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07:00
地球最高にカッコいいふたり!

白銀の世界に熱いドリームバトル。14日に行なわれた平昌五輪スノーボード男子ハーフパイプ決勝は、これぞ五輪、これぞ頂上決戦という戦いでした。世界で唯一の「フロントサイド・ダブルコーク1440(※縦2回転&横4回転)⇒キャブダブルコーク1440」の連続技を決めた平野歩夢。その超大技を決め返して平野を上回ったショーン・ホワイト。スノーボードハーフパイプ史上最高の戦いが、そこにはありました。

ショーン・ホワイトという選手は「特別中の特別」な選手です。

スノーボードという競技が誕生し、競技スポーツとして独自の文化を発展させていくなかで、今もシーンの中心である「X GAMES」などの大会と、「五輪」との間には大きな溝がありました。スノーボード界の真の王者が、五輪への参加を拒む。そんな分断の時代があったのです。

そんな時代を終わらせるように、「X GAMES」でも「五輪」でも王者となり、対立するふたつの価値観を統一したのがショーン・ホワイトでした。ボクシングで団体を越えた統一王者となるようにショーン・ホワイトがすべてを統べることで、五輪におけるスノーボードは世界の頂点を争う戦いとようやくなり得たのです。「ショーン・ホワイトが一番である」、それが揺るぎなき基準点となり、その後のさらなる発展の橋頭保となった。

そのショーン・ホワイトが初めて「フロントサイド・ダブルコーク1440⇒キャブダブルコーク1440」の連続技をメイクしたこの日の試技は、ショーン史上最高のものだったはずです。逆に言えば、ショーン・ホワイトが自分史上最高の試技を出さなければいけない状況に追い込んだのが平野歩夢であった。片方だけでは生まれなかった「高さ」が、ふたりがそろうことによって「最高」となった。ショーン史上最高であるならば、それはすなわちスノーボード史上最高であり、地球最高である。そう断言できます。ショーン・ホワイトは「特別中の特別」なのですから。


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戦いは予選から始まっていました。もちろん決勝に得点が持ちこされることはないのですが、予選と決勝は細い糸でつながっています。何故ならスノーボードハーフパイプは誰が一番得点を積み上げるかなんてことではなく、誰が一番「カッコいい」のかを争う競技だから。転んだらどのくらい減点するかなど、ある程度の基準はあるとは言え、最終的にあのスコアは「相対評価」です。M-1グランプリの採点のようなものとでも言えばいいでしょうか。95点を記録した選手より、カッコいい試技をしたなら96点になり、さらにカッコよければ97点になる。そんな戦いです。

予選でのショーン・ホワイトはフロントサイド・ダブルコーク1080⇒キャブダブルコーク1080⇒フロントサイド・ロデオ540⇒ダブルマックツイスト1260⇒フロントサイド・ダブルコーク1260という構成で98.05点を記録しました。一方、平野歩夢は高く上がるメランコリーグラブからフロントサイド・ダブルコーク1080⇒キャブダブルコーク1080⇒フロントサイド900⇒フロントサイド900⇒フロントサイド・ダブルコーク1260という構成で95.25点を記録しています。

両者の試技構成は決勝にかけて大きく難度を上げるわけですが、スコア自体は平野歩夢は予選と決勝で変わらず、ショーン・ホワイトは予選のスコアよりも決勝のスコアのほうが低くなっています。このあたりは「相対評価」であればこそ。もっともらしくスコアになっているだけで、「お前のほうがカッケー!」という気持ちを95点とか96点とかに置き換えているだけなのです。

だからこそ、予選と決勝には薄いつながりが生まれます。決勝の試技順は予選の成績の逆順ですので、3回の試技においてトリをつとめるのは予選1位の選手です。そのとき必然として、先に試技に挑む選手にはキャップがかかります。最高点である100点を先の選手につけてしまったら、あとの試技順の選手がそれより素晴らしい試技をしたときに100点をつけるしかなくなりますが、それではどちらがカッコいいのかを表現できません。

一番最後の試技に100点を残しておきつつ、次々にカッコいい試技が飛び出してもいいように序盤のスコアは低めに抑える必要があるわけです。決勝で言えば、平野歩夢が95.25点をマークしたのは2本目の試技でした。平野歩夢のあとに予選2位のスコッティ・ジェームズと予選1位のショーン・ホワイトが控えています。もしかしたら、もっとカッコいい試技が飛び出すかもしれないわけです。

ならば三強が次々にカッコいい試技で上書きしていっても最後まで差をつけられるように、「平野2本目:95点」「スコッティ2本目:96点」「ショーン2本目:97点」「平野3本目:98点」「スコッティ3本目:99点」「ショーン3本目:100点」というキャップをかけておく必要があるわけです。その意味で予選3位の選手の2本目の試技としては95点はほぼ上限いっぱいのスコアと言えるでしょう。

↓バックトゥバック(同じ技を連続させる)でダブルコーク1440をつないだ五輪史上初の試技!



