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12:00
日本出身力士うんぬんはコレで終わりだ!

長かった。険しかった。不思議なまでに遠のいた日本出身力士の大相撲幕内最高優勝。重たい扉を開いたのは、よもやの大関・琴奨菊。まず、琴奨菊の優勝はほぼほぼないだろうと勝手に決めつけていた非礼をお詫びします。申し訳ございませんでした。

しかし、詫びは入れるとしても、今場所の強さは過去の琴奨菊とはまったく異質のもの。「人が変わった」と言ってもいいくらいに強かった。間もなく32歳を迎えるベテランになって今さら人が変わるなんてのは、コチラとしても想定外。9割の詫びで勘弁していただきたい。1割は「お前替え玉だろ!」です。

単純に言えば、立ち合いのスピードとパワーが段違いでした。踏み込みの早さと腕力の強さによって、相手よりも先に自分得意の左四つの態勢を作ることができていました。勝った相撲のほとんどは、立ち合い即左四つとして、そのまま寄り切ってしまうか、相手が全力でとどまったところを右からの小手投げで前に崩すというもの。前へのパワーが相手の余裕を奪いきるほどの威力であればこその勝ち方です。

本人曰く、半年前からのトレーニングが効いたのだとか。確かに角界の伝統とは異質のトレーナーをつけて、ウェイトによる体幹の筋力トレーニングなどに取り組んではいましたが、それにしてもそんなに効くのかと。半年体幹トレをやったらいきなりこんなに強くなるなんてライザップか何かかと。コミットしすぎだろと。四股・鉄砲・摺足ってホントに効いてんのかと聞きたくなるような気持ちです。体幹トレ、おみそれしました。

さて、これで長らく呪縛となっていた「日本出身力士の優勝うんぬん」は終焉しました。琴奨菊でも優勝できるというのは、ほかの力士にとっても年齢や出身国を理由にする必要はないという勇気を与えたでしょう。いい準備をして、心技体が万全となり、そこに運が重なれば優勝できないはずがない。世界記録を破るとかじゃなく、たまたまその15日間で一番になればいいだけなんですから。極端な話、自分以外全員休んだら誰でも優勝はできるのです。

過去にも決定戦まで進出したことがある実績と今場所最後まで優勝を争ったことを踏まえれば、豊ノ島くらいのチカラがあれば可能性的にはゼロじゃなくなるんだと考えていいでしょう。白鵬ほどの歴史的横綱でも怪我や不調はあるわけで、そこに自分の好調が重なれば、こんなことも当然あるのです。優勝とは「そのうちできるんちゃう?」程度の出来事だったのです。

今年は栃東の優勝から10年という節目の年でもあり、年頭から「日本出身力士の優勝うんぬん」が連呼されてきました。しかし、もうそのキャンペーンは終わりです。また10年くらい経ったら言うかもしれませんが、とりあえず来年とか再来年のレンジで気にするテーマではなくなりました。

ここからが本番です。郷里で大集会が開かれ、両親が感極まって号泣し、国民的慶事のようになるほど「日本出身力士の優勝」がビッグトピックになっていれば、「そのうちできるんちゃう」などと思えないタイプの力士もいるでしょう。しかし、重たいプレッシャーは琴奨菊が処理してくれました。ここからはヘンに出身地を意識することなく、優勝・横綱を目指していってほしいもの。

「琴奨菊にできるなら●●●●にもできるだろ!」

もう一度勇気と希望をもって、大相撲を見守りたい。改めて思い直す、平成二十八年初場所なのでした。


◆この記念の場に僕も立ち会ってきましたので、今日はその記録です!

西日本に大寒波が訪れたこの日、国技館は澄み渡る青空のもとで輝いていました。鮮やかなのぼりが風になびき、昼をまわる前から会場周辺にまで人があふれている。この数年、高まりつづけている大相撲人気が、また一段膨れ上がったことを肌で感じます。

↓当然のごとく満員札止メです!
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館内は普段の千秋楽よりも盛り上がっている感触。通路にあふれる人の多さ、グッズに群がる人の多さ、ちゃんこに並ぶ人の列、どれもが「相撲キテるな」と思わされるもの。白鵬という大横綱が盤石の土台を築いた上に、久々の日本出身力士の優勝という「珍事」が重なれば、こういう熱気にもなるのでしょう。

↓入り口通路では上位勢の等身大パネルがお出迎え!

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琴奨菊のも一応作っておいてよかったな…!

