今回は、上下巻合わせて500ページを超える大作のサピエンス全史を、1つの図とA4用紙2ページにまとめるという暴挙をしてみたいと思います。(当然ながら抜け漏れ等がありますが、本書を読む時間をなかなかとれない方をメインターゲットとして、概要の理解を優先しているため、ご容赦ください。)
サピエンス全史では、人間の今までの歴史を、「現実」と「虚構」の観点から壮大に俯瞰しています。
人間の歴史では、大きく3つの革命がありました。それは、「認知革命」「農業革命」「科学革命」です。

<サピエンス全史 全体像>
図2
(筆者作成)

■認知革命 まず、認知革命の時期では、サピエンスは突然変異によって、脳の神経が変化しました。これにより、物事を認知できるようになりました。そして、認知ができるようになると、サピエンスは意思疎通のための言語が使えるようになりました。そこでサピエンスがしたのは噂話です。たしかに、現代でも二人の人間が会えば、噂話のような大したことない話ぐらいしかしません。 サピエンスの大きな特徴としては、噂話ような「ありえないことを信じられる」ことが挙げられます。このような「虚構」を信じる能力は、同じ時代を生きていたネアンデルタール人にはなかった特徴です。「虚構」を信じることができると、多数で同じ物事を信頼することができます。それはつまり、大人数で協力が可能になったことを意味しています。これによりサピエンスは大人数で協力ができ、ネアンデルタール人を倒すことができました。ネアンデルタール人はネアンデルタール人同士で協力することができなかったのです。

■農業革命 その後、サピエンスは大陸を渡り歩き、生息地域を広げていきます。しかし、その中である植物が従来の狩猟採集にストップをかけました。小麦です。小麦は従来の移動式の狩猟採集から、定住式の生活に移行するきっかけとなりました。サピエンスは小麦を栽培し、定期的に収穫することで生活できるようになりました。これが農業革命です。
しかし、農業革命はほとんどのサピエンスを幸せにはしませんでした。なぜなら、平均的な農耕民は従来の狩猟採集の時よりも、働いている時間が長くなり、さらに得られる食べ物の量も減ったからです。そう、農業革命は史上最大の詐欺だったのです。 ただ、このような状況にも関わらず、人間は農業を続けました。それは、一生懸命に働けば、安定した収入(食べ物)が得られるという「虚構」を信じていたからです。これは、現代にも当てはまると思います。会社で一生懸命に働けば、安定した収入がもらえるのは、現代にも通じる
ある種の「虚構」ではないでしょうか。


虚構を信じることができると、それが「想像上の秩序」を生むようになります。想像上の秩序とは、私たちは本質的に平等であると信じれば、安定し、繁栄する社会を築けるという共同的主観です。このような虚構が発展し、さらには帝国や貨幣、宗教が広がっていきます。帝国については、ある領域の中で多数の民族が集まって形成され、世界で最も一般的な政治組織となりました。貨幣については、物々交換、貝や銀などを用いて取引をしていましたが、利便性を追求するうちに、紙幣・硬貨が主流となりました。これは、紙や金属に「信頼」という虚構を載せています。皆が紙幣や硬貨を信頼することによって、それが「貨幣」として機能するのです。 また、宗教については、人間を超えた存在に対する信念を人々が共有し、発展しました。しかし、宗教の中でも仏教は、人間を超えた存在を認めていませんでした。仏教の教祖は、シッダールタという人間であり、人間を超えた存在ではありません。そのため、人間が知らないものをどのように説明できるのかという疑問が生まれていきました。

■科学革命
そこで、登場するのが科学革命です。この時期から、人間自身が知らない物事への追求が
始まりました。例えば、ニュートンが運動方程式を発見して物理学が発展したり、さらに数学が発達したり、ということがありました。その数学の中で、他の学問を発展させることにつながったのが、確率・統計の発見です。確率・統計が使えるようになると、未来を予測することができます。統計学が「科学の文法」として呼ばれる所以です。これによって、心理学や社会科学など、様々な学問を発展させるきかっけとなりました。 科学が未来を予測できるようになると、それが「進歩」に確証を持たせました。進歩・成長することが事前にわかると、それが信頼・信用を呼び、それが経済成長につながります。 また、科学を武器に用いることによって、国が強くなり、帝国がさらに大きくなります。大きくなった帝国は、その資金を科学に回すことによって、さらに科学を発展させ、それによって優れた技術・武器を作ろうとしていました。つまり、科学というものが生まれたことによって、好循環が生まれるようになったのです。 科学によって、安定した経済成長が見込めるようになると、国同士は戦争という手段をとらなくなりました。なぜなら戦争をすることは国として採算が合わないからです。それであれば、国同士が協力して貿易をした方が、経済的なメリットは大きいのです。これによって、現在では人類史上最も平和な時間が過ぎています。 このような状況になると、各人がそれぞれの幸せを求めるようになります。 幸せは①心理学・社会学的観点、②生化学的観点から説明されています。 ①心理学・社会学的には、客観的な条件と主観的な期待が幸せの要因になります。客観的な条件については、例えば、周囲の人たちと比べて自分は安っぽい車しかもっていないと、少し不幸な気持ちになります。主観的な期待の例では、医薬品の効果を過度に期待して、なんでまだ自分の病気が治らないんだと不満を抱くことが挙げられます。さらに、人生の意義を見出すことが幸せにつながるともされています。 ②生化学的には、ニューロンの影響や生化学物質(ドーパミン、アドレナリン等)が脳内に放出されること等によって幸せを感じます。

以上のような幸せに対する考え方には共通の前提があります。それは、人は自分が幸せであるかどうかは、自分が一番よくわかっていると考える傾向にあることです。主観的な感情が幸せの根本にあるという考え方です。 しかし、対照的に、仏教をはじめとする多くの伝統的な哲学や宗教では、幸せは内なる感情とは無関係で、幸せのカギは真の自分を知る、すなわち自分が本当は何者なのかを理解することであるとされています。最大の問題は、自分の真の姿を見抜けるかどうかです。

我々の未来はこれまでの延長線上にはありません。現在・未来においては、人間が機械と融合したり、ゲノム編集によって、従来の人間を超えた人間をも作り出せる可能性があるためです。人間は神を超えた存在にもなりえます。このような転換点において、私たちが充分な時間を割くべきなのは、まず私たちが「何になりたいのか」という疑問への答えを構築することです。その一方で、人間が自分たちの欲望を操作できる日も近いかもしれなません。そのため、もしかすると真の疑問は、私たちは「何を望みたいのか」かもしれません。

■おわりに
サピエンス全史は、どの章を読んでも内容が深く、各章で色々な議論ができる名著だと思います。(その分、まとめるのは大変でした。)
ジャレド・ダイヤモンドが「銃・病原菌・鉄」で、サピエンス全史における「現実」の部分を著しているのに対して、サピエンス全史では、「虚構」を人類史を読み解く切り口として用いていることが印象的でした。
今回の投稿はサピエンス全史のまとめに絞りましたが、次回の投稿では、サピエンス全史に対する自分の考えを述べていきたいと思います。

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福
ユヴァル・ノア・ハラリ
河出書房新社
2016-09-08


サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福
ユヴァル・ノア・ハラリ
河出書房新社
2016-09-08