10:00
捧げもの、無事に奉納できました!

素晴らしい戦いが繰り広げられた世界フィギュアスケート選手権。日本勢ではアイスダンスの小松原&ティム・コレト組は惜しくもあと1つの順位差でフリーには進めませんでしたが、女子シングルではメダルを争う4・5・6位に3選手が入るさすがの結果。そして男子シングルでは宇野昌磨クンが4位、田中刑事さんも存在感を発揮するフリーの演技を見せ、そして羽生結弦氏は見事な銀メダルを獲得しました。平昌につづく、怪我明けでの勝負強さの発揮、お見事でした。

今季の羽生氏は有り体に言えば「バカンス」というか、「ぼくがやりたいたのしいすけーと」をやることで心のリフレッシュを図ったシーズンでした。怪我を負い、それを痛み止めで散らしながら世界選手権で真剣勝負をするつもりなど、開幕前にはなかったでしょう。しかし、生来の負けず嫌いは「バカンス先でもマジゴルフに興じる旅行者」のように、失敗や敗戦に怒っては勝負に入れ込んできました。戦いがある限りは、勝ちたい。むしろそうするのが楽しい。それが本人のリフレッシュになるのなら、それこそ「才能」だなと思います。

バカンスという観点での今季最大のテーマは、自分が憧れ、スケートを始める原点となった偉大な先輩に自身の演技を捧げることでした。ジョニー・ウィアー氏に捧げるショートプログラム「Otonal」、エフゲニー・プルシェンコ氏に捧げるフリープログラム「Origin」。そのふたつを「いい演技」で捧げることが大目標。もちろん内容も結果も含めての「いい演技」で。世界選手権でのフリー「Origin」は、そんな「捧げもの」として堂々とお渡しできるものに仕上がったと思います。

怪我を抱えながらの銀メダルというのも、プルシェンコ氏に捧げる演技だと思えば似つかわしい。中継局による事前の取材によれば、かねがねヤキモキさせられていたプルシェンコ氏の「このプログラム、ニジンスキー要素全然入ってへんやんけ…」という誤解も解消され、ようやく「あぁワシへのリスペクトなのね」とご理解いただけた模様。きっと今回の演技ならば大満足で受け取ってもらえるでしょう。怪我を抱え、それでも高みを目指し、4T+3A+SQEという挑戦を組み込んだこの演技を。これがあなたに憧れてスケートをつづけてきた少年からの敬意ですよ、と……。

↓なお、受取人は南の島でリアルバカンス中のため、またも「不在票ポスト投函」の展開に!

「ピンポーン」
「プルシェンコ様にお届けものでーす」
「デュフフw」
「ピンポーン」
「捧げものですよー」
「ピンポーン」
「なまものでーす」
「ピンポーン」
「イキがいいですよー」
「コンコン」
「コンコンコン」
「…………プルさまー」
「ピンポーン」
「ピーン、ポーン」
「ドン!」
「ドン!ドン!」
「ピンポンピンポン」
「ピンポンピンポンピンポン」
「ピポピポピポピポピポピポーン!」
「ピポーン!ピポーン!ドン!ピポーン!」

届けようと思うと、プル様はいつもいない!

世界選手権の日にモルディブ行ったらアカンて!

そこは集まろう?世界のレジェンドは世界フィギュアに集まろう?


↓なんでヤグディンのほうがOriginの動画インスタにアップしてハシャいでんだよーーーー!!

これって、もしかして、三角カンケイってヤツーーー??

ヤグ⇒(はぁと)⇒ユヅ

ユヅ⇒(はぁと)⇒プル

プル⇒(貴様とはいつか決着をつけねばならんと思っている…)⇒ヤグ

ヤグ⇒(私の勝ちで決着はついたはずだろう?勝者である私が彼を守ってやろうではないか…)⇒プル

プル⇒(何を言うか…彼は勝利より先の世界へ行く者だ…私が守護するのがふさわしい…それに勝ったのは私だ…)⇒ヤグ

プル⇒(それはさておき、ちょっとモルディブ行ってくる)⇒ユヅ

ユヅ⇒(えええええええ)⇒プル

まさか平成の終わりに再びヤグ・プルを意識することになろうとは!

恋心ってフ・ク・ザ・ツ!



