはデータサイエンティストが1つの問題に対して作った様々なモデルを、アンサンブルとして学習させたものです。このメタモデルはどの個別のモデルよりもエラーが少ないのです。これは多くのデータサイエンティストが構築したモデルを統合して最良のモデルを構築できているからです。Numeraiの本当の狙いはコンペを開催することではなく「メタモデル」の構築をするためのモデルを集めることなのです。
 
Numeraiは2017年10月に公開したマスタープランの中で、「知の独占」を1つの目標として掲げています。優秀なデータサイエンティストを世界中から集め、その集合知でAIを作り、さらにAIにデータやモデルを投入して学習させることでAIを強化していこうとしています。それだけでなく、そのAIをAPIでつなぎ、外部の一般の方が利用可能にしようとしています。これによって、一般の人が使えるAIのレベルが格段に上がることになるでしょう。
 
今後も「知の独占」を目指すNumerai から、目が離せません。
 
 
*参考URL
https://www.cryptostream.jp/numerai-5310/
https://wired.jp/2017/02/26/numerai/
https://medium.com/numerai/invisible-super-intelligence-for-the-stock-market-3c64b57b244c
https://medium.com/numerai/numerais-master-plan-1a00f133dba9

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今回は最近のニュースを題材として、今後データを扱うにあたり、必要になると思われる考え方について話を展開していきたいと思います。

 

■データで成功する企業、失敗する企業

「データには価値がない」ーそのような発言をする人に見てほしい事例があります。愛知県碧南市の旭鉄工の事例です。旭鉄工は秋葉原で仕入れた数百円の汎用センサーをベースにIoT 化を始め、最終的には設備投資で4億円、労務管理費で1億円の削減に成功しています。

このような企業とは逆に、数億円の設備投資をして、いわゆる人工知能やビッグデータのシステムを導入したにも関わらず、そのシステムを使用せずに費用だけがかかってしまったという事例が数多く存在します。

 

これらの成功事例と失敗事例を比較したときの差は何なのでしょうか。そこには、「価値設計」の考え方が重要になります。

「価値設計」とは求められる価値と、その価値を提供するための手段をつなぐ方法です。この方法としては、例えば工場内のコストカットを実現するという価値に対して、ロボットを導入したり、故障を未然に防ぐためのシステムを導入するなどといった、「価値→手段」の考え方と、技術を使って何かできないかという「手段→価値」の考え方があります。

 

ただ、後者の「手段→価値」の場合には、逆方向の「価値→手段」も考えなければ、価値設計が不十分になります。例えば、価値設計が不十分な場合によくあるのが、企業の中で「AIで何かできないか」「IoTで何か新しいことができないか」という意見が飛び交い、目的や価値を考えずに手段にこだわるといったケースです。確かに技術シーズを基に、実現できることを考えることも大事ではあるのですが、シーズ(特にAIのようなバズワードに関するもの)にこだわり過ぎて、目的を見失っているケースが存在します。AIの最先端システムを導入しなくても、実はエクセルでマクロを組めば、1時間で必要な機能を実装できたりすることもあるのです。

 

その一方で、成功事例の企業はAIやIoTなどの手段に手を出す前に、何が自社の課題なのか、AIやIoTなどの手段を用いて何を実現したいのかが明確になっていることが多いです。例えば、冒頭の旭鉄工の場合では、最初にすべきことして、「見える化」を掲げています。これによって、工場内のどこに無駄があるのかを可視化できるようにしています。この段階で、必要なものは高性能なIoT機器ではなく、1個50円の光センサーや1個250円の磁気センサーなのです。これらのセンサーによって工場内の見える化を実現し、さらに見える化した結果から、工場内の課題を洗い出し、その課題を解決する工夫がされています。その結果、最終的に5億円もの費用削減を実現しているのです。

 

このようにデータを使って成功する企業と失敗する企業には大きな差があります。そこで必要になるのは、価値設計を含む” Data Technology Management (DTM) ”の考え方だと思います。DTMとは、企業がデータを集め、データから価値を出していくために必要なマネジメントのことです。データをいかにビジネスに活かしていくか、その時に注意するべきことは何かを経営の観点から考えられる能力が求められています。データを扱うにしても、分析をするためのアルゴリズムや統計的手法の観点、データを蓄積するための基盤の観点、個人情報を扱う場合の法律的な観点、データやサービスをどのように売っていくかというビジネスの観点などなど、様々な視点が求められています。

