なるほどの素

小中高校生のみなさんがよく理解できていないこと、今更質問しにくいことをいろいろな角度からまとめてあります。 若い教育者の方々の参考になればとも考えています。

国際学習到達度調査(PISA)に見る学力と言語体系の関係

「国際学習到達度調査」(PISA)【2012年】の国別の結果は
次のようになっています。
PISA_6H
※(朝日新聞の記事より)2014.4.2

◆最新追加データ◆
 同じくPISAの2015年に実施された調査の結果は次のとおり。
  (文部科学省・国立教育政策研究所 HPより)

 【数学的リテラシー】
 1.シンガポール
 2.香港 
 3.マカオ
 4.台湾
 5.日本
 6.北京・上海・江蘇・広東
 7.韓国

 8.スイス
 9.エストニア
 10.カナダ

 【科学的リテラシー】
 1.シンガポール
 2.日本 
 3.エストニア
 4.台湾
 5.フィンランド
 6.マカオ

 7.カナダ
 8.ベトナム
 9.香港
 10.北京・上海・江蘇・広東
 11.韓国 
※2015年調査からはコンピューター使用型調査に移行した
 ことによる順位の変化も考えられる。
※中国の上海だけから北京・上海・江蘇・広東の4地域に
 広がったことによる順位の下降が考えられる。


上のデータから何を読み取るかは、いろいろな視点からできるものですが、
私見では言語体系による違いが大きいのではないかと考えています。

上記のデータで一目瞭然なのは、ヨーロッパ言語の国が1つも6位以内に入っていないということです。
青色で太字の国は中国語・日本語・韓国語が主な公用語になっている国です。

まず、シンガポールは中国系の人口が多く、英語と共に中国語が
公用語になっています。
Data Book of The World 2015 によるとシンガポールの人種別の
人口比は次のようになっています。
SINGA

ここで特筆すべきは、フィンランドとエストニアです。
位置的にはヨーロッパなのですが、フィンランド語はウラル語族の系列に属し、
エストニア語もフィンランド語に近く、他のインド・ヨーロッパ語と異なっているということです。

特に重要なのは、数の表現です。中国語・日本語・韓国語は数表現が十進法になっています。
ベトナム語もやはり十進法、そしてフィンランド語・エストニア語は11~19に於いて十の位と一の位が逆になりますが、それ以外はやはり十進法になっています。
それに対し、英語やフランス語では十進法にはなっていません。
 英仏数字

日本語の感覚から言えば、11は ten-one のはずなのですが、そうはならない。
特にフランス語では91が 4×20+11 (quatre-vingt-onze) というかなり複雑な表現になります。
ドイツ語も21位以上は十の位と一の位が逆になります。
※スイス、カナダの一部で使用されているフランス語では元のフランス語
 とは違って、70,80,90それぞれ別の表現を用いているようです。  
 スイス、カナダが上位に入っていることと無関係
ではないのでは?

一方、日本語では、かなり大きな数字になっても、
 65321=6×万+5×千+3×百+2×十+1 という発想で数を読みます。
これらの違いが数的な学習には大きな影響を及ぼすのではないかと予想できます。

また、分数は中国語・日本語・韓国語では分母→分子の順に言うのに対し、
インド・ヨーロッパ言語では、分子→分母の順に言い、しかも分母は序数を使い、
単数と複数の区別もするという複雑なことになります。
分数に関しては、フィンランド語・エストニア語も私が調べた限りでは(英語などと同じように)分子→分母の順に言い、分母には序数を用いるようです。

たとえば、2/3(3分の2)の場合、日本語で「3分の・・・」と言った時点で3分割したイメージを描くことができ、「・・・2」といい終わった時点で3分割したものを2つ取り出すというイメージの作業が行われます。
ところが、英語で two thirds の場合、"two ・・・" と聞いた時点ではまだ大きさも分からずイメージが描きにくい。"・・・thirds"と聞き終わった時点で初めてその2個は実は3分割した大きさのものだったということになります。
さらに 5/12を five twelfths というのは、native speaker でも発音しづらく、子供にとってはなおさらです。つまり、学習の段階でストレスを感じてしまうのではないかと考えられます。

