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12:37
勝つところじゃない、負けるところを映すんだ!

素晴らしい試合、素晴らしいコンテンツでした。30日の日曜日、うららかな午後にカフェに繰り出した僕は、スマホでサッカー中継を見ていました。見守る試合は、J1昇格プレーオフ準決勝、磐田VS山形戦。引き分けでも決勝進出となる磐田は、山形に先制されるも追いつき、後半アディショナルタイムを1-1の同点で迎えていました。よし、引き分けだ。誰もが結末を予想する中で飛び出したのが、山形GK・山岸さんの勝ち越しヘッド弾。劇画を超える劇的さで、山形が決勝進出を決めたのです。

この試合、一部例外はあるものの、基本的にはスカパーの有料チャンネルを見るしかなく、決して多くの人が見守った試合ではなかったでしょう。しかし、むしろこうした試合こそ、世間に打ち出す価値があると僕は思います。たとえばJリーグが「普段Jリーグを見ない人にJリーグを見てもらいたい」と思うなら、こういう試合をこそ無料開放し、どんどん露出させていくべきだろうと。

それは試合の展開が劇的だったから後付けで言っているのではありません。構造として、プレーオフのほうが無関心層の関心を買うことができるコンテンツだからです。いやむしろ、無関心層の掘り起こしのためにワザワザ作ったコンテンツだろうと言いたいくらい。

極論を言えば、無関心の人にとっては、どこが優勝しようが、どれだけ強かろうが、どうでもいいのです。

他人の勝利ほど、どうでもいいものはありません。他人の自慢話なんて面白くも何ともないのと同じです。「へー、スゴイですね。よかったですね」が関の山。勝利を喜べるのは、その勝利に乗っかって一緒に喜べる場合だけ。ワールドカップで日本代表を熱狂的に応援できるのは、同じ日本人というつながりがあり、日本VS世界という構図での戦いだからです。「自分の仲間VS異世界」なら自分のためのコンテンツともなりますし、自分もその勝利に乗っかっていけるでしょう。

その点、「日本の中のどこかの地域」VS「日本の中のどこかの地域」の戦いとなるJリーグでは、どちらの地域とも縁のない人にとっては、味方でもなく敵でもない同士の戦い。どちらが勝っても「へー、スゴイですね。よかったですね」であり、自分のコンテンツにはなりにくい。「地域密着」という手法は地域の人の目を引きつけるのには有効でしたが、地域外の無関心層には届きづらい手法でもあります。「密着」には「俺はこの地域の人間じゃない」と、門外漢を明確にする効果もあるのですから。密着すればするほどに。

無関係な人でも見たいもの、門外漢でも見たいもの。それは大きく重いモノを懸けて行なわれる、負けたら終わりの一発勝負。白黒つける瞬間です。トーナメント方式は「knockout system」とも表現されますが、ノックアウトされるところなら多くの人が自分のためのコンテンツとして消化できる。トーナメントは勝つところを見せているのではなく、実は負けるところを見せるための仕組みです。「負けたら終わり」という瞬間を見せるエンターテインメントなのです。

その意味で、昇格プレーオフなどは「負けたら終わり」の最たるもの。1年の重みを乗せて、明暗クッキリ別れる試合。勝った方のJ1昇格は決まっていませんが(※昇格してもしなくてもどちらでもいい)、負けた方のJ2残留はココで決まるのです。しかも、目の前に喜ぶ相手がいることで、なお一層強調される終わり感。そうなることが試合前から約束されている。それでこそ、門外漢も「おっ、なら見てみようか」ともなるのです。

実態としては、「本来なら3位まで順番に昇格権を与えてもいいところ」を「無理やり4位とか6位とかまで可能性を広げて」、「もともと4位とか6位だったチームが来年もJ2で戦うという現状維持に落ち着いたことを確認した」だけにすぎない試合です。しかし、リーグ戦ではいつどこで「負けたら終わり」になるかわからないものを、必ずこの1試合で決まるようにルールを整備した。無関心層でも見やすい状況をわざわざ作ったのです。

