なるほどの素

小中高校生のみなさんがよく理解できていないこと、今更質問しにくいことをいろいろな角度からまとめてあります。 若い教育者の方々の参考になればとも考えています。

塩酸

理科・炭酸水素ナトリウムと胃液の反応

炭酸水素ナトリウムは重曹(じゅうそう)とも呼ばれ、料理にもよく使用されます。
なめてみると、少し塩辛いような苦いような微妙が味がします。
重曹という名ではスーパーでも売っていますし、炭酸水素ナトリウムは
ドラッグストアでもふうつに販売されています。
重曹箱
さて、この炭酸水素ナトリウムは胃酸の出すぎによる胸焼けを抑える
のに効果があります。
胃薬
胸やけに効く胃薬の成分表を見ると、炭酸水素ナトリウムが50%以上
含まれている薬が少なくありません。胃の粘膜を守るような成分も含まれて
いるのですが、最も多く含まれているのが炭酸水素ナトリウムなのです。

胃液には塩酸が多く含まれていて、消化酵素(ペプシン)を作る助けをするだけでなく、外から入ってくる細菌類を殺す役割もしています。
胃液はpH1~1.5という強い酸性のため、この胃液が多くなり過ぎると
胸焼けのような症状が出ます。
(胃液は体内に入って来る細菌やウイルスを殺す役割もしている)
そこで、炭酸水素ナトリウムを飲むと、次のような反応が起こって、塩酸を
中和してくれます。

 NaHCO3HCl   →  NaCl + 2 + CO2
※反応の前後で原子の数が合っていますから、係数は不要です。

つまり、アルカリ性の炭酸水素ナトリウムと酸性の塩酸の間で中和が起こり、
塩化ナトリウム(食塩)と水と二酸化炭素ができることになります。
この二酸化炭素が胃にたまると、げっぷとして出てきます。
胃酸が強い時には、この結果かなり強烈なげっぷが出ます。

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◆「げっぷはマナー違反」
  西洋ではげっぷはかなり失礼な行為とされています。
  外国に行った時は、人前では絶対にしないように注意。
  日本でも、あまり上品な行為とは言えないでしょうね。

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理科・酸とアルカリ/電流によるイオンの移動


小学校でも、酸性では青色リトマス紙が赤色に変わり、
アルカリ性では赤色リトマス紙が青色に変わることを習ったでしょう。

では、酸性とは何か、アルカリ性とは何かを説明しようとすると、
中学1年生くらいまでは、
酸性=「酸っぱいもの」、アルカリ性=「苦いもの」くらいの説明しかできません。

そこで、イオンの学習をした後は、イオンが酸性・アルカリ性を示すことに
関係していることが分かってきます。
それを確かめるための実験です。

まず、次のような装置を準備します。
めがねクリップではさんだろ紙には、
硝酸カリウムまたは硫酸ナトリウムを浸み込ませておきます。
これは、電流を通しやすくするためです。

イオンろ紙

上の装置の右側を+極、左側を-極にして電流を流す。
  (20V程度の直流電流)

【注意!】
 電流を流している間は、めがねクリップなど装置に直接触らないように
 する。


【うすい塩酸の場合】 (酸性)
 塩酸は塩化水素が水に溶けたときに、下の図のように、
 水素イオン(H)と塩化物イオン(Cl)に分かれた状態になっています。
HCLイオン

塩酸をしみこませた糸、またはろ紙を下の図のように、
2枚のリトマス紙を横切るように置き、電流を流します。

●電流を流し始めてしばらくすると、
 青色リトマス紙の-極に近い側だけが赤色に変化します。
イオンHCL1

●これをイオンの移動で考えてみると、
 塩酸から出た水素イオン(H)が-極
          塩素イオン(Cl)が+極に 引かれました。

その結果、水素イオンだけが、青色リトマス紙を赤色に
変化させたことが分かります。
このことから、酸性を示すのは水素イオンに関係していることが分かります。

イオンHCL2
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【水酸化ナトリウムの場合】 (アルカリ性)
 水酸化ナトリウムは水に溶けたときに、下の図のように、
 ナトリウムイオン(Na)と水酸化物イオン(OH)に
 分かれた状態になっています。

