不況のさなか、この一年で急成長した食品がある。それはラー油だ。ヱスビー食品の推計によると今年1月の月間販売額(国内各社の合計)は3億6千万円で昨年1月の3・5倍。年間市場は20億円にまで膨らんだ。だが、トップメーカーである同社のシェアは逆に、1年前の78・5%から50・6%に激減した。

 奇妙な数字の裏に存在するのが、昨夏に桃屋が発売した具入りラー油「辛そうで辛くない少し辛いラー油」である。万人受けするマイルドな味わいと、具を食べる新感覚がウケて、品切れ騒動が起きる事態に。桃屋に状況を問い合わせたら、取材拒否。「増産に努めているが間に合わず、取引先から大変なおしかりを受けている最中、差し控えたい」とのこと。

 桃屋の独り勝ちのなか、ヱスビー食品がシェア奪還をかけて23日に発売するのが「ぶっかけ!おかずラー油チョイ辛」(希望小売価格346円)だ。辛さ控えめ、ニンニクやアーモンドの食感が特色の自信作で初年度売り上げ目標は3億5千万円。個数換算で100万個超という強気の皮算用である。

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 大手のラー油戦争が勃発(ぼっぱつ)するなか、小さな店のラー油もひそかに人気を呼んでいる。東京・人形町の「菜心」。くしくも桃屋本社の近所にある。

 席につくと、まず出されるのが具がみっしり詰まったラー油だ。担々麺に乗せて一口ズズッといくと、揚げニンニクのサクサク歯触りと香りのなか、燃える辛さがジワーっと広がる…ウマーッ。体温も確実に上がった。初来店でこの体感のトリコになり、ラー油を何度も入れる。接客する少し中国語なまりの女性は、合間にラー油を小瓶に移し替える作業で大忙し。客が持ち帰り用ラー油(500円)を次々に大量注文している。相当なこだわりがあるとみて、後日、ラー油の取材を申し込んだ。

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 「材料? 何も特別なものじゃない。どこでも買える唐辛子とニンニクだけ。油は昔はごま油を使っていたけど、値上がりしたのでサラダ油に替えました」。とは、あのラー油を詰めていた女性、店主の大森暁子さん(46)だ。

 中国残留孤児の母親とともに15歳で来日。横浜中華街などでウエートレスとして働き、平成4年に中華をメーンにしたアジア料理店を開いた。

 開店3年目で具入りに変えたラー油が評判を呼び、席数30に満たない店で、一日平均来店数100人、ラー油のテークアウトは90個。「新聞、テレビ、雑誌にも載ったことないのに、地方からも送ってほしいと電話がかかる。常連さんの手渡しで評判が広がったみたい。あと最近はブログね。お客さんがよくテーブルで写真を撮ってます」と大森さん。

 お昼どきは行列。ご飯にザーサイ、スープ、デザートがつき、テーブルには大きな茶碗(ちゃわん)に入ったラー油。「ご飯にかけてもおいしいし、どんな料理にも合う。2人で空っぽにしちゃう人もいますね」。ランチ850円の「香港腸詰と玉子炒め」のふんわりやさしい塩味にラー油を1さじかけると、たちまちパンチの効いたこわもてに豹変(ひょうへん)! 味の変化が面白い。

 揚げ具合だけで絶妙な香ばしさを出すこの店のラー油は、余計な調味料が入っていないぶん、自宅で多彩なアレンジが可能だ。オリーブオイルと混ぜて作った手抜きのパスタ料理が、普段よりも美味で複雑な心境…。ともかく好みのラー油を選べる時代になったことを歓迎したい。(重松明子)

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