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2016年4月に開催した「ひきこもりUXフェス」を『ひきこもるこころのケア』編者の杉本賢治さんにレポートしていただきます。前中後編、まずは前編からどうぞ!

「ひきこもりUXフェスティバル」というものに参加してみた。

今回は第2回目で、1回目は320人もの集客があったという。「なんじゃそりゃー?」である。
「ひきこもり」と「ひとだかり」最も組み合わせとして相性がよくないじゃん、人酔いして具合が悪くなる人がいないかしらん?あるいはひきこもりの人だけがくるわけじゃないとすると、親とか、支援者とか、研究者とかが集まるのかしら?

そんないくつものクエスチョン・マークを抱きながら今回の第2回目に参加することにしたのはこの会議を運営している元当事者の人たちに個別インタビューをさせてもらいたいという、もうひとつの目的もあったから。

そのやりとりの過程で「当事者目線でレポートを書いて欲しい」という依頼を受けることに相成ったわけである。

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場所は「大田区産業プラザpio」というところ。羽田空港から京急線に乗って蒲田駅に降りればすぐの場所だ。おまけに蒲田駅は羽田からえらく近い。駅から二つ目。

午後1時5分羽田着のフライト疲れがとれないまま、あっという間に会場に着いた。関係者控え室で昼食をいただいてる間、運営者の林恭子さんが挨拶に来てくれたり(ものすごくしっかりした人です)

ひきこもり名人の勝山実さんが「俺の弁当どこ?」と姿を現したり(午前にトークステージの仕事をこなしていたのだ)

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自分が会場に着いたのは午後1時40分頃だったので、昼食をいただいたあとは「交流スペース」で2時から始まる横浜の自助会「STEP」会合にまずはお邪魔。

交流スペースは3つあって、その中には「ひきこもり居酒屋」もある。「STEP」世話人の近藤さんによる例会の進め方ガイダンスを聞きながら、自分は自己紹介のみで次のトークステージに移動する。

会場はメイントークステージのみならず、3つの交流スペースや各種団体のブースも出ているので、やはり会場全体にざわつきがあり、なかなかおちついたひきこもり自助会ペースは作りにくく、近藤さんも大変な部分もあったんじゃないだろうか。

自助会、人もだいぶ集っていたし、声も丁度真向かい一番後ろ側にいた自分には聞き取りづらかったりしたので(当方の聴力が衰えてるせいもあるが)

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さて、2時15分から始まった「働く」のトークセッションへ。
おお、そういえば今回のUX会議のメインテーマは『生存戦略』だったのだ。心に響くテーマだ。「働く」トークのゲストは日本財団の竹村利道さん。

主催者側の聞き手は恩田夏絵さんと室井さん。障害者とともに働いてきた竹村さんは高知で「与える」福祉ではなく、障害者とともに一緒に作る福祉を目指して活動してきたらしい。(夜の仕事も拒まないスタンスだったそうな)。明るく、快活そうな人だ。

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私は恩田さんの不登校・ひきこもりに関する支援の問題意識の立て方にうなづくことが多かった。「何かをしてあげる・社会へ引き上げる」関係ではなかろう、「支援する側・支援される側」の関係性ではないだろうと。

恩田さんが言うには、それまで自分が手を携えたいと思える人がなかなか見つけられなかったけれど、竹村さんはそれに該当する人だったと。(この、『ひきこもり業界枠』以外の接点を見つけることの意味は大きいのではないかと。それはこのあとの話し合いでも思った)

そして働きかたには「いまある社会の本流に寄り添っていくこと」か、それとも「全然違う生き方を志向する働きかた」か、二つではないかと。

竹村さん曰く、働くことは「対価を得る、ということではないと思う。でもやはり働くって大事なことだ」と。 社会人とは「社会に関心を持つ人」「社会につながっている人」ではないかと思う、と。それは自分も聞いていて、もっともだと思った。「外圧的な働きかたはしなくていい」とも言っていた。

実はこの「働く」議論は、次のセッションで話が出たハンナ・アーレントの議論にもつながるものだ。

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このあとあたりから、恩田さんの側からスリリングな展開が始まる。「仕組みをもうちょっと変えるべきでは。『普通』や『本流』でない仕事もあるでしょう。いまあるものに戻そうというのではダメ、別の方向を探しましょうよ」と。

応じる竹村さんは「普通」じゃないほど素晴らしいものはない、普通じゃない体験を経た上での、普通じゃない仕事を作ればよろしい」と。「こういう場からそういう人が現れてくるような」

会場からは「当事者の人たちは自分の問題を深いレベルで考えて言語化できる人がいる。そういう研究者たち(当事者研究を極めようとする人のこと?)が集まる店を作れないか」という趣旨の提案も。

このあたりから、僕の頭の中でいまある普通の仕事群に適応を目指していく方向ではない仕事。それって何があるだろう?どのような方向でありえるだろう?とグルグル回転を始める。

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このトークセッションは壇上にある人たちと、持ち時間終了後30分間アフター・トークする時間があるのだけど、僕も自ずと興味を惹かれてそのまま居残り。気がつけばかなりの数の人たちがアフタートークにそのまま移行している。

「ひきこもりと働くこと」のテーマは非常に関心度が高い事柄なんだな、と改めて実感した。ネットを使って新しい仕事を作れないか、ひきこもりの人が苦手とする輪(家族の輪、仲間の輪、近隣の輪)から離れ、輪の外側に仕事を作れないか、など。

僕も発言させてもらって、ひきこもり体験が貴重な時間だったとしても、普通の社会側がそれを受け入れ難い状況ならば、ひきこもり体験を生かす方向を考えるしかない。

それが「ひきこもりとはなんだったのか」という視点での研究者や支援者へのインタビュー本の作成の試みだったとお伝えした。

ただ、あの場では伝えられなかったけれど、ひきこもり当事者間の間での共通認識があったとしても、その外側の社会に広い接点を持つ理解者との出会いがないと、仕事へ展開していくのは現状ではやはり難しい。

まさにUXフェスのメンバーはその意味では各自がそれぞれ社会的認知を持たれている人とつながりや接点があって、そういう人脈を持つ人たちとの合わせ技でフェスを成立させていると思うので、「仕事を作る」という目標を考える際には、今回の運営者たちのような動きかたがひとつの指標、ロールモデルになるのではないかと思う。
もちろん彼らのような活動力を持つのは難しいので、等身大の自分でどう接点を持てるかという話です。

アフタートークの際、竹村さんは「お金にできる形はあるかな?」とつぶやいていた気がするが、もしベーシックインカムが導入されたとして、「それでもひきこもりと呼ばれる人は働かないのか」ということに自分は興味がある。ぼくはそれなりにひきこもりの人は「働くと思う派」だ。

竹村さんがいうように、「社会に関心がある」し、「矜持」が欲しいからだ。ただ、「矜持」と言ったとき、日常においてつねに人には矜持が必要か、ということもある。矜持を求め続ける強迫観念というのもあるだろうから。

そのような、働くテーマに話が尽きない熱気が残ったまま、トークステージのラストは「生きづらさ」へ…

>>「UXフェス/レポート中編「生き辛さをどうする」 by杉本賢治」はこちらから

レポーター
札幌市 杉本賢治



【レポータープロフィール】
杉本賢治(すぎもと けんじ)
札幌市。経験者が聞く10のインタビュー『ひきこもる心のケア』(世界思想社)。中井久夫推薦! ナンチャッテ社福士。排除を関心領域に社会保障に興味あり。趣味はマイナーな音楽を聴くこと、寝ること。
WEBサイト インタビューサイト「人と社会を考える」