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4回転強ではなく5回転弱というイメージ!

いよいよ始まるフィギュアスケート国別対抗戦。日本代表を支える大黒柱として羽生結弦氏もこの大会に参戦します。地域間の移動がはばかられる状況ということもあり、応援は映画館までにとどめて現地のみなさんに「熱気」は託そうと思いますが、素晴らしい演技と素晴らしい日本代表の勝利を祈りたいと思います。

さて、13日は注目の記事がタイムラインを賑わせていました。スポーツニッポンが記名記事として掲載した「羽生結弦が成功目指す4回転半、妥当な基礎点を考える」という記事です。現在12.50点と規定されている4回転アクセルの基礎点、人類の夢とも言える至高の大技に対して与えられる得点は本当にそれが妥当なのかを考えようというものです。

↓とりあえず心の直感としては200点くらいあげたい!

200点は「クイズの最終問題」みたいだと言うなら20点!

直感としては20点!



「4A跳んだら200点あげたい…」という個人的な気持ちはさておき、点数を決める以上は何らかの基準を設けないといけません。記事においては「(同じジャンプの3回転と4回転の比較で)フリップまでは3回転→4回転で基礎点は2倍以上となり、ルッツも2倍近い。だが、アクセルは1・56倍にとどまる」「3回転ルッツとトリプルアクセルの基礎点の差は2・1点だが、4回転ルッツと4回転半の差はわずか1点」という説明で、4回転アクセルの点数が低めであると見ています。

そして、「平昌五輪が行われた17-18年シーズンまでは4回転半の基礎点は15.0点だったが、ルール改正で4回転などの基礎点は下がって、18-19年シーズンから現行の点に。下げ幅は4回転半がもっとも大きい2.5点だった」として、4回転アクセルが不当に低く見られているのではないかと示唆し、「3回転ルッツとトリプルアクセルの点差から考えても、4回転半の基礎点の最低ラインは13点後半。3回転→4回転のアップ率から考えると、16点前後あってもいい」「ISUは4回転半は最初から不可能なものとして真剣な議論をしていないのでは」としています。このあたりを踏まえつつ、僕も自分なりの「妥当」を探りたいと思います。


4回転アクセルは最後の4回転ではなく、最初の5回転

「もっと高くていい」は僕としてもまったくの同意見ですが、おそらく記事の通りの説明ではISUにはピンとこないだろうと思われます。そもそもの出発点として、ISUはおそらくアクセルジャンプを「●回転の最上位」とは考えていません。基礎点の表を見れば明らかですが、基礎点の表においてアクセルジャンプは「ひとつ回転数が上のジャンプ」と同じグループに入れられています。「トリプルアクセル」は3回転ジャンプの最上位ではなく「4回転ジャンプの入口」として見なされているのです。すなわち「4回転半」は最後の4回転ジャンプではなく、最初の5回転ジャンプとして点数を検討される対象です。

その意味では「3→4」の比較をすればアクセルが低めに出たとしても不思議ではありません。トリプルアクセルは4回転の格で、4回転アクセルは5回転の格ですので、「4→5」の倍率として見ないとならず、その倍率はまだほかのジャンプで示されていないので高いとも低いとも言えないのです。トゥループでは「3→4」の倍率が2.26倍あり、サルコウでも2.25倍、ループでは2.14倍、フリップでは2.07倍、ルッツでは1.95倍となりますが、これらと比較されるべきは「ダブルアクセル(3弱)→トリプルアクセル(4弱)」への倍率であり、それは2.42倍あります。

つまり、トリプルアクセルから4回転アクセルへの倍率が「1.56倍」だとしたとき、「3→4」での傾斜を鑑みれば4回転トゥループから5回転トゥループへの倍率は1.56倍よりもやや低い1.4倍程度であると想定されるので、「5回転トゥループ」の基礎点が4回転トゥループ×1.4倍の13.30点あたりよりも高いようであれば「単純に4→5を低めにしてるわけではなくアクセルだけ狙い撃ちしている」ということが言えるはず。その意味ではまず大前提として「5回転トゥループと5回転サルコウの基礎点も出せ」「宇野さんが跳ぶと言ってたぞ、出せ」「羽生氏も練習の一環では取り組んでいたらしいぞ、出せ」をセットで提唱したいところ。


