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07:00
魔法は解けた、美しく!

一年に一度の祝祭。もはや僕の居住地がアメリカじゃないなんてことは関係ありません。スーパーボウルは特別な日。一年に一回だけアメフトの話をする日が今年もやってきたのです。第52回スーパーボウル、頂点を争うのは大正義・ニューイングランドペイトリオッツと、初のスーパーボウル制覇を目指すアンダードッグ・フィラデルフィアイーグルス。

決戦の舞台となるのはミネソタ州はUSバンク・スタジアム。バイキングの海賊船をモチーフにしたという外観は美しく、スタジアムを覆う屋根の半分は透明で外界の光を取り入れるという夢の空間。素晴らしい舞台、それを備えるアメリカンスポーツの大きさというものを、否応なく感じさせられます。



入場してくるイーグルスには大歓声が、ペイトリオッツには大ブーイングが浴びせられます。アメリカにも判官びいきという言葉があるのか、あるいはペイトリオッツがサイン盗みやボールの空気圧操作などの「チート」をしているという疑惑によるものか、とにかく観衆はイーグルスの勝利を求めているようです。

しかし、ペイトリオッツは大正義。2000年以降に5度のスーパーボウル制覇、昨年は第4Q開始時点で9-28という絶望的ビハインドからの大逆転勝利も演じました。その原動力こそがクォーターバックのトム・ブレイディ。ブレイディがふるうタクトが演出してきた幾多の奇跡は、圧倒的優位の下馬評となって、ペイトリオッツを後押しします。

一方のイーグルスの攻撃を演出するクォーターバックは、今季始めは控え扱いであったニック・フォールズ。正QBの怪我によりシーズン途中からチャンスをつかんだフォールズは、常に「格下」とみなされるチームをスーパーボウルまで導いてきました。レジェンドVS控え、大正義VSアンダードッグ、対照的な対決です。

↓入場時の観衆の反応のこの差よ!

弱いヤツなら嫌われない!

それだけペイトリオッツが強いということ!



そして始まった試合。最初の攻撃シリーズはともにフィールドゴール止まりとなるも、展開としては出入りの激しいもの。両チームともよくパスを投げ、よく通します。同じ互角の立ち上がりでも、睨み合ったまま動かない互角ではなく、ボコスコ殴り合っての互角。互いにかなりの距離をゲインしながらの「静かな立ち上がり」です。

イーグルスはランパスオプション(プレイ開始後、ボールを持ったQBが相手チームの動きを見ながらランかパスかを決めるプレー)を頻繁に見せ、ペイトリオッツ守備に狙いを絞らせません。一方、ペイトリオッツはQBブレイディを中心に長短織り交ぜたパスで相手の守備網を巧みに抜けていきます。非常に攻撃的な試合です。

↓最初のタッチダウンはイーグルス!長いパスでエンドゾーンの奥に通した!

素晴らしいキャッチ!

今日は点がたくさん入りそうです!


↓ペイトリオッツは反撃したい攻撃シリーズでフィールドゴールを枠に当てる失敗!

スナップされたボールが低すぎてホルダーがファンブル!

慌ててセットしたものの、微妙なブレでキックはポストを直撃!


ゲインは順調にできるのに、どこかしっくりこないペイトリオッツ。その象徴のようなプレーが生まれたのは第2クォーターの残り12分。本来ならパスを投げる側のブレイディが前に走り、ブレイディを目掛けてパスを投げるというスペシャルプレーを繰り出したときのこと。相手守備は「QBがレシーバーになる」という形は通常想定しませんので、レシーバーとなったブレイディはガラ空きです。しかし、フワリと飛んできた何でもないパスをブレイディはキャッチミス。むむむ、嫌なプレーとなりました。

↓完璧に裏をかいたスペシャルプレーだったのに、最後の詰めでポロリ!


秘策で失敗した痛みは、ただの失敗よりも大きい!

「タイトルを取りこぼす」象徴となりそうな絵ヅラ!


逆にスペシャルプレーを決めたのはイーグルス。15-12とイーグルスリードで迎えた第2Q終盤残り38秒。ゴールまで1ヤードという位置から繰り出したプレーは、スナップを受けずにスルスルと上がったQBフォールズがタッチダウンとなるパスをキャッチするというもの。完全にガラ空きとなったフォールズが、この試合の大きな流れをもキャッチしました。

↓クォーターバックがタッチダウンパスを受けるというスペシャル珍事!


ミスしたブレイディと決めたフォールズ!

中継映像も、ふたりのプレーを比較映像のように映し出した!