NAOHイオン

水酸化ナトリウムをしみこませた糸、またはろ紙を下の図のように、
2枚のリトマス紙を横切るように置き、電流を流します。

●電流を流し始めてしばらくすると、
 赤色リトマス紙の+極に近い側だけが青色に変化します。
イオンNAOH1
●これをイオンの移動で考えてみると、
 水酸化ナトリウムから出たナトリウムイオン(Na)が-極
          水酸化物イオン(OH)が+極に 引かれました。

その結果、水酸化物イオンだけが、赤色リトマス紙を青色に
変化させたことが分かります。
このことから、
   アルカリ性を示すのは水酸化物イオンに関係している
ことが分かります。
イオンNAOH2

****************************
では、本当に理解できているか確認してみましょう。

{確認問題}
下図のように、硝酸カリウムをしみこませたろ紙の両端を
金属製のクリップではさみ、ろ紙の上に青色と赤色の
リトマス紙を置いた。次にうすい塩酸をしみこませた糸を
2枚のリトマス紙の上に置いて電流を流した。

① 色が変化するのは、リトマス紙のア~エのどの部分か
イオン移動M

【答】
 うっかり、「ア」と答えた人は間違いです。
 今度は最初の説明の場合とは、陽極と陰極、青色と赤色の
 リトマス紙の位置が逆に入れ替わっています。
 水素イオン(H)は陰極に引かれて、青色リトマス紙を
 赤色に変えますから、正解は「エ」です。
 問題を解く時は、陽極・陰極の位置もしっかりと確かめましょう!

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【pH試験紙を使用した実験】
  リトマス紙の代わりに緑色のph試験紙を利用した実験で
  出題されることがありますが、基本的には上で見た
  リトマス紙の場合と考え方は同じです。
ph移動

◆うすい塩酸の場合、水素イオン(H)が陰極に引かれ、
 pH試験紙の陰極に近い方が赤色に変わる

◆うすい水酸化ナトリウムの場合、水酸化物イオン(OH)が
 陽極に引かれ、
 pH試験紙の陽極に近い方が青色に変わる

ということです。

◆それぞれのイオンが移動する方向と、
  リトマス紙の色が変化する部分をしっかりと理解しておきましょう!


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中学理科・中和反応とイオンの量の変化

酸とアルカリを混ぜ合わせると塩(えん)と水が生じる中和反応が起こります。
この時、陽イオンと陰イオンに数の変化が起こっています。
今回は、その変化のしかたについて考えてみましょう。

◆まず、基本的事項の確認から;
●水に溶かした時に、陽イオンと陰イオンに分かれることを電離でんり)という。
     HCl → H+ Cl

●水中で電離する物質を電解質(でんかいしつ)という。
      塩化ナトリウム、塩化水素(塩酸)、水酸化ナトリウムなど

●水中で電離しない物質を非電解質(ひでんかいしつ)という。
    砂糖、エタノール など

◆次に、イオンの名称とイオン式の確認です。
 
   水素イオン= H、     ナトリウムイオン= Na
   水酸化物イオン= OH、 塩化物イオン= Cl

今回の説明で使用するのはこの4種類だけです。
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◆水溶液中のイオンの状態HCLイオン

  ●塩酸は塩化水素を水に溶かしたものです。
   そのイオンの状態は右のようになっています。

   HCl → H+ Cl


 ●塩化ナトリウム(食塩)の水溶液は右のようになっています。

    NaCl → Na+ ClNACLイオン
   





★ところが、砂糖は非電解質で、水溶液中でイオンにならず、
  砂糖の分子のままになります。

砂糖水

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では、アルカリと酸を混ぜ合わせた時に、イオンの量に
どのような変化が起こるか見てみましょう。

