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07:00
攻めないバレーに勝利はない!

残念な負けでした。男子バレー・リオ五輪世界最終予選、日本は絶対に勝ちたいアジア枠のライバルである中国に0-3で敗れました。点差だけなら惜しい負けという部分でもありますが、実際にはそんなに惜しくもなく、差を詰めるポイントを見い出せないままズルズルと敗れた格好でした。取って取られての泥沼のシーソーゲームではなく、ちょっとだけ離された差がそのまんま最後までいってサクッと終わった試合。野球で言えば「1回表に1点取られて、そのまま終わった」みたいな試合感でした。

特に残念だったのがサーブで攻めることを止め、弱気のバレーになったこと。経験も実績も浅いチームが攻めることを忘れたら、一体どこで相手に差をつけるというのか。攻めて、攻めて、攻めまくる。守勢に回る時間が多いとしても、ここぞというときには乾坤一擲の攻撃を繰り出さなくては、いつかどこかで締め殺されるだけ。ラグビーが奇跡の番狂わせを起こしたときは、勝利だけを信じる「勇気のプレー」をやり抜いたわけで、やはりそういう戦いを見たいと思うのです。

もちろん、無謀な攻撃をしろというわけではありませんが、それでもサーブは攻めないといけない。よしんば大きく外れるミスになるとしても、サーブで攻めなければ勝利はないのです。どうしてもサーブを外すと「せめて入れろ」という緩やか入れとけサーブを求める向きが世間にはあります。それはお茶の間でもそうですし、解説席の川合俊一さんあたりもそうなのですが、それは理屈として間違っている。

全日本で一番速くて強いサーブが打てる選手に、緩やかに入れとくサーブをやらせるなんて、敗退行為と言ってもいいくらい。そんなサーブを撃つくらいなら、ドカーンと外したほうがまだマシです。個人的にプリンス柳田の高速サーブが見たいから、ということではなく、それが勝利への道であればこそ、ドカーンといってほしい。

ということで、サーブは攻めないといけないし、攻めた結果外したとしても構わないということを、ザックリと説明していきましょう。


バレーボールではサーブを撃つ側が基本的に不利

ほかのスポーツを引き合いに出したほうがわかりやすいので、いろんなところからたとえ話を出していきます。まず根本的なところですが、バレーではサーブを撃つ側が不利です。これは極めて珍しいことです。多くのスポーツにおいて、基本的に有利なのはサーブを撃つ側。テニスなどを見れば明らかですが、相手のサービスゲームを奪取するのはなかなか難しく、セット中に1回できればそれだけで勝利が見えてきます。それぐらい「サーブは有利」です。

考えてみれば当たり前のことで、サーブを撃つ側は自分で自由に撃つ場所やスピードを決められるのです。相手はそれを見てから反応しなくてはいけない。テニスのように、あの広大なスペースをひとりでカバーするような競技であれば、まず右にくるのか左にくるのか、その読みを外しただけでどうにもならなくなります。そこをイーブンにしようとすれば、バドミントンのように「サーブではバチンと叩きつけてはダメ」とルールで制限をかける必要があるでしょう。

では、何故ジャンプサーブなども許されるバレーでサービス側が不利なのかというと、バレーではレシーブ側が最大6人(実際は2〜3人)で受けるからです。「1対多」の戦いになっている。テニスだって、どれだけビッグサーバが相手でも、受ける側が3人もいれば、簡単にサービスエースなどできないでしょう。

その後、攻撃にまわった段階は、今度は相手側が多人数でレシーブするから有利かというとそうではありません。レシーブしてトスしてスパイクするときは、ネットのフチから100キロを超える速さでズドンと叩きつけてくるのです。そんなもの簡単に取れるわけがない。「スパイクを撃たれてから拾う」のはかなり難しい。「拾う」のは難しいからブロックで「止める」あるいは「コースを限定する」という発想になるわけです。

しかも、ここでもスパイク側には絶対的に有利な条件があります。バレーボールでは前衛と後衛があり、ブロックに参加できるのは「最大で3人」と決まっています。一方、スパイク側にはバックアタックという後衛から攻撃する手法があります。これにより「最大5人、リベロがいることが多いので大半の局面では4人」で攻めることが可能になる。ブロックVSスパイクでは、基本的にスパイクの人数が多い。このことによって、スパイク側は絶対的に有利なのです。

どれだけ高さがあるブロックでも所詮は3人。4人が同時にバラバラの位置で攻撃の態勢に入れば、必ず1人はフリーになるのです。サッカーで守備側と攻撃側の人数に差がある局面を考えれば、それがどれだけ点になりやすいかわかるでしょう。その状況が試合中ずっとつづくのがバレーボール。バレーは点が入りやすく、特に「サーブを受けてから先に多人数で攻撃する側」は構造的に有利なのです。

↓ブロックが3人いても4人同時に攻撃に入れば、必ず誰かフリーになる!


