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10:27
世界一の勇気をありがとう!

日本人の活動時間さえ変えてしまいそうな決戦。日本時間18日午前3時45分。見渡したまだ薄暗い町には、いくつもの光が灯っていました。揺れる人影と、ひとつふたつと増えていく光。いつもなら光が消える時間なのに、まだ太陽が昇る前に朝を迎える人々。電力消費に余裕があるはずの真夜中なのに、少しばかり不安になるような眩しさ。それはやりすぎたサマータイム…ではなく、世界一を懸けて戦う女たちを見守る「なでしこタイム」でした。

2011女子ワールドカップ・ドイツ大会。激勝に次ぐ激勝で決勝までやってきたなでしこJAPAN。小さい身体。乏しい経験。恵まれない環境。足りないものを挙げればキリがありません。対するアメリカはワールドカップを二度制した強豪中の強豪。世界ランク1位。日本は過去一度も勝ったことがない難敵です。大会前のテストマッチでもいいところなく敗れており、なでしこの旗色が悪いことは明白でした。試合前から「勝てないよ」と諦めた人もいたことでしょう。

しかし、なでしこは勝った。諦めなかった。

何度も諦めそうになる試合で、ただの一度も諦めなかった。

速射砲のように日本ゴールを襲うアメリカの攻撃。凌いで凌いで凌いで、ついに破られる。後半24分のアメリカ先制点。何割の日本人がここで世界一の戦いから脱落したでしょう。心の中で負けを覚悟したでしょう。だが、なでしこはもちろん諦めません。後半35分の宮間の同点弾。突き立てたその指は、揺るぎない自信の表れ。己の天才と日本の勝利を決して疑わないNO.1のサイン。

延長に突入してもつづく試練。一向におさまらないアメリカの猛攻。耐えて耐えて耐えて、やはり破られる。延長前半14分のアメリカ勝ち越し点。ここまで抑えていたアメリカのエース・ワンバックに、とうとうやられてしまいました。何割の日本人がここで負けを認めてしまったのか。だが、なでしこは決して諦めません。延長後半12分の澤の同点弾。CKからニアサイドに走り込み、アウトで弾いて後ろに流す超絶テクニック。ここで決めるか、それを決めるか。これこそ澤穂希がレジェンドである所以。早朝?祝日?そんなこと関係なく、叫ばずにはいられない。日本サッカーの伝説的名場面でした。

僕はそのあと、夢の中にいるようなフワフワとした気持ちで試合を見つめていました。PK戦でアメリカが次々に外し、なでしこは落ち着いて決めていく。あぁ日本が勝つんだ…という感慨を抱きながら、現実感のわかない現実を見つめていました。世界一という響き。本当に?僕が初めてサッカーに触れた時代には、芝生のグラウンドもロクになく、プロリーグなど夢のまた夢。休み時間、校庭でのサッカーごっこに女子を混ぜてあげたりなんてしなかったのに。それが「世界一」まで上り詰めるなんて…。

僕は決勝を前に考えていました。もし勝ったら、彼女たちは世界一になる。でも、何が「世界一」なんだろうと。技術?体格?戦術?どれも違う気がする。サッカー大国としての日本の力?女子サッカーの広がり?それも違う。世界一になった彼女たちが、何の世界一なのか、何故世界一なのか、僕は答えを出せずにいたのです。わからなかったのです。

しかし、決勝戦が終わり、気づきました。答えは僕らの中にわき上がる勇気。震災により傷ついた日本に、なでしこは世界で一番力強い勇気を与えたのです。恵まれない者、持たざる者が、どん底から這い上がり、栄光をつかむ姿。その歩みのすべてが、僕ら一人ひとりの中で眠っていた勇気を奮い立たせてくれたはず。

この夜、町中に灯った光。小さな光がそこかしこで生まれ、夜明けを待たずに町を明るく照らした日。今、日本が暗がりの中にいるとしても、心に勇気の光を灯せば、たくさんの光が集まれば、その光で少しだけ明るくなる。ただ待っているよりも、少しだけ早く夜明けがくる。小さななでしこたちに、大きなことを教えられた想いです。

素晴らしい朝を迎えた今日の喜びを胸に、もっと素晴らしい明日を作っていきたい。

今なら、何だかできそうな気がします。

何だってできそうな気がします。

なでしこのくれた「世界一の勇気」、大切にしたいものですね。


ということで、新たな歴史を作り、日本に勇気を与えたなでしこJAPANの偉業について、「2011女子ワールドカップ決勝 日本VSアメリカ戦」からチェックしていきましょう。



◆うちの宮間あやを応援いただき、ありがとうございました!