 

■DTMの構造

DTMはManagementとData Technologyの2つから構成されると考えます。



DTM
図1:DTMの構成

それぞれの領域の要素はありますが、その中でも2つの合わさる領域において、スムーズな連携ができるか否かも重要になります。経営だけを知っている、またはデータやテクノロジーだけを知っている人では、対応できない領域が存在します。データをビジネスに活かしていくためには、ManagementとData Technologyの両方を知っている必要があります。

■DTMにおけるバリューチェーン
バリューチェーンは大きく全体管理とデータフローに分かれます。その中の構成要素を以下に記します。

●全体管理
・価値設計:(データによってどのような価値を提供するかを検討。どのプロセスを強みとするか、どのデータフローが欠けていて補完が必要か等を検討。)
・データマネジメント:(個人情報保護法、セキュリティ、データを扱う環境設定等など)

●データフロー
・収集:センサーやWebによるデータ収集、外部からのデータ購入
・蓄積:DMP(Data Management Platform)等へのデータ蓄積
・分析:前処理方法、分析手法の選定
・活用:外部へのデータの販売方法、社内でのデータ活用方法(費用削減に活用等)

図1
図2:DTMにおけるバリューチェーン

実際にプロジェクトを実行するときには、価値設計の部分は、リーン・ローンチパッドのように進める形になることが想定されます。つまり、常に顧客の声や社内の課題を聞きながら、本当に改善すべきところは何かを把握し、その部分を解決することを高速で繰り返すことが重要になります。この考え方は技術経営(MOT)の中では、一般的になっています。DTMもMOTやMBAとは切り離されたものではなく、それらの知識体系の上に、データを扱う場合の知識をアドオンしていくものと考えます。

■終わりに
今回はDTMの序章の形として、概要のみの記載にとどまっています。
今後は、この続きの内容を何かしらの形で展開します。

これから間違いなく重要になるDTMの考え方は、データに関わる多くの人が知っておく必要があると思います。
「データには価値がある」-このような言葉がより多く聞こえるように、データと最終的な価値を結び付けるDTMの考え方を、より深く広く活用していけたらと思います。


*本記事の内容は公開情報を基に考えを構築し、記載しています。
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今回のテーマはビジネスモデルについてです。

最近は色々と自分がやりたい事業を考えていて、その中でそもそも「ビジネスとは何か」を再度考える必要があると感じました。
というわけで、今回はビジネスを構造的に捉え、「ビジネスモデルとは何か」を掘り下げていきたいと思います。

■ビジネスモデルとは何か
ビジネスモデルという言葉ほど、便利で曖昧なものはないかもしれません。実際にも、クリストフ・ゾット、ラファエル・アミットらが著した論文「The Business Model」によると、この言葉にはまだ的確な定義がなく、使う側も4割はそんなことには拘らずに使っているそうです。

それでは、ビジネスモデルがどのように議論されてきたのかを見ていきましょう。

■1990年代後半

・プロフィットゾーン
1997年にエイドリアン・スライウォツキーは、ビジネスモデルという言葉を用いていませんでしたが、「プロフィットゾーン」という言葉で25種類のビジネスモデルをパターン化して示しました。ビジネスモデルの概念を説明したというよりも、どんなパターンがあるかを示した形です。
(以下のサイトでは、23種類のビジネスモデルを説明しています。)

「ザ・プロフィット」で紹介されてる23の利益モデルのまとめ

プロフィット・ゾーン経営戦略―真の利益中心型ビジネスへの革新
エイドリアン・J. スライウォツキー
ダイヤモンド社
1999-08






ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか
エイドリアン・J・スライウォツキー
ダイヤモンド社
2002-12-14


