最近のグローバル企業を見ると、敵の敵は味方という戦略で多くの組織が統廃合されていくという流れを見ることが出来ますが、統廃合が進んだ結果、市場がGoogleのような優れた戦略を組み立てられる企業による独占状態になり、最後には主役である個人がそういったグローバル企業に食われることになるのではないかという懸念を持つ人も多いかと思います。

私見ではGoogleはそのような下手な戦略はとらないと思いますが、将来的にそうなる可能性もありますし、もしそのような状態になった場合にマンモス企業に個人が対抗する方法について論じてみようかと思います。

Googleのようなネット企業の強みは、サービスを提供する側とサービスを受ける側の距離を極限まで狭めることができるというところかと思いますが、同時に、その機能を提供するインフラを維持するコストが甚大であり、また、今後もコストが増え続けるという弱点を抱えることになってもいます。
具体的に書くと、現在Googleのサービスを提供するのに必要なサーバマシンは200万台前後と膨大であり、また、ネットのコンテンツは増大していく一方ですし、配信されるコンテンツが高画質化すれば配信データ量も増大しますから、そのサーバ負荷は増大する一方ということになります。また、今後はtwitterのようなSNS型のサービスがより求められるようになると思いますが、SNS型のシステムは規模の増大に対して非線形的に負荷が増大するという特徴もあり、どこかでサーバの増強が追いつかずにサービスの質が悪化するという問題に直面することでしょう。

一方で、P2P技術という、利用者のPCのリソースを用いてサービスを提供する方法は、サービス提供者の負担を限りなく小さくします。また、適用可能なサービスも多く、ファイル共有、大規模ストリーミング、ビデオチャット、掲示板、SNSなどさまざまものが実現できます。そして、P2Pでは今までサービス提供者がサーバで提供していた機能を省略することが出来て、例えば数千台のサーバマシンを提供する必要があったところが1台のサーバマシンで済むようになったりするわけです。そうなると、ソフト開発者はインフラをほとんど持たずにサービスを提供できるようになりますし、個人の影響力がますます増大することになるのです。

ではなぜ今までP2P技術がなぜ流行らなかったのでしょうか?

動画配信技術としてのPeerCast、ファイル共有ソフトのWinnyなど単発では様々なソフトが出来ましたが、ブラウザに統合できなかったり、セキュリティの不安があったり、通信が安定しなかったり、ネットワーク全体のトランザクションを増大させてしまったり、通信エラー補正が脆弱だったり、ソフトの設定が面倒だったり、国内法の問題を回避できなかったりして、結果として流行りませんでした。このような問題はP2P技術の問題と捉えられがちですが、しかしそれらはP2P技術がメジャーでないことから発生する問題であったりします。

ではどうすればP2Pば普及するのでしょうか?

オープンソースプロジェクトでP2PのOSとも言えるようなソフトウェアの基盤となるソフトウェアをつくり、そのP2Pのプロトコルを標準化してしまえばいいのです。そうすれば、開発の敷居が高いといわれるP2Pソフトを簡単に作れるようになっていいソフトもたくさん生まれるでしょうし、P2Pプロトコルでデータアクセスするブラウザのプラグインも開発されることでしょうし、利用者が増えればより軽快な動作を求めるユーザのニーズからハード化もされることでしょう。また、簡単セットアップツールなども充実することでしょう。

例えば、導入障壁で使ってもらえないのは手間に対してリターンが小さいからであって、P2Pの標準プロトコルを決めて、それを動作させるLinuxOSのような標準プラットフォームを作って、その上にさまざまな人が自由にソフトを作れる環境を提供したらどうでしょう?いいソフトがたくさん生まれれば多少の導入障壁があっても導入するでしょう。
また、通信処理を安定化させたければハード化すればいいのです。P2Pにおけるネットワークノードの頻繁な切断が嫌ならばパソコンではなくルーターのような常駐型設備でバケツリレーのような処理をすればいいのです。P2Pがメジャーになれば、ハードベンダもそういったサービスの質を向上させるものを作るでしょう。
また、ネットワークのトランザクションを増大させたのは過剰なキャッシュや物理的なネットワーク配置を考慮しないトランザクションの影響であって、P2Pがメジャーになれば、通信インフラを管理する企業は、IPアドレスから物理的な通信機器の位置を簡単に取得する機能を提供してトランザクションの軽減に努めるでしょうし、ユーザ側も過剰なキャッシュや複雑なネットワーク経路によって重くなったサービスよりも、安定したサービスのほうを選ぶようになって結果として無駄なトランザクションが減る方向にバイアスがかかるでしょう。

以上の話を踏まえて、「Googleはそのような下手な戦略はとらないと思います」と言った理由を話しましょう。それはGoogleなど他のマンモス企業もいずれサーバを維持するのが辛くなりP2P技術を積極的に導入すると考えているからです。
そういえば、HTML5と並行して規格化されている技術にWebSocket、LocalStorage、Web Workersなどがあります。これらの技術はP2P技術に応用できる可能性がありますが、ひょっとしたらP2P技術に本格参入する伏線なのかもしれませんね。

しかし、こういう変化の時代に、日本には未だにP2P技術を潰そうという動きがあります。例えば、Googleのサーチエンジンにおいて当たり前に使われていたサーバキャッシュ技術は10年くらい前からメジャーな技術でしたが、日本のIT企業では今年までそのような技術を使うことが法律で禁じられていました。ようやく決まった法律も曖昧で運用が恣意的なものになりそうですし、また、P2P規制の意図を感じる法案もいろいろ通りそうだったり通ったりしています。
また、P2Pソフトの開発者の逮捕を契機に自分自身のプログラムコードを他人に流用されて逮捕されるというリスクを回避するために日本のオープンソースコミュニティは壊滅して、結果として、海外のオープンソースコミュニティに標準規格の決定権を完全に奪われてしまいました。
今でもねとらじやPeerCast利用者の逮捕などP2Pシステムの逮捕者が多いのが目に付きますが、その結果としてP2P利用者が激減していますし、やはりP2P技術を潰したいのでしょう。

しかし今はグローバル社会ですから、国内利権がこういう感じで国内の動きを封じている間に、外資に国内市場を奪われることでしょうし、日本は黒舟来航のときのように海外からの圧力からでしか変われないのかもしれません。

国内利権もこういうP2Pの技術を使ったほうが安くサービスを提供できるでしょうし、増大するネット世界に拠点を置いたほうが利用者も増えるでしょうし、結果として収益が増大するのですが、変われない組織というのは救いようがないものですね。

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