にもかかわらず、その試合をスカパーだけでやっている。それじゃ何のために、無駄に引き延ばしたり、無駄にぬか喜びさせたり、無駄に現状維持の再確認をしているのか、わかりません。無関心層に見せるために作った試合を、有料チャンネルだけで放映するなんて馬鹿げた話です。それじゃ磐田関係者一同の号泣(※現状維持です)も、名波監督の狼狽(※現状維持です)も、伊野波さんの壊れ笑顔(※現状維持です)も、やり損じゃないですか。

2015年シーズンから行なわれる予定のJ1リーグ戦のポストシーズンは、くれぐれもその辺を自覚してもらいたいもの。アレは無関心層の目を引くための試合でしょう。地上波で放映するために作ったルールでしょう。地上波でなければ意味がないですし、そこでどれだけ無関心層をの関心を呼べるか、「ゼロを1にできるか」に注力すべきです。

もし来年の今頃、テレビで「ついに優勝が決まる!ホーム&アウェー決戦」なんて煽っていたら、それは完全にブレている証拠。ポストシーズンをやる以上は「負けたらすべてを失う一発勝負」の方向性で行くべき。年間勝点1位が、たった1試合の結果ですべてを引っくり返される理不尽さ。すべての積み上げがたったひとつのミスでぶち壊れるという絶望感。どれだけ劇的に負けてもらうか、そのためのルール作りや演出をしてこそ、ポストシーズンのやり甲斐もあるというもの。

J1昇格プレーオフの扱いを見ていると、その辺の意識が若干心配になりますので、Jリーグ関係者のみなさんには今一度原点に立ち返っていただきたい。「年間勝点1位をどれだけ理不尽な絶望に叩き落とせるか」という意識を心の根っこに据え、ポストシーズンの準備を進めてもらいたいものですね。

ということで、身体を張った素晴らしいエンタメを見せてくれたジュビロ磐田(※現状維持)に敬意を表しつつ、30日の「J1昇格プレーオフ準決勝」をチェックしていきましょう。


◆土曜の感覚で「残留決定おめでとう」と言ったら殴られそうな剣幕!


負けたら終わりの一発勝負。ジュビロ磐田が、ついにその戦いにたどりつきました。最悪でも「現状維持」が決まるだけの戦いですが、心の目線は遥か上、「J1」に向いています。まるで負けたら何かを失うかのような悲壮感。煮詰まっている。重たい。素晴らしいエンタメ感がこの試合には漂っています。

そのエンタメ感の前では、「4位だろ」「むしろチャンスがあるだけラッキー」「こんなもんやと思うで」「ギリギリで上がっても辛いだけ」「1年じっくりやって自動昇格になれないチームは大体の場合においてすぐ戻ってくる」などの言葉は、もはや何の意味も持ちません。失うものの大きい戦いへ、元アジアチャンピオン・ジュビロ磐田が出陣です。

会場入りするクラブの英雄・名波監督。手には地元静岡の川根の茶のペットボトルを握り締め、サッカーどころ静岡のパワーを充填します。前田遼一、伊野波雅彦、駒野友一、松井大輔…そうそうたる顔ぶれが集うチーム。「1年でのJ1昇格」という約束、いやノルマ達成をこの一戦に懸けます。

↓もう散々見せられたあとだとは思いますが、様式美として「J2の優勝シャーレはオークションにかける」発言は復習しておきますね!


無関心層:「もらったものは売ってもエエんちゃう?」
無関心層:「所詮、皿やろ?メッキか何かの」
無関心層:「1円スタートなら入札したい」
無関心層:「送料はいくらでしょうか?」
無関心層:「レターパックに入ると助かります」

バチが当たったとか、逆フラグとか、それは違うぞ!

いらないものはいらないんだ!

実際、今年も受け取りは華麗に拒否した!

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この試合、年間順位が上のジュビロ磐田のホームで開催され、引き分けなら磐田が勝ち抜けという優位な状況。しかも対戦相手は、5位のギラヴァンツ北九州が昇格の資格を持たないことから、6位のモンテディオ山形。ちょっと得した感じです。「勝てそう感」が積み上がる周辺状況はプレッシャーになりかねないものですが、重圧を感じる必要はありません。よしんば負けても「4位のチームが普通に昇格できない」だけです。リラックスしていきましょう!