「上の回転数をちゃんと跳べば勝ち確」のバランスを探る

また、回転数増加による倍率以外にも見るべきところがあります。出来栄えとのバランスです。「回転数が大きいのを跳びさえすれば、下手でもいい」という状態は誰も望まないところでしょう。ある程度キレイに跳んだなら回転数が多いほうが当然のこととして勝り、すごくキレイなジャンプであれば回転数が少なくても届き得る余地を残す、といったあたりが競技のバランスとしても目指したいところです。

そのときの比較対象となるのはルッツとトゥループです。「3回転のルッツ」と「4回転のトゥループ」とで、並み以上の出来で跳んだなら4回転が勝ち、出来が悪ければ3回転でも届き得る、といったあたりを適正バランスとしたいところ。現行ルールでは、3回転ルッツが出来栄え最高(GOE+5)のときは「8.85点」となり、4回転トゥループが出来栄え普通(GOE+0)のときは9.50点、出来栄え微妙(GOE−1)のときは8.55点です。これであれば「4回転を跳ぼう」となるでしょう。ちゃんと跳べさえすれば、3回転組に抜かれることはないのですから。

同様の比較において、「3回転ルッツ」と「トリプルアクセル」とではトリプルアクセルが出来栄え普通(GOE+0)だと8.00点で最高の3Lz(8.85点)には及ばず、出来栄え可(GOE+1)で8.80点とほぼ互角になり、出来栄え良(GOE+2)で9.60点となって最高の3Lzを上回ります。半回転分の差だとこんなもんということでしょうか。同ジャンプ内での回転数による倍率よりも、むしろこちらのほうが重要であろうと僕は思います。「1回転多いのを決めれば勝ち確」「半回転多いときはプラスになる程度の出来栄えがあれば勝ち確」というのは、理念としては妥当かなと思います。

では改めて、「4回転ルッツ」との比較で検討すると、出来栄え最高(GOE+5)の4回転ルッツは17.25点となりますので、5回転トゥループは基礎点でコレを上回り、GOE−1で下回るあたりの18.00点〜19.00点あたりを適正バランスとして求めたく、4回転アクセルについてはGOE+1で17.00点程度になる15.50点程度を求めたいところ。この場合、GOE+2で18.60点となり最高の4回転ルッツを上回ります。もしもコレを自在に操ることができる選手がいれば、ショートプログラムの規定におけるアクセルジャンプの項目で、トリプルアクセルまでしか跳べない選手に対して7.50点〜11.25点ほどに及ぶアドバンテージを築き、非常に有利な状態でフリーに移れるでしょう。


2018年以降の得点変更は妥当だったのか?

実はこの4回転アクセルは少し前まで基礎点15.00点に設定されていました。それが2018年シーズンからジャンプ全体の基礎点の見直しがあって12.50点まで下がりました。そのときは4回転アクセルだけが下がったわけではなく、ほかのジャンプも一緒に下がっており、その意味では「上のほう全部下げた」という一見すれば平等な対応でした。

<2018-2019シーズンでのジャンプ基礎点の変更>

●2A:3.30→3.30 ±0
●3T:4.30→4.10 −0.20
●3S:4.40→4.30 −0.10
●3Lo:5.10→4.90 −0.20
●3F:5.30→5.30 ±0
●3Lz:6.00→5.90 −0.10

●3A:8.50→8.00 −0.50
●4T:10.30→9.50 −0.80
●4S:10.50→9.70 −0.80
●4Lo:12.00→10.50 −1.50
●4F:12.30→11.00 −1.30
●4Lz:13.60→11.50 −2.10

●4A:15.00→12.50 −2.50

これは下げ幅としては「上ほど下がる」という意味では、横並びではあります。ただ、2017-2018シーズン当時における「回転数と出来栄えでの勝ち確」関係から言うと、変更以前の採点では「最高の3Lz(GOE+3):8.10点、普通の3A(GOE+0):8.50点で勝ち確、微妙な4T(GOE−1):9.10点で勝ち確」であったものが、2018-2019シーズン以降は出来栄え普通(GOE+0)の3Aでは最高の3Lzを上回れなくなりました。

また、「最高の4Lz」との比較では2017-2018シーズンでは「最高の4Lz(GOE+3):16.60点、普通の4A(GOE+0):15.00点、良い4A(GOE+1):16.20点、優れた4A(GOE+2):17.40点」という形で、ちょっと良ければ並び、優れたものであれば勝ち確となる妥当なバランスであったものが、現状の「最高の4Lz(GOE+5):17.25点」との比較では「極めて優れた4A(GOE+4):17.50点」でようやく横並びとなり、「最高の4A(GOE+5):18.75点」でようやく上回ります。