レシーブしてセッターにいいパスが返ったら、まず真ん中でひとり跳ぶ!

そして直後に追っかけで左と右と真ん中から3人が跳ぶ!

ボールが戻ってきたらまたコレを繰り返す!

「4人で跳ぶ」VS「3人でブロック」の攻防が基本形!

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4人で攻撃したとき、どうやって3人をやり込めるのか

バレー中継では「センター線が大事」とよく言われます。そして、速攻が決まったりします。なるほど、センターからの速攻が大事なのだな、と思うかもしれません。それは半分当たっていて、半分は違います。何故センター線が大事かというと、ブロック側の動きをコントロールするためです。

まずブロックには大きくわけてコミットブロックというものとリードブロックというものがあります。コミットは「決め打ちで跳ぶ」ブロックで、リードは「見てから跳ぶ」ブロックです。コミットは「コイツのスパイクを止める」という決め打ちになるので、狙った選手のジャンプに合わせて跳びます。ハマれば強いですが、外せば痛手が大きいブロックです。

たとえば、先ほどの話のように4人攻撃をしてくるチームに対して、3人のブロックで防ぎにいくとき。真ん中で最初に跳ぶ選手が速攻を撃ちそうだ、撃たれたら怖いので、ガムシャラにコミットで跳んで止めにいった場合。もし、その狙いをスカされたら、真ん中で決め打ちで跳んだ選手は「1回着地して、もう1回ジャンプ」しないとブロックに参加できません。そこで、実際は後列中央の選手にトスが上がったら。これはもうただ見送るしかないわけです。

もちろん、スパイク側の中央からの速攻がいい感じできたら怖いです。怖いけれど、万一それが引っ掛けだったら、中央後列の攻撃に完全に手も足も出なくなる。だから、リードブロックでトスを見てから跳ぶ。そうするしかないのです。野球でも、たまに球種やコースにヤマを張る打者がいますが、ヤマが外れたら見送り三振じゃないですか。バレーでそんなことやっていたら、相手にドンドン点が入るだけ。

センター線からの速攻、そしてその背後からつづけざまに跳んでくるバックアタック、中央からの攻撃が強力であればあるほど攻撃側は有利になります。相手の3人しかいないブロックが、真ん中に釘付けになるからです。真ん中で釘付けになれば、当然左右には行きづらくなる。そこにトスをまわせばスパイカーとブロッカーが1対1になる。「1対1で相手の後ろにボールを通す」というのはかなりイージーでしょう。サッカーなら「決定機」と呼ばれるヤツです。

だからブロック側も何とかして2対1の状況を作ろうと必死になります。ひとつのやり方としては、おおよそ中央に3人が集まって守りを固めたうえで、トスが左右に出たら、そちらサイドの2選手が急いで走っていくというやり方です。もうひとつは、最初から3人が左・中央・右に散らばっておき、真ん中の選手がめっちゃ頑張るというやり方です。これのバリエーションとして、「2人が中央、1人は外」とか「3人とも外」なんてケースもあり得ます。

基本的には「中央付近でブロック3人が集まっている状態から、トスを見て走っていく」が多く、相手の攻撃によって都度変えていくことになります。これは野球で言う守備位置の変更のようなもので、「この打者は引っ張るしか能がないから三塁線に寄っておこう」とか、相手の特徴やデータを踏まえてベストな守備体系を考えるのです。

もちろん攻撃側は攻撃側でブロックの体系を見ていろいろと考えます。ブロックが中央に寄っているなら、外に早いトスを出して追いつけなくしてやろう、とか。ブロックが散らばっているなら、前衛の3人がそのままブロックを食いつかせておき、間を通すようなコースでバックアタックを狙ってやろう、とか。

その駆け引きのすべての基本となるのが、「真ん中から速攻を撃つかもよ〜」という怖さ。これがなければ、ブロックは「どうせ外やろ」と思ってしっかり見てきますし、外にラクに2枚がついてきます。野球でもストレートの威力がなければ変化球も活きないでしょう。速いのがあってこそ、ほかの攻撃も活きるのです。

↓一番ダメな感じなのは、真ん中のブロックが相手の速攻の幻影に引っ掛かって、無駄に飛び跳ねているときです!


第3セット20-18の場面、中国のレシーブがセッターに入ると、日本はヤマカンで中央の速攻にブロックが跳ぶ!

しかし、トスは読みを外してサイドへ!

中央で引っ掛かったら、外にはどうやってもブロックが2枚いけない!

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では、サーブ側はその不利をどうやって引っくり返すか?

