2017年01月07日

コラプティオ

作:真山 仁

舞台は東日本大震災後の日本。
震災後の復興に奔走して時代の寵児となり、一気に総理大臣まで登り詰めたカリスマ政治家の光と影を、その秘書官と新聞記者の目線から描き出している。

それぞれの立場、たち位置から一人の人物を見た印象がどう変わってくるのか。
仕事に対する信念や人間性も含めて受け止め方の違いがいい具合に描かれている。

またそれぞれの周りに配置された関係者のキャラクターも癖があって面白い。

治家はその言葉で良くも悪くも国を導き、ジャーナリストが使う言葉は体制を批判し、あるいはまつり上げる。

以前紹介した神家 正成さんの「深山の桜」という作品でPKOのイビツさを描いていた。
今作でも国際協力という美名の元にエゴイスティックな欲望を隠して押した横車が、小さくない不幸を呼ぶ図式を違ったアプローチで描き出している。
  
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2016年12月31日

はやくも

edf93254.jpgぼけ開花。

暖かい日が何日かあったからなぁ。
例年だと1月末から2月の半ばくらいなんだけど。
  
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2016年12月24日

ロボット・イン・ザ・ガーデン

作:デボラ・インストール

ポンコツロボットとポンコツ中年を主人公にしたロードムービー的作品。

両親を飛行機事故で亡くして以来、それまで取り組んできた獣医師の勉強を放り出し、遺産に頼って生活を続けるベン。
弁護士としてのキャリアを重ねる妻は、そんな夫にストレスを感じ、すれ違ってばかり。

そんな夫婦の家の庭に、ある日小学生の図工作品と見紛うようなロボットが座り込んでいた。
そのロボットへの対応を巡り、夫婦の齟齬は決定的となり妻は家を出ていく。

ベンは少ない情報を頼りにイギリスの自宅からアメリカへ、そのロボットを修理する為の旅に出る。

様々なハプニングや出会いを通じて二人(?)の間に芽生える絆や成長。
やがて明らかになるそのロボットの出事。

ロボットが主人公の割に正直SF的な要素は皆無と言っていいと思います。
むしろ大人の為に「みにくいアヒルの子」をスーパーアレンジしたような。

作家さんはそんな積もり全く無いのかもしれませんが。
  
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2016年12月14日

Sの継承

作:堂場 瞬一

日本の政治システムの変更を求めて革命に邁進する男逹、またそれを阻止すべく戦う警察官の活躍を描いた作品。

物語り冒頭、群馬県で突如発生する毒ガス事件。
警視庁から派遣された警部は、県警が捜査を仕切っていく様に安堵を覚える。
しかし毒ガス発生現場から白骨化した死体が発見され、さらに都内でも事件を起こす準備があるとの犯行予告が警視庁へ寄せられるにいたり、彼は暗澹たる思いに捕らわれる。

ここで物語りは学生運動末期のデモや安保闘争が世間を騒がせている頃へさかのぼる。

世間の狂騒をよそに秘かに進行する革命の計画。
いくら大規模に行ってもデモでは国を変革することは出来ないと、旧日本軍が研究していた毒ガス(通称「S」)を完成させ、少数の仲間だけで事に臨もうとする。

そして後半部は再び現代へ、犯人の予告通り渋谷で発生する毒ガス事件。

犯人は国会議員の総辞職と官僚主体の政治システムへの移行を要求。
ネット上に上げられる犯行声明や犯人の思想は、ネットの住民逹から一定の評価を受ける。

毒ガスで不特定多数の国民の命を人質に退陣を迫られた政治家の対応。
徐々に明かされる犯人の素性。
対応する警察官の意地と心意気。

毒ガスを武器に都民の命を人質に取って立て籠る犯人、解決への突破口はどこにあるのか。

安全保障法案や原発政策にからんで国会議事堂周辺に多くの人が集まった映像は記憶に新しい。
それでも体制は小揺るぎもしなかった。
今、彼等はみんな諦めたのか、あるいは冷めたのか。
それとも別の手法に乗り換えたのか。
  
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2016年12月07日

大翔製菓広報宣伝部 おい!山田

作:安藤 祐介

業績が伸び悩む菓子メーカーが一人の社員を「ゆるキャラ」に起用するという手に打って出た。
その「ゆるキャラ」に指名された山田助(やまだたすく)は笑顔を絶やさない行動派。
しかし余りに突飛な「人間ゆるキャラ」は様々な部署から「ふざけている」ととらえられて総スカンを食らう。

果たして山田はゆるキャラとして生き残ることが出来るのか?
一見無責任な部長の思惑とはなんなのか?
そして社内恋愛の行く末はいかに?


