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08:19
「感動をありがとう」で済ませない!

輝かしい歴史を作ったラグビー日本代表の戦いが終わりました。南アフリカを撃破し、サモアに完勝し、アメリカをねじ伏せた。日本ラグビー史上初の大会3勝。ベスト8進出に肉薄した戦いは、2015年の日本スポーツにおける最大のトピックだと断言します。このあと何が起きたとしても、この代表こそが2015年の日本スポーツ大賞です。

スポーツでは何を置いても「結果」が最初の一歩となります。スポーツは生きるために不要な「遊び」であり、日々の生活に優先することはありません。スポーツで生きていこう、スポーツで世の中を動かそうと思うなら、その価値をまず示さねばならない。スポーツを通じてこんなに素晴らしい体験を得られるのだ、こんなに素晴らしい感動がスポーツにはあるのだ、と。それならば社会の側もスポーツを必要なものとしてヒト・モノ・カネを投じて取り込んでいこう、となる。その順番を歪めることは難しい。

今、ラグビーは「結果」を出しました。これ以上の「結果」はないです。

24年間あまりに渡る屈辱的「無勝」の歴史。それにピリオドを打っただけではなく、世界のトップから大金星を挙げた。それもタダの金星ではなく、真っ向からぶつかり合っての勝利。相手の凡ミスや自滅に助けられたものではなく、どこを切り取っても「日本が勝った」と誇れる宝物のような試合を演じた。ダイヤモンドのように眩しく、曇りなく、揺るぎのない勝利。永遠の勝利。

もしこれに感動し「ありがとう」と思う気持ちがあるなら、答えるのが筋だろうと思います。観る側にお鉢がまわってきたのです。トップリーグの試合を見ろとかラグビー界を金満ジャブジャブにしてやろうとまでは言いませんが、2019年ラグビーワールドカップは絶対に成功させなければならない。それを望めばこそ、彼らもここに至る日々を乗り越えてきたわけでしょう。彼らがこの数週間のために投じた3年余りの修練の日々を、「感動でありがとう」で済ませるのは、観戦者の心意気としてケチくさいのではないでしょうか。

ラグビーワールドカップ開催は極めて困難なプロジェクトです。300億円が見込まれる運営費と、9600万ポンド(約180億円)にのぼる大会補償料。この補償料は大会がコケようがどうなろうが、ワールドラグビーに納めねばならない上納金に相当するものです。その支出の巨大さに対して収入面の構造は脆弱で、大会スポンサーからの収入も放映権料もすべてワールドラグビーに持っていかれる仕組みです。開催国がお金を集める手段は事実上「チケット代」しかありません。

組織委員会はチケット収入を320億円と試算したうえで、さらにそこに「totoからの助成」「ローカルスポンサーの獲得」「開催都市の負担」を加えてようやっと帳尻を合わせる皮算用をしています。しかし、全48試合で320億円を得るには、平均2万円のチケットを平均3万人の観衆に売らねばなりません。高っ!!多っ!!これが招致段階から指摘されていた、この大会が「負の遺産」となるであろうという意見の根拠です。赤字を垂れ流し、日本ラグビー自体が壊滅的な打撃を受けるだろうという。

感動は、返さねばならない。

日本戦は当然として、それ以外の国同士の試合を観に行って、この感動を返さねばならない。北海道から九州まで12都市に散らばった開催都市は全国からの広く薄い「感動の半返し」を待っています。ラグビーそのものを好きな人は、よりディープなところへ。お祭りが好きな人は、強国同士の試合や優勝争いの一戦へ。今大会の日本代表に感動した人は、たとえば南アフリカやサモアなど今回戦った相手の試合でもいい。たかだか平均2万円、たかだか平均3万人。今大会の4試合で得たものを思えば、安いものです。

日本代表が奇跡を成し遂げたあの日。スタジアムには地元の多くの観衆が詰めかけ、客席を埋め、桜のジャージをまとっていました。日本のラグビーファンですら「この試合は負ける」という計算で旅程を定めたであろう捨て試合を、地元の観衆が桜のジャージとジャパンコールで迎えてくれたのです。ヘスケスが最後のトライに迫る攻撃の直前、国際映像にはブロンドの美女が桜のジャージをまとって「GO!JAPAN!」と絶叫するさまが映し出されていました。起きることなど想定されていなかった奇跡にも関わらず、そこには観衆がいて、その瞬間の価値を噛み締めていた。

同じことをできないはずがない。野球やバレーボールのような人気競技の国際大会でも日本戦以外は空席が目立つものですが、この感動のアンサーが「空席」じゃ情けない。日本ラグビーが出した「結果」と、それを通じて感じた「ラグビーも面白いじゃないか」という素直な気持ちの帰結が「空席」じゃ寂しすぎる。この代表が臨む自国開催の機会を寂しいもので終わらせたなら、日本のスポーツ文化の恥だと僕は思います。

2019年、素晴らしいラグビーワールドカップを日本で。

その約束を胸に秘めて、帰国する彼らを迎えたいものですね。

ということで、2019年へのスタートダッシュを決めた、12日の「ラグビーワールドカップ 日本VSアメリカ戦」をチェックしていきましょう。


◆3勝1敗での敗退!ワールドカップ史上、最強の敗退国ジャパン!