・ネットビジネスの経営戦略
根来龍之(早稲田大学ビジネススクール教授)は、ビジネスモデルを「どのような事業活動をしているか、あるいは構想するかを表現する事業の構造のモデル」としています。
ビジネスモデルの吟味・検討には、①戦略②オペレーション③収益の3つが必要であり、戦略の方向がビジネスモデルと顧客との接点を吟味するため、最も重要だとしています。

①戦略:顧客に対して、仕組み (資源と活動)を基盤に、魅力づけして提供するかについて表現する
②オペレーション:戦略モデルを実現するための業務プロセスの構造を表現する
③収益:事業活動の利益を確保するのか。収益方法とコスト構造を表現する

 







・オープンアーキテクチャ戦略
國領二郎(慶應義塾大学 総合政策学部 教授)はビジネスモデルを「経済活動において、四つの課題に対するビジネスの設計思想」としている。

①誰に、どんな価値を提供するか
②その価値をどのように提供するか
③提供するにあたって必要な経営資源をいかなる誘因のもとに集めるか
④提供した価値に対してどのような収益モデルで対価を得るか 

 






1990年代後半に出てきたビジネスモデルへの解釈では、大まかな思想が説明されています。
次に2000年代以降には、またビジネスモデルへのとらえ方が変わっています。

■2000年代以降

・ホワイトスペース戦略
 ビジネスモデルを包括的にとらえようとする者もいます。例えば、ホワイトスペース戦略を著したマーク・ジョンソンは、収益の上げ方のみならず、それを取り巻くいくつかの要素をビジネスモデルに含めました。議論すべき範囲を広げ、ビジネスモデルを「顧客価値提案」「利益方程式」「主要業務プロセス」「主要経営資源」という4つの構成要素から成り立つものとして示しました。(2010年)

ホワイトスペース戦略 ビジネスモデルの<空白>をねらえ
マーク・ジョンソン
CCCメディアハウス
2011-03-29



・ビジネスモデル・ジェネレーション
同じような範囲を扱いながらも、より詳細に分析できるようにした枠組みがビジネスモデルキャンバスです(2010年)。
こlこでは、ビジネスモデルとは「組織が財政的に存続するための論理である」と定義しています。簡単に言えば、組織が生計を立てるための仕組みです。
ビジネスの共通点は「顧客」の「ニーズを満たすのに役立つ」ことで、収入を得ています。
そこで、ビジネスモデル・キャンバスは組織活動を9つの要素に分類し、それぞれがどのように関わり合っているかを描き出すテクニックです。

business_model


①顧客(Customer Segment):CS
組織が作りだす価値を届ける相手:人、他の組織

②顧客価値提案 (Value Propositions):VP
顧客の抱える問題を解決し、ニーズを満たすもの

③チャネル (Channels):CH
顧客の求める価値を提供していることを告知する方法、その価値を届ける様々なルート

④顧客との関係 (Customer Relationships):CR
顧客との関係性を構築、維持、展開するための様々な仕組み

⑤収入 (Revenue Streams):RS
顧客に、与える価値が届けられる際、支払われるお金

⑥キーリソース (Key Resources):KR
これまでにあげた要素を提供するのに必要となる資源(リソース)

⑦キーアクティビティ (Key Activities):KA
ビジネスモデルが機能するように組織が取り組まなければならない活動

⑧キーパートナー (Key Partner):KP
外部に委託(アウトソース)される活動や、外部から調達されるリソース

⑨コスト (Cost Structure):CS
キーリソースを調達し、キーアクティビティを行い、キーパートナーと働くために支払うコスト

また、以下のサイトでビジネスモデルキャンバスをダウンロードできるようです。
https://strategyzer.com/canvas/business-model-canvas 

ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書
アレックス・オスターワルダー
翔泳社
2012-02-10



■ビジネスモデル・キャンバスを基にした概念
・ビジネスモデルの教科書
この書籍の中では、基本的にビジネスモデル・キャンバスに基づいていますが、ビジネスモデルを以下のように定義しています。
「戦略とともにビジネス機能やプロセス、それを支える経営資源の種類や使い方などの社内仕組み、チャネルや提携先などの自社の仕組みの延長のあり方を組み合わせたもので、それらの間の整合性や因果、さらには仕組みが生み出す顧客や競合など外部への作用をも包含する概念。
コーポレートレベルにおいては、複数の事業の組み合わせや事業間の仕組みへの影響、さらに顧客や競合など外部への作用を包含する概念。 」