これでは客観的に言って4回転アクセルに挑むメリットがありません。

先の項目で検討したように、GOE+1で横並び、GOE+2で勝ち確となる15.50点程度まで4回転アクセルの基礎点を上げるか、最高の4Lz(GOE+5)でも優れた4A(GOE+2)に及ばなくなるところまで4回転ジャンプの得点を引き下げる必要があります。現行の規定で優れた4A(GOE+2)が15.00点であるので、最高の4Lzがそれを下回るようにするには基礎点9.90点あたりまで引き下げないとなりません。ちょっとこれだとそれ以下も全部下げないと収拾がつかないですね。

やはりこれは4Aの基礎点を下げ過ぎだったと言えるでしょう。ほかの回転数同様に「5回転の入口」としてそれにふさわしい4回転との段差を設けつつ、最高の4回転でも及びうるところの適正バランスを目指す。そうした観点から「妥当」なラインを探ると、下記のようなところではないかと僕は考えます。一度は決定しながら「コロナ禍で見送られた」という「4回転ループ・フリップ・ルッツ全部同じ基礎点にする案」の場合も含めて、「妥当」ラインを提唱しておきますので、ぜひ新たに制定する際にはご参照いただきたいところ。ひいきの引き倒しではなく、誰が跳んでもコレが妥当、そういうラインのつもりです!

↓現行ルールでの4回転アクセルの「妥当」な基礎点はこんな感じだと考えます!

【各種4回転の基礎点現状ママの場合】

●3A:8.00
●4T:9.50
●4S:9.70
●4Lo:10.50
●4F:11.00
●4Lz:11.50(GOE+5で17.25点)

●4A:15.50(GOE+1で17.05点、GOE+2で18.60点)
●5T:18.50(GOE−1で16.65点)


【4回転ループ・フリップ・ルッツ全部同じ基礎点にする案での場合】

●3A:8.00
●4T:9.50
●4S:9.70
●4Lo:11.00
●4F:11.00
●4Lz:11.00(GOE+5で16.50点)

●4A:15.00(GOE+1で16.50点、GOE+2で18.00点)
●5T:17.50(GOE−1で16.20点)

4Aの基礎点は最低15.00点!

誰が跳んでもそれぐらいは出すべき!

じゃあ、2018年に変えなくてもよかった!



こうした基礎点の変更自体は6.0点方式が廃されたあとに何度も行なわれてきていますが、回転数の段階差がありながらここまで肉薄されるような機会は多くありませんでした。GOEが3段階であれば「+1.5〜2」もあれば上回れるのが標準的でしたし、ソチ五輪〜平昌五輪の時期においては「3Lz」と「3A、4T」の間には厳然たる壁がありました。そこから先を跳ばないと、超えられませんよという壁が。それが今は回転数の段階差というもの自体が乏しくなり、なだらかに傾斜していくだけとなりました。「4Lz」と「4A」の間には段階差などそもそもありません。

3回転ジャンプで勝ち負けしていた時代から真・4回転時代へと移り変わったことで、単純に「すごい」という感情は生まれましたし、ジャンプという面では選手たちの技能も上がったはずです。競技が進歩したという実感がありました。そういった進化を将来に期待するのなら、「4A」は5回転の入口として半段階上に置かれるべきですし、「5T」には4回転を確定的に上回るだけのメリットがあるべきでしょう。そうなったときにジャンプ職人がジャンプだけで勝ってしまうという懸念はありますが、世界でただひとり5回転を跳ぶ選手がいるのなら(※正しい跳び方であるものとして)、それはある程度優位になっても仕方ないことでしょう。スピンやステップなどほかの要素と同程度の水準までジャンプ要素全体の得点を下げることはあったとしても、少なくともジャンプ要素内では「5回転」は圧倒的であるべきです。

まぁ、有り体に言えば「これ以上は跳んでくれるなよ」というのが本音なのかなと思います。ジャンプが一番客受けするわけで、それはもちろんやらせたいし、ジャンプが勝ち負けに大きく寄与する要素ではあって欲しい。ただ、回転数が増せば怪我の危険も増えますし、「ジャンプだけで決着」ということが増え、競技としてのバランスを取るのが難しくなります。4回転は歓迎だが、5回転は困る。そんな願望を込めて、そっと4回転アクセルを「4回転の最上位」にねじ込んであんまりメリットがない「ロマン」にしているのかなと思います。次のステージには行かないでね、と!

じじ



4回転アクセルは5回転の格で評価されるべき!トリプルアクセル同様に!