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悲劇は悲願となり、すなわち夢となる!

サッカー日本代表の2022年ワールドカップが終わりました。迎えたベスト16でのクロアチア戦。日本は我慢強く、粘り強く戦いました。しかし、PK戦の末に敗れました。新しい景色…ベスト8を目指してきた日本はまたしてもこの壁に行く手を阻まれました。残念です、が、残念という言葉で彼らを迎えたくはない、そう思います。ありがとう、ありがとうで迎えたい。新しい景色は見られなかったかもしれませんが、素晴らしい夢が見つかりました。



中3日で進む過密日程のなかベスト16へとたどり着いた日本は、過去最高に充実していました。累積警告や体調不良で若干の離脱者はあるものの、グループステージで多くの選手を起用し、心に火をつけて、素晴らしい一体感のなかでここにたどりつきました。意欲十分、コンディション十分、達成感よりもまた野心が大きい。ここで勝つための4年間が実を結び、戦う準備は万端でした。

日本はこの大会でいい結果を残してきた3バックの布陣を採用します。前半は失点を抑えて後半に勝負をかける。今日も粘り強く、我慢強く戦う覚悟です。誰もがいい顔をしています。この日の君が代はひと際熱く高ぶるようでした。森保監督の歌声がデカイぞと世界で評判になったのか、すごい数のカメラが狙っていました。世界の熱い視線が日本に注がれていました。

↓魂の君が代で、新しい景色への挑戦!


前半、静かで緊張感のある立ち上がりです。ボールを持つのはクロアチア、日本はまずはじっくりと構えています。もっとも警戒を要する世界的プレーヤー・モドリッチさんは広範囲に動き、常に捕まえづらいところを漂っています。丁寧にマークを受け渡しながら見張っていないと、ふとした隙に試合を決められてしまう、そんな怖さがあります。

前半はかなりクロアチアにボールを持たせる展開になり、ピンチもいくつか生まれました。前半8分には自陣深くでボールを奪われてエリア内でシュートを許します。GK権田さんがセーブして難を逃れますが、ヒヤッとする場面でした。前半28分にはあとほんのちょっとでプレーが切れそうなところから、なかなかプレーが切れず連続でシュートされる場面も。派手で華麗なプレーは少ないものの、ひとつひとつが地味に嫌なところを突いてきます。

もちろん日本も負けてはいません。ここまであまり見受けられなかったセットプレーの秘策的な動きも惜しまず繰り出していきますし、相手との嚙み合わせを見ると相手の左サイドはある程度攻略できそうな感じ。前半12分には伊東純也さんが持ち上がって素晴らしいクロスを送る場面がありましたし(※惜しくも触れず)、前半20分にも伊東さんがスピードで振り切る場面がありました。互いに持ち味を活かしてチャンスを作り、にらみ合う前半戦です。

そうした互角のにらみ合いのなか、最高の時間帯に試合を動かしたのは日本でした。前半終了間際の43分、右サイドのコーナーキックからショートコーナーでつなぐと、堂安律さんが左足で鋭いクロス。これを吉田麻也さんが折り返すと、そこにいたのは前田大然さん!格上との苦戦がつづくなか、前半戦で走り潰れるという仕事を託され黙々とプレスをかけつづけた前田さんに、サッカーの神様が微笑んだかのよう。いや、サッカーの神様が微笑みそうな場所に常に顔を出していたからこそのこのプレーか。女神の視線の先に現れつづけた男の、歴史の扉に手をかける先制点!

↓最高の時間帯で決めた!前田大然先制点!




よし、小さくガッツポーズで手ごたえを覚えました。試合前にひとつ不安として抱いていたのが、幸先よく先制したパターンについてでした。このチーム、ここまでの戦いを踏まえれば、先に失点すること自体に不安はありません(※もちろん失点したくはないが)。そこで崩れずに粘り、後半に勝負をかけることができますし、ピッチ上の選手を含めてそういう意思統一ができるでしょう。

ただ、先に点を取った場合、追加点で仕留めにいくのか、その1点のリードを保ったままリスクを抑えていくのか、その点でちゃんと息が合うのかは不安でした。なにせこの3試合、すべて先制を許しているのですから。それがもう時間がない前半の終わり際に取れたのです。これならハーフタイムでしっかりと意識を合わせて後半に臨める。何もかもが素晴らしい先制点、そう感じました。最高の前半戦でした。

↓ちなみにその頃、みんなのABEMAは落ちていました!

