菅直人副総理兼財務相(63)が静かだ。鳩山由紀夫首相が米軍普天間飛行場移設問題を5月末に解決できない場合の「退陣説」が取りざたされる中、「ポスト鳩山」の最有力と目されているが、本人は経済閣僚の仕事に専念する構え。野党時代、時に周囲に当たり散らす性格からあだ名された「イラ菅」は、じっと息を潜めている。その胸中は?【坂口裕彦】

 「私自身は、ほとんどかかわりを持っていない」。7日の閣議後会見で、菅氏は、普天間問題との縁の薄さを強調した。最近は、質問に沈黙し、言葉を探す仕草が記者会見の定番。薬害エイズ問題をはじめ、官僚批判で鳴らした舌鋒(ぜっぽう)の鋭さからは拍子抜けするほどだ。

 ◇危険を察知か

 政権交代直後、首相は当時国家戦略担当相だった菅氏に「普天間問題を仕切ってほしい」と依頼した。しかし、菅氏は首を縦に振らなかった。政権最大のアキレスけんに深入りしなかったことが今、同氏を「ポスト鳩山」の本命に浮上させている。財務官僚の一人はこう指摘する。「あの人は、自らの危険を察知する動物的な嗅覚(きゅうかく)がある。だから逃げ足も速い」

 1月の財務相就任時には官僚との「大げんか」も予想されたが、意外に波風は立たなかった。財務省からは「こちらの主張にも耳を傾けてくれる結構いい大臣」(同省中堅幹部)との評価さえ聞こえる。

 もっとも、初めての経済閣僚で余裕がないようだ。1月の参院予算委員会では、子ども手当の経済効果を聞かれて立ち往生。「あれがよほどこたえた。実は毎日必死に勉強している」(財務省幹部)。2月にカナダで開かれた先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で、日本の厳しい財政状況を目の当たりにしたことで「明らかに意識が変わった」(同)との声もある。

 ◇「カンジアン」

 消費税引き上げにも前向き姿勢に転換。最近では「増税しても、仕事や雇用が増えれば景気は良くなる」が口癖だ。海外紙からは積極財政派の「ケインジアン」をもじって「カン(菅)ジアン」と呼ばれた。

 4月12日の講演では「首相は少なくとも4年間は同じ人物が続けるべきだ。常々、首相にもそう言い続けている」と無欲を強調。その心を、側近議員は「支える気持ちは本物。鳩山さんが1年で終われば、自分が首相になっても1年で終わると思っているから」と解説する。民主党最大の支援組織、連合の古賀伸明会長からの会食の誘いも「変に周囲に勘ぐられるから」と漏らし自重。宰相への思いを気取られぬよう細心の注意を払っている。

 ◇アレルギーなお

 ただし、いざ首相に名乗りを上げる局面が来ても、越えるべきハードルは高い。衆参両院で423人の議員がいる民主党で、菅グループは約40人。党内最大の小沢グループ(約100人)を率いる小沢一郎幹事長の支持は絶対条件だ。また「菅首相なら誰もついていかない」(閣僚)などと党内にいまだ根強い「イラ菅アレルギー」の一掃も課題だ。

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ファイル:内政・外交・安保 菅副総理「首相は4年間、同じ人物が」

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