年月日:2010年10月14日
時刻:20時30分頃
拾得物:子猫(雌、生後2週間ほど)
数量:1
拾得場所:廃材置き場
届け先:H町交番
帰宅中、歩道を歩いていると子猫の鳴く声。SOSだ。
好奇心で鳴き声のする方へ行ってみる。
と、すでに現場に到着していたとおぼしき女性が怪しい行動中。
歩道に面した廃材置き場の壁につま先立ちで、わずかな隙間から耳をつんざくような、喉から血が出そうな勢いで鳴いている子猫にこっちへ来るように呼びかけている。
この女性も勤め帰りらしい事は、着ている物や持ち物で分かった。
私が捨て猫ですかね?と聞く。どんな人かな。若い人じゃないので少し安心した。
きっと誰かが放り投げて捨てていたんでしょうと、怒りのこもった声で答え、壁の上部の空間を指さす。街灯に照らされた壁の隙間から二人して子猫を呼んだ。子猫は何と壁のすぐ裏側、近くまで来た。二人で協働し何とか捕獲する。
子猫は両目がどろりと病んでいた。そのせいで目が開かない。
そんな状態で声がする方に廃材の隙間をよちよち歩いて来たのかと思うと、可哀相になった。しかし子猫はそんなひどい顔で汚かった。
女性が抱いてなでると安心したのかピタリと泣き止んだ。
どうしようという事になり、お互いすでに家に猫がいる事が分かった。
二人で歩いて近くの交番に届けてみた。
事情を聞いたお巡りさんは一瞬交番からいなくなり、次に表れた時には小さな牛乳パックを手にしていた。すばやく奥のキッチンに向かうお巡りさん。
やがてコーヒーカップを片手に笑顔で出てきた。もう一方の手の指にストローをはさんで。
もう1人のお巡りさんが子猫を運ぶ。その間の子猫はその小さな身体に似合わない大きな鳴き声を発し続けている。三人目のお巡りさんがパトカーで戻ってきた。お巡りさんは三人になった。
お巡りさん「お宅で飼ってあげられないかな?」
こうなると思っていた。その女性は二匹、私は一匹すでに猫が家にいる。
道行く人々が交番を覗く。事情を聞き、お巡りさんに同じ事を言われる。
手編みの帽子をかぶった男性がずっと見ていた。
「飼ってやりてえけど、俺ん家にも三匹いるの。子供が拾って来たヤツが。ボランティアで面倒見てる人がいるから明日連絡してご覧よ」
そう簡単に飼い主は見つからない。
牛乳をもらった子猫は少し鳴き声が変わった。
一匹の子猫をめぐり総勢6人の人間が交番で頭を抱える。
子猫は一晩交番で過ごし、明日は施設に送られるらしい。
本日の拾得物
年月日:2010年10月15日
時刻:13時30分頃
拾得物:携帯電話(黒、ミッキーマウスのストラップ)
数量:1
拾得場所:中央線車内の座席
届け先:国分寺駅構内拾得物預かり所
JR国立駅から電車に乗った。ふと空いている座席が目に入る。座ろうと近づくとそこには、かなり使いこまれた感じの傷だらけの黒い携帯電話が不自然な感じで座席の上にある。
ストラップの幼稚なキャラクターから推察し、腰をかがめて、隣で居眠りしている女子高生の腕を指でちょんちょんしながら質問してみた。
私「これ、あなたの携帯じゃないの?」
女子高生は薄目を開けてゆっくりと携帯電話を一瞬見たが、顔にかかる髪を揺すってイヤイヤをすると再び目を閉じた。
私「ねえ、この携帯、本当にあなたのじゃないの?」再度、腕をちょんちょんしながら訊ねたが首を振るだけ。
私「そ〜、困ったわねえ。」と小さい声で言い、携帯を持ったまま取り敢えずその座席に座ると、反対側に座っていた男性が「さっきまでここに座っていた男の子のでしょう」と全て分かっているといった顔で話しかけてきた。
私が、西荻で降りるから駅員さんに渡すと言うと、自分は国分寺駅で降りるけど自分が届けておきましょうかと言う。そうですね。少しでも早い方がいいでしょうね。ということで携帯電話はその男性の手に渡った。5、6分で電車は国分寺駅に着いた。男性は、やや反動をつけて立ち上がり、じゃ、確かに預かりましたよと携帯を持った手を軽く上げる。あっ、よろしくお願い致します。と言うと男性は電車を降りていった。
今頃、携帯電話の持ち主は、国立駅の改札に向かう途中だろう。何気なくジーンズの後ろポケットに手を伸ばし、携帯電話がそこに無いのに気が付く。
携帯電話を電車内に置き忘れた事実に驚愕し、駅構内を走り回り、しかるべき相手を見つけだし、事の次第を告げている頃だろう。慌てている乗客に対し緩慢な動作で連絡先を書くよう指示し、見つかったら知らせますなどと言われている事だろう。今まさに君の携帯電話は乗客達の連携プレーによって、迅速かつ的確に二つ先の駅に届けられているというのに。そうだ。携帯に電話を掛けてみればいいじゃない。そう、そう、そうしたらいいよ。早く。そうしなよ。私はイライラするのを抑えながら見知らぬ青年にテレパシーを送り続けた。
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