さて妄想少女漫画は一旦置き、男子シングル試合本編の振り返りへ。まず今大会の象徴的なものとして、観衆からの温かくて質の高い声援というものは特筆されるべきだろうと思います。かねがねそうではありますが、日本で「世界」の試合を開催したことで、より際立つような温かさがありました。

僕自身も現場で見守ったことですが、とにかく全選手に対して分け隔てなく声援が送られます。歓声の大きさに差はありますが、それは「普通歓声」と「大歓声」の差であって、どの選手に対しても気持ちよく滑ってもらおう、後押ししようという姿勢がスタンド全体に広がっていました。

かつてテニスでは「ミスにため息をつく日本の客」を諌めるような選手側からの意見もありましたが、今大会の観衆はミスに対して拍手を送っていました。いい演技には歓喜の拍手を、ミスが出たときにはまだまだここからだ頑張れの拍手を。こぼれそうになる落胆の声をノドで殺し、拍手でそれを打ち消していったのです。

いい演技には惜しみなくスタンディングオベーションで讃えつつ、よくない演技にもそれはそれとして感謝の拍手を送る。そして、推しの選手が登場すれば一段ギアを上げた大歓声になることで、ようやく周辺の人が「アンタ、この選手推しの人やったんか…」と察する。そこに「歓声でライバルのチカラを削ごう」なんて発想は微塵もなく、選手の邪魔をしないように静寂を大切にする慎ましい観戦態度がありました。心地よいなと思いました。僕自身も常にそうありたいなと思いました。

試合後のプレスカンファレンスでも男子シングルのメダリストたちが、運営面への満足と観衆への感謝を述べていましたが、本当にそうだと思います。本来ならば「大アウェー」で迎えていても不思議はない大会を、むしろあたたかく、むしろ敬意を持って迎えられたこと。世界記録が生まれるような試合を作り出し、それを万雷の拍手で祝えたこと、よかったなと思います。その一助に自分もなれていたら嬉しいなと思います。

↓あたたかく感じてもらえているなら光栄です!

みんな仲間だから、みんな好き!

そのなかに「まあまあ好き」と「すんごい好き」がいるだけ!

そういう気持ちで見れば、試合はいつも楽しい!




迎えた男子フリー、史上最難関クラスのチケット争奪戦を経て集った精鋭観衆が見守るなか、それぞれにベストを尽くす演技が繰り出されます。日本の田中刑事さんは課題の4回転サルコウを決め、第1グループでの滑走ながら中継開始の段階でも順位表の上位に名前を残すような好演技を見せました。フリーだけなら11位。もし代表選手がふたりであっても、表彰台に乗るパートナーと組めば「3枠確保」が可能なあたりに刑事さんはいる。自国開催でチカラは見せられました。テレビではライブじゃなく録画で映る感じでしたが、いいフリーでした!

↓田中刑事、来季も国際警察での勤務を命じる!

階級は…上げたり下げたりして忘れてしまったので、とりあえず警部で!

世界の舞台でチカラを見せる刑事は、最低でも警部クラスでしょう!


続々とつづく好演技は、会場に熱を入れていきます。ショートプログラムの日は純粋に空調設定大失敗で暑かった場内が、この日はスケートの熱気によって適温に調整されているようです。「ショートの日は半袖だった客が…上着を着ている!」「何でショートの日、あんなアホみたいに暑かったんだ」「氷が溶けてジャンプも跳びづらくなるわ!」と今さらの愚痴もこぼれるほど。いい環境、いい雰囲気、いい演技たちです。

ロシアの重責を背負って苦しみつづけるコリヤダは、「重責感のない大歓声」を背負って会心の演技。フランスのスケーターらしい「個性」を見せるエイモズは、独特なポジション取りやアクロバティックな振り付けで印象を残します。中国のボーヤン・ジンはドでかい4回転ルッツでショートの出遅れを巻き返します。チェコのブレジナは引退を幾度も噂されながらも、恒例の「やめへんでー」で現役をつづけ、8位に食い込む素晴らしい演技。観衆もその価値を知っており、まるでコンサート会場か何かのように、ひときわ大きくわき上がります。

そして最終グループの選手たちが登場。大きな拍手と大歓声。羽生氏の登場は、さらに大きな「超歓声」を生み出します。テレビの中継では映っていない練習中の場面でも、歓声の声色で「羽生氏がジャンプを決めた」ことがハッキリとわかる。そして、その超歓声は羽生氏がリンクを去ると厳かに鎮まり、滑走する選手を迎えます。

最終グループ1番手のヴィンセント・ジョウは3種の4回転を組み込む構成。課題の回転不足が随所で見られ、得点は伸ばし切れませんがそれでも190点に迫るスコア。ショートでの好順位を活かし、メダル争いに加わります。一方、2番滑走の宇野クンはジャンプに苦しみます。冒頭の4回転はいずれも決まらず、コンビネーションにすべきジャンプでも途中で動きを止めてしまいました。

このあたりは挑戦する立場と、勝ちに行く立場との難しさかなと思います。宇野クンは期待を背負い、自覚を持って世界チャンピオンを狙いにいったはず。獲れたらいいな、ではなく、獲る。その心持ちで臨む試合は途端に難しくなるもの。国を背負うとは、そういうことです。ただ、その難しさを知ってこそ、開ける境地というのもきっとあるはず。次の金メダルにつながる悔しさになる大会にきっとなる!

