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07:00
2020年へのハードルがグッと下がりました!

東京五輪が決まってから5年、僕はずっと心配してきたことがあります。運営に関してはまったく心配していないのですが、セレモニーについてはちょっと難があるだろう。特に全世界の期待がマックスに高まる開会式は、ご期待に沿えないのではないかと、常に震えてきました。

しかし、その不安はリオ五輪の閉会式セレモニーで大きく払拭され、平昌五輪の開会式を経てすごく気持ちが楽になってきました。2月9日、ついに幕を開けた平昌五輪、その開会式。そこで展開されたものは、絶対にダメということではないけれど、取り立ててすごいところもなく、どこかで見たことがある気がする、寄木細工のような式典でした。

チケット価格は22万ウォンから150万ウォンということで、2万円から15万円というイベントです。それだけの値段のイベントなら「一生の宝」となるものでないといけないんじゃないか、僕ならばきっと自ら生んだ内なる重圧によって、押しつぶされていたでしょう。けれど、実はそんなことはなかった。オシャレな店じゃないとデートできないなんてことがないように、ありあわせのオカズでも楽しい食事はできる。平昌は僕らに、そんな平凡な幸せを教えてくれたのです。

総合監督をつとめるのは「NANTA」というミュージカルを手掛けたことで世界的に知られる人物だとのこと。僕は不勉強でNANTAというものを知らなかったのですが、世界的に知られているというならそうなのでしょう。心にはフワッと「NANTAとはNANDA?」「劇団四季に演出させるようなものかな?」「何かクソそう」という不安もよぎりますが、フタを開けてみればわりと普通です。そう、わりと普通です。

↓何かカマキリとか人面鳥とかちょいちょいヘンなのが出てきますが、堂々と出してしまえば押し切れる!




うん、「伝統的なものです」って言われたら黙るしかないよね!

「伝統的なカマキリです」「伝統的な鳥です」って言われたら、そこで話は終わりです!


どうやら式典は5人の子どもたちが韓国の歴史をたどりながら、大人へと成長していくという筋立てであるもよう。合間に「他国から侵略を受けてきた韓国の歴史」みたいなことも織り交ぜて、歴史をいい感じに整えていくスタイルなのは若干気になるものの、そうした愛国要素も一瞬であればスーッと流れていきます。今回は直前になって「平和」というパワーコンセプトを見つけたこともあり、とにかく半島融和・世界平和につながると言えば、何でもスーッと通っていくから不思議です。

地面にプロジェクションマッピングで映像を表示し、子どもたちを矢面に立たせ、「伝統」という強固な理由付けを備えた衣装・オブジェ・踊り・音楽を打ち出していく。そこで描かれる平和への祈り、平和への願い、平和への誓い。誰も反対しようがない「平和」というテーマは、まさに五輪の開会式にふさわしいものです。これならば絶対にハズしようがありません。

「勝つ」のではなく「負けない」ことを目指して繰り出す演出は、どこに出しても恥ずかしくない(※面白くもないが…)普通のセレモニーに仕上がっていました。最低ラインを死守することは、世界的演出家などいなくても、国際的映像作家などいなくても、ワールドワイドミュージシャンなどいなくても十分に可能である。平昌の提示するハードルは勇気がわいてきます。「これなら超えられそう」と…!

↓そして、困ったときには花火という奥の手がある!

現場:「まずい!白けそうです!」
演出:「プロジェクションマッピングズバー」
現場:「まずい!白けそうです!」
演出:「花火ドーン!」
現場:「まずい!白けそうです!」
演出:「事前に用意した映像ズキューン」
現場:「まずい!白けそうです!」
演出:「花火ドンドーン!」
現場:「まずい白けそうです!」
演出:「花火ドンドンドーン!」
演出:「花火ドドドドドドドーンドーンドーン!!」

隙あらば花火をねじ込んでくるスタイル!

花火なら日本も得意だから大丈夫そう!



今回の開会式は「光でごまかせ大作戦」とでも言える、光による底上げが強固でした。プロジェクションマッピングしかり、花火しかり、客席に置かれた演出用のライトしかり。ピカピカ光ってさえいれば、すごくよさそうな感じに見えます。改めて振り返ってみると、子どもが出てきて、鳥とカマキリを太鼓を見て、ピカピカ光ったと思ったら、もう選手が入場してくるくらい「何も起きてない」開会式ですが、たくさん光っていたのでスカスカ感はかなり払拭されています。光ってスゴい!

↓選手入場はハングル順にして「自国がいつ出てくるか」わかりにくくすることで、観客を退屈させないと同時にトイレに立つ隙も与えないスタイル!
<バミューダ諸島は伝統のバミューダパンツで意地の入場!>


<アメリカは運営の防寒対策をまったく信頼せず、完全防寒スタイルでモコモコ登場!>


<日本選手団は葛西旗手を先頭に62番目に入場!>


<ドーピング問題に揺れるロシアは、オリンピックアスリートフロムロシアとして入場!>


<目立たない程度に竹島を書いておくスタイルでオリンピックアスリートフロムコリア、最後に入場!>


入場時にいろいろな曲をかけるのはいいアイディアでした!

それならカンナムスタイルもかけられますよね!