【漢字の有用性?】
数だけでなく、読解力一般について言えることですが、中国語・日本語とその他の言語との大きな違いは、表意文字かそうでないかです。
漢字はそれぞれの文字が意味を表しているので、一度習得すれば、意味の理解が早くできるという利点があります。
たとえば、数字の「 - 」という区別も一目で理解できますが、英語では large - small と表現することになります。アルファベットのような表音文字は一つ一つの文字が意味を表していないからです。
さらに、数学の図形の学習においては、漢字文化圏では「円O」「角ABC」「弧AB」のように簡潔に表すことができるのに対し、アルファベットのように、文字の種類が少ない場合は、circle, angle, arc のように表さざるを得なくなり、それでも同じような文字が並んで読みづらくなります。
そのため、高校数学のようになるとギリシャ文字を借りてきたり特殊な記号を約束事として使用することになります。
さらにもっと基本的な数の表現と読み方にしても、漢字を使用することによって、
「十・百・千 ・万・億・兆・・・」と一文字で単位を表すことができ、発音も1音節に近い2~3音節で済まされます。これに対して、英語では hundred, thousand,  million ・・・と小学生ならつづりを間違いそうな複雑な表現が必要になります。
このように、漢字の利点による読解力やリテラシーについては研究の余地があるかと思われます。
実際に、表意文字である漢字が各科目での理解に有用であるとすれば、漢字教育についてのあり方も再考する必要があると考えられるからです。

以上のように見てくると、PISAのデータを分析して、教育政策や学習方法を考える際には言語体系による違いを考慮する必要があるのではないかということです。

もちろん、言語体系を変えるということは非現実的でその必要もありませんが、教育政策の中に言語体系の違いを踏まえた上でどのように反映させるか。
もし、不利な点があるのであれば、それをどのように克服するかという視点が必要なのではないかと考えています。
そして、日本の場合には、そのような利点があるのであれば、それを更に利用し伸ばす方向を考慮すればいいのではないでしょうか。
PISAが対象としているサンプリング数や生徒の層がどのようになっているのかは定かではありません。
もし、言語体系による違いに助けられて、日本が高順位にあるとしたら、検査方法によっては急に順位が下がってしまうことがありうる訳です。
PISAの問題自体が中国語・日本語・韓国語に有利な傾向にあるのかも知れない
そのことも踏まえて、PISAのデータを分析し、今後の教育政策を考えて行く必要があるのではないでしょうか。

もう一点、気になるのは、上位になる国々の共通点として、外国人労働者が少ない国だといいうことです。
アメリカ合衆国・イギリス・ドイツのように外国人労働者の率が高い国は上位に入ってこないという傾向も見られます。日本も人口減少によって、外国人労働者に頼る必要が出てきたときの教育の問題が考えられます。
が、ここでは少し主題が異なりますので、別の機会に譲りたいと思います。

【ノーベル賞】
 一方で、ノーベル賞受賞者の数は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスに
 比べ、日本、中国、韓国が圧倒的に少ないのは、一つの原因として言語の
 違いにあるとも考えられます。

★結論として最も念頭に置いておかなければいけないことは、PISAの結果データから安易に東アジアの教育が特別に優れているとか、人種的に優位にあるというような間違った判断をしてはいけないということです。

私自身、すべての言語に熟知している訳ではありませんので、間違いがあるかも知れません。
他の言語、特にフィンランド語・エストニア語に詳しい方がおられましたら、ご意見・ご指摘もいただきたいと思っています。

また、PISAの問題がそれぞれの国の言語に翻訳されたものを読んだわけでもありませんので、その翻訳の違いによる影響の大きさについて分析した訳でもないことをお断りしておきます。


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2017年 金星の見え方と動き

【2017年の金星の概略】
  3月23日の内合までは、太陽より東側にあり、「宵の明星」として
  見られる。
   年末の離角が約2° で、2017年には外合は起こらない。
   ☆宵の明星
     東方最大離角=1月12日 (E47°)
     最大光度=2月17日(-4.6等)
 ☆明けの明星
     西方最大離角=6月3日 ( W46°)   
     最大光度=4月30日(-4.5等)

●月・主な惑星との接近
   1月 2日   月の南 (1° 54′ )
   1月31日   月の北 (4° 04′ )
   5月22日   月の北 (2° 23′ ) 
   6月21日   月の北 (2° 22′ ) 