「琴奨菊と豪栄道はいらんやろ」「一緒に撮らないと思う」「ちょっとどかしていいですか」などの数々の失礼な発言をお詫びします!


↓自分用のお土産には、ひよの山の瓦せんべいをチョイス!
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気が付けば、ひよの山が生まれてからも5年半経ってた!

年取るわけだ…。


↓歴史が更新されるだろうと確信して、内閣総理大臣杯の栃東の銘を確認!
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今日で栃東に「ご自身以来の日本出身力士の優勝…」って聞くのは終わりだ!

栃東にいつまでもオイシイ思いはさせない!

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館内散策の合間、相撲博物館の前でたまたま玉ノ井親方、つまり栃東と遭遇しました。親方は煙草をふかし休憩していました。僕は「ついにこの日がきましたね」という当たりさわりのない声掛けをします。ついでに心の中で「来場時に食べる国技館のちゃんこで、玉ノ井部屋がちゃんこと称してポトフを出してきたのにはビックリしました」「ソーセージを入れるな」「ちゃんこのド真ん中から逃げるな」と、かねがね思っていたクレームをぶつけます。

栃東はどこか遠くを見つめながら「はい」と短い返事をし、それからまた静かにタバコをくゆらせました。一般論で言えば「僕は休憩中なんでわずらわせないでください」という意味なのでしょうが、心には違うメッセージが響いてきます。まさか自分がいつまでも最後と扱われることになるとは思わなかったことへの驚きと、それが今日で終わるだろうことへの静かな感慨、そして「ポトフごめん」の謝罪が…。

↓ちなみにこの日、国技館の地下で提供されるちゃんこは玉ノ井部屋の中華寄せちゃんこだった!
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って玉ノ井はまた、こういう変化球投げてんのか!

「みんな大好き」と「みんな大好き2」でいいのに、何で親方オススメのチャレンジメニュー出してくるんだよ!

そのうち「パクチーちゃんこ」と言い張ったトムヤムクンとか出してきそうだな!


土産購入などを経て、いよいよマスへ。まず見上げたのは国技館の天井に飾られた優勝力士の額。現在は平成二十二年のものから残っていますが、そこにはもう日本出身者の額はなく、朝青龍の額すらありません。白鵬に始まり、白鵬に終わる。まさに白鵬時代を示すものとなっています。

ここから栃東の額が消えるときも、やはり同じように日本出身力士うんぬんがありましたが、そこからさらに4年が経った。まぁ、騒ぐなと言われても騒ぎますかね。神話の時代から含めて、これほど長く空くのは初めてのことですからね。

下のほうの取組を見ながらも、ソワソワとした空気が流れる場内。客の出足も早く、十両の取組をやる頃にはビッシリと席が埋まっています。幕内に入る前に行なわれた幕下8力士による優勝決定戦では、テレビ番組などでも採り上げられた「居反り」の宇良が登場。レスリングスタイルでの変則相撲はテレビに映れば一層の人気を集めるだろうと感じさせるものでした。

↓幕下優勝こそ逃したものの、足取りでの勝利は館内をドッと沸かせた!


「片足タックルから場外で1点」って感じだなwww

早く上で見たいぞ!

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焼き鳥、シウマイ、ソフトクリームなどをつまみながら各力士の取組を見ている間も、気持ちは琴奨菊と豪栄道の取組に残ったまま。テレビの中継もそうだったようで、中継開始直後から琴奨菊の郷里のパブリックビューイングの模様を紹介するなど、基本的にその話ばかり。これが別の力士なら「呪い級の負けフラグ建立」「ほかの後援会も映せ」「豊ノ島にも若干のファンがいるだろ、嫁とか」と慌てるところですが、まぁ琴奨菊なら大丈夫でしょう。

↓まず登場した豊ノ島はおっとっとする珍しい負け方で脱落!


うむ、怪我の影響が出たかな!

今場所はいい仕事をした、お疲れ様!


さぁ、勝てば決まりの琴奨菊。相手は絶不調の豪栄道。当然勝てるし、豪栄道もココで捨て身の勝負はできないでしょう。キレイにその瞬間を迎えるためにも、ドーンと当たってドーンと決着してほしい。今場所の琴奨菊ならまったく問題ないはず。それぐらい、今場所の当たりは強かった。誰もが認める美しい優勝へ、残る作業は普通に勝つだけ!

↓琴奨菊、見事に勝って初優勝!NHKは相撲の結果でニュース速報を流した!


