2017年02月16日

不死症(アンデッド)

作:周木 律

いわゆるゾンビものの推理小説。

この手の作品はマンガやゲーム、映画やもちろん小説でも多数提供されており、それぞれ趣向を凝らして独自性を演出していると思いますが、この作品では何が原因で問題が発生したのか究明していく所を肝に据えています。

色々調べてあれやこれや考えて創られたのでしょうが、読後の感想としては「なんだかなぁ」といったところ。

ゾンビものなので勿論アクションあり、確執あり、さらに恋愛ありと王道の要素は網羅してあります。

それでも前途のように感じてしまうのは、登場人物の感情の動きに共感出来ないというか、リアリティが感じられないせいなのかと。

ある事柄を人生の目標とするに至った経緯、作中で発生するイベントへの対処、自衛官の立ち居振舞い、そして特にラストでヒロインが取る行動。

読んでいて随所に首を傾げる場面が多い印象でした。
  
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2017年02月02日

バイ貝

作:町田 康

ある小説家を主人公に、現代人の消費活動を皮肉った娯楽小説。

現代人は鬱を貯めながら活きている。
それを発散する為に消費活動するが、その消費を支える費えを担保する為の労働により更に鬱を募らせる。

というジレンマに敢然と立ち向かう小説家。

町田節炸裂のナンセンスで支離滅裂な展開の連続。
こういうぶっ飛んだ論法やワードはどうやって捻り出されてくるものか。
別に何も難しいこと考えなくてもスイスイ出てくるよ。
って事なのか、自分の世界観を維持する為に七転八倒してるんだ。
って事なのか、非常に興味深い。
  
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2017年01月22日

黒豚姫の神隠し

作:カツミキレイニー

沖縄の離島を舞台にしたファンタジーホラー絡みの青春小説。

島には人の出す負の感情、「淀み」を食べる豚の神様の伝承がある。
皆の淀みを引き受けた豚神は穢れ神となり忌み嫌われ、孤独を紛らす為に子供を拐うという。
実際7年前に神隠しがあってから、大人達は子供の夜歩きに異常なまでに神経質になっている。

主人公は中学3年生。
閉じられた島の生活に辟易し、外へさえ行ければ何かが変わるという妄想と共にくすぶっている。

クラスに全く馴染もうとしない東京からの転校生が、ある日音楽の授業で披露した歌声に衝撃を受けた彼は、その転校生を主人公に映画を撮るというアイデアに躍起になる。

彼女に近付こうと奮闘しドタバタを繰り広げ、結果的にその秘密に迫っていく。

沖縄という土地が神秘的な説得力を持っているという前提は安易かもしれないが、そこが作者の育った場所でかつ基本的にこれは青春小説で純な少年の無鉄砲さや家族愛を描いた作品であり、オカルトやファンタジーは味付けに過ぎないのだと受け止めればさして嫌味ではない。
  
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2017年01月07日

コラプティオ

作:真山 仁

舞台は東日本大震災後の日本。
震災後の復興に奔走して時代の寵児となり、一気に総理大臣まで登り詰めたカリスマ政治家の光と影を、その秘書官と新聞記者の目線から描き出している。

それぞれの立場、たち位置から一人の人物を見た印象がどう変わってくるのか。
仕事に対する信念や人間性も含めて受け止め方の違いがいい具合に描かれている。

またそれぞれの周りに配置された関係者のキャラクターも癖があって面白い。

治家はその言葉で良くも悪くも国を導き、ジャーナリストが使う言葉は体制を批判し、あるいはまつり上げる。

以前紹介した神家 正成さんの「深山の桜」という作品でPKOのイビツさを描いていた。
今作でも国際協力という美名の元にエゴイスティックな欲望を隠して押した横車が、小さくない不幸を呼ぶ図式を違ったアプローチで描き出している。
  
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2016年12月31日

はやくも

edf93254.jpgぼけ開花。

暖かい日が何日かあったからなぁ。
例年だと1月末から2月の半ばくらいなんだけど。
  
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2016年12月24日

ロボット・イン・ザ・ガーデン

作:デボラ・インストール

ポンコツロボットとポンコツ中年を主人公にしたロードムービー的作品。

両親を飛行機事故で亡くして以来、それまで取り組んできた獣医師の勉強を放り出し、遺産に頼って生活を続けるベン。
弁護士としてのキャリアを重ねる妻は、そんな夫にストレスを感じ、すれ違ってばかり。

そんな夫婦の家の庭に、ある日小学生の図工作品と見紛うようなロボットが座り込んでいた。
そのロボットへの対応を巡り、夫婦の齟齬は決定的となり妻は家を出ていく。

ベンは少ない情報を頼りにイギリスの自宅からアメリカへ、そのロボットを修理する為の旅に出る。

様々なハプニングや出会いを通じて二人(?)の間に芽生える絆や成長。
やがて明らかになるそのロボットの出事。

ロボットが主人公の割に正直SF的な要素は皆無と言っていいと思います。
むしろ大人の為に「みにくいアヒルの子」をスーパーアレンジしたような。

作家さんはそんな積もり全く無いのかもしれませんが。
  
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2016年12月14日

Sの継承

作:堂場 瞬一

日本の政治システムの変更を求めて革命に邁進する男逹、またそれを阻止すべく戦う警察官の活躍を描いた作品。

物語り冒頭、群馬県で突如発生する毒ガス事件。
警視庁から派遣された警部は、県警が捜査を仕切っていく様に安堵を覚える。
しかし毒ガス発生現場から白骨化した死体が発見され、さらに都内でも事件を起こす準備があるとの犯行予告が警視庁へ寄せられるにいたり、彼は暗澹たる思いに捕らわれる。