   7月21日   月の北 (2° 44′ )
   8月19日   月の北 (2° 15′ )
   9月18日   月の北 (0° 33′ )
  10月 5日   火星の北(0° 13′ )
  10月18日   月の南 (1° 58′ )
  11月13日   木星の北 (0° 17′ )
  11月17日   月の南 (3° 57′ )
※9月18日は日本では星食(金星が月に隠れる)は
 見られないが、かなり接近して見える。


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地球から見られる天体の中では、太陽と月に次いで明るく見えるのが
金星です。夕方、「一番星見つけた!」と言われるのはほとんどの場合、
金星のことです。

最大光輝(最も明るい時)は-4.5等星にもなります。
これは、通常の1等星の100倍以上の明るさです。
等級100
金星と地球の距離は変わるので、その明るさも変化して見えます。
しかし、地球から最も遠く離れた時でも-3.9等星くらいの明るさが
あります。

つまり、地球と金星が最も近づいた時には約4千万kmの距離にある
のに対し、最も離れた時には約2億6千万kmになり、遠い時は近い時
の6倍以上になります。
このために、金星は大きさと明るさが変化して見えます。

【内合と外合】

地球から惑星を見た時に、その惑星が太陽と同じ方向にある時を
「合(ごう)」と言います。内惑星(水星・金星)の場合は、内合と外合の
2種類の状態があります。
言い換えると、地球から最も遠い位置にある時が外合、
地球に最も近い位置にある時が内合ということになります。
合の前後の時期は、金星が昼間、太陽の近くにあり一緒に移動している
ため、地球からは見えません。

※地球も太陽の周りを公転しているが、分かり易く地球を止めて考えます。
VENUS_ANI

【最大離角】
地球から見て、太陽と金星の間にできる角度を離角(りかく)といい、
太陽より東に見える時を東方離角、西に見える時を西方離角と言います。
どちらの場合も、最も離角が大きくなった時、約45°になります。
●太陽-金星-地球の角度が直角(90°)になる時が最大離角で、
 地球からは金星が半月状に見えます。

【最大光輝】
 金星が最も明るく見えるのは、半月状の時ではなく、少し三日月形に
欠けた状態の時なのです。
三日月形の方が半月状の時よりも、地球に近いために、見える面積が
大きくなることと、光の明るさは距離の2乗に反比例するためです。

◆「宵の明星」から「明けの明星」へ

 2017年の1月には、2016年末から引き続き「宵の明星」
 として日没後、西の空に見られています。
 3月23日の内合の後、「明けの明星」に変わります。
 明るさが格別に際立つのはやはり「明けの明星」です。
 日没後はまだ人間が活動しているために、街の照明で空が明るい。
 また、排気ガスなども多いのでしょう。
 それに対し、夜明け前の4~5時というのは、街の照明も少なく、
 活動している人間が少ないからでしょう。さらに、雨がほこりを落として
 くれた後、少し風が吹いているような時は最高です。
 4月初旬はまだ太陽との角度が小さいため、日の出前に見られる時間
 が限られていますが、4月下旬以降は長い時間、見ることができます。
【会合周期】
  内合から内合、 外合から外合のように、地球との位置関係が元の
  状態にまで戻るのにどれだけかかるかというのを会合周期と言います。
  地球から見た金星の会合周期は約584日。
  (2017年は外合がなく、2018年1月初めになります。)

《参考》
【金星の日面通過】 (撮影=2012年6月6日12:30頃)
kinsei2ka
金星が太陽の前を通過した時の写真です。
 (太陽上部の黒い点が金星)
太陽と金星の大きさの違いがよく分かります。

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数値だけでは分かりにくいかも知れませんので、グラフにしてみると
次のようになります。
離角(太陽から離れて見える角度)と明るさには少しズレが
あることが分かります。

●明るさ(等級)の変化
VENUS17


《関連記事》

「人工衛星を見つけて天体の学習をしよう」(ここをクリック)


参考文献
  「天文年鑑 2016」(誠文堂新光社)
  「天文年鑑 2017」(誠文堂新光社)

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理科・自由研究のヒント/レポートの書き方

【課題のヒントは台所にあり】
 ふだんお母さんが台所でなにげなくやっている工夫の中に、実験観察
 のネタはたくさんあります。
 買ってきた野菜・果物・魚などを見ていると、材料になりそうなものが
 いくらでもあります。
  タマネギを切るとなぜ涙が出るか?涙が出ないようにするにはどうすれば
 いいか?
  などなど・・・



