2017年09月24日

シートン探偵記

作:柳 広司

ご存知「シートン動物記」の作者であるシートン博士に取材に訪れた記者が、動物達の行動をきっかけとして解決した数々の事件の話しを聞いていく。

いわゆる推理小説ではあるのだが、「ジョーカーゲーム」を始めD機関の活躍を描いた複数の作品なんかと比べると随分軽いタッチだ。

シートンをホームズに、記者をワトソン役に配して「名探偵ホームズ」的な謎かけと種明かしが繰り返される。

シートンを主人公にしてホームズやってやろう。という発想はどこから湧いて出たものか。
シートンもコナン・ドイルも亡くなって久しいが、こうやって彼らの「新作」を手にする事ができるのは、芸術家の遺伝子がその作品によって受け継がれることの証明でしょう。
  
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2017年09月11日

キネマの神様

作:原田マハ

10年前の作品です。
今まで素通りしていて申し訳ありませんでした。

40手前で退職した主人公の女性と、ギャンブル依存性の父。
二人を繋いだのは「映画」と「映画の神様」だった。

そして映画の神様は二人に関わる人々をも抱き込んで大きなうねりを生み出していく。

物語りの作りは以前紹介した「本日は、お日柄もよく」と似たところがあるが、許容範囲内。
作中で随所に語られる映画や映画館、それを生み出した人間への愛情が紡ぎだす感動は、そんな些末な事を吹き飛ばして余りある。
  
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2017年08月30日

極卵

作:仙川 環

吉祥寺の自然食品店で販売された高級卵が原因で大規模な食中毒事件が発生する。

雑誌記者、販売員、被害者、そして生産者。
関わった人々の立場や感情、思惑を通してその原因を暴いて行く、というサスペンス作品。

全体としては遺伝子組み換えとか利益至上主義とかに警鐘を鳴らしてみようという感じ。
ひたむきな生産者がいて、歪んだ正義を振りかざす消費者団体や企業の技術者やマスコミがいて、それぞれの思惑により傷つく人がいる。

人間ドラマを描いたサスペンスだと思えば間違いないか。
  
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2017年08月08日

にじいろガーデン

作:小川 糸

ちょっと不思議な運命によって繋ぎ止められた一つの家族の物語り。

二人の母、それぞれの息子と娘の4人で片田舎での生活を、家族を構成する4人の主観で計4章で綴っている。

登場人物がそれぞれ魅力的で、いささか浮世離れした感は否めないものの、温かい気持ちで読み進められる。

で、あるが故にラストに発生する事件には疑問を感じてしまいました。
  
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2017年07月30日

政と源

作:三浦 しをん

東京の下町を舞台に、幼なじみの二人の老人が活躍する人情もの。

家庭を顧みずに仕事に打ち込み、定年を迎える頃には妻と娘に愛想をつかされた主人公の老人。
一方の幼なじみは昔気質の職人で、こちらは妻に先立たれ独り身である事は違いないが、彼を慕うヤンチャな弟子とそれなりに陽気な生活を送っている。

その二人の腐れ縁を、微笑ましく温かにちょっぴり切なく、最終的には爽やかに描き出している。

NHKの夜ドラマとかに良さそう。
  
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2017年07月14日

はす

58640b98.jpg花が咲くまで気付かなかった。
つぼみは水の中でちゃんと膨らんでいたらしい。
  
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2017年07月06日

バッタを倒しにアフリカへ

著:前野ウルド浩太郎

一人の昆虫学者が海を渡り、はるかアフリカ大陸西部に位置するモーリタニアで「神の罰」サバクトビバッタに戦いを挑む自叙伝。

普段手にすることのないジャンルの読み物だが、タイトルと表紙に惹かれて衝動買いした。

昆虫学者である前野氏は、昆虫学者として生計を立てる難しさに直面する。
何とかひとかどの学者として認められ、一定の収入を得る為に、その生態に謎を多く残すサバクトビバッタを研究しようと単身モーリタニアへ赴く。
言葉や文化の壁、砂漠という圧倒的な自然を相手にするフィールドワークに苦労はありながらも、基本的にナイスガイな現地スタッフと心を通わせ、異国の地に礎を築いて行く。
そんな彼の努力に現地スタッフだけではなく日本の出版社等、各方面からサポートが寄せられる。

ただ昆虫学者として一旗上げることだけを目指していたのではそうはならないだろう。
サバクトビバッタという猛烈な災害に苦しむ人々を救いたい。
彼が研究に励む根底に、そんな真摯な想いが流れているのが関わった人それぞれに伝わっていく。

手柄自慢でも苦労アピールでもなく、方々へ脱線しながらライトな語り口で生き生きと語られる砂漠生活は飽きを感じさせず爽快だ。
  
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2017年06月24日

検察側の罪人

作:雫井 脩介

二人の検事を主人公にしたサスペンス作品。

若手検事は希望に燃えて仕事に取り組み、ベテラン検事はそんな若手の将来を嘱望する。

そんな二人が係わる事件の参考人に一人の男が浮かび上がってきた所から、彼らの運命が大きく動き出す。

それぞれに信念があり、想いがあり、葛藤がある。

また特にベテラン検事について、その周辺の人物や過去の確執の描写が細かく、彼のキャラクターを浮き彫りにしている。

法は万能には程遠く、いかなる場面でも普遍的に通用する正義なんてありません。
まぁテーマとしては特に目新しくもないものかと思いますが、主人公二人の熱量や各所に登場する血の通ったキャラクター達が物語りに引き込んでいってくれました。
  
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2017年06月13日

ヒーローインタビュー

作:坂井 希久子

そのプロ野球人生のほとんどを2軍で過ごし、特に偉大な結果を残す事もなく引退した架空の野球選手の関係者達へのインタビューが綴られている。

ドラフト指名を受けてプロ入りする程の選手が才能に恵まれていない訳はないが、それでも結果を残せず「お立ち台」に登る事なく選手生活を終える野球バカがどれほどいることか。

この物語りで描かれる選手もそんな一人だ。
だがインタビューを受ける関係者達にとって、彼は紛れもないヒーローなのである。

彼の生い立ちから高校球児を経てプロ野球選手となり不遇の時代、さらにプライベートでの不器用な恋愛模様。
およそヒーローらしからぬエピソードを通して、彼の人となりをいかんなく描き出している。

最後には引退後の彼の人生が豊かなものになることを祈りたくなる。
  
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2017年05月28日

本日は、お日柄もよく

作:原田 マハ

スピーチライターという仕事を通して描かれる悲喜こもごもの人情ストーリー。

主人公は製菓メーカーに勤めるお気楽OL。
片思いの幼なじみの披露宴で一人のスピーチライターと出会い、その仕事にのめり込んでいく。

披露宴や企業式典、政治家の代表質問や選挙演説等、様々な場所で言葉を連ね、聴衆を惹き付け魅了するスピーチ。
そんな言葉の魅力に取り付かれ、お気楽OLが野党のスピーチライターとして大きな人生の転換点を迎える。

相手に何かを伝える手段として最も重要なツールである言葉というものへの向き合い方を、出合いや確執、親しい付き合いや想い出を通して見つめ直していく様や、諸々のエピソードが迫ってくる。

軽めの雰囲気で描きながら、ぐっとつかんで涙腺ゆるませ、それでいて読後感はあくまで爽やかにまとめられている。
  
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