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今こそ見せましょう、野球の底力を!

5月25日、ついに大きな一歩を踏み出しました。4月に発出された緊急事態宣言が全都道府県で解除され、段階的に社会活動を再開していく方向へと日本は舵を切ったのです。この発表を受け、プロ野球は6月19日の開幕を発表。奇しくもその日は野球のルールが確立されたベースボール記念日なのだと言います。偶然ではありますが、背中を押されているような気持ちになります。6.19その日に野球を見せましょう、と。




賛否両論あるとは思います。25日に発表された国内感染者数は22時時点で21人ということでしたが、これはオープン戦の無観客試合での開催を決めた2月26日の18人よりもまだ多く、開幕延期を決めた3月9日の28人よりほんのわずかに少ないだけ。3月から4月にかけては欧州・北米で感染が拡大し、そこからの帰国邦人などが中心となって各地に弧発例が「焼夷弾のように」生まれたわけですが、6月以降に第2波として同じような状況にならないとは限りません。そうした見えない未来への「不安」はワクチンや治療薬の完成まで消しようはないのです。

そのなかでプロ野球が動き出す意味、それは単に「野球好きに向けた野球イベント業が再開する」というだけの話ではありません。無限の「不安」のなかで、それでも前向きに社会を進めようとする動きの先頭に立つ旗、その旗こそがプロ野球だろうと僕は思います。日本において唯一無二、プロ野球こそがその役目を担うことができる集団だろうと確信しています。

プロ野球は「強い」です。自ら所有・管理しているスタジアム。日本を代表するような企業たちが居並ぶ強力な親会社、その資金力と人材。新聞社が運営の中枢であるという、メディアによって「扇情的な部分だけを悪意で切り取られない」情報管理。プロ野球には、誰の助けや誰の赦しを得ずとも自分の持つ権限と能力だけで生きていける太くて強い屋台骨があります。

そして、何よりも長い歴史と伝統が培った社会的価値…すなわち野球を愛する多くのファンの存在。このプロ野球開幕の話題を見ても、今や「誹謗中傷製造機」とさえ言えるSNSがプロ野球の開幕を喜ぶ声であふれています。何をやっても「いつもおなじみのアカウント」によって非難を浴びせられる政府や日本サッカー協会などとは違って、プロ野球に対しては多くの一般の人が喜ぶ声が向けられています。

「否」を集めることはいくらでもできます。

「賛」を集めることが極めて難しい。

多くの人にとって、世のなかのほとんどのものは「どちらでもいい」なのです。あってもなくてもいいし、どうなっても別にいい。それは最近「不要不急」という言葉で難しく言い換えられましたが、要するに「どうでもいい」ということです。「否」はこの「どちらでもいい」を吸い寄せるチカラが極めて強いのです。僕にとってバーベキューは「どちらでもいい」ものですが、煙が出るとかうるさいとかゴミ放置とかBBQ客の川流れとか聞くと「それは自宅で勝手にやってもらうべきですね」とすぐに「否」に吸い寄せられてしまいます。

「賛」は本当に強い気持ちがないと発信できません。特に、たくさんの「否」がある状況で「賛」を唱えるのは勇気が必要です。食料やインフラのように全員の生死に直結する「否が生まれようのないもの」以外では、パチンコや煙草のように中毒くらいまでいっちゃってないと難しいのかもしれません。だから「賛」は狭く小さな声になりがちです。それがプロ野球はと言うと、広く大きな「賛」の声を集めることができる稀有なるコンテンツです。ごく一部の人だけが見るものではなく、全国津々浦々から老若男女が集い、2019年の公式戦入場者数は延べ2653万人にも及びました。「音楽」とか「演劇」とか「映画」といったジャンル全体としてではなく、ひとつの集団でこれだけの人数を集めるものがほかにあるでしょうか。

