東大漕艇部コーチブログ

東京大学運動会漕艇部のコーチが、その活動を綴る。


こんばんは。

女子部コーチの岡です。

女子部の対校漕手3人(江口、平松、森田)は東日本選手権に出漕する予定でしたが、感染状況拡大のためレースが中止となってしまいました。
そのため、本日、
代わりとなるTTを荒川にて行いました。

それぞれ、今まで取り組んできたことが形になり、満足のいくトライアルができたようです。そのことを、とても嬉しく思いました。

3人はここで今シーズンに区切りをつけて、明日からフライに入ります。
フライ後は、11月の京大戦に向けて練習を再開することになります。

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(シングルスカルforteを運ぶ江口と森田)

艇庫の食堂に「常識の更新」という言葉が貼られていましたが、
今シーズン、女子部もまた、これまでの常識を更新してきてくれたと思います。

昨年12月の京大戦では、多少無理をさせてしまったところもありましたが、一つクルーを作り上げて、本格的に、そして主体的にレースに臨むことができました。

春からは、東商戦に向けて初めてのスイープ、しかも難易度の高いなしペアという種目に挑戦し、クルーを仕上げてくれました。

女子部は社会人コーチがメインということもあり、現場で細かく見ることはできませんでしたが、その分、自分たちでなんとかする力、自分たちで考える力が育ったように思います。

前川コーチは毎週欠かすことなくオンラインでミーティングをしてくださり、選手たちはその中で、
トレーニングの基礎知識、長い目で物事を見る姿勢、何が最適か見きわめる力、自分の感覚に素直になること、自分で決めること等、たくさんのことを身につけてくれました。

私自身は月に一、二度のペースでしか艇庫に行けませんでしたが、行くたびに、彼女たちがそれぞれの言葉で話をしてくれたこと。
うまくいったことも、うまくいかなかったことも、前向きな語り口で、いきいきした表情で話してくれたことがとても印象的でした。

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(荒川です)

私が現役のときは、暗い顔をしている選手が多かったと思います。
つらい練習が続き、心のゆとりをみんなが失っていく中で、他人に優しくできず、理解しようともせず、つまずいて泣いている人に手を差しのべようともせず、頑なに心を閉ざし、それが「本気に取り組むこと」だと、勘違いしていたような気もします。

過酷なトレーニングに立ち向かったことで、得られたこともたくさんあります。過去のチームを否定するつもりはありませんし、私自身、現役の日々をこの場所で過ごせたことには感謝しています。
ですが一方で、そのチームのあり方が、多くの犠牲を強いていたことも確かです。

今シーズン、私の中でもこうした学びがあり、選手のみんなには心から感謝しています。いつも本当にありがとう。

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(階段を含んだこの風景が、艇庫界隈で私が一番好きな絵です)

東大ボート部は淡青会による多額の寄付で支えられていますが、私はその額を見るたびに思います。

このお金があれば、
経済的な理由で大学に行けない高校生を何人進学させてやれるんだろう?

このお金があれば、
心身ともに追い詰められ、家で子どもにあたるしかないお父さんやお母さんを何人救えるんだろう?

このお金があれば、
食べるものがないお家の、何日分の食事がまかなえるんだろう?

これだけの支援を受けて、東大でボートを漕ぐ意味ってなんだろう
これからも、一人一人、つねに考え続けてほしいと思います。

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(そして見えてくる荒川)

なんだか締めの言葉のようになってしまいましたが、シーズンはまだ終わっていません。

4年生の大石が出漕するインカレは、感染状況拡大のため10月末に延期となっています。

目指していたレースが延期となったことで、気持ちの整理もなかなか難しいところですが、条件は他の大学も同じです。

今シーズン、いっぱい迷いいっぱい悩みながら、それでもここまで辿り着いた大石なら、この逆境もチャンスにとらえ、うまくフォアを導いてくれることと思います。女子部の主役として、めいっぱい楽しんできてほしいと思っています。

