その58よりつづき

若干震えた声で、ついに『1200円のロースカツ』を注文した。
バイトの若い娘が元気に注文をくり返してくれたのが
恥ずかしかった。
他のサラリーマン風の人達が雑誌を読んだりしている中で
オレはドキドキしながら、目の前でカツが揚がるまでの
工程をジッと見守った。

「おまちどうさまでした!」
来た!と思ったら隣の人の分だった。
きっと食べ慣れてるんだろうか、特に感激した様子もなく
黙々と食べている。
注文する時も席に付くなり即決してたし、タダ者ではなさそうだ。

そしてついにオレの元にも届けられた黒い豚のカツ!
見た目は普通のトンカツだ。
早速ひと口かじると、さすが揚げたて、サクサクしていて熱い。
いきなり口の中をヤケドした。
味は、うまいけど、普通のトンカツだ・・・。

『その土地の有名なものをその土地で食べる』という点での
目的は果たしたけど、大満足とはいかなかった。
「高い金を払うんだからとんでもなくうまいに決まってる」
という期待が大きすぎたようで、自然と厳しい評価を下していた。
やはりオレには500円以下の庶民的な料理の方が
合っているのか・・・。

「ありがとうございました!」
若干うつ向き気味で店を出るオレをバイトの若い娘が
元気に送り出してくれた。
「ありがとう。いつか金持ちになったら今度は堂々と来さして
 もらうよ。」
と心の中でつぶやいた。
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その60につづく