【水酸化ナトリウムに塩酸を加える場合】NAOHイオン
 アルカリ性 → 中性 → 酸性

●最初に水酸化ナトリウム水溶液を用意します。
 その水溶液中のイオンは右のような状態になっています。

    NaOH → Na+ OH



●ここに少しずつうすい塩酸を加えていきます。

中和1
  すると、塩化物イオン(Cl)はそのままイオンの 
  状態で残ります。

  ところが、
  水素イオン(H)は水溶液中の水酸化物イオン(OH)と
  結びついて水になります。
      H +  OH → H2

  ★イオンではなく、水になることに注意!
     ・水素イオン(H)はできない。
     ・水酸化物イオン(OH)は減少する。

●さらに少しずつうすい塩酸を加えていき、ちょうど中性になった時;中和2


    水溶液中にあったすべての水酸化物イオン(OH)は
    水素イオン(H)と結びついて水(H2O)になり、
   
    ・水素イオン(H)、水酸化物イオン(OH)の
     いずれもない状態。
    ・ナトリウムイオン(Na)と塩化物イオン(Cl)が水に溶けた状態、
     つまり食塩水ができあがっている。

  ★イオンはNaとClだけ!

☆この状態の時、水溶液は中性で、BTB溶液の色は緑色になる。


●この後、さらに少しずつうすい塩酸を加えると、中和3
 水素イオン(H)と塩化物イオン(Cl)が増加していく。

     中性から少しずつ強い酸性になっていく。

   ★ナトリウムイオン(Naの量は変わらない。



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◆以上の変化をそれぞれのイオンについてまとめると;

  (ア) ナトリウムイオン(Na)は常にイオンのままで量は変化しない
  (イ) 水酸化物イオン(OH)は水になっていき、中性になるまで、
   減少を続け、中性になった時点で0(ゼロ)になる。
 (ウ)水素イオン(H)は中性になるまでは、0(ゼロ)のまま。
   中性になった後、少しずつ増加する。
 (エ)塩化物イオン(Cl)は最初から最後まで少しずつ増加する。

4種類のイオンの量がどのように変化するかをグラフに
表したものと一致するように理解しておきましょう。

イオンGRF4

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【塩酸に水酸化ナトリウムを加える場合HCLイオン
       酸性 → 中性  →アルカリ性


同じ中和反応でも、最初に塩酸を用意して、
少しずつ水酸化ナトリウムを加えていく場合の
イオンの量の変化のしかたは少し違ってきます。

●最初は水素イオンと塩化物イオンが右の図のように
 なっています。
     HCl → H+ Cl

●ここに少しずつ水酸化ナトリウム水溶液を加えていきます。中和21

  すると、ナトリウムイオン(Na)はそのままイオンの 
  状態で残ります。

  ところが、
  水酸化物イオン(OH)は水溶液中の水素イオン(H)と
  結びついて水になります。
      H +  OH → H2

●さらに少しずつ水酸化ナトリウム水溶液を加えていき、
 ちょうど中性になった時;中和2

    水溶液中にあったすべての水素イオン(H)は
    水酸化物イオン(OH)と結びついて水(H2O)になり、
   
    ・水素イオン(H)、水酸化物イオン(OH)の
     いずれもない状態になる。
    ・ナトリウムイオン(Na)と塩化物イオン(Cl)が水に溶けた
     状態、つまり食塩水ができあがっている。

  ★イオンはNaとClだけ!

☆この状態の時、水溶液は中性で、BTB溶液の色は緑色になる。


●この後、さらに少しずつ水酸化ナトリウム水溶液を加えると、中和22
 ナトリウムイオン(Na)と水酸化物イオン(OH)が増加していく。

     中性から少しずつ強いアルカリ性になっていく。

   ★塩化物イオン(Clの量は変わらない。




この変化をグラフにすると下のようになることを理解しておこう!
イオンGRF42


★ 最初に存在するイオンの種類と消えていくイオンの種類を
  考えるといいでしょう。


「硫酸と水酸化バリウムの中和反応」についてはここをクリック

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