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(岸につけたBREEZE。他大の方が「取りますよ!」とオールを取ってくださっていました。ありがとうございました。)

最後に、いつでも変わらぬあたたかさで女子部を支えてくださっている佐藤監督と前川コーチに、心より感謝申し上げます。

今後とも応援よろしくお願いいたします。

女子部コーチ



こんばんは。

女子部コーチの岡です。

8月に入り、すっかり夏ですね。
7月末に練習を見に行ったのですが、戸田公園の入り口に見慣れないものがありました。

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(これです)

なにかと思ったら、カヌーのオーストラリアチームの練習拠点でした。

いろいろと物議をかもしているオリンピックですが、世間でも言われているように、勝利とはなにか?スポーツとはなにか?と考える良いきっかけだと思っています。

古代ギリシャで始まった古代オリンピックの競技精神は、「カロカガティア」つまり、「美にして善なること」だと言われているそうです。

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(朝食を食べながらオリンピックを見る選手たち)

スポーツの本質とはなんなのでしょうか。

自分を高めること、成長を楽しむこと、競技を楽しむこと、仲間を得ること、鍛練を積むこと…いろんな答えがあると思いますが、
「勝つ」ことが本質ではない、ということだけは確かに言えると思います。

勝負は相手があることなので、どんなにベストを尽くしても、相手が強ければ、どうしようもなく負けるからです。

だから、勝てばすべてが肯定され、負ければすべて否定される、という考え方はちょっとちがうなと思います。

(しかし、この考え方は、たとえ明言はされていなくても、東大ボート部で伝統的に受け継がれてきている気がします。こうした文化が根づいていることは、個人的には違和感があります。)

それでも、勝利にはあらがいがたい魅力があります。
やっぱり並べで勝ったら嬉しいし、レースで勝ったら嬉しいし、応援してる人が勝ったら嬉しいし、「勝ちたい」という思いがなにより練習の原動力になるという面も、たしかにあると思います。

勝負が人の闘争本能を刺激するからでしょうか。

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(ダウンで、エントリーまでの動きを試行錯誤する平松・森田。とても研究熱心です)

自分は現役のときに一度も勝てなかったので、引退レースを終えたときに感じたのは、「やっぱり報われなかったな」という虚無感だけでした。

実力を出せてればおそらく勝てたんじゃないか?と思うレースが実は一つあって、
なんであのとき力を出しきれなかったんだろう?もし勝ってたら……と、正直に言うと今でも思います。もうそれから5年近く経ちますが、わりとリアルな感覚で、同じことを何度もくりかえして思います。

つまり敗者たる自分を、だれよりも自分が否定しているということで、まわりからいくらねぎらってもらっても、みとめてもらっても、勝てなかった自分に、最後まで納得がいきませんでした。さすがに今はその感覚もだいぶ薄れていますが。

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(舟を片づける平松・森田)

少し自分語りが過ぎてしまいましたが、
後輩には同じ道をふんでほしくないという思いでコーチを引き受けさせていただいています。

自分を否定するのではなく、肯定するためのボートでありボート部だと思っています。

必要以上に自分を追いこんで傷だらけになるのではなく、
他人と比
べて憂鬱になるのではなく、
一歩進めた自分を好きになるためのボートでありボート部だと思っています。

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(真夏らしい空です)

ちょっと前の話ですが、とあるご縁で、リオ五輪日本代表の中野紘志選手の講演を聞かせていただく機会がありました。

大学でボートをやる意味について、中野選手は、
「ボートは、頑張った分が数字にあらわれるスポーツ。頑張った分だけ結果が出る。1人ではだめでも、2人乗りや4人乗りなら活躍できるかもしれない。頑張れば次に行けるという経験、こんな自分でも、頑張れば次に行けるんだと思えるきっかけになるのではないか」
という趣旨のことを話されていました。

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(なにかを読みふける森田)

4年生の大石は、男子つきフォアのコックスとしてインカレに出ることが決まりました。

3年生の江口、平松、森田は、インカレには出ず、8月末の東日本選手権に出ることが決まりました。

レースの結果はわかりません。
でも、だれかにやらされるのではなく、強迫観念にとらわれることもなく、自分の力を尽くすことができれば、どんな結果でも納得できるはずと思っています。

