腑抜けども、悲しみの愛を見せろ(2004)
作・演出:本谷有希子
2010.09.29.
鑑賞状況:良好 友人からレンタル
uzazo評価:★★★☆☆(コワカワ)
オモシロイ。
本当にオモシロイんですが・・・
「幸せ最高ありがとうマジで!」に続き
ボクにとって2作目の本谷作品を友人からのレンタルにて鑑賞。
2本しか観ていない新参者が何言ってやがる。と言われそうだが
なるほど。確かな作家性を感じる事ができました。
これは確かに本谷ワールドだなぁ。と。
「ドS」を装った「ドM」感ですね。(笑
注)本谷さんがそうだという訳ではありませんので。
面白かったです。本当に面白かったんですが・・・
あくまでも新参者の戯言ととらえていただきたいのですが
「幸せ最高〜」と比べてしまうとどうしても見劣りするんですよ。
そもそも比べて観るなという話でもありますが
2本しか観ていない上に最初に観たのが好きだと
どうしても比べて観てしまう。
「腑抜けども〜」は映画化もされましたし小説化もされてます。
ボクでもタイトルを知っているぐらいの注目作。
キット評価も高い作品だと思うんですが
「幸せ最高〜」で感じた突き抜けた感が感じられなかった。
これは観た順番による印象なのかもしれません。
また本質的な内容ではなく照明や音楽の影響も大きいです。
それと収録環境とか。台詞のニュアンスが聞き取りにくいので
本来の面白さが激減している可能性もあると思います。
ただ、それらを抜いて考えてみても
陰湿・悲惨な状況を全体としてはカラリと
ジュクジュクした部分はジュクジュクと。みたいな
神懸かり的な焼き加減(なんだそりゃ?w)に
魅力を感じているんですが「腑抜けども〜」は
その振り幅が小さく感じました。
例えば登場人物に起こる出来事が悲惨は悲惨なんですが
割と整理されていて飲み込みやすい(理解しやすい)作りで
しかも1つのベクトル上で順番に関係性が見えてくる仕掛けなので
あかされる いびつな関係性に驚きが少なく
壊れ方も許容範囲を超えて行かない感じなんです。
ゆえにカラリとジュクジュクのジャンプ率も
小さくなってしまっている気がします。
また再演という事ですが
この DVDでは円形劇場での公演との事。
ボクがみた2本の本谷作品の演出から考えると
この劇場で1つの部屋で物語が進むというのは
必然だと思いますし合理的だと思うんです。
しかし暗転による時間経過で内容が薄まっている感じがする、
一方「幸せ最高〜」は三単一の劇構造になっているので
見せびらかされる不幸がギュッと濃縮されている。
1つの部屋で物語りが進む「腑抜けども〜」
いくつもの部屋や場面で描かれる「幸せ最高〜」。
単純に考えると「幸せ最高〜」の方が映画向きのように思える。
しかし1つの場、1つの時間という枠を持ちその枠自体が
物語りの推進力になっている「幸せ最高〜」より
「腑抜けども〜」の方がカットを割ってテンポ感を出したり
アップや切り返しで見せる部分を強調したり
映画化ならではの表現で見せられる部分が多い気がしました。
もちろん気がしているだけで
どんな映画になっているのか定かではありませんが。
こんど機会があったら映画版の「腑抜けども〜」
観てみたいと思います。
これは逆に言えば「幸せ最高〜」は舞台表現としての
魅力が詰まっていて舞台でこそのオモシロさがあるという事。
ただ内容を思い出しながら感想を書いているのですが
ログラインだけ抜き出して考えてみると
やっぱりオモシロイんですよね。
というか、かなりオモシロイ。
やっぱり観た順番は大きいのかなぁ。。。
---追記---
オフィシャルサイトを覗いてみたら第一回公演の作品なんですね。
だとすると再演で手直ししたとしても骨格は過去のモノですから
「腑抜けども〜」から「幸せ最高〜」の間では
作家としてどんどん成長している部分なのかもしれないですね。