キングスホルム・スタジアムに立つ日本代表。すでにベスト8進出の可能性はなく、今日が最後の試合。勝っても負けても日本は大会を去ります。このチームで歩んできたJapanwayの道のりは、大きな節目の時を迎えます。キャプテン・リーチマイケルを先頭にチームが一体となって引き上げていくおなじみの動きもこれで一旦見納めです。

敗退が決まってはいても、日本代表の顔には気持ちがこもっています。何かを失ったのではなく、まだこの試合に勝ち取るものがある。「3勝」という大きなステップ。2019年に向かって、今回成し得なかったベスト8という目標を堂々掲げるための勝利をつかめるか。勝って帰ってきてほしい。勝利の余韻で彼らを迎えたい。消化試合などではない。これは2019年大会の緒戦です。

↓勇者の行進!ラグビーを日本に広めた男たち!

今大会、初めてラグビーを見た人をハードタックルで捕まえた!

日本ラグビーに火がついた!この火、真っ赤に燃えて炎となれ!

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日本の好成績から楽観ムードも流れるアメリカ戦。確かにここまで相手は3連敗できており、ランキングも日本より下。勝って当たり前と考える向きもあるでしょう。それが怖い。相手にとってもこれが最後の試合であり、1つは勝ちたいと思って臨む試合です。前の試合では主力を温存して、ここに懸けてきたフシもあります。絶対負けるとは思わないが、絶対勝てるほど上回っているとも思えない。

こうした勝てそうな試合を敗れてきたことが、長きに渡る落胆の歴史でもありました。勝てそうな試合は負けそうな試合でもある。もし敗れれば「勝って当たり前」と思っていた人にどんな影響を与えるか。冷や水を浴びせることになるかもしれない。せっかく灯った火を絶やさぬように2019年にリレーしていくには、絶対に落とせない。

そして始まった試合。最初のキックをキャッチミスから相手に奪われそうになるなどヒヤッとする立ち上がり。アメリカは接点での当たりが強く、連続攻撃ではジリジリっと日本が後退させられていきます。日本に反則もあって、アメリカがペナルティゴールの3点で先制します。

日本の反撃は直後の7分。自陣での展開からラインブレイクすると、相手陣深くへのキックで藤田を走らせます。藤田はサッカーみたいな足元でのさばきのテクニックを見せ、インゴールまで5メートルのところで起点を作ります。日本はここから逆サイドへとパスを展開し、最後はひとり余った松島がトライ!

↓まさに「切り裂いた」という攻撃!ビューティフルトライ!!


22歳・早大4年の藤田がワールドカップの経験を持ち帰る意味!

2019年につながるナイスランだったぞ!


しかし、トライを取って楽勝ムードというには程遠い。大会を通じても最少クラスの日本のハンドリングエラーが、この試合ではやや目立ちます。キャッチミスやノックオン、ブレイクダウンで素早くボールを出せず、反則を取られたりボールを奪われたりする場面も。南アフリカ戦の奇跡のような出来栄えにはさすがに及びません。

ただ、日本側の問題という以上にアメリカが強い。接点での圧力はさすがアメフトの国という感じで、攻めているはずの日本が押し戻されてしまうほど。攻撃にまわれば拾い上げてすぐラインに突っ込んでくるピック&ゴーが強烈で、3連敗しているとは思えない強さ。前半24分には21回に及ぶ連続攻撃の末に逆転のトライを許すなど、互角の攻防がつづきます。

そんな中、日本を救ったのは若いチカラ。1つめのトライで華麗な足技を見せた藤田は、トライを奪われたあとのキックオフで敵陣深くまで快足を飛ばし、ボールをおさえます。ここから始まった攻撃で日本はモールでインゴール付近まで押していきます。最後は、起点を作った藤田がモール内からボールをもぎとり、隙間をすり抜けるようにインゴールへ。チームが一体となって、アメリカに流れを渡しません。

↓チョロッと奪い、チョロッともぎとり、スルッと抜けた藤田のトライ!


デカイだけが能じゃない!

最後にすり抜けた動きは、「うなぎ」を名乗る資格アリ!

大学生2人を代表に入れたことは、エディーの2019年への置き土産だな!

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素晴らしい2つのトライでリードを築いた日本は、前半33分に五郎丸がペナルティゴールを決めて17-8の9点差で前半を終えます。前半終了間際にはアメリカに攻め込まれ、日本がキャリーバック(※自陣インゴールへの緊急避難的グラウンディング/5メートルラインから相手ボールでのスクラムとなる)するピンチもありましたが、今大会の強みでもあったスクラムでしっかりと相手の攻勢を跳ね返しました。

日本の強みはやはりハンドリング=器用さであろうとは思いますが、スクラムやラインアウトというガチムチ肉弾戦で崩されないというところが今大会の快進撃を支えた原動力でした。この取り組みはエディーヘッドコーチが退任しようとも、継続していきたい部分。スクラムを安心して見ていられるというのは、本当に心強い。

↓前半終了!17-8でリード!「3勝」へ向けていい折り返し!