ビジネスモデルの教科書【上級編】
今枝 昌宏
東洋経済新報社
2016-07-29





・ ビジネスモデル・パターン
 ビジネスモデル・キャンバスとピクト図解を用いて、「ビジネスモデル・パターン」の考え方を提唱しています。


 

■「ビジネスモデル全史」の立場から
数々のビジネスモデルを俯瞰した「ビジネスモデル全史」という書籍があります。これを書かれた三谷宏治さんの定義では、「ビジネスモデルとは、旧来の戦略的フレームワークを拡張するためのコンセプト・セットであり、その目的は多様化・複雑化・ネットワーク化への対応である。」とのことです。
戦略フレームワークとしては次の5つの特徴があります。
これまでは、①ターゲット(狙うべき顧客)の同定・絞り込みが経営戦略のスタートでした。ビジネスモデルではそれが、ステークホルダー全体の明確化となります。いわば、そのビジネスにかかわる大事なプレイヤー全部が「顧客」なのです。
ゆえに、②従来のバリュー(提供価値)は、トータル・バリュー・クリエーション(TVC:全体価値創造)となります。
一般に自社が受け取れる報酬は、相手に与える価値の裏返しですが、この場合は直接的顧客だけでなく、全ステークホルダーにおいて生まれる価値の総和が自社の報酬の上限となります。
それらをどう自社に掻き集めるかが、③レベニュー・ストリーム(収入流)で、コストと組み合わせればプロフィット・フォーミュラ(収益方程式)となります。無料顧客と有料客をどう組み合わせるのか、広告にしても大手を狙うのか、細かく集めるのか、などなどです。
最後に、④これらを実現するための、オペレーションや資源(ケイパビリティ)が問題になりますが、それを「自社のバリューチェーンや経営資源」として狭くとらえるのではなく、「他社や競合との協調まで含めてのバリューネットワーク」として考えます。
この①~④を統合したものが「ビジネスモデルの視点」からの経営戦略フレームワークなのです。
⑤これら4つの項目は、上下なく、行き来しながら(スパイラル上に)生み出していくべきものなのです。 





■ビジネスモデルの最先端のとらえ方
2016年9月にMIT Management Reviewに掲載された"The Hard Truth About Business Model Innovation"が最先端のビジネスモデルのとらえ方だと思います。
この論文は、「イノベーションのジレンマ」で有名な、ハーバードビジネススクール教授のクレイトン・クリステンセンらによって著されました。

この論文では、ビジネスモデルはValue proposition, Profit formula, Resource, Processesの4つの箱から構成されるとしています。上記のホワイトスペース戦略の「顧客価値提案」「利益方程式」「主要業務プロセス」「主要経営資源」とほぼ同じです。Profit formulaは、利益を得るための、マージンや売上規模の設定方法をあらわし、Processはインプット(資源)を最終製品・サービスに変える方法をあらわします。

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今までのビジネスモデルのとらえ方と違うところは、ビジネスモデルを3段階に分けて論じているところです。
1.Creation
最初の段階では、事業を創り出すだめに、「何を提供するか」を考えます。また、それを提供するためには、ヒト・モノ・カネを用意する必要があります。

2.Sustaining Innovation
ここでは、事業が進んできた段階で顧客のデータを収集して、継続した事業展開ができるようにタスク設計をします。

3.Efficiency
最後に、事業が軌道に乗ってきた段階では、効率化を図ります。「利益方程式」で最もコストカットや時間削減ができるような方法を導出していきます。

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以上のように、時間軸を考慮した上で、ビジネスモデルを考えています。

■まとめ
以上のように、ビジネスモデルの考え方がどのようなものがあるか、どのように変わってきたかを議論してきました。
その結果、僕なりの結論としては、
①事業の粒度にあったビジネスモデルのフレームワークを使いつつ、
②時間軸も考慮に入れた分析ができる
とベストだと思います。

ではでは。
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