↓「勝つ」と思ってからが本番!「勝てたらいいけど、まだ勝てないかもな」でする努力より、「勝つ」の努力はきっと強い!

五輪銀の選手が目指すものは五輪金しかない!

今季は四大陸を獲ったので一歩前進!

来季は世界を獲る、その気持ちで!


4番手滑走のリッツォは、ショートプログラムで見せた「その日イチ」の自分超え演技には及ばないものの、クイーンメドレーで場内をわかせます。さぁ、そしていよいよ羽生氏が登場。冒頭の4回転ループを美しく決めると、ショートでノーカウントとなったサルコウも意地でこらえます。演技後半には見せ場の「4T+3A+SEQ」も繰り出し、嵐のような期待と熱気が「早く立ちたい!早くスタオベしたい!」と噴き上がります。本人も納得の演技だったでしょうか。演技終了直後のガッツポーズ、それは「いいOriginが奉納できた」という手応えでした!

↓さすが羽生結弦という演技!よくここまできた、よく戻ってきた!おかえりなさい!


フリー206.10点で、新ルール初の300点台「300.97点」に到達!

松葉杖ついてから4ヶ月後の選手が、またも世界記録を更新してしまったな!

何だこの「1年に1回くらいしか試合しないボクシングのチャンピオン」みたいな調整力!


↓Origin様の鋭い眼光がご婦人と紳士を突き刺す!


「何かしてほしいことある?」って聞かれたら、この目で見つめて欲しいって言おう!

それ以上は恐れ多いけれど、目で殺して!


↓ご婦人と紳士の魂を封じた人形状の物体がOrigin様にひれ伏している!

「ぽよーーー」
「魂飛ぶぅぅ」
「すてきだ…」
「ふぁああああ」
「もううごけない」
「ゆづ蜜食べたい…」

ひとつひとつに魂が宿ったプーが降ってくる!

これはぬいぐるみを投げてるんじゃない、魂を捧げてるのだ!




やれることはやった。現時点でのベストは尽くした。あとはライバルたちの演技を待つのみ。もしもこの300点に届くとすればネイサン・チェンのみですが、ネイサンはその期待をさらに上回るような素晴らしい演技。全米選手権では合計340点台というスコアを記録していましたが、なるほどこれならばと唸らされます。4回転ですら余裕があり、課題のアクセルも出来栄えでも大きな加点がもらえるものになっています。今さっき生まれた世界記録、あっという間に塗り替えられました!

最終滑走のジェイソン・ブラウンは、どうしても4回転の持ち玉が少ないことから順位争いという意味では厳しい部分もありますが、この歴史的試合の最後を締めるにふさわしい笑顔の人。自分はまだこれからだ、未来があるのだと、強い決意で環境を変えて臨んだ今季。ショート2位発進からすると順位は下げましたが、メダルを争う最終滑走はチカラのある選手だけにしか与えられない機会です。来季は4回転も決まりますように!

↓金メダルは納得のネイサン・チェン、羽生氏が銀、アメリカのジョウが銅!

「あーーー負けたーーー」と納得の羽生氏!

指の開きで差を示すポーズも、いつもの「あとちょっと」より大きく開く、それぐらいの納得!

これだけミスしておいて世界一は、まぁナイですわな!

納得の負け、見事な勝ち、みなさんお疲れ様でした!


ベストを尽くしたあとで、相手がそれを上回ったらもう仕方がありません。むしろ清々しい。本来なら休養でもおかしくないシーズンに、怪我をおして、自国開催の世界選手権で束の間の世界記録を見せてくれた。金メダルではありませんが、メダルも手にしました。これを悔しがっているのは世界で羽生氏だけでしょう。素晴らしい戦いぶりでした。

もしかしてこの負けは羽生氏の炎をさらに燃やす、いい負けだったかもしれません。清々しさのなかでもメラメラと気持ちは燃え上がり、ルッツやアクセルの4回転も練習するぞと思わず口走る姿もありました。試合後の公式会見では「さらに強くなりたい」という言葉も出ました。24歳らしい青くささがあふれていました。

確かに勝つところは見たいけれど、それ以上に勝ちも負けもある「勝負」を見たい。強いライバルと競い、自分を高めていく姿を見たい。平昌五輪の金はひとつの到達点ではありますが、いつか「完璧な羽生結弦」がひとつの試合で揃うところを見たい。今大会の羽生氏は現時点ではベストだったと思いますが、羽生結弦のベストオブベストからはだいぶ遠いものでした。もっといいジャンプができるし、もっと心をつかむ舞踏ができます。それをぶつけるにふさわしい相手もいるわけですから、まだまだもっともっとチカラは出せる。

そういう試合を見てきたから。

ベストオブベストは遥か上だと知っているから。

怪我から復帰し、勝負に帰ってきた羽生氏の、さらなる活躍期待しています!


国別対抗戦に出るっぽい口ぶりだったので、それも期待して待ちます!