さらにフロントサイド・ダブルコーク1260、バックサイド・ダブルコーク1260とつないだ!

横4回転・横4回転・横3回転半・横3回転半の連続!


絶対評価の競技であれば、ほかの技をたくさん実施して得点を積み上げるという形でもスコアは伸ばせるでしょう。しかし、相対評価の競技では、平野歩夢の「現時点で世界で平野しかやったことがない構成」をカッコよさで超えなければ勝機はありません。おなじみの技をどれだけ完璧にやったとしても上回ることはないのです。だからこそショーン・ホワイトもダブルコーク1440の連続にチャレンジする道を選びます。平野がX GAMESでこの連続技を披露したときから、「コレに勝つには自分もやるしかない」ということはわかっていたでしょう。ショーンの挑戦は、平野が引き出したものなのです。

実際、ショーン・ホワイトは1本目の試技では序盤の2ヒットを「1440⇒1080」という抑えた構成で94.25点をマークしていました。平野の2本目の95.25点とは1点しか違いません。しかしこの1点は遠い1点です。ショーンの1本目の試技に対するジャッジのスコアは「90(※押し間違い?)、94、95、94、94、95」でした。ここから最高点と最低点がカットされて、平均を出すと94.25点となるわけです。一方、平野の2本目は同じジャッジが「95、95、96、95、95、96」で最高点と最低点をカットして平均すると95.25点となります。よく見てください、第1ジャッジの押し間違い?以外は「全ジャッジが平野を1点高く評価している」のです。

ともにクリーンに決めた試技ではあるけれど、相対的に見たときには「ショーンの1本目より平野の2本目が完全に上」という評価をジャッジは明確に示しているのです。このあとの展開を考えて点差は1点に留めているだけで、この1点は同じことを繰り返しても覆らない1点なのです。

自身初のコンボに挑戦せざるを得ない状況となったショーン・ホワイトの2本目は「1440⇒1440」のコンボを決めますが試技後半で転倒します。その後、3本目で平野はさらに伸ばすことができず、2本目の95.25点で試技を終えます。予選2位のスコッティ・ジェームズは平野を上回ることができずに3本目の試技を終え、平野の銀以上が確定。あとはショーン・ホワイトが平野を超えられるかどうか、勝負はふたりに絞られました。そして……

↓ショーン・ホワイトは1440⇒1440のコンボを決めるショーン史上最高の試技!


フロントサイド・ダブルコーク1440!

キャブダブルコーク1440!

フロントサイド・ロデオ540!

ダブルマックツイスト1260!

フロントサイド・ダブルコーク1260!



同じ1440⇒1440のコンボを決めたうえで、自身の代名詞でもあるダブルマックツイスト1260を決め、着地からグラブから乱れなくやり切った。平野のスタイル=カッコよさは高さと連続回転が特徴的でしたが、ショーンは平野の超大技をこなしたうえで、高さでも負けず、さらに自分らしさを盛り込み、マックツイストでの縦前方回転というアクセントも入れてきた。「お前にできることは俺もできるし、ほかにも俺はいろいろできるぜ」という試技をされてしまった。

負けを認めるわけではありませんが、ショーン・ホワイトが上であることは認めざるを得ない、そんな試技でした。「アユムが僕の挑戦を後押しした」「彼の過去イチの滑り。当然越されると感じた」と互いを認め合うふたり。高すぎて見えない頂上での戦いは、チカラをチカラで上書きする素晴らしい戦いでした。

ジャッジがつけたショーン・ホワイトの試技への評価は「99、98、98、98、96、97」でした。ショーン・ホワイトの過去イチの試技であるならば、これが最終試技でもあるわけで思い切って100点をつけてもよかったはず。実際、過去の大会では100点満点をマークしたこともあります。

しかし、誰一人100点はつけられなかった。それは平野歩夢が見せたあの試技が95.25点だったからだと思うのです。展開上95.25点にとどめた平野歩夢の試技と、ショーン・ホワイトの最終試技とで5点差は「つけられなかった」。5点も差をつけていいような戦いではなかった。だから、100点満点でもおかしくない試技は、難度の低い予選の試技よりも低いスコアになってしまった。100−97.75=2.25点、この2.25点は平野歩夢が「もぎとった」ものだと僕は思いたい。

スノーボード・ハーフパイプ史上最高の試技を持ってしても、100点をつけることは許されないような試技を、2位の選手がやってのけた。

この戦いが史上最高の戦いであり、史上1位と史上2位がここにいたことの痕跡は、低すぎるスコアという形で確かに残っている。僕はそう思いたいのです。

↓なお、この史上最高の戦いの直後、ショーン・ホワイトはセクハラ野郎として記者から追及されていました!

最高の戦いのあとに最低の蒸し返し!

まずこの戦いの話をしてから、セクハラについては別の場所で蒸し返しましょう!

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ショーンさん!そういうときは「チッ、うっせーよ」と返すのがオススメ!