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07:00
解任のお作法を決めましょう!

9日、サッカー界を揺るがした衝撃の報せ。ロシアワールドカップを目指すサッカー日本代表のハリルホジッチ監督が、本大会まで2ヶ月という直前にきて解任されました。後任は西野朗技術委員長がつとめるとのこと。まさに急転直下の解任劇でした。





「解任には反対である、だがしゃーない」

個人的な感想を言うならば「解任には反対である、だがしゃーない」というところでしょうか。この時期に監督を替えていい結果につながるとは到底思えず、ただただ今までの積み上げを捨てるだけの無意味な交替であるとは思います。西野氏も多くの実績を残した指導者ではあるものの、この誰がやっても難しい仕事に対して全幅の信頼を寄せられるほどではありません。ワールドカップで指揮を執った経験もなく、やはり途中交代で引き継いだヴィッセル神戸では結果を残せていません。本番での好結果を期待できるのは、西野氏よりはハリルホジッチ氏でしょう。

そして何より、この解任はフェアではない。ハリルホジッチ監督との契約内容は定かではありませんが、依頼した仕事が本大会での好結果であるのならば、責任を問われるべきは「アジア予選」せいぜいが「アジアカップ」の結果まででしょう。アジア予選を突破したハリルホジッチ氏にとってみれば、完成品ではなく試作品で評価されるような不本意な気持ちに違いありません。申し訳なく思いますし、気の毒に思います。

ただ一方で、解任したくなることは理解ができます。ワールドカップ前の1年ほどの期間、2017年3月23日のUAE戦からカウントしていくとアジア同士・ワールドカップ非出場国を多く含む対戦相手に6勝5敗4分。直前のマリ戦・ウクライナ戦では、特にウクライナ戦において「めっためた」にやられました。あの試合が「めっためた」ではないと否定できる人は誰もいないでしょう。不安をかき立てられるのは当然です。通算成績を見ても対欧州・南米では1勝4敗、勝ったのは7点も取れてしまったブルガリア相手だけという状態で、夢や希望があるとは言い難いところでした。

「アジアのレベルが上がっている」
「ブルガリアはかなり強い」
「予選を突破するのは簡単ではない」
「ブルガリアめっちゃ強い」
「ハリルは本番に強い監督」
「あのストイチコフもブルガリア出身」
「今は手の内を隠している」
「琴欧洲もブルガリア出身」
「アルジェリアVSドイツ戦は見事だった」
「何と、碧山もブルガリア出身」
「そもそも日本は弱いからこんなもん」
「ブルガリア!ブルガリア!ブルガリア!」

たくさんの擁護論を並べたつもりではありますが、解任に舵を切った決断に対しては「しゃーない」としか言いようがありません。アジア予選を突破したこと以外に信頼を高めるような「結果」はないのです。夢を見られるような材料はないのです。その先を期待するにあたって、ハリルホジッチ監督でイケそうだと言い張る拠り所はアルジェリア代表での実績と、存在するのかどうかわからない手の内しかないのです。よほどの胆力がなければ、信じ抜くのは難しいだろうと思います。

一部には「スポンサーからの圧力が」などという噂もありますが、さもありなんと思います。スポンサーだって遊びで支援しているわけではありません。何億・何十億というお金を動かすのは真剣勝負です。スゴそうでも何でもないチームが、めっためたにやられる姿を見たら狼狽もするでしょう。カンフル剤も打ちたくなるでしょう。たとえそれが愚かな行為だとしても、拠り所がないときに人は慌てるものです。

そうした狼狽を「不勉強」とか「理解力不足」と断じるのはサッカー通の驕りです。日本代表というのは「世間」に支えられて今の立場があるのです。サッカーを知らない人でもカッコいいと思ったり、サッカーに詳しくない人でもスゴいと思ったりするから、日本サッカーにはお金が集まり、支援が集まり、応援や敬意が集まるのです。世間の先にスポンサーがあり、世間の風でスポンサーは風見鶏のように向きを変える、それが現実です。

世の中には映画や音楽・グルメといったたくさんのエンターテインメントがあります。そのどれが「お前は映画の作り方を知らない」とか「食材の目利きもできないくせに」とか「楽譜も読めないヤツに語ってほしくない」などと言うでしょうか。何も知らない相手さえも感動させてこそエンターテナーでしょう。「よくわかんないけどウマい!」と言わせてこそ一流でしょう。ハリルホジッチ氏の指揮したチームは、それができていなかったと率直に思います。だから、このチームを支えるほどの世間の風は吹いていなかった。