このままいくぞ!

最後まで戦い抜け!


日本は後半開始からアマナキ・レレイ・マフィを投入。南アフリカを戦慄させ、負傷交代するまではスコットランドを退けていた日本の至宝が戻ってきました。マフィというワールドクラスを得た日本は前半苦しんだ接点の攻防でも勢いを増します。攻撃では、マフィがひとりふたりとかわしてゲインしてくれる。守備にまわったときも、後半18分に完全に抜けたと思った相手の攻撃を単独追走して止めてしまったりする。この25歳、とにかくモノが違う。

双方が一本ずつペナルティゴールを決めて20-11と日本9点リードで迎えた後半22分、そのマフィが試合を動かします。相手がシンビンでひとり少ない状態でのラインアウト。モールを組んだ日本は、そこから素早くマフィが持ち出すと、相手2人を引きずりながら矢のような勢いでインゴールへ!

↓この男が日本代表になるなんて、一体どうなってるんだ!ありがたくてたまらんね!


そりゃエディー・ジョーンズも「贈り物」って言うわ!

2019年も頼むぞ、マフィ!


これで3つめのトライ。日本は4トライ勝利でのボーナスポイントも視界にとらえます。ただアメリカも1勝を目指して諦めない。疲労がにじむ残り20分からの戦いは、むしろアメリカが優勢。何度もラインを突破されかけ、あわやトライというプレーの連続。後半31分についにトライを許すと、まったく勝負がわからなくなる18-25の7点差に。7点差なら1トライ1ゴールで同点。もはや4トライなどと言っている場合ではありません。3勝なるか、真価が問われるラスト10分です。

身体を張りつづけるトンプソンルーク、リーチマイケル。苦しいときにゲインで救ってくれるマフィ。激しい衝突で一時離脱しながら、最後まで攻守に奮闘する松島。もはや日本出身とか外国出身とか言うのがバカバカしくなるチーム一丸となっての戦い。全員が身体を張って、味方につなぐ。まさに今大会の日本の戦いそのものを象徴するように日本は全員でボールをつなぎ、あの男にトドメの一撃を託します。

後半35分、相手陣内で得たペナルティキック。残り40メートルほどあるやや遠い距離。蹴るのはもちろん五郎丸歩。もし決めれば、ウェールズの名手ダン・ビガーらを上回ってプール戦では1位となる13本目のペナルティゴール。そして、10点差に広げ、この試合の勝利を手中にする一本です。全員がつないで、託した想い。絶対に外せないキック。決めろ五郎丸!!

↓五郎丸決めた!残り4分10点差に広げた日本はそのまま逃げ切って大会3勝達成!!(3分頃から)


よくつないだ!よく決めた!よく勝った!

開催国イングランドよりも、シックスネーションズの一角イタリアよりも多い勝点12を獲った!!

最強の敗退国ジャパン、最後は英雄・五郎丸が蹴り出して有終の美!!


↓試合後、マンオブザマッチに選ばれた五郎丸は「無言」という最高の受け答えで喜びを語る!


五郎丸:「このマンオブザマッチは本当にチームの……(言葉にならない)」
五郎丸:「我々の目標は……(言葉にならない)」
五郎丸:「(言葉にならない)」

五郎丸の涙と、少年の笑顔!

ひょっとしたら、彼の憧れの選手になったかもしれないね!

世界中に五郎丸や日本代表に憧れる子どもが生まれたかもしれないね!

その価値は、言葉にはとてもできないよ!

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南アフリカに勝った。サモアに勝った。そしてアメリカにも勝った。三度勝ち、日本は大会を去ります。大会のルールで言えばもちろんプール戦敗退に変わりはないのですが、それが何だというのか。「弱小国」というレッテルを引きちぎり、国内からも冷遇される現状を打破し、次回大会のホストとして誇れる成績を残しました。そして、その勇敢な戦いは多くのラグビーファンの記憶に残り、多くの「友」を作りました。それが勝利でなくて何なのか。

素晴らしい試合だったね。素晴らしい戦いだったね。日本やるね。感動したよ。僕らがさまざまな大会で「あの国すごかったな」「アイツすごいな」と思うときのように、日本のチームが世界で愛される戦いを演じた。もちろんそれは日本の中でもそう。この4試合で、人生が変わる子どももきっといます。すべてが「友」になる。日本ラグビーの宝となる。

このかけがえのない財産を手に、日本ラグビーは2019年に向かいます。新国立競技場はないけれど、それを補って余りあるものを、日本代表は遺してくれた。素晴らしいラグビーと、永遠の勝利と、世界中に散らばった「友」を。2019年、楽しみですね。いい大会にしないとですね。「友」の皆さん、2019年は会場でお会いしましょう。


ありがとうジャパン!お疲れ様ジャパン!この感謝はあとで必ず返す!