08:00
オリックス・バファローズ覚醒!

大きな大きな1勝でした。大熱戦つづくプロ野球日本シリーズ、ヤクルトVSオリックスの第5戦はこのシリーズの行く末を反転させる分岐点になったと僕は確信しています。第5戦でヤクルトが勝っていればヤクルト日本一は間違いありませんでしたが(※当たり前だが)、この試合を制したことでオリックスの逆転日本一がハッキリと見えてきました。いや、勝ち確と言ってもいいところまで来たでしょう。




前夜の手痛い敗戦のあと、オリックス中嶋監督が残した言葉が気になっていました。「明日の先発はヤマ!」というダイイングメッセージのような謎掛け。ベンチに居並ぶ「ヤマ」の誰が投げるのか野球界隈でも諸説流れました。規定路線として山福也さんが投げるのではないか。ベンチ入りを果たしていた山岡泰輔さんが先発起用されるのではないか。あるいはスクランブルで山本由伸さんがマウンドに上がるのではないか。一部有識者からは「山本説」を強く押す声もありました。

しかし、後がないとは言え第5戦で山本さんを起用するようならオリックスの勝ちの目も消えるだろう、そう感じました。第6戦、第7戦を山本・宮城でしっかりと取る。その「勝利の方程式」を崩せば、仮に第5戦で勝ったとしても日本シリーズは落とすだろうと。短期決戦では臨機応変な采配も必要だとは言いますが、臨機応変と拙速はまったく別のもの。このシリーズの間も、やや先に動き過ぎる嫌いのあったオリックスベンチがまさか「山本説」を採用したりしないだろうな…と気を揉むような夜でした。

そして、いざフタを開けてみれば、マウンドには山福也さんの姿。よし、これでいい。そんな手応えを感じながら見守る第5戦ですが、相変わらず流れはヤクルトです。山さんの投球内容は悪くないものの、2回裏に連打を浴びてサクッと先制を許すなどイヤな立ち上がり。4回表に味方打線がツーアウトからの連打で何とか同点としますが、直後の4回裏にヤクルト村上宗隆さんにホームランを打たれ、あっという間に勝ち越されます。「絶対ゼロに抑えたいイニング」で4番の一発を浴びる。見ているコチラまでドンヨリとするようでした。



それでも、この日のオリックスは腹を括ったなと感じさせたのは勝ち越されたあとの5回表の攻撃でした。二死から、この日先発で起用された太田椋さんがヒットで出塁し、山さんに打席がまわったのです。地上波中継では古田敦也さんが「ここは代打の場面」と連呼しています。しかし、オリックスはここでは代打を送らず、山さんをそのまま打席に立たせます。結果は凡退となりましたが、この決断はひとつ潮目が変わった場面だったなと感じました。

セ・リーグの野球に付き合うのではなく、パ・リーグを制した自分たちの野球を貫く、そういう開き直りのようなものがありました。山さんのバッティングがそこそこいいことや、リリーフ陣に不安があるという事情もあるのでしょうが、それ以上に「コッチからスタイルを崩すような真似はしない」という覚悟のようなものがありました。その決断が、つづく5回裏のヤクルトの攻撃を三者凡退に抑えるという形で実ったとき、うすーくつづいていた「何となく常にヤクルト」だった流れをようやく断ち切った、そう感じたのです。

そこからのオリックスは眠れる強豪球団が25年ぶりに覚醒するかのように、強さが甦ってきました。6回表にはオリックス一筋16年、暗黒時代を象徴する男・T-岡田が貴重な同点タイムリー。7回表には打ちあぐねていたヤクルトの中継ぎ・石山泰稚さんから太田椋さんがタイムリースリーベースで勝ち越し点をあげ、さらに代打モヤがつまりながらもポテンと落ちるヒットで追加点をあげます。さらに8回表にもタイムリーが飛び出し、3点リード。このシリーズを通じても最大の点差にリードを広げました。

↓起用に応える太田さんの活躍!中嶋采配ズバリ!