ここで物語りは学生運動末期のデモや安保闘争が世間を騒がせている頃へさかのぼる。

世間の狂騒をよそに秘かに進行する革命の計画。
いくら大規模に行ってもデモでは国を変革することは出来ないと、旧日本軍が研究していた毒ガス(通称「S」)を完成させ、少数の仲間だけで事に臨もうとする。

そして後半部は再び現代へ、犯人の予告通り渋谷で発生する毒ガス事件。

犯人は国会議員の総辞職と官僚主体の政治システムへの移行を要求。
ネット上に上げられる犯行声明や犯人の思想は、ネットの住民逹から一定の評価を受ける。

毒ガスで不特定多数の国民の命を人質に退陣を迫られた政治家の対応。
徐々に明かされる犯人の素性。
対応する警察官の意地と心意気。

毒ガスを武器に都民の命を人質に取って立て籠る犯人、解決への突破口はどこにあるのか。

安全保障法案や原発政策にからんで国会議事堂周辺に多くの人が集まった映像は記憶に新しい。
それでも体制は小揺るぎもしなかった。
今、彼等はみんな諦めたのか、あるいは冷めたのか。
それとも別の手法に乗り換えたのか。
  
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2016年12月07日

大翔製菓広報宣伝部 おい!山田

作:安藤 祐介

業績が伸び悩む菓子メーカーが一人の社員を「ゆるキャラ」に起用するという手に打って出た。
その「ゆるキャラ」に指名された山田助(やまだたすく)は笑顔を絶やさない行動派。
しかし余りに突飛な「人間ゆるキャラ」は様々な部署から「ふざけている」ととらえられて総スカンを食らう。

果たして山田はゆるキャラとして生き残ることが出来るのか?
一見無責任な部長の思惑とはなんなのか?
そして社内恋愛の行く末はいかに?


比較的ライトなタッチで描かれるストーリーを通して仕事や会社との向き合い方を見つめていく本作は、全体的に理想主義的な印象である。
その為にいい大人が読むと青臭く感じるかも知れないが、その青臭さがなんとも言えない眩しさを放っている。
  
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2016年11月30日

ママの狙撃銃

作:荻原 浩

主人公は二人の子供を持つ一見平凡な主婦。
夫は腑抜けだがおおらかな性格。
中学に上がったばかりの娘は難しい年頃に差し掛かり、世間との齟齬と折り合えずいじめられている気配。
幼稚園児の息子は甘えたいさかり。

ある日一本の電話があり、日本で再び仕事を受けてみる気はないかとの誘いを受ける。

幼少の頃にアメリカ人の祖父(元陸軍のスナイパーで暗殺者)と二人で暮らしていた彼女は、その祖父から射撃の手解きを受けて成長した。
祖父には射撃以外にこれといった特技はなく、幼い孫に教えられるものがそれだけだったのだ。
いつの間にか卓越した技量を身に付けていた彼女は、とある事情からやむを得ず一件の暗殺を請け負う。

その彼女の過去を知る依頼主の事を彼女は何も知らない。

今の生活が壊されるのでは、家族に危害が及ぶのではという恐怖から依頼を断ることが出来ない彼女は、祖父の唯一の形見であるライフルを携えてその場所へ赴く。

何より二人の子供の健やかな成長を願いながら、他人の命を奪わなければならない事に激しく葛藤し、それでも家族を守る為に孤軍奮闘していく。


日本人の主婦がスナイパーとかって正直どうなの?というような懸念は無用。
無理目な設定とみせつつ破綻なく進む物語りで、母として、妻として、暗殺者として、そして人間としての彼女の有り様が迫ってくる。
  
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2016年11月25日

約束の森

作:沢木 冬吾

主人公は妻が殺人事件の被害者となった事をきっかけに道を踏み外した元公安の刑事。
職を辞し世捨て人の如く日々をおくっていた彼の元へ、現職から潜入捜査の依頼がもたらされる。
彼にその依頼を受ける気にさせたのは、潜入先の資料として見せられた写真の一枚に写っていたドーベルマンの人を拒絶する目だった。

現場は寂れた地方のモーテル。
一般客向けのいくつかのコテージから更に奥の森の中に隠された建物があり、様々な分野の人間が表に出せない会合や遊興に使っているとのこと。

現場に着いた彼は任務の詳細を知らされる。
公安内部で半ば都市伝説の様に語り継がれる「N」という組織、その「N」の重要人物の娘と親子としてそこで生活し、「N」を炙り出そうというのだ。
彼は指示により二人の若者と暮らしながら、ドーベルマンの心を取り戻す事に注力していく。

前半は主にドーベルマンと主人公の関わりや、登場人物の過去にスポットが当てられ、物語りへ引き込まれて行く。

そして後半、「N」を釣り出すという作戦に隠された裏の目的が浮かび上がり、諸々の謎がサスペンス要素を盛り上げながら怒濤のアクションシーンへと雪崩れ込む。

登場人物それぞれにストーリーがあり、癖があり、作者がキャラクターへ寄せる愛がある。

いびつな生い立ちや過去を持った三人と一匹のドーベルマンと一羽のオウムからなる偽の家族は、見知らぬ土地での共同生活と事件を経てどのような結末を迎えるのか。

骨太なハードボイルドでありながら、随所に見せる人間臭さやユーモアが肩の力を良い加減に抜かせてくれる。
  
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