サーブを多人数でレシーブされ、多人数で攻撃される。これがつづくかぎりはジリ貧に変わりはありません。素晴らしい反射神経で、抜けてきたスパイクを拾えることもあるでしょうが、そうそうできるものではない。何とかして、ブロックのところで止められるようにしたい。そこで出てくる発想が「相手の攻撃の枚数を減らしたい」です。

相手のスパイクが3人なら、3人のブロックで一応相対できます。スパイクが2人なら、どちらか一方には2枚つけるでしょう。1人しか撃つ選手がいないことがわかったら、3人全員でブロックにつけばいい。攻撃側の枚数が減れば減るほど、ブロック側は優位に立ちます。

そのために大事なのがサーブ。

最高なのはもちろんサービスエースです。有無を言わさず1点入ればそれに越したことはない。もし、それができないなら、せめて相手のレシーブを乱して攻撃の枚数を減らしたい。大きなポイントは2つ。「ヘンなところにレシーブさせてセッターを動かす」ことと「ヘンな態勢でレシーブさせて攻撃への移行を遅らせる」こと。

セッターがコート中央・ネット際から離れれば、速攻を撃とうにもトスからスパイクまでにかかる時間が延びます。ゆとりがあれば、それだけしっかり見てから跳べますし、防ぎやすくなります。また、トスを上げるために走って追いかけているような状況では、出すコースがかなり限られてきます。さらにオーバーハンドではなく、アンダーハンドで出す場合、まともに上がるのは向いている方向だけでしょう。アンダーから背面にキレイなトスをあげるなんて芸当は、なかなかできない。

そういう状況にセッターを追い込めば、「スパイク撃つのはコイツやな」がわかり、すなわち「攻撃枚数が絞られ」、ブロックが一ヶ所に枚数を掛けられる。サービスエースが取れなくても、セッターを動かして、「速攻の可能性を減らし」「トスの方向を限定」できれば、それだけでブロック側が俄然有利になるのです。

また、セッターにはいい返球が返ったとしても、肝心のスパイクを撃つ選手が転んでいたら意味がありません。サーブでは相手のエースをねらうことが多いですが、それは単に「ドカンと撃つヤツはレシーブが下手そう」ということだけでなく、「のちにスパイクを撃つ予定の選手に難しい球をレシーブさせて、攻撃への移行を遅らせたい」ということ。転んでくれれば攻撃枚数は1枚減りますし、少し遅れてくれただけでもブロックが間に合う可能性が高まる。攻撃への移行の邪魔になる場所に落としたり、バックアタックのために下がらなければいけない選手の手前に落として釣り出したり、「攻撃させないためのサーブ」を仕掛けていくのです。

それができなければ、どうやっても人数的に「不利」なのがバレーボールであり、不利を引っくり返すには「相手にレシーブミスさせたり」「転ばせたり」するサーブが必要なのです。つまり、「強いサーブを撃たない限り、永遠に不利」なのです。川合俊一さんは「入れとけ」と言いますが、あの人は「自分が天才的ブロックで止める」前提の話をしているのであって、そんな天才は今の全日本にはいません。ゾウがライオンと戦うときは「一回噛みつかせてから踏む」と答えるかもしれませんが、噛ませたらダメなのです。

テニスでもファーストサーブが入れば得点に結びつきやすく、「入れとけ」のセカンドサーブは失点につながりやすい。1対1でやってるテニスですらそうなのに、レシーブ側のほうが枚数が多いバレーでそんなサーブ入れても仕方ないのです。「そもそも大した期待ができない」選手に入れとけサーブをさせるならまだしも、「日本で一番期待ができる」選手にそんなプレーをさせるなんて。野球なら4番に送りバントさせるようなものです!

↓柳田はどんなときでもサーブで相手を壊しに行かないとダメ!それが日本が勝つための第一手だから!


外したらそりゃ失点するだろうが、入れるだけのサーブならどうせ失点するから同じこと!

得点の可能性を生むには、恐れず、ドカンと、撃つしかない!

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第2セット、まだまだ追い上げたい16-19の場面で柳田にサーブがまわり、それがリベロの正面に飛ぶ緩やか入れとけサーブだったのを見たとき、今日はアカンなと思いました。ここで点を取らないといけないというローテで、武器がなくなってしまった、と。それでは、勝つ試合も勝てないだろう、と。ミスを恐れて武器を捨てれば、相手はただラクになるだけです。

中国にストレート負けしたことは正直痛いですが、もちろんまだ終わったわけではない。ただ、ここから先の相手に勝つには、中国戦以上に攻めて、勝ちに行く姿勢が必要。弱気になれば地力の差がドンドン出てしまいます。そこを覆していきましょう。自分たちの武器を信じて。そうなったら、きっとドラマチックで、すごい物語になり、一気に五郎丸みたいになりますから…!五郎丸は既婚でしたけど、石川・柳田は独身ですから…!


四球を嫌って真ん中投げてもどうせ打たれる!四球でいいから全力で!