【器具や薬品の準備】
 ビーカーや試験管などが必要な場合、身近なビンやペットボトルなどで
 代用できる場合もあります。
  しかし、危険を伴う実験の場合はやはり正しい器具を使う方がいいでしょう。
 東急ハンズなどでも、メスシリンダーなど必要な器具を入手できる所が
 あります。
  また、薬品もヨウ素液はイソジン(うがい薬)をうすめて代用できます。
 二酸化マンガンも古くなったマンガン電池から取り出すこともできます。
 そのほか、ph試験紙は通販などでも、購入することができます。
 炭酸水素ナトリウムも重曹なので、お母さんが台所に置いてあるかも知れません。
 また、薬局でも売っています。
 必要なものは早い目に準備してそろえましょう。



【レポートの書き方】
 理科の実験や観察はただやるだけではなく、レポートを書いてまとめることが大切です。
 予想通りうまくいかなかった反省が、意外にその後の学習に役立つことがよくあります。

◆自由研究のレポートの書き方

1.研究の動機 (なぜその研究課題を選んだか)
2.研究の目的 
(何を知りたかったか)
3.研究の準備 
(道具や材料など)
  (「準備」は次の「方法」に含めてしまってもかまいません)
4.研究の方法
5.結果および考察
6.反省と今後の課題

   (予想通りできなかったことの反省や、今後やってみたい観察や学習)

最後に調べたり参考にした本などの書名・筆者・出版社も
「参考文献」として書いておく方がいいでしょう。
また、インターネットで調べた場合は、そのwebサイトについても
書いておく方がいいでしょう。
そのレポートを見た人が同じように確認できるくらいにしておきます。

【客観的な表現を心がける】
理科の実験・観察では「すごかった」「熱かった」「きれいだった」というような感情や感覚を表すのではなく、数値化できるものは、数値で記録表示することが必要です。
数値は表やグラフにして視覚的に分かりやすくすると効果的。
たとえば発芽の実験で、芽が伸び始めたら、その長さを記録したり、色の変化もよく見ておきましょう。
正確なハカリがあれば、重さを記録するのもいいかも知れません。
いろいろな本やインターネットを参考にするのはかまいませんが、自分独自の工夫もできるとよりいい研究になります。

【写真を添付する】
  実験の途中や、観察の様子を写真に撮って添付すると
  より効果的なレポートができあがります。
  写真を貼り付けるか、 word などを使える人は、レポート
  の中に写真を含めるといいでしょう。

【重要】
 「本などで調べたこと」「自分の実験・観察で分かったこと」「自分の感想や推論」
 ははっきりと区別して書きましょう。
  「教科書には〇〇と書いてあったが、私の実験の結果は△△の
    ようになった。この違いは××によるものではないかと思う。
     この次は◇◇の違いについても確かめたいと思う。」 


用紙は「レポート用紙」を使用する方がいいでしょう。
ワープロ打ちする場合は、白い用紙でもかまいません。
図を描く場合には同じ大きさの白紙やマトリクスを使用します。
写真や別紙をきれいに貼り付けるのもいいでしょう。

複数の実験や観察をした時は、共通点と相違点がはっきりとするように、表に整理すると分かりやすくなります。

1枚目の表紙は少し厚めの紙を使用し、タイトルと学年・クラス・氏名などを書きます。
コンクールなどに応募する場合は、住所や学校名が必要な場合もありますから、
応募のきまりをよく読みましょう。
(応募用紙をインターネットでダウンロードできるものもあります。)

理科の実験・観察には失敗や意外な結果がよく起こります。
だからこそ実際にやってみる価値があるのです。

夏休みのいい思い出にもなることでしょう。

◆コンクールに応募してみよう! 
 理科観察のコンクールがあります。
 いきなりの応募で入賞は難しいでしょうから、観察する前、あるいは、
 レポートができあがったら、理科の先生の指導・助言を受けるのもいいでしょう。

  「参加賞」狙いでもいいかも!?
<コンクールの例>
「自然科学観察コンクール」(ここをクリック)
 平成28年は10月31日(月)が締め切りです。


《関連記事》

「無性生殖」植物のふえ方の実験 (ここをクリック)


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文学作品と天体現象との矛盾

かなり有名な小説の中に実際の天体現象ではありえない間違いが見つかることがあります。まず、既によく指摘されていて有名な例は、尾崎紅葉の「金色夜叉」に見られる月の位置と形です。

