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12:00
メロにもきっとこのチカラはある!

パラリンピックに誕生したニュースター、成田緑夢。この名前がついに華やかな表舞台に掲げられたことに、僕も何だか感無量です。しかも、ネットニュースの類ではなく、ニュース速報で銅メダル獲得を報じられての颯爽登場だなんて。

緑夢と書いてグリムと読む。この読み方を知ったのはもう10年以上も前のこと。「成田夢露の弟」としてでした。まだ炎上という言葉も浸透していなかった時代に「大火」と言うべき大炎上を起こし、悪い意味で日本の話題をかっさらっていったあの兄妹。成田童夢、今井メロ(※今井は母方の姓/メロは気分でカタカナに)。そして、その弟である成田緑夢。スポーツ三きょうだいとして知られた一家の末弟が緑夢さんでした。

「成田家の最終兵器」として、一番の才能の持ち主であるとささやかれていた緑夢さん。2013年にはフリースタイルスキー・ハーフパイプで世界選手権9位・世界ジュニア優勝とするなど、ソチ五輪出場を目指して順調な歩みをつづけていました。スノーボード・ハーフパイプやウェイクボード、トランポリンでも全国クラスの成績を残す天才ぶりは、まさしく最終兵器というスケール感でした。

しかし、緑夢さんはソチには出場しませんでした。世界ジュニア制覇から間もなくのこと、トランポリン練習中に左足のヒザ下がマヒする大怪我を負ってしまったのです。なるほど、そうきたか。アスリートに怪我はつきものではありますが、メロさんや童夢さんが五輪に出て緑夢さんは道を絶たれるのかと、他人事ながら痛ましい気持ちにもなったものです。

↓しかし、意外なほど本人は明るかった…!

ソチの1年前に「最悪切断」という危機を迎え、そこからまだソチを目指すという立ち直りの早さ!

夢は終わらない!



そこからパラスノーボード、パラ陸上へと活躍の場を移し、2016年・2017年と全国障がい者選手権大会のスノーボードクロスの競技で優勝。日本代表としても戦績を残し、メダル候補として緑夢さんは平昌パラリンピックに乗り込んできました。まさに紆余曲折を経ての夢舞台。「メロに耐えてよく頑張った!感動した!」と滑る前から抱きしめたいような気持ちです。

男子スノーボードクロスLL2クラス(片足または両足に不自由アリ)に出場する緑夢さんは、まず予選を1位のタイムで通過します。スタート、そして序盤のセクションでの加速が素晴らしく、1、2、3、4、5、6、7、8とビッグな起伏をチェックして乗り越えるたびに、ガンガンズンズングイグイスピードが上昇していきます。先行逃げ切りが持ち味です。

しかし、この勢いでつづけざまに行なわれるはずであった競技は長い中断に入ります。どうやらスタートゲートが故障し、上手く作動しない模様。ULクラス(腕に不自由アリ)の決勝トーナメントでは、一度滑ったレースを巻き戻してやり直すようなことまで。最終的には係員がゴム紐を持って、その紐を離したらスタートというアナログな解決法にいたります。

↓バリアフリーというか新しいバリア登場!


出た、「ハードルを乗り越えていけ」の精神!

もしも視覚に難ある競技者がいたら「パッチン」の音でスタートしろということか!


↓なお、国際パラリンピック委員会は「競技には影響がなかった」とのコメント!

「あー、壊れてました?」
「五輪のときは大丈夫だったんですけどねぇ?」
「いつ壊れたんでしょうねぇ?」


予定から大幅に遅れて始まった決勝トーナメント1回戦は、スタート直後に大きくリードして逃げ切った緑夢さん。準々決勝もスタートで大きくリードすると、レース終盤には対戦相手の転倒もあって余裕の勝ち抜け。順調に準決勝進出を決めます。夢に描いたショータイムまであと一歩。もはやでっかい理想…メダルも夢ではありません。

そして迎えた準決勝、スタート前に深呼吸して臨む緑夢さんはスノーボードクロスでmaking making dreamに挑みます。跳ね上がり、舞い上がり、ボードを魔法のじゅうたんのように乗りこなし、フロントサイド、バックサイドでかっとばしていきます。スタートからリードを奪うと、ソチの銅メダリストである対戦相手を大きく引き離して中盤まで。

ただ、ここで足の不自由というか、ヒザ下のマヒによってかかと側に体重をかけるターンが苦手という面が出てしまいました。カーブの途中で緑夢さんは転倒してしまい、準決勝は敗退となります。転びさえしなければ勝ち、というリードがあっただけに悔しいレースでした。

さぁ、それでもメダルへの挑戦はまだ終わりません。「コケてもそこで終わらずに頑張る」はメロさんがトリノで残した課題でもあり、逆にパラアスリートにとっては強みでもある部分です。緑夢さんは次の戦場・3位決定戦へと燃えた瞳で挑みます。鍛えた特上の技で、夢に向かってフルパワーです!

↓迎えた決勝戦、緑夢さんはスタートで相手をおさえ込むと、相手のコースアウトもあって銅メダル獲得!


あの頃夢見描いた世界が、今この手の中に!

夢・感動・ファンタジー!My dream平昌パラリンピック!



敗れたレース後には「ナイスラン!」と相手を讃え、勝ったレース後には「常に挑戦は止めない」ことが目標であったと語った緑夢さん。その爽やかな笑顔と話し方を見ながら、僕はお姉さんのメロさんのことを思っていました。トリノでつらく当たってしまった申し訳なさと、それにしてももう少し頑張りようがあっただろうという不満足と、きっとあのときに足りなかったものは「常に挑戦は止めない」という気持ちだったんだろうなという納得とを感じながら。

メロさんのアレから12年を経て、出し切らずに終わったトリノのモヤモヤがようやく払拭されたような気持ちになりました。メロさんは母としてスノーボーダーとして女優として新たな道で頑張っており、成田家にはようやくひとつメダルが渡った。ぜひメロさんにも、もとはひとつのきょうだいとして誇ってもらいたいもの。オリンピアン、オリンピアン、パラリンピアンメダリストという美しいトリオが完成したのは、あの日メロさんがそこにいたからこそ。どれだけ紆余曲折があっても、メロさんがオリンピアンであることに変わりはないのです。やっぱりすごいことなのです。久々にオリンピアンとしての今井メロを掘り起こしてくれた緑夢さんに負けないよう、メロさんも新しい挑戦で、「成田緑夢の姉が何と!」ともうひと波乱見せつけてほしい。夢も挑戦も終わらない。人生はまだまだこれからです!


むしろコケたところがスタートラインとなる、そんな気持ちで!