そして始まった試合。磐田はJ2でも屈指の攻撃力・得点力を誇りつつ、同時に失点も多いチーム。リーグ戦終盤は6試合勝ちナシと下り坂で終えました。一方、山形は得点では磐田に及ばないものの、失点数はリーグでも上位に入る少なさ。天皇杯でも決勝に進出し、J2リーグ戦では先月15日に磐田を2-0で下したばかりとノッています。磐田の意識には「引き分けでの勝ち抜け」などを狙う考えはないでしょう。勝って、上へ。それだけです!(※たぶん勝たないと守り切れない)

まずは立ち上がり、最初のチャンスを作ったのはジュビロ磐田。前半10分には左サイドを崩してから、最後は山崎亮平がエリア内でシュートを放ちます。ゴールマウスをとらえ、決まったかと思う一撃でしたが、ここは山形GK・山岸が左手1本でファインセーブ。一方、山形も直後に右サイドから裏に抜けたDF山田がGKと1対1の場面を作ります。コチラも磐田GK・八田の身体を張ったセーブで無得点。「4位と6位」の対戦にふさわしい実力伯仲の攻防がつづきます。

そして試合が動いたのは前半26分。磐田の右サイドの揉み合いから、山形はFWディエゴを走らせます。ここで磐田はGK八田がエリア外まで引きずり出され、ディエゴと交錯してゴールマウスに戻れないという大ピンチ。ここで山形はこぼれ球を素早くゴール前に送り、先ほど交錯したディエゴが頭でズドン!「リアクションサッカーなんか見せたくない」という名波監督の言葉が何故か頭にこだまする、電光石火の先制点です!

↓来年アジアナンバーワン決定戦に出るかもしれないチームが、それは絶対にないチームを相手に先制!(1分頃から)


無関心層:「芝がキレイ」
無関心層:「スタンドが青い」
無関心層:「黄色くて見やすい」
無関心層:「あ、黄色がとった」

黄色のほう、「日本一」の可能性を残しているぞ!

頑張ってるチームだぞ!


↓もうご存じかもしれませんが、様式美としてスマホで見た両チームの公式サイト貼っておきますね!まずは黄色!
Screenshot_2014-12-01-04-20-53

無関心層:「(普通なので無反応)」
無関心層:「(普通なので無反応)」
無関心層:「(普通なので無反応)」

次の試合の情報、チケット販売へのリンク、グッズ販売・スポンサー募集と重要要素が普通に見つかる!

普通が大事です!


↓様式美として青いほうのチームの公式サイト、いきます!
Screenshot_2014-12-01-04-23-14

無関心層:「ん?」
無関心層:「フィッシングサイト?」
無関心層:「勝手に壁紙が変更されたかと思った」

iPhoneの模造品のホーム画面じゃないぞ!

左上の「i」はインフォメーションの「i」だ!

中央のモミの木は、大きく育てる育成の印だ!

すごいビル街みたいなアイコンは、磐田のことではなく、一般的な「街」のイメージだ!

※なお、右下にある「ブログ」のアイコンは何だかわからず。

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1点をリードしたとは言え、山形は引き分けではアウトであることに変わりはありません。とても安心できるような状態ではなく、激しく両チームのゴール前を往復する試合。まだまだ磐田にも十分な時間とチャンスがあります。磐田がコネコネッと攻め上がると、山形GK・山岸がファインセーブで立ちはだかる。山形がギュギュンと攻め上がると、シュートがポストに当たる。そんな攻防の末、磐田に幸運がめぐってきたのは前半アディショナルタイム!

↓やっとこじ開けた!とりあえずこれで勝ち抜け圏内に磐田が復帰だ!(1分半頃から)


無関心層:「磐田って聞いたことある」
無関心層:「ゴン中山!」
無関心層:「ドゥンガ!」
無関心層:「あと、ゴン中山!」

加藤ローサとパラメヒコマンもいるぞ!

あ、ワールドカップ日本代表もいた!