普通の試合ならこれで勝負アリかなと言うところ。3点リードで8回裏と9回裏を抑えて勝つ、まぁありがちな展開です。ただ、それでは「五分以上」に盛り返すことはできなかっただろうと思います。この日のオリックス打線は最終的に14安打する滅多打ちでした。14安打も打たれたヤクルトにすれば、ひとつ負けたとしても「負けたな」と思うだけの試合です。さしてショックも覚えず、「あと2試合でひとつ勝てばいい」という余裕も残ったはず。

だからこそ、ここからのもうひと悶着が大きかった。

8回裏、オリックスはマウンドにヒギンスを送ります。まるで第3戦のバルガスが乗り移ったかのように、ヒギンスもえらいこっちゃの背信投球。四球⇒四球⇒山田哲人に同点ホームラン、というのは漫画でも見ているような悪夢でした。ヤクルトにしてみれば山田哲人に快音が甦り、同点に追いついたのですから、「よーし日本一だ」「いけるぞ」「やっぱり今日決める」と思ったでしょう。もしかしたら「勝ったな」くらい思ったかもしれません。

しかし、そこでオリックスは5か月ぶりの実戦となる山岡泰輔さんを送り込む魂の采配で、相手の攻撃だけでなく日本一へと意気上がる雰囲気をかき消しました。何回も投げさせるわけにはいかないというコンディションのなかで、その貴重な1回をここで使い、ヤクルトの火を消し、オリックスに火を点けた。何でもない場面ではなく、苦しい場面だからこそ、「山岡が帰ってきてくれた」という最高の効果をチームにもたらしました。

そして9回表、代打の切り札ジョーンズをここぞで投入したオリックス。投手からの打順だったという偶然もありますが、9回同点・先頭打者での代打起用は、言うなれば「ホームランを打て」という指示です。メジャーで282発を放った大物に、日本ではなかなか本領を発揮できないなかでも腐らずにチームに貢献してきた好人物に、いよいよ本来の仕事が命ぜられた。そして、ジョーンズは一振りで試合を決めました。ヤマダより俺のほうが格上だ、と見せつけるように。

↓「ホームランを打て」「任せろ」という覚醒ジョーンズの決勝弾!

村上・山田のアベック弾を跳ね返すジョーンズの一撃!

これがメジャーの大砲だ!



9回裏はここまで出番がなかった守護神・平野佳寿さんがマウンドへ。ここで平野さんはランナーを出しながらも、ヤクルトの代打の切り札・川端慎吾さんを含めて後続を断ち、しっかりとリードを守りました。低めのボールがストライクとコールされたことに対しては、「誤審では?」というヤクルト一流の審判不振も首をもたげたようですが、映像を見返せばわかるように、ホームベースを通過するタイミングではストライクゾーンの下限である「打者のひざ頭の下部」をかすめており、ストライクの判定は納得感があるもの。

この高さにズバッと投げ込めるのはさすが歴戦のクローザーだなと唸りますし、ヤクルトは何やかんやで抑えのマクガフが二度敗戦投手になっていることを考えると、最後の最後の競り合いではオリックス優位という面も見えてきました。第8戦、第9戦という死闘まで想定すると、「平野健在」は心強い材料になりました。

↓横から見れば問題なくストライクですね!
ストライク



あのまま3点リードで勝っていればなかったはずの「山岡が帰ってきてくれた」と「ジョーンズの決勝弾」。このシリーズで何度もオリックスを意気消沈させてきた、「やっと流れが来たと思ったらすぐやられた」というガックリ感を、ようやくヤクルトに押しつけ返すことができました。しかもオリックスは「ヒギンスはもう絶対使わねぇ!」「あとバルガスも使わねぇ!」「平野はようやっとる」という貴重な学びも得たのです。

ヤクルト山田哲人さんがトンネルから抜けるキッカケをつかんだことは悪材料かもしれませんが、あのクラスの打者が眠ったままのはずがありません。遅かれ早かれ、第7戦までいく間にはどこかで目覚めます。目覚めたときに試合を決められてしまうよりも、あえて起こして、冷や水を浴びせたこの展開は悪くありません。「山田が打ったのにそれでも負けた」を味あわせてやったのは、3点に見合うだけのリターンはありました。

まだ1勝のリードはありますが、これで逆に追い詰められたのはヤクルトの側でしょう。まず第6戦は山本由伸圧巻の完封勝利をしっかりと見せてもらい、悲願の日本一へ向かっていってほしいもの。どっちが勝ってもどっちでもいいのですが、どうせなら珍しいほうに勝たせたい。心は完全にオリックスに寄り添って、第6戦、第7戦を見守っていきたいと思います。まぁ第8戦、第9戦までやるのもやぶさかではありませんが!


「史上最も面白かった日本シリーズ」として歴史に刻まれる、伝説のシリーズです!