ならば、解任できるチカラを持った人が解任すると決めたとしても「しゃーない」な、と僕は思います。解任にはもちろん反対ですが。



手の内は隠すものではなく、大本番で追加が出てくるもの

自分でも散々「大丈夫!ハリルは手の内を隠している!」と言っておいてなんですが、手の内を隠すと言っても、隠しきれない地力ってものがあるわけじゃないですか。手の内を隠したままでもある程度やれなければ信頼は揺らぐのが当たり前でしょう。戦闘力53万VS戦闘力18万なら「三倍界王拳でイケるな」と思いますが、戦闘力53万VS戦闘力2万だったら「ダメだな」と思うでしょう。何にでも限度というものはあるのです。

そして、まずもって「手の内を隠す」といった姿勢であったり、そういった手練手管が正当化される論調は、僕は日本代表にとってふさわしくないものだと思います。日本代表は日本を代表するチームであり、子どもたちの憧れであり、サッカー界のフラッグシップモデルのはずです。たとえ親善試合であっても誇りを持ってベストを尽くさなければいけないし、「手の内を隠す」ような姿勢や、その正当化はよくないでしょう。

手の内を隠しても大本番に勝てばいいと、途中をないがしろにするような気持ちに傾いたら、それは大いなる後退です。せっかく日本代表というコンテンツは4年に一度だけ注目される立場を脱して、常に表舞台に立つ存在になったというのに。いつも、どの試合も、表舞台だというのに、そこで何を隠そうというのか。

平昌五輪で史上初の銅メダルを獲得したカーリング女子は、「カーリングは4年に一度のスポーツ」と語りました。自虐であり、苦しさであり、現状から脱却したいという意志をはらんだ言葉です。彼女たちは五輪と五輪の間に、日本一になり、世界選手権で銀を獲り、五輪出場権を獲り、熾烈な代表争いを勝ち抜きましたが、五輪で結果を出してようやく「4年に一度」の注目を浴びたのです。

多くのマイナースポーツが、何とか「4年に一度」だけでも耳目を集めたい、そしていつか「4年に一度」を脱したいと奮闘しているなかで、サッカー日本代表というのはとても幸せで、とても恵まれた立場にいます。大本番の間の4年も広く世間に見てもらえるし、その動向を気にされています。それは多くの先人たちの努力によって勝ち取ってきた立場です。4年に一度の好結果にすがらずに済むのは、とてもとても素晴らしいことです。

それを何故、「4年に一度」の方向へと持っていこうとするのか、僕には理解ができません。親善試合は勝っても負けてもどうでもいい試合です。ヘンなポジションに微妙な選手を起用したっていいです。さしたる信念もなく、ちょっと使ってダメそうなら放逐してもいいです。でも、そういうことの積み重ねで「あぁ途中はどうせ本気じゃないし、ヘンなポジションで微妙な選手が出てくるし、パッとしないから見なくてもいいや」となったら、今の幸せな立場を捨てて「4年に一度」に戻っていくのです。

チカラは隠すものではない。

いつもベストを尽くし、大本番で追加を出す。

そういう姿勢こそがあるべき姿でしょう。

本当に強いチーム・強い選手は「本番で120%」を出すものです。事前に世界記録を出して王者として五輪に臨み、五輪本番では過去の自分を超える「120%」を出して自分の記録を更新するのです。「隠していたチカラ」があるのではなく、全力を超えた20%の「隠れていたチカラ」があるのです。大本番だけでしか振り絞ることができない生涯最高を出すことが、そのチカラの正体なのです。大本番以外は出し惜しみをしているなんて話ではないのです。

だからこそ好きになるし、応援もするし、たとえ4年に一度の好結果が出なくても「また頑張れよ」「4年間楽しかったぞ」「また次の4年も頼むな」と言えるんじゃないですか。弱いなら弱いで構いません。勝つことだけでなく、負けることもまた素晴らしいエンターテインメントです。カッコいい負け、誇らしい負け、永遠に忘れられない負けはある。ただ、すべてはベストを尽くしてこその話です。