よーし追いついた。引き分けでも勝ち抜けの磐田は、同点なら1点リードしているのと同じ。取った時間帯も最高。スタジアムの空気も最高潮。俄然チームは勢いづきます。後半に入ると、相手FWが負傷交代するなど優位はさらに固まっていきます。クロスバーを叩くシュート、ポストを叩くシュート。後半72分には相手の惜しいシュートをGKが防ぐなど、ピンチの時間帯も凌ぎ切りました。いつでもトドメが刺せそうな感触があります。

そしてドンドン過ぎていく時間。時計は90分を回りました。よーし引き分けだ。もう引き分けだ。引き分けで勝ち抜けるつもりなんてなかったけれど、引き分けで勝ち抜けだ。コーナーフラッグの横でボールキープをする鹿島ばりの時間稼ぎも見せる磐田イレブン。分けたい。勝ちたいじゃなく、分けたい。そんな想いが伝わってくるような戦いぶりです。

そして91分過ぎ。山形CKの場面。1点が必要な山形はファインセーブ連発のGK山岸までゴール前に上がってきます。人数をひとり増やす真のパワープレー。「負けたら終わり」だからこその勝負の策です。これだ、これこれ。これが見たかった。「終わり」が見えているからこその後先考えない決死の戦い。それこそが、無関心でも見られるエンターテインメント。こうでなくちゃ。

勝ちたいという山形の必死さと、分けたいという磐田の必死さ。そこに残像のように揺れる「絶対に勝!」と記された磐田側作成によるマッチデープログラムのスローガン。あれ、磐田は勝ちたいんだっけ、分けたいんだっけ、と考えているその刹那、初めて見た気がする奇跡が起きた!

↓負けたら終わりのギリのギリ!GK山岸がヘッドですらしたボールが磐田を絶望に叩き落とした!


無関心層:「うわー、キーパーの人が入れたの!?」
無関心層:「スゴーーーーーイ!」
無関心層:「青いほう、J2に落ちるの?」
無関心層:「あ、今がJ2なの?」
無関心層:「じゃ、もっと下に落ちるの?」
無関心層:「え、別に落ちないの?」
無関心層:「そっかぁ落ちないんだ」
無関心層:「現状維持ってだけなんだ」
無関心層:「でもスゴーーーーイ!」

素晴らしい試合!素晴らしいエンターテインメント!

「負けたら終わり」感、半端なし!

どうせなら「勝ったら昇格できるかもしれないけど、負けたら絶対降格」っていうハイリスクローリターンな設定とかできないかな!

怖ければ辞退してもいいってルールで!


↓名波監督から事前に「キーマンは伊野波」と名指しでフラグを立てられたワールドカップ日本代表戦士は、もう笑うしかない!

無関心層:「うん、最後は笑顔だよね!」
無関心層:「笑顔で終わろ!」
無関心層:「感動しました!」
無関心層:「夢をありがとう!」
無関心層:「また来年見ます!」
無関心層:「私、ハマっちゃいそう!」

自分たちが面白いと思えるエンタメでなければ、誰が笑うんだ!

そんなエンタメ魂を、誇りを感じさせる奇跡の笑い!

笑顔で終われば、それでヨシ!

だって、楽しむためのモノなんだから!


これほどの試合を演じながら、報われなかったジュビロ磐田。確かにGKのヘッド弾というのは、Jリーグ史上でも初の珍事で、印象的なプレーでした。だが、その場面も「負けたら終わり」の試合だからこそ生まれたもの。そして、その価値を高め、劇的な奇跡にまで昇華させたのは磐田の奮闘があればこそ。単に山形が必死なだけでなく、対戦相手の磐田も必死だったことで、あの一撃は生まれ、奇跡となったのです。

この素晴らしい場面を、素晴らしい試合を広く世間に見せられなかったこと残念です。せっかく磐田さんが、素晴らしいノックアウトを演じてくれたのに、無関心層の掘り起こしに十分に活かされなかったこと残念です。すでに一回死んでいる骸をわざわざ起こして、もう一度「この日、この時間に改めて死んでください」と出張ってもらったというのに。磐田さんの奮闘、僕は忘れません。素晴らしいエンターテインメントをありがとう。来年もう一度この舞台に出られるよう、チーム一丸となって頑張ってもらいたいものですね。

↓最後の様式美として、負けたら終わりの昇格プレーオフの日のジュビロ磐田公式ツイッターの全つぶやきをご紹介して、お別れの言葉と代えさせていただきます!
<スタメンのお知らせ>


<試合結果のお知らせ>


<来週以降の予定のお知らせ>(以上で終了)

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年に1試合しか見ない人のための理不尽な試合、もっと大切にしましょう!