「一月の十七日、宮さん、善く覚えてお置き。来年の今月今夜は、貫一は何処どこでこの月を見るのだか! 再来年の今月今夜……十年後の今月今夜……一生を通して僕は今月今夜を忘れん、忘れるものか、死んでも僕は忘れんよ! 可いか、宮さん、一月の十七日だ。来年の今月今夜になつたならば、僕の涙で必ず月は曇らして見せるから、月が……月が……月が……曇つたらば、宮さん、貫一は何処かでお前を恨んで、今夜のやうに泣いてゐると思つてくれ」(「金色夜叉」)
明治5年(1872年)まで使われていた太陰暦では日付と月の形は一致するのですが、「金色夜叉」はすっかり太陽暦に変わった頃に書かれた小説です。
したがって、2年後、10年後の同じ日の同じ時刻には月の形が変わっているか、月が出ていないことになってしまうのです。

今回新たに気にかかってしまった齟齬が2件。
ノーベル文学賞の可能性を騒がれた作家の作品の中に実際の天体現象ではあり得ない位置関係が見られます。

◆村上春樹の「1Q84」
「腕時計の針は八時近くを指していた。・・・天吾はぐるりとあたりを見回し、南西の方向に月の姿を見つけた。月は二階建ての古い一軒家の屋根の上に浮かんでいた。月は四分の三の大きさだった。」(BOOK2 第18章)
午後8時前というのは、太陽との位置関係から考えて南西の方向に見える月は
半月よりも少し小さい(欠けた)形のはずなのです。半月より大きい4分の3の形の月が南西の方角に見えるとしたら、それはむしろ深夜過ぎの時刻ということになります。

◆もう一つ三島由紀夫の「午後の曳航」に見られる間違い。
「二人が港を見下ろす柵に倚ったとき、六時をかなり廻っていた金星は南に傾き、ビルの灯や倉庫の軒明かりや、・・・」(第二部<冬>第二章)
まず基本的に金星は肉眼では南の空に見えることはない。
午前6時過ぎに金星が見えるとしたら、「明けの明星」であって東の空に高く昇っているはずなのです。
金星が傾いていくとしたら、夕方西の空しかあり得ない。 

小説はフィクションであり、心象の世界であるから現実とは違っていてもかまわないと言ってしまえば確かにそうで、そんなことは気にせずに小説を楽しめばいいのですが、たとえば「6本足のライオン」とか、「しっぽが2本の猫」が小説の中に出てきたら、それは明らかに間違いであるか、特別の意味を持たせているかのどちらかです。
「1Q84」の場合、<非現実の世界>と言ってしまうこともできるのですが、
「午後の曳航」の場合と同様、前後関係から考えて、特別な意味を持たせたのではなく、うっかり頭の中だけで描いたとしか思えないようです。
イメージを作りながら読んでいると少々違和感を覚えてしまいます。 

天体をよく知っているたとえば宮沢賢治なら、このような表現をすることはなかったと思われます。

ただし、いずれの問題も小説全体の流れにはほぼ影響がなく、些細な事柄と言える事は認めないといけないとは思います。

●さらに川端康成の小説の日没時刻に関してもひっかかる箇所があります。
「ここは日の入りが、東京都とは一時間もおそいんだって……。」と周一は言った。
「まあ。」すみ子はおどりたやうで、「そんなことがありますの?」
南だから……。日本も南のはしまで来ると、こんなにちがふんだね。」
(「たまゆら」川端康成)
 
季節は11月半ば過ぎということなので、日本の中で南の方が日没が遅くなるのはあながち間違いではないのだけれど、東経135度の同じ標準時を使っている以上、やはり経度の違い、つまり西に行くほど日没が遅くなるということの方が大きな理由になる。
夏至の頃には逆の現象が起きて、南の地域との日没時刻のずれは小さくなり、東京と宮崎では日没時刻の違いは約23分ほどに縮まります。


《関連記事》 

「月の満ち欠けを知ると古文がよく分かる」



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地理・工業地帯と工業地域の出荷額統計

※「データでみる県勢2016」で一部改訂済み。
「日本国勢図会 2016/17」の資料に基づいて一部データの改訂中。


愛知県の自動車産業を中心とした中京工業地帯がゆるぎなく1位を占めている。
工業帯C

 (2012年から順位は変わっていない。)