最初に「賛否両論あるとは思う」と言いましたが、まずこの時点からプロ野球は特別なのです。多くの「弱い」者は賛否両論ですらなく「ほぼ否一色」とも言える状況で今を過ごしています。高校野球の中止が取りざたされたのは「賛否両論」あったからこそですが、実は本当に不憫であったのは「賛」の声をあげてすらもらえず、水が流れるようにすーっと自然に中止へと向かっていたほかの部活動でした。青春を懸けた日々は野球部以外も変わらないでしょうに、あまりにも彼らに対する「賛」は少なかった。泣く場面を映しにくるヤツもいなければ、無念の想いを拾ってすらもらえないまま、「否」を受け入れるように促された。

このマインドを変えていかなければ、向こう3年、ワクチンか治療薬ができるまで、「否」に吸い寄せられる暮らしがつづきます。それぞれにとって「大切なもの」は、ほかの多くの人にとって「どちらでもいいもの」なのですから、水が流れるようにすーっと否定されていきます。その水の流れに抗って踏みとどまるには、強いチカラが必要です。「否」よりも多くの「賛」を集めて、「どちらでもいい」を引き寄せるチカラを持つ者はプロ野球だろうと僕は思います。

問題は必ず起きるでしょう。

起きないに越したことはありませんが、誰ひとりインフルエンザにかからない会社や組織など想定できないように、どれだけ万全の体制を取ったとしても野球界から感染者は出ます。それは選手かもしれないし(藤浪晋太郎さんは抗体を獲得している可能性が高いので除外)、関係者かもしれないし(阪神除外)、利用したホテルや交通機関で働く人、もちろん観衆であるかもしれません。クラスター化に至るかもしれません。そのとき当然「非難」「批判」は生まれます。「誹謗中傷」にまで及ぶかもしれません。「弱い」者ならば一撃で社会から退場させられるような厳しい逆風となるでしょう。

だからこそ一番「強い」プロ野球が真っ先に動き、どのような対策を講じ、どのように非難を受け止め、どのように事後の対応をすべきかというガイドライン…「プロ野球モデル」を作り、広める必要があります。プロ野球が人とモノと金のチカラを注いで社会との折り合いをつけることで、あとからつづく「弱い」者も「プロ野球に倣ってこのようにしております」と一緒に動けるようにしてあげなくては。みんながプロ野球に期待しているし、プロ野球を参照しています。正解が存在しない問題の回答例を出して欲しいと願っています。何ならあらかじめ「お詫び文のテンプレート」まで作っておいて欲しいくらい。

今後はとにかく安全「運転」が大事です。

緊急事態宣言の解除にあたっての基準であった「直近1週間の10万人当たり累積新規感染者の報告数が0.5人未満程度」というのは、人口1400万人の東京で言えば「1週間で70人、一日平均10人」という数です。これは一発送別会クラスターが出ただけでも超えてしまうくらいの数で、簡単に達成できるものではありませんが、このくらいの数でようやく「不安」が小さくなってきたということを考えると、まだまだ緊張感は緩められません。

もちろん、このままステイホームしていれば維持はできるかもしれませんが、それでは「ステイホームしていなければすぐに感染爆発ですよね」という不安の解消にはつながりません。そろりそろりと安全運転で出掛けながら、それでも同じ程度の数を維持していくという、より難しい暮らしが今後は要求されます。むしろ、これからのほうがよっぽど難しいと思います。スポーツと同じです。防御だけしていれば負けないけれど、まずもって勝てない。勝つために攻めようとしたとき、逆に一番落とし穴がある。今はそういう状況、チャンスはピンチです。

それでもずっとこうしてはいたくないから。

誰かが行かねならない道なら、先頭は一番「強い」者が担うべき。

「大切なもの」がある人はどうぞプロ野球を後押しして欲しいと思います。

まずは6.19を目指して安全「運転」で過ごして欲しいなと思います。

プロ野球が前に進むことで、あなたの「大切なもの」もきっと動き出せるようになるはずです。

↓プロ野球がコケたら皆コケる、そのぐらいの覚悟で行きましょう!


「どうでもよくはない」「大切なもの」のために!


もしもプロ野球がすぐに爆死したら、Jリーグがプロ野球の屍を踏んで進め!