くーーー、そうきたか、わかった!

もうサイバーエージェントの株売る!


迎えた後半、日本に動きはありません。クロアチアにも動きはありません。なるべく長い時間イチゼロで、できれば試合の最後までイチゼロで、そんなことをフワッと思ったりもしますが、さすがにそこはワールドカップ。後半10分、日本はスペイン戦でもやられたような、余裕を持ってあげたクロスにヘッドで簡単に合わされるという形で失点します。要所にデカくて強いのがいるクロアチアの強み、存分に活かされました。

↓おおぅ……。これで1-1同点……!


それでも日本にはショックも動揺もありません。こんなこともある、そういう落ち着きのもと、しっかりと戦っています。失点直後の攻撃では遠藤航さんがあえてのミドルを放つなど、相手を調子に乗らせないための試合運びも含めて堂々と渡り合っています。たくましい、大人の試合運びです。

お互いに勝ちたいから攻める、攻めればミスが出る、ミスが出るとピンチになる、他人事として見れば面白い試合ですが、日本側の肝は冷えっぱなし。おそらくクロアチア側もそうだったでしょう。どちらにも勝つチャンスはありましたし、どちらにも負けそうな場面がありました。「がっぷり四つ」でした。

↓試合を決めるチカラを持つモドリッチさんのシュートは権田さんがスーパーセーブ!


後半19分、日本は攻撃へと舵を切ります。前田大然さんを下げて浅野拓磨さんを投入し、ブラボー長友さんを下げて三笘薫さんを投入。日本中に期待が広がる瞬間でした。出場するたびに決定的なチャンスを作ってきた三笘さんは、この日も切れ味鋭いドリブル見せます。ただ、クロアチアもしっかりと「戦術三笘」を把握しているようで、三笘さんの動きをふたりが監視し、好きなようにはさせてくれません。

ならばと日本は酒井宏樹さんを投入して伊東純也さんのポジションを動かしてみたり、南野拓実さんを投入して中央での崩しも狙ってみたり、いろいろと手を打っていきますが、なかなか決定機は生まれません。前線の選手が自慢のスピードで振り切ろうとしてもクロアチアのグヴァルディオルさんが「完封」と言ってもいい対応を見せており、非常に厄介です。

やがて、短めのアディショナルタイムのあと試合は延長戦に突入します。4年前はこの延長戦で敗れたわけですが、振り返ればあのときは勝ち急いだ部分もあったなと思います。もっと粘り強く、我慢強く戦っていれば、もっとほかの勝機があったかもしれない、そう思います。その点で今回の日本代表は本当に強かった。チャンスもピンチもある揺れ動く試合のなかで、我慢を重ね、焦らず、粘り強いプレーを見せています。「戦う」ことができています。どこどこまでも粘ってみせる、そんなたくましさです。

延長前半15分、三笘さんの長いドリブルからの強烈なシュート。延長後半4分、三笘さんが縦にはいかずエリア内に入れたパス。延長後半10分、逆サイドまで抜けてきたボールをエリア内で受けた三笘さんの折り返し。三笘さんがボールに触るたびに期待の気持ちが高まり、相手の攻撃で肝を冷やす、その繰り返し。「みとまーーー!」「あぶねーーー!」「みとまーーー!」「あぶねーーー!」がピッチを往復しながらやってきます。熱かった。激しかった。最後まで戦い抜いた日本でしたが、得点は奪えず、されど失点も許さず、勝負はPK戦に持ち込まれました。

↓この試合、最大の「みとまーーー!」でした!



迎えたPK戦。蹴るゴールは日本サポーターの目の前で、日本は先に蹴ります。サポーターの目の前で、一般的に有利と言われる先攻を得た。ツキはあると思いました。しかし、日本は1人目・2人目のキッカーがつづけて相手GKに止められると、4人目で蹴ったキャプテン吉田麻也さんも止められてしまいます。日本のGK権田さんもいい読みで相手のキッカーにプレッシャーを与え、1本を防ぐことに成功しますが、3本止め返すのは難しかった。前回大会もPK戦で勝ち上がったクロアチアが、またもPK戦での勝ち上がりを決め、日本のベスト8への挑戦は終わりました……。