FIFA公式大会の決勝。試合前に行なわれた華やかなセレモニー。いつもなら外野として眺めるだけだったところ。しかし、今日は違う。僕らの代表はまだ生き残っている。世界の中でたった二ヶ国、この舞台にまだ留まっている。

流れる国歌と、日の丸に手を当てて心を高める選手たち。スタジアムには5万人の大観衆が集まりました。そして世界からは、5万どころではない数の熱視線が注がれている。誇らしく咲く撫子の姿は、この時点で手放しで讃えられてよいもの。しかし、どうせならあとひとつ大輪の華を咲かせたい。より素晴らしい未来を手にするために。

そして始まった試合。それは目を覆いたくなるような惨状。体格・身体能力で圧倒するアメリカは、各選手の動きにキレもある絶好調状態。日本はそのスピードについていくのがやっとで、両サイドを何度も切り裂かれます。開始数十秒でチェニーに突破を許したのに始まり、サイドネット、クロスバーの上、わずかに外、ポスト直撃、クロスバー直撃…シュートの嵐。よくこれで失点しなかったと、試合が終わった今でも信じられないような防戦を強いられます。

前半は何とか0-0で終了。前半の終盤には日本も宮間のスルーパス、大野のドリブルなどでチャンスをつかみかけていましたし、アメリカもこれだけ攻撃を仕掛けながら無得点に終われば、精神的・体力的な消耗もあるだろうと、期待が高まる内容でした。後半には日本らしいパスサッカーで反撃できるだろう…と。

前半で負傷したチェニーが後半開始と同時に退くなど、日本に追い風も吹いてきた後半。後半4分に右サイドを崩された場面では、鋭いクロスがゴール前に入るも、澤が誰よりも鋭い反応でこのボールを掻き出しゴール死守。これだけ守ればチャンスはくる、これだけ外せばアメリカは勝てまい。サッカーの定説さえ心に浮かびます。

後半21分、大野に変えて丸山、安藤に変えて永里を投入した日本。さぁここから一気に反撃…と思った矢先。

↓後半24分、日本の攻勢を叩き潰すアメリカの先制点!


攻めに掛かったところのカウンター縦一発!

試合も気持ちもポッキリ折れるような痛い失点!



過去一度も勝ったことのない相手に先制を許す。しかも残り時間は20分ほど。変わって入った永里がボールを奪われたところから始まった失点劇。普通ならこれでゲーム・セット。こうした展開で挫けてしまった過去の代表たちの姿もよぎります。だが、なでしこは挫けない。まだ20分も世界一へのチャンスがあるのです。ここで諦めたら女がすたるというもの。

迎えた後半35分。右サイドで川澄が相手のパスをカット。サイドを上がった永里に展開すると、中央へ走り込む丸山へクロスを送る。丸山は相手DFに潰されるも、ここでなでしこの執念が実を結びます。何かが起こることを信じて、逆サイドのハーフライン付近から駆け上がってきたのは宮間。

ドイツ戦延長決勝点の場面でも、やはり何かを信じて駆け上がってきていた労を惜しまぬ彼女。1回のチャンスをつかむため、99回の無駄走りを厭わない姿勢が、アメリカDFのクリアが別のDFに当たって跳ね返って宮間の足元にこぼれてくるという奇跡を呼び込んだのです…!

↓後半35分、宮間決めた!諦めない女たちの同点弾!


おぉぉぉぉぉぉぉ!!さ・す・が・天・才・宮・間!

左アウトサイドでGKソロの真逆へ流し込む技術!素晴らしい!


宮間の起死回生の同点弾により、辛くも延長に持ち込んだなでしこ。しかし、アメリカの強さは相当なもの。延長に入っても一向に衰えない運動量で、これでもかこれでもかと攻撃を仕掛け、鋭いクロスをゴール前に送り込んできます。そして、迎えた延長前半14分、警戒していたエース・ワンバックについにしてやられます。

↓ダメ元で一応飛び込んだ熊谷を嘲笑うように、ワンバック余裕のヘッド弾で勝ち越し!


フォーバック、スリーバック、ツーバック、ワンバック!

ビデオだとわかっていても、この失点はさすがに厳しい!