肩肘はらず、妥協せず、
「~しなければならない」ではなく、「~したい」という気持ちで。

インカレ・東日本選手権に向かっていってほしいと思っています。

女子部コーチ


こんばんは。

女子部コーチの岡です。

7月7日は七夕でしたね。

ちょうどこの日のEMを見に行ったのですが、戸田公園駅にも笹が登場しており、たくさんの願い事がぶらさがっていました。

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(戸田公園駅の笹)

自分のことを願っている人、人のことを願っている人、世界のことを願っている人、いろいろでした。

私は昔から七夕が好きで、恋人のイベントとしてもっと盛り上がらないのはなぜだろう?と毎年思います。

一年に一度だけという約束を律儀に守っている織姫と彦星ですが、彼らの願いごとはいったいなんなのでしょうか?

来年も会えますように、なのか、
そもそも二人を引き離した天帝がどっか行きますように、なのか、
もっと近場でいい人が現れますように、なのか、
このままずっと相手を好きであり続けられますように、なのか…

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(オールの調節をする平松と森田)

先日、私も職場で短冊を書くはめになったのですが、さて自分の願いってなんだろう?と考えると手がとまりました。

最近思うのは、心の表面にある望みAと、心の奥底にある望みBって、わりと逆のことが多いよなということです。

たとえばボート部で言うとこんな感じです。

A「今日のメニューきついわ~雷でも鳴ってオフにならないかなー。醤油でも飲んで、カイロ貼って、体温爆あげして休もうかな。なんせこのご時世、体温計の数値を出せばこっちのもんだからね…あいつにも言わないといけないことあるけど、下手なこと言って嫌われたくないわ~」

B「やっぱり、なんだかんだボート好きだし、好きなもんで負けたくないわー。今逃げたら自分を認めてやれないし、そもそも逃げない自分になりたくてボートやってんだよな~あいつにだって、伝わるかどうかは別にしても、自分が伝えたいことは伝えないと、なんも始まらないんだよなー」

みたいな感じです。

この両者の葛藤を、みなさんも日々繰り返しているのではないでしょうか。

なんにしても、自分を裏切らないためには、心の底に転がっている望みBの声を無視しないことが大切だと思います。

(ちなみに、自分はいろいろ考えたすえ、今年の七夕の願い事は「不撓不屈」にしました。我ながら中学生みたいだなと思いました。)

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(出艇するBREEZEクルー(平松・森田))

前置きが長くなりました。

女子部はこのところ、それぞれシングルスカルに分かれていましたが、7日から、シングルスカル(江口)となしペア(平松、森田)での練習が始まりました。

8月末のインカレ、東日本選手権に向けてのクルーです。

4年生コックスの大石は、男子のつきフォアの舵を取っていました

ふだんから女子の漕手のサポートをきめ細かくしてくれていますが、一方で彼女の本業は選手です。

男子漕手のクルー選考にもコックスとして参加していましたが、シートレースはめっちゃ気合い入れてたくさん勝てて楽しかったという話をしてくれて、個人的にはとても嬉しく思いました。

最後のインカレまであと2ヶ月弱、これまでやってきてよかったと思えるものを、自分の手で勝ち取ってほしいなと思っています。

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(乗艇後ミーティング中のつきフォアクルー)

誰でもそうですが、日々しんどい生活をしていると、つい心の表面にある望みに目がいきがちです。

もちろんそちらを優先してもいいときもありますが、何か大切な決断をするときは、心に耳を傾けて、なにが本当の望みなのかを見きわめる必要があります。

そうすればきっと、ネガティブな思いにつぶされそうになったり、あきらめたくなったりしても、
ささやかな喜びを見つけて、いやなことはうまくやり過ごして、
なにか一つをぎりぎり信じて頑張れるんじゃないかなと思っています。

女子部コーチ


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