結局22-12とイーグルス10点リードでハーフタイムに突入します。ペイトリオッツはブレイディのスペシャルプレー失敗のほかにも、試合中の負傷で駒を欠いてしまったり、初のタッチダウンでようやく追い上げムードになった瞬間にトライフォーポイントのキックを外してしまったりと、いい流れを断ち切るプレーが多く出てしまいました。上手くいきそうでいかない試合です。

↓お楽しみのハーフタイムショーは、あのジャネット・ジャクソンの胸部先端突起露出の際に、後ろで腰を抱いていたジャスティン・ティンバーレイク!


ペプシのCMから流れるようにつながるショー!

プリンスの映像に合わせ、街を染める紫のプリンスカラー!

CGなんだろうけど、それでもスゴイ!


さて、後半戦。リードは許しているものの、これまでも幾多の奇跡を演じてきたペイトリオッツ、ブレイディの本領発揮はココから。相手ディフェンスチームはブレイディを止めようと懸命に働くぶん、その疲労もすさまじく、時間を追うごとにブレイディを止めきれなくなり、試合終盤にスコスコやられる……これまで繰り返されてきた光景です。

第3Q最初の攻撃シリーズではブレイディが次々にパスを通し、あっという間にタッチダウン。ブレイディを守るペイトリオッツのオフェンスプレイヤーはQBサック(QBへのタックルなどの妨害)をまったく許さず、ブレイディに仕事をさせつづけています。大正義らしいドライブで、ジワジワとペイトリオッツが盛り返していきます。

イーグルスがタッチダウンを奪って再び突き放したあとも、すぐさまブレイディがタッチダウンパスを通して追い上げる。昨年は19点差を追いついた第4Q開始時点で、ペイトリオッツのビハインドはわずか3点。「またか」という気配がジワジワ高まってきます。

↓そして第4Q残り9分26秒、ペイトリオッツがタッチダウンを決めてついに同点!


トライフォーポイントも決めて逆転!

またペイトリオッツが勝ってしまうのか!


ここからはアメリカンスポーツらしい残り時間を操作しながらの戦い。どの程度の時間を使って自分たちの攻撃を進めるべきか、もし相手に攻撃権を渡すならどれぐらいの時間を余らせて渡すべきか、数秒を進めるのに1分をかけるような長い長い残り9分。イーグルスはたっぷりと時間を使い、ペイトリオッツはタイムアウトを使用して時計を止める。イーグルスが自分たちの攻撃を終えたのは、残り2分21秒。最後はペイトリオッツの守備が芝に足を取られて転倒する横を駆け抜けてのタッチダウンでした。

それでもまだ勝負はわからない。いや、むしろペイトリオッツの展開ですらある。ペイトリオッツは相手が2点を狙ったタッチダウン後の攻撃を防ぎ、ここを38-33の5点ビハインドで凌ぎました。残り時間2分21秒を使ってタッチダウンまで持っていけば、6点追加で逆転が可能。「この攻撃シリーズをタッチダウンにつなげれば逆転勝利」というシナリオは十分に実現可能なものです。あとはブレイディがやるだけ。お膳立ては完璧でした。しかし、この日はどうにも詰めがしっくりきません。完全にペイトリオッツのシナリオだったはずの攻撃シリーズで……

↓ここで「この試合唯一のQBサック」を許してしまった!痛恨のファンブル!そしてインターセプト!


ペイトリオッツの逆転劇を粉砕するQBサック!

この1回が勝負を決めた!



両チームを合わせて1151ヤードという史上最多の獲得ヤード数を記録した歴史的な試合。ペイトリオッツはスーパーボウル史上最多の613ヤードを獲得し、ブレイディのパス獲得ヤード数は500ヤードに至りました。スタッツだけ見れば負けるとは到底思えないような戦いぶり。

しかし、これだけの試合を演じつつも、勝利を得られなかった。これまでブレイディとペイトリオッツが魅せてきたものとは正反対に、不思議と勝利だけが手からすり抜けていくような試合。長らくつづいたペイトリオッツ王朝も、そろそろ一息つく頃合いなのかなと思わされるような結果でした。

これが「魔法が解ける」ということなのかもしれません。魔法が美しく解け、ペイトリオッツとブレイディは強いままで敗者となった。レジェンドが負けるなら、こんな試合かなと思います。いい試合、いいスーパーボウルでした。こういう試合を生み出せるアメリカのチカラ、やっぱりスゴイ。会社でコソコソしながらDAZNで見守った甲斐がありました。スーパーボウルにハズレなし。今年も楽しませてもらいました!




「全米が泣いた」「映画化決定」の煽りも、この試合なら使ってOKです!