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扉を叩きつづけよう!

ついに幕を開けた世界フィギュアスケート選手権。20日はペア、そして女子シングルがショートプログラムを行ないました。注目の女子シングルで首位に立ったのはさすがの演技を見せつけたオリンピックチャンピオン、アリーナ・ザギトワ。日本勢では坂本花織さんが小差の2位、紀平梨花さんはトリプルアクセルが抜けてノーカンとなり7位、宮原知子さんは回転不足などもあって8位発進となりました。



「日本の応援」という立場からは必ずしもすべてが上手くいったわけではありませんが、成すべきことは成した、そういうショートだったと思います。特に大技が一転してノーカンとなったことで大きくトップに水をあけられた紀平さんは、よく挑み、よく踏みとどまったと思います。

彼女にとってはこれが初めての「世界」しかも「地元」。一方でライバルたちは昨年の五輪を知っている選手たち。五輪を乗り越えた選手にとって世界選手権は知っている範囲内の戦いでしょうが、初の世界、地元からの大きな期待というものは紀平さんにとって未知の体験です。すべてが上手くいくとは限りません。失敗しても、それが「普通」です。その点では、ザギトワという選手は本当にすごい選手です。いまだ16歳、世代交代によって五輪経験組が少なかったとは言え、初の「世界」でいきなりの金を獲った選手なのですから。この世界選手権にキッチリと合わせてきたこと、何の驚きもありません。

だからこそ、追う側、とりわけ紀平さんは挑んでいかないといけない。この日の演技の内容を見れば、トリプルアクセルを跳べば基礎点では紀平さんが上回りますが、ダブルアクセルだった場合は紀平さんのほうがわずかに下となります。各要素での出来栄え加点、さらに演技構成点でも少しずつ差をつけられており、総合で言うと「トリプルアクセルをいい出来栄えで決めて基礎点8.00点+出来栄え2.00点程度を獲得してもザギトワを逆転するには至らない」という状態でした。さすがザギトワ、オリンピックチャンピオンです。

そのオリンピックチャンピオンと、3年後の北京で戦うことを考えたら、今ここで守りの演技をしても、ライバルをラクにさせるだけ。グランプリファイナルでそうしたように、破壊的に、新時代の扉をこじあけて、今の演技をどれだけ完璧にやっても届かない世界へ進んでいかないと。紀平さんはそれができるし、それをやる立場にあります。五輪でやるつもりのことなら、それ以外の大会で理由なく止める意味はありません。

五輪の経験は五輪でしか積めません。

世界の経験は世界でしか積めません。

紀平さんは北京までに「五輪の経験」を持つことはできません。同い年のライバルは五輪の金を知っている。それは途方もなく大きな差です。五輪の本番は二度目であり、一度目はごく一部の傑物を除いて「飲まれて終わる」もの。紀平さんはその点で苦しい立場にあります。だからこそ、残された「世界」、今年を入れても三回しかないチャンスで「私は世界の舞台で私の全部を出し切って、なおかつ勝ったことがある」という状態を作っていかないと。

トリプルアクセルは当然跳ぶべきだと思いますし、演技始まりの1本目での失敗がつづいているのは再現性がある失敗なわけですから「そうならない方法」を見つけたら避けられるようになるはず。それを見つけていきましょう。どこまでできるか、限界を拡大していきましょう。次の五輪までの三度の「世界」すべてを、自分を超えるために使い、一番大きな舞台で自分に勝ったことがある、そういう状態を「知っている」ところまでもっていってほしい。ひるみなく跳びつづけてほしい。

フリーでの巻き返しは「すでに知っているもの」として、確信しながら待っています!

ということで、まだまだ勝負の行方はわからない女子シングルについて、20日のフジテレビによる「世界フィギュアスケート選手権 女子シングルショートプログラム」から振り返っていきましょう。


◆もはやコケるとかコケないとかいう段階の選手はいない!

午前中からよく入った大観衆。この日を楽しみにしていたという気配、スーパーアリーナに充満しています。日本の人、世界からやってきた人。並んだ国旗の数々が、ここが「世界」なんだと教えてくれる。公式練習で感じた涼やかな緊張感がテレビ画面を通じても広がってきます。ズラッと参加選手の名前を一覧で記載する中継での紹介も、「世界」だなという感じがします。そう、ここにいる誰もが「世界」の選手なのです。

そのなかでも女子シングルの戦いは、ひとつの時代の頂点まできています。3回転5種で戦う限りにおいて、世界基準の選手たちはもはや大過失を犯しません。ミスと呼べるものさえ少ない。どれだけ加点を積み上げ、つなぎや振り付け、音楽との調和によって、より素晴らしい舞踊を見せるか。「ダメなほうが勝手に負ける」のではなく「よりよいほうが勝つ」のが当たり前となった戦いです。フリーに進む上位24人で言えば転倒はわずかに2回、コケないのが当然なのです。