「煙幕です」「手の内を隠しています」「本番は別物です」は、やっている側が言うことではない。正当化されるべきものではない。

ベストを尽くした負けに寄り添う人が強がるときの、精一杯の言葉です。




解任のお作法を決めて、納得の監督交代をしよう

今回の電撃的な解任劇は、解任するタイミングを見失ったことが原因でしょう。おそらくは、もっとずっと前から解任を考えていた向きはあるはずです。ただ、ワールドカップ予選では出場権を獲得したので、結果によって解任が回避された。しかし、燻っていた火があり、そこにウクライナ戦で大量の油を注いでしまった。あと2ヶ月という今になってこうなるなんて。堪え性がないなぁと思います。

とはいえ、堪え性のなさは日本サッカーにおいては特段に異常なことではありません。Jリーグでも契約期間をまっとうせずに、ちょっと調子が悪いと監督を挿げ替えるのは日常茶飯事です。今季で言えば、浦和レッズの堀監督が開幕から5試合というところで解任されました。昨年秋にアジアチャンピオンズリーグを制した実績がありながら、それからわずか4ヶ月での解任劇でした。

大体、このくらいなんじゃないですかね?

人間がガマンできるのは。

4ヶ月はちょっと短いかもしれませんが、半年くらいでこらえられなくなるのが人情なんじゃないでしょうか。会社でも半期に一度は人事評価されるように、そのくらいのペースで安心したいものなのでしょう。「うん、大丈夫そうだな」と。そういった人情と、「ワールドカップの半年後にアジアカップ」「ワールドカップの9ヶ月前に予選終了」というのは、ちょっと都合が悪い。結果いかんで解任を検討するにふさわしいタイミングが、人間のガマン感覚と合わないのです。

2017年から2018年の国際Aマッチを組める日程を見ていけば、アジア最終予選が9月5日に終了したあとは「10月2日から10日の2試合」「11月6日から14日の2試合」「3月19日から27日の2試合」しかなく、あとはもうワールドカップです。その期間以外はまともに海外組を招集することはできず、試金石にはなりません。その意味で、特に「11月6日から14日の2試合」でブラジル戦とベルギー戦という「負けてもOK!格上チャレンジマッチ」を組んでしまったことが問題でした。

もし、そこでマリ戦・ウクライナ戦のような「ココにめっためたに負けたらダメじゃん?」という試金石になる相手を選んでおけば、イイ感じならそのまま本番までいけばよく、ダメならそこで解任するという流れが組めた。この2試合に相応の相手を選び、そして「ここで結果を出す」ことをあらかじめミッションとして掲げておけば、もっと納得の解任劇あるいは続投とできたはずです。

次回大会以降も、アジア予選を消化するだけで国際Aマッチデーは使いきってしまい、予選終了までは欧州・南米とはほとんど対戦できないという状況がつづくでしょう。従来存在したであろう「アジアカップでめっためたなら解任します、ごめんなさい」「ワールドカップ予選で負けそうになったら解任します、ごめんなさい」に加え、「予選後のココの試合は結果いかんで解任します、ごめんなさい」を設け、それをあらかじめ宣言することが今回の一件を未来への教訓とする方法かなと思います。

「予選突破を決めたらそのまま突っ走る」という堪え性がないとわかったのですから、次回はその反省を活かしましょう。

むしろ、そのタイミングこそを日本代表監督交代の基本タイミングとし、アジアカップ奪取を最大のミッションとしてもいいですね。

ワールドカップは出られさえすればあとはまぁお祭りですが、アジアカップは頑張れば勝てそうな大会ですからね。

本気を出すべきはアジアカップのほうですよね。




本当は武田JAPANの話でもすればスーッとこの記事も流れていったのでしょうが、こうなった以上は西野監督体制を応援するしかないわけで、本大会後に言おうと思っていたことを含めてここで一回ハリルJAPANというものへの気持ちを出しておきます。あとはもうスッキリと西野監督が率いる日本代表を楽しみ、なるべく盛り上がる大会になるように祈るだけ。

サッカーに限らず、やるのは選手です。

選手がよければ勝つし、選手がダメなら負けます。

ハリルホジッチ氏が戦うのでもなく、西野朗氏が戦うのでもない。

やることは変わりません。

監督が誰であろうが、協会がどうであろうが、選手を応援することは変わらない。

頑張れ日本代表、やるのはキミたちだ!

希望はもちろん優勝です!



「負けてしまえ」とか言ってる人は、誰を応援してるんですかね!