選手たちは自分を責め、もう少し何かできることがあったのではないかと思い悩んだりするでしょう。地面に突っ伏している選手や涙が止まらない選手の姿も見受けられます。その悔しさを「惜しかった」とか「頑張った」とか「よくやった」なんて言葉で癒すのは難しいだろうと思います。だから、「それも知っている」と伝えようと思います。日本は2010年大会でもベスト8に進むためのPK戦を経験していますが、そのときもやはり敗れました。今の悔しさも、乗り越え方も、日本サッカーは「知っている」のです。この大会で何度も助けてくれた「過去」が、今度もまた助けになるはずです。知っていることなら前よりも上手に乗り越えられる、そう思います。

思い返せば当時は世間も荒れましたし、外した選手本人も大いに苦しんでいました。ただ、故オシム氏の言葉を引けば「PK戦は運」です。運です。これはサッカーの良し悪しとは別のところにあるジャンケンの代わりのようなものです。勝ちをつかむのはとても難しく、割り切るのがとても難しいのは、運だからです。考えても考えても考えても答えは出ません。答えが出ないものにとらわれるよりも、前を向いたほうがいい。それは12年前の辛い経験を12年舐めまわして得た結論です。12年舐めまわした結論は、ちょっとやそっとの涙や落胆では揺らぎません。何を言われても12年分オウム返しで「そんなこと言っても運だから」と言い返せる自信があります。

それでも、流したその涙が無駄だとは思いません。

今大会、日本は本気でベスト8を目指しました。そのためにターンオーバーもしながら、ここで戦えるチカラを残して勝ち上がってきました。ベスト16に進んでも誰も満足しない、野心に満ちたチームを作ってきました。その結果、前回準優勝のクロアチアを相手に見事な戦いを見せ、運否天賦のPK戦にまでもつれました。チカラは十二分にベスト8に届いていました。もうこれで「ベスト8」というのは絵空事ではなく、本気で目指すべきで、いつか達成しなければ気が済まない目標となりました。「悲願」となりました。

勝ちたいという想い、叶えたいという想い、それは誰かの悲しみによって育つのだと思います。かつてのドーハの悲劇と、あのとき悲劇に見舞われた選手たちの姿が、あまりにも悲劇的であったがゆえに、サッカーにあまり馴染みがない人も巻き込みながら「どうしてもワールドカップに行かねばならない」という想いを広げました。日本を代表するような選手たちが泣き崩れるほどに願ったものなら、きっと素晴らしいものなのだろう……そういう形で僕らは物事の価値を知るのです。

誰かが悲劇に涙するとき、そこに悲願が生まれます。

「ドーハの悲劇」が「ワールドカップ出場という悲願」を生んだように。

今大会、日本サッカーは久々に「悲願」を得たと思います。

ベスト8を本気で目指し、あと一歩に迫り、悲劇的に破れたからこそ、ベスト8は「悲願」となりました。いつか絶対に叶えなければならないという想いが日本に広がりました。何となく上手くいって、本気で目指していないのに近づいたときは悲劇にまではなりませんし、悲願も生まれません。すでにある程度報われていて、追加のごほうびのような望みであれば悲劇にまではなりませんし、悲願は生まれません。素晴らしい選手たちの涙が、無念が、悔しさが、素晴らしい悲願を生んだのです。

これからのワールドカップでは、今回得た悲願が選手たちを奮い立たせ、人々を熱くさせるでしょう。もうどんな大会であっても「ベスト8」を目指すことで日本は決まったのです。仮にグループステージにドイツとスペインがいたとしても、視線を下げる必要はないのです。その厳しさを乗り越えても叶えたい悲願がここに生まれたのですから。叶えられなかった選手たちの涙が、いつか叶えなければならないという想いをたぎらせてくれるのですから。それは日本サッカーにとっても大きな収穫だったと思います。

悲願とは夢です。どうしても叶えたい願いです。

日本代表は悲劇的に破れましたが、その結果、

悲劇的であるほど大きく育つ夢を得たのです。

だから、「夢をありがとう」、心からそう思います。

言葉遊びではなく心からそう思います。

あのドーハの悲劇のような熱い夢をまた得られたのです。

「ドーハの悲願」を再び得たのです。

感謝のほか、何もありません。

今からもう4年後への挑戦が楽しみなくらい。

夢に向かっていく時間ほど楽しいものはない。

ありがとうサッカー日本代表のみなさん。

「ベスト8」という夢、いつか必ず絶対に叶えましょう!

その日まで元気に楽しく生きていきます!

↓いつか叶えたい夢を生んでくれてありがとう!









「ドーハの悲願」が再び「新・ドーハの悲願」となって日本に帰ってきました!