武勇伝

2010年10月31日

戻って来た大陸横断列車

ちょっと昔の話である。自分のエネルギーを持て余していたくらい若かった頃の事。

レンタカー車でロスからフロリダまで渡り、グレイハウンドのバスで北上してカナダに入り、電車(VIA)で、ケベックからバンクーバーまで渡ろうとしていた。その途中でのこと。
カナディアンロッキー山脈の美しい景色を見ようとジャスパーで途中下車をした。景色は予想以上に美しく,青い氷河を堪能したが、なんせ一人旅。共に感動を分かち合う相手も無く、いつか素敵な彼と来よう!!と、強く胸に念じて観光を予定より早く切り上げ、再びVIAに乗ってバンクーバを目指す事にした。列車は1日に1本。だから前日から駅に行って予約を変更して、ちゃんと時刻表をチェックし、停まっていたペンションのおじさんにも、寝坊しないようにモーニングコールを頼み、準備は万全。
翌朝、おじさんとおばさんに別れを告げ、早めに出発。ゴロゴロと荷物を引きずりながら、のんびりと駅に向かう坂を降りて行くと、あれ??駅に電車が停まっている。

「きっと反対方向に行く列車だよね・・・」と、不安をかき消すように独り言を呟く。すると、列車がゆっくりと動き出した・・・それもバンクーバー方面に!!!

「ええええっ〜〜〜〜!!」私は走り出していた。駅への途中に踏切がある。私は荷物を放り出して、踏切に向かって一心不乱に走り出した。そして走りながら叫んでいた!「待ってぇ〜〜〜!!待ってよ〜〜〜〜〜!!」と、日本語で。

 列車はゆっくりと踏切を抜け、私の目の前を通過して走り去る。
悔しくて、あきらめがつかなくて、列車の後ろに向かってもう一回叫ぶ。「ひどいじゃな〜〜〜ィ」すると、100メートルくらい進んだ列車が急に止まったそしてギギギギギィ〜〜〜と、大きな音がしたと思ったら、ゴゴッ ゴゴッ ゴゴッ と、バックして戻って来た。 そして、目が点になっている私に車掌さんが、早く乗れと言う。私は道に荷物が置きっぱなしだと言うと、早く取って来いという。「まじ!!」私は急いで荷物を取りに戻り、踏切から列車に乗った。

車両によじ上ると、たくさんの乗客が待ち構えていて、キスの嵐!!口々に「コングラチュレーション」と叫んでいる。口笛をピーピーならす人もいて、まるでパーティーの様だ。

後で解った事だが,踏切で私の存在に気づいた車掌さんが「Missinng Train Girlを発見したので、戻ります。」とアナウンスしたのだそうだ。列車は時刻通りに発車したのだそうだ。どうやら私が時刻表の上りと下りを間違えていたらしい。

戻ってくるなんて、日本では考えられない事だ。

それからバンクーバーまでの旅は、友達に困らなかった。たくさんの人からMissinng Train Girlと、声をかけられ、恥ずかしいやら照れくさいやら・・・。車掌さんからは5ドルもするVIAのキャラクターのカメのバッジをプレゼントされ、1泊の列車の旅はあっという間に過ぎて行った。



 

utakohime2 at 00:55|PermalinkComments(0)TrackBack(0)