上位勢ともなれば、ショート7要素の出来栄え加点だけで10点近くを積み増していくような、イイ演技ばかりがつづきます。「出来栄えで10点積めないと技術点負けする」なんて、見る側としてはありがたいですが、やる側としては大変極まりないことでしょう。そんなハイレベルな戦いは、最終グループを待たずして韓国のイム・ウンス、アメリカのマライア・ベル、カザフスタンのトゥルシンバエワ、ロシアのサモドゥロワが70点に乗せてきます。レベルが高い。

そして豪華絢爛な最終グループ。各国国旗が揺れる大歓声のなか、6分間練習では誰もが女王の気配をまとっています。ジャージを脱ぎ、衣装が露わになったときにはゾクッとするような気持ちにも。紀平さんは次々とトリプルアクセルを決め、宮原さんはおなじみのルーティーンで身体を温めていく、そして坂本さんはケロッとしている。これが五輪を知っている選手か。平昌五輪や、全日本の緊張に比べれば、どうということはない。坂本さんだけ見たら「さいたま開催のNHK杯」くらいの顔です。

最終グループ1番滑走はその坂本さん。冒頭の連続ジャンプは、どこまでも跳んでいきそうな大きな幅と伸び。その「剛」の魅力に、繊細なステップやつなぎが加わって「柔」の魅力も増してきた今季。ループで跳ねる髪は、入り・回転・流れと一筋の軌道を描いて、花咲くように空中で開きます。このループ、本当に美しい。ジャッジのつけたGOE「5、5、5、5、5、5、4、3、5」は満点ジャッジまであと0.07点、もう「オール5」でもいいくらいの見事さでした!

↓これぐらい目を見張る美しさで「5」なんだというループ!かおちゃん、自己ベストで好発進です!


「羽生結弦のトリプルアクセル」以外でGOE+5ジャンプ誕生の予感!?

こんだけ完璧に3回転できるなら、4回転も跳べるんじゃないの!?



つづくアメリカのブレイディ・テネルは回転不足などがあって70点に届かず。さらに、最後の最後までルッツの入りをイメージしながら滑り出した宮原知子さんは、そのルッツからのコンビネーションでセカンドジャンプが回転不足になり、得点を伸ばせず。会場で見ていたら大喝采する演技なのですが、スローで見ればなるほど足りていません。そのわずかな1点、2点で順位がひとつ、ふたつと下がっていきます。厳しい!

↓ジャンプを見直しながら、しっかり結果も残してきた今季!フリーでは真のノーミスを!


そして、波乱の選考を超えてここまで戻ってきたメドベージェワ。昨季は「運命に翻弄される美少女」といったイメージだった演技が、今は「運命を切り開く美女」という角度にアップデートされたような印象。拠点を変え、自分を変えるという「決断」が、演技にも反映されています。ジャンプには回転不足もつきますが、シーズン序盤を思えば、よくここまで上げてきたなと驚くばかり。表彰台も狙えるショートとなりました。

ラストふたり、先に滑る紀平さんは冒頭のトリプルアクセルが抜けてシングルに。ショートプログラムではシングルジャンプは無得点となります。大会全体の出鼻をくじく痛いミスでした。しかし、これで崩れないのが紀平さんのすごさ。とても初の世界選手権で日本中からの重圧を受けている16歳とは思えません。

ミスのあとでもニッコリと笑って、プログラムを表現することを忘れない。落ち込まない。フリップ、ルッツの跳び分けはこの日も完璧にして明確です。要素がひとつ抜けても十分に戦える。もともと3本跳んで2本決めればOKという大技です。毎度このパターンなのはご愛嬌ですが、フリーでまくっていきましょう!全員に「私に勝つには自己ベストが必要ですよ」を強要する、いつものまくりを!

↓「ごめんなさい」とか言わなくていいから!


金は相手次第としても、ほかの色は自分のチカラで獲りに行ける!

自分に勝って、気持ちいい初「世界」にしよう!




最終滑走のザギトワは、冒頭のトリプルルッツ+トリプルループのコンボで他の選手を大きく引き離すと、間断なくステップを踏み、技を詰め込んだ隙のない演技。82.08点のスコアは紀平さんがトリプルアクセルを決めた世界最高スコアに迫るもの。なるほど、オリンピックチャンピオンを相手に、跳ばずに勝とうなんてのは虫がいいかもしれません。さすがのチカラ、お見事でした!

↓ザギトワ、坂本さん、トゥルシンバエワの上位3選手にはスモールメダルが授与されました!

かおちゃん、まずはおめでとう!

ビッグなメダルも狙おう!


そして今日は男子シングルもスタート!僕も現地で見守ってきます!