比較的ライトなタッチで描かれるストーリーを通して仕事や会社との向き合い方を見つめていく本作は、全体的に理想主義的な印象である。
その為にいい大人が読むと青臭く感じるかも知れないが、その青臭さがなんとも言えない眩しさを放っている。
  
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2016年11月30日

ママの狙撃銃

作:荻原 浩

主人公は二人の子供を持つ一見平凡な主婦。
夫は腑抜けだがおおらかな性格。
中学に上がったばかりの娘は難しい年頃に差し掛かり、世間との齟齬と折り合えずいじめられている気配。
幼稚園児の息子は甘えたいさかり。

ある日一本の電話があり、日本で再び仕事を受けてみる気はないかとの誘いを受ける。

幼少の頃にアメリカ人の祖父(元陸軍のスナイパーで暗殺者)と二人で暮らしていた彼女は、その祖父から射撃の手解きを受けて成長した。
祖父には射撃以外にこれといった特技はなく、幼い孫に教えられるものがそれだけだったのだ。
いつの間にか卓越した技量を身に付けていた彼女は、とある事情からやむを得ず一件の暗殺を請け負う。

その彼女の過去を知る依頼主の事を彼女は何も知らない。

今の生活が壊されるのでは、家族に危害が及ぶのではという恐怖から依頼を断ることが出来ない彼女は、祖父の唯一の形見であるライフルを携えてその場所へ赴く。

何より二人の子供の健やかな成長を願いながら、他人の命を奪わなければならない事に激しく葛藤し、それでも家族を守る為に孤軍奮闘していく。


日本人の主婦がスナイパーとかって正直どうなの?というような懸念は無用。
無理目な設定とみせつつ破綻なく進む物語りで、母として、妻として、暗殺者として、そして人間としての彼女の有り様が迫ってくる。
  
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2016年11月25日

約束の森

作:沢木 冬吾

主人公は妻が殺人事件の被害者となった事をきっかけに道を踏み外した元公安の刑事。
職を辞し世捨て人の如く日々をおくっていた彼の元へ、現職から潜入捜査の依頼がもたらされる。
彼にその依頼を受ける気にさせたのは、潜入先の資料として見せられた写真の一枚に写っていたドーベルマンの人を拒絶する目だった。

現場は寂れた地方のモーテル。
一般客向けのいくつかのコテージから更に奥の森の中に隠された建物があり、様々な分野の人間が表に出せない会合や遊興に使っているとのこと。

現場に着いた彼は任務の詳細を知らされる。
公安内部で半ば都市伝説の様に語り継がれる「N」という組織、その「N」の重要人物の娘と親子としてそこで生活し、「N」を炙り出そうというのだ。
彼は指示により二人の若者と暮らしながら、ドーベルマンの心を取り戻す事に注力していく。

前半は主にドーベルマンと主人公の関わりや、登場人物の過去にスポットが当てられ、物語りへ引き込まれて行く。

そして後半、「N」を釣り出すという作戦に隠された裏の目的が浮かび上がり、諸々の謎がサスペンス要素を盛り上げながら怒濤のアクションシーンへと雪崩れ込む。

登場人物それぞれにストーリーがあり、癖があり、作者がキャラクターへ寄せる愛がある。

いびつな生い立ちや過去を持った三人と一匹のドーベルマンと一羽のオウムからなる偽の家族は、見知らぬ土地での共同生活と事件を経てどのような結末を迎えるのか。

骨太なハードボイルドでありながら、随所に見せる人間臭さやユーモアが肩の力を良い加減に抜かせてくれる。
  
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2016年11月18日

悲しみのイレーヌ/傷だらけのカミーユ

作:ピエール・ルメートル

以前紹介した「その女アレックス」の前後作。
同じくカミーユ・ヴェルーヴェン警部の活躍が描かれたサスペンス作品。

「悲しみのイレーヌ」は随分前から書店にあるのを認識していたのだが、「その女アレックス」を先に読んでしまった為に結末が見えてしまい中々手に取れなかった。
それでも作品のクオリティは高い筈だと、ちょっとした覚悟を持って読み始めた。

やはり推理小説としての精度は素晴らしい。
でも結末を知りながら読むのはあまりに切ない。
というかツラい。


一方の「傷だらけのカミーユ」はアレックスの1年後という設定。

過去の悲劇から立ち直ったカミーユに再び悲劇が降りかかる。
それに立ち向かうカミーユは暴走を繰り返し、まさに傷だらけになりのたうち回り、翻弄されながら事件に立ち向かっていく。


いずれもクオリティの高いサスペンス作品でありながら、主人公への容赦無さ加減が半端ない。
  
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2016年11月07日

ニルヤの島

作:柴田 勝家

ペンネームと作品の内容があまりにもかけ離れているのだが、これは近(?)未来のミクロネシアを舞台にしたSF作品だ。

人生に起こる出来事、それに対する感情や行動を逐一ログとして記録していくシステムが構築されたことにより人生の再現が可能となった世界。
そこでは「死後の世界」という概念が崩壊し、それを担保する事が重要な役割であった宗教が存在意義を失った。

テクノロジーによって人生の再現が可能になりました。
だから死後の世界は無くなりました。
結果、宗教が不要になりました。
という論法には疑問符が付きますが、それはまぁそういうものとして受け入れないと先に進めない。

物語りというにはあまりに散文的で、それでもこれは何かと言えばやはり物語りなんだろう。

基本的に3つのパートが時間軸を前後させながらバラバラに重なりあっていき、読んでいて置いてきぼりにされない様にひたすらしがみついていってる内に、気が付けば結末に集約していた。

このままテクノロジーが進化していけば宗教や神というモノにも新しい展開があるだろうという認識は納得。

押井守監督の映画に見るような観客置き去り感があり、M気質な人ははまるかも。
  
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2016年10月31日

さなぎ

91e7d682.jpgなんの?

ベランダのスミレの葉っぱを食い荒らしていた毛虫(全体に黒くて背中に朱色のライン)
片っ端から駆除していたのだが、監視の目を掻い潜って一匹だけサナギになった。

形はアゲハのと似てるけど、刺々してて銀色の斑点あり。

正体不明。
  
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