「絶対にカンナムスタイルを流したい」という気持ちと、「カンナムスタイルはさすがに恥ずかしい」という気持ちの素晴らしい妥協点!


↓そしてトンガは極寒が予想された開会式に、民族衣装で登場!
<死なないまでも、このあとの競技に悪影響100%>


<ちなみにリオ五輪のときのトンガ>


ちなみに、この選手はテコンドーからクロスカントリースキーに転向してきた同じ人です!

似てるんじゃなくて、同じ人です!

じゃあ絶対「コレ」がこの人の五輪大本番やんwwww風邪とか関係ないwwwww



選手入場後のターンで誰だかよくわからない歌手がイマジンを唄い始めたときは、さすがに一瞬ビクッとなりました。「ロンドン大会では本物のポール・マッカートニーが出たのに?」「ニセモノのイマジン?」「マジで?」とひるみました。そして、まさに日本も似たようなことをやりかねない、絢香さんとかが歌いかねないとおびえました。しかし、「知らない歌手のイマジン」という居心地悪さマックスの設定でも、しっかりとした光の演出があれば大丈夫ということを、確認することができたのは大きな収穫です。

↓光に囲まれていると、ボサッとしたオッサンも立派に見える!

まぁまぁ大丈夫ですね!

「ニセモノのイマジン」ほど恥ずかしいものはないけど、ワリと大丈夫!


開会式を救った光の演出。とりわけ今回見事だったのは、五輪マークの表示演出です。前回ソチでは、光の輪が故障で開かずに四輪になるというこっぱずかしいミスもありました(※なお、世界向けの映像では成功時の映像にサシカエてミスを隠すという力技も披露)。そんななか平昌は大量のドローンを用意して、ドローンの連携で人間の形や五輪マークを作ってきたのです。途中までやたらCGが多かったので、これも全部CGだろうと思うほどの見事な出来栄え。驚くような技術力ではありませんか!

↓素晴らしい技術力!なぜスゴいかというと、インテル入ってるから!

さすがに映像は録画だろうけど、ちゃんとドローンでやっているのはスゴい!

自分たちで何とかしようとせず、できそうな人に頼むという英断!

従来の韓国にはなかった柔軟さを感じる!

ちなみに会場のプロジェクションマッピングはパナソニックの仕事です!

従来の韓国にはなかった柔軟さを感じる!


五輪旗を持って入場してくる面々や聖火をつなぐ面々も、アメリカでやる大会などに比べると「誰?」感は否めない顔ぶれでしたが、それが韓国にとって大切な人ならコチラがどうこうするものでもありません。実際にそういう場面に出くわすと、「知らんけど、立派な人なんやろうなぁ」という感情しかわいてこないものです。ならば、日本も「知らない人だと恥ずかしいかな…」とか考えず、誰を出しても大丈夫なはず。

「ソルトレーク五輪の判定を皮肉るパフォーマンスを2002年のワールドカップで行なった」というつながりで冬季五輪に出張ってきたアン・ジョンファンさんが聖火ランナーのなかにいても、世間はスーッと流れていくくらい誰が出ても大丈夫なのです。「じゃあ長嶋茂雄さんも監督としてユニフォームがオリンピック出てるから大丈夫だな」くらい強気で行って大丈夫です。

聖火の最終点火者、通例であれば「誰だろう?」「誰だろう?」「えー、まさか!スゴい!」をやる場面、そういうことをやらないといけないような気がする場面です。しかし、今大会に関しては全世界共通の一択クイズで「キム・ヨナ」と全員が正解をわかっていました。僕はそれを恥ずかしいことのように感じてしまっていたのです。NHKのアナの「最後は誰でしょう…?おおおおキム・ヨナさんです!」っていうトボケ実況が恥ずかしいじゃないですか。たとえば東京五輪でも、吉田沙保里さんが出てきたら、何だかちょっとヒネりが足りないような気がするじゃないですか。

しかし、実際にキム・ヨナが出てくると、それはそれで納得感はあります。子どもとかお年寄りとか、ちょっとヒネってくるよりもむしろ素直で結構。キム・ヨナはこの大役に、「落ちたら死にそうな場所で、安全柵ナシでスケートに挑戦」というパフォーマンスでこたえました。この難しい役目をよくやり抜きました。点火装置がショボいぶんまで十分に補うパフォーマンスだったと思います!

↓「キム・ヨナだから大丈夫だろ?」という見切り発車感は否めないが、やり切った!


この段差の下は平らでも、さらに下は長い階段なんですけどね!

スケート靴で落ちても大丈夫なんですかね!

でもキム・ヨナ的には「滑れません」とは言えない!


こうして開会式は終わりました。どこかで見たことがあるような演出ばかりで、新しさというものはほとんどありませんでした。ただ、光ってさえいれば、花火さえ惜しみなく打てば、それなりに格好はつくということを確認できました。これで東京はずいぶんとやりやすくなりました。このラインはさすがにキープできるでしょう。パッとしないかもしれないが、バカにされることもない、そんなラインは。自信を持って2020年に向かいましょう!これぐらいならできると思いますから!




わかったぞ、ロンドン大会の歌手が豪華すぎただけだったんだ!