おめでとう!初優勝!

嫁ももらって、優勝して、映画ならココで「完」って出るくらいの大団円だ!

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館内は聞いたことがないような大歓声が響き、喜びで立ち上がる人も。琴奨菊はじっと目を閉じ、何かを噛み締めるように土俵脇に立ちます。土俵上ではあと二番が残りますが、横綱同士の結びですら今日ばかりは「エピローグ」といったところ。大きなヤマを越えたことによる静かな余韻がジンワリと広がります。いいものを見た。いい場所に立ち会えた。しかも、それはとても美しいものだった。感無量です。

琴奨菊はもちろん素晴らしかったけれど、この美しさはひとりで成し得たものではありません。まず豊ノ島。自信にはさしたる期待をかけられない中で、自らトップを引きずり下ろして可能性を広げたばかりか、最後には優勝者を労う友情まで見せた。千秋楽に負けて場所中にあった誤審云々を論じる余地なく勝負から退場したことも含めて、豊ノ島の助演がこの優勝を大いに彩ってくれました。あの黒星が最後の大団円へのいいスパイスになった。他人の前に立ちはだかるときに無類の強さを発揮する稀代の水差し力、お見事でした。琴奨菊とは少年時代からのライバルゆえに悔しい気持ちも強いでしょうが、今後も定期的な水差しを楽しみにしたいものです。

そして、白鵬。この大横綱に勝って優勝したからこそ、琴奨菊の努力や奮闘の価値も高まったというもの。最近は「憎たらしいほど強い」の心で、有り体に言えば客から負けろ負けろと思われており、本人的にも面白くはないでしょう。ただ、それは「白鵬=強い」という認識を誰もが持っているからこそ。敬意のねじれが、そうした反応を生むのです。判官びいき、という日本古来の観戦スタイルです。

今の大相撲の隆盛は白鵬なしではあり得ませんでした。史上最強の横綱をひと目見ることに、「初めて」の壁を越えて国技館に向かわせるチカラがあり、「来てよかった」という満足がある。長きに渡りひとりで横綱を張り、長きに渡り休まず土俵をつとめつづけてきた。日本出身力士が10年に渡って優勝に値する強さを発揮できない中で、大相撲のクオリティーを支えてきた。

日本出身力士10年ぶりの優勝という状況を生んだのも白鵬であり、優勝そのものの価値を高めたのも白鵬であり、高まった価値にそぐう力士が出てこない時間に土俵を守ったのも白鵬だった。お客は白鵬が負けるのを待っていたのではなく、強い白鵬に勝つ力士を待っていた。昨年秋場所の休場以降はパッとしない場所がつづいていますが、3場所つづけて優勝を逃したことで、白鵬的にも「●場所ぶり」の気持ちが沸いてくる頃でしょう。ぜひまた「優勝の基準」として立ちはだかってほしい。

最後にアレ。僕の心の中には、常に今場所殊勲の星を挙げた力士への想いがあります。確かに、白鵬に勝って琴奨菊のアシストをしたことは土俵への貢献ではあったけれど、なすべき仕事はそれではないという苦い気持ちが。アシストでなく自分がゴールを決める。日本出身うんぬんとは無関係に、優勝が見たい。そんなものに対するこだわりはそもそもなかった。ただただアレの優勝が見たい。

しかし、同時に、もしも琴奨菊のように優勝する日が来るならば、やはりそれは白鵬を倒し、チカラで圧倒し、心から「強い」と思える優勝であってもらいたい。「全員負けて優勝」でもイイという低い志が、知らず知らずにアレを甘やかしていたのかもしれないと反省しています。「半年の体幹トレ」「支えになる嫁」「ルーティン」という琴奨菊を変えた3つのチカラ、アレはひとつも持っていないではないか。いつも同じ稽古を繰り返すのではなく、そうした自分を変える努力をして残りわずかな現役を過ごしてもらいたい。そう思います。

今の隆盛は近い将来落ち着きます。白鵬ほどの素材がそうそう現れるはずもなく、幕内の顔ぶれを見ても、将来性という意味で光るのは照ノ富士くらい。20代前半で大関・横綱になってこそ一流という中で、実際にそこに届く力士は乏しい。今いる力士がもう一段チカラを高め、白鵬後の時代を支える気概でなければ。その筆頭としてアレにも一花咲かせてもらいたい。白鵬よりはちょっとだけ若いのだから……。


とりあえずルーティンと体幹トレを年内に達成するように!