二度リードを許す展開。これはもうダメかもしれない。ダメなんじゃないか。負けたー!そんな言葉が漏れそうになるほど。しかし、なでしこはまったく諦めない。断固諦めない。メダルを獲るために男も捨てた。世界一を獲るために女を捨てた。ここで諦めるようなら、今の人生は選ばなかった。レジェンド澤穂希が、この逆境で新たな伝説を生みます。

延長後半12分。左サイドで得たCK。蹴るのはもちろん宮間。澤は狙っていました。何度も繰り返した形。メキシコ戦でも決めたニアに飛び込む得意のパターン。いいボールは必ず来る、あとは私が決めるだけ。そんな覚悟で飛び込んだレジェンドは、「生涯最高の試合にする」と誓ったこの日、生涯最高のゴールを決めたのです…!

↓澤決めた!ニアに飛び込み後ろに流す超絶技巧!


何だコレwwwwwwwww笑って泣いたwwwwwwwww

凄まじすぎる、ワールドカップ得点王決定弾!


二度突き放したアメリカ。二度追いついたなでしこ。ワールドカップ決勝にふさわしい激戦は、最後の最後まで勝者を決めかねるように揺れ動きます。延長後半16分には、先制点を決めたモーガンが再び日本ゴールに迫る場面も。さすがに奇跡のなでしこでも三度追いつくのは難しい、それどころか反撃する時間もないというこの状況に、DFリーダー・岩清水は身を捨てる決意を示し…

↓生涯初の一発レッドを受けながら、「この試合を失いたくない。私が守る」と飛び込んだ岩清水!


栄光の瞬間、ピッチにいられなくてもいい!

身を捨てて日本を守った岩清水(24歳)は、ベテランの風貌に満足気な微笑みをたたえ、ピッチを去る!



ついにPK戦にまでもつれた試合。緊張の面持ちのアメリカとは対照的に、なでしこには満開の笑顔。そういえば、試合が始まる前にも、延長が始まる前にも、笑顔を浮かべる選手が見られました。この素晴らしい舞台で、素晴らしい戦いができる喜びを感じている顔。この表情の違いだけで、精神面が大きく影響するとされる、PK戦の帰結は予想できるというものです。

アメリカは1人目のボックスのシュートがGK海堀に足で防がれると、その後もゴール上に外す、海堀に防がれるなどで3本つづけて失敗。試合中にあれだけシュートを外したチームが、PK戦だけ都合よく決められるはずがないのです。一方日本は少ないチャンスをつかんだ決定力を示すように、落ち着いて決めていく。宮間が、阪口が、そして熊谷が。一歩一歩、世界一への最終階段を登るように。勝利の喜びをじわじわと噛み締めるように…。

↓ワールドカップ決勝という舞台で「相手GKを動かすノロノロ助走PK」を放つ宮間のクソ度胸などで、日本がPK戦を制し、ワールドカップ初制覇!


PK決めたあとの宮間のドヤ顔&ガッツポーズワロタwwww

「三匹のこぶた」で喩えるなら、狼が鍋にドブンしたあとみたいな「してやったり」の表情wwwwwwwww


勝利の瞬間、飛び出していく選手たちのスピードは本当に120分を戦ったのかと、呆れるほどの元気よさ。呆然と立ち尽くすアメリカ選手を尻目に、アチコチでハイタッチや抱擁を開始。鮫島“シャーク”彩さんにいたっては、どさくさに紛れて澤さんにワンパン叩き込むシャークっぷりを披露。殴られた澤さんは澤さんで、妙齢の男性と親密そうにねっとりと抱き合う場面を世界中継。まぁ喜びの場ですから、少しくらいハメを外してもいいでしょう。何せワールドカップ得点王&MVPですからね!今日はとことん喜んで、とことんハメを外したりハメを直したりハメを外したりハメを直したりしてOKです!

↓フェアプレー賞&得点王&ゴールデンボール賞(日本語訳省略)&ワールドカップを澤さんが受け取る、なでしこJAPAN喜びの表彰式!


金色の玉状のものを手にし、屹立する棒状の何かを両手で大事そうに包み込む澤さん!おめでとう世界一!あとで、たっぷりキスでもしちゃってください!

それから、メダル授与後の変なムーブと、表彰式での変な踊りについて、宮間たんはあとでしっかり反省しておくように!



ありがとうなでしこJAPAN!今日は日本サッカー史上最高の日だ!