◆各工業地帯・工業地域を形成する都府県
 中京工業地帯=愛知県・三重県
 阪神工業地帯=大阪府・兵庫県
 京浜工業地帯=東京都・神奈川県
 北九州工業地帯=福岡県

 瀬戸内工業地域=岡山県・広島県・山口県
         香川県・愛媛県
 関東内陸工業地域=栃木県・群馬県・埼玉県
 東海工業地域=静岡県
 京葉工業地域=千葉県
 北陸工業地域=新潟県・富山県・石川県・福井県

●工業地帯・工業地域の比較
  それぞれの品目の特徴を覚えておこう。
  特に、中京工業地帯の機械(輸送機械)
      阪神工業地帯の金属
      京葉工業地域の化学
  の割合が多いことをよく見ておこう!
工業7_14
【ポイント】
・合計出荷額も明示されていたら、一番多いのが中京工業地帯
機械類だけで60%を超えているのは中京工業地帯だけ。
化学工業が40%以上占めるのは京葉工業地域。
・阪神・瀬戸内はどちらも金属工業が多いが、瀬戸内工業地域は
 石油コンビナートが多く、化学工業が金属工業を上回っている。
・3位、4位の瀬戸内と関東内陸工業地域は年度によって
 順位が入れ替わることがある。

●中京工業地帯の内訳。
中京工C
愛知県は輸送用機械器具の他、鉄鋼業・食料品・繊維工業・
     家具・プラスチック製品・ゴム製品・窯業土石製品
のいずれでも都道府県別の1位
を占めているが、出荷額(つまり金額)で
統計を取るために、機械の比率が大きくなる。

京浜工業地帯は出荷額の順位は5位に下がっている。
神奈川県を中心にした輸送用機械が17.2%を占める。

●京浜工業地帯の出荷額の割合
京浜工_B
その他、よく出題されるのが、京葉工業地域の化学。千葉県には石油コンビナートがあり、石油の精製や石油化学製品の工業が発達している。
京葉品目

都道府県別に見ても、千葉県の化学工業製品の出荷額が最も多い。
化学H7

◆工業出荷額の合計
都道府県別にみると、愛知県が断トツで1位。
2014年、2013年と順位は同じ。
工業出荷H


上位7位をグラフにすると次のようになり、
愛知県が圧倒的に多いことが分かります。
工出荷

静岡県は、輸送用機械の出荷が愛知県に次いで多く、
紙・パルプ工業の出荷額は最も多い。
輸送7H

●パルプ・紙・紙加工品
紙パルプ

●鉄鋼業がさかんな府県
鉄鋼業H

阪神工業地帯・京葉工業地域では、鉄鋼業の出荷額が全体の約2割を占める。


●関東内陸工業地域では輸送用機械の製造が多い。【2013年】
北関東

********************************
【確認問題】
 少し難しいかも知れませんが、次のア~カのグラフがそれぞれどの工業地帯・工業地域の品目の割合を示しているか考えてみましょう。
●京浜工業地帯・中京工業地帯・阪神工業地帯・京葉工業地域
 東海工業地域・瀬戸内工業地域 

 のいずれか。
工業6M

【考え方】
 アは機械が圧倒的に多い。機械が60%を超えるのは中京工業地帯。
 イとウは金属が同じくらいだが、化学が40%を超えるのは京葉工業地域。
 ウは金属が多いが、化学が比較的少ないので、阪神工業地帯。
 エは化学が京葉工業地域に次いで多く、金属も比較的多いので、瀬戸内工業地域。
 オとカは傾向が似ているが、食料品が化学よりも多いオが東海工業地域。
 カが京浜工業地帯。

 出荷額が表示されているときはそれも判断材料になる。
 金額の最も多いのが中京工業地帯。
 京葉工業地域・東海工業地域はそれぞれ千葉県・静岡県
 1県だけの出荷額なので、比較的少なくなる。


《関連記事》


「京浜工業地帯と神奈川県の産業」


「愛知県の工業と農業(中京工業地帯)」

「阪神工業地帯と大阪・兵庫の産業」

「京葉工業地域と千葉県の産業」

「東海工業地域と静岡県の産業」


「瀬戸内工業地域の特色」


「北九州工業地帯と福岡県の産業」

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