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08:00
「何もしないほうが得」を助長するのはつまらない!

素晴らしい熱戦の最後に残念な結末でした。13日に行なわれた女子アジアカップグループステージの第3戦・オーストラリア戦。なでしこJAPANは1-1の引き分けとしてグループ2位で準決勝進出を決め、今大会がアジア予選を兼ねる2019年女子ワールドカップ進出も決めました。

しかし、本当なら大拍手で迎えるべき決着が、最後はちょっと拍子抜けするようなものになってしまいました。「このままいけば両方勝ち抜け、ワールドカップ出場」という状況を悟った両チームが「何もしないほうがお互いに得」と通じ合い、何と最後は5分間ほど日本がDFラインでボールを回しつづけるという試合になったのです。まったくプレスをかけないオーストラリアとまったく前にボールを出さない日本。素晴らしい試合の終わりに起きたつまらない出来事でした。

↓ボール回しで決めたというか決まったというか、とにかくワールドカップ出場権は取りました!

とにかく、おめでとうなでしこJAPAN!

とにかく、準決勝・決勝も頑張れ!

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これは大会の順位決定の仕組みによるものでした。この大会のグループステージは「グループ内での総勝点」を最優先としたうえで、勝点が並んだチームが出た場合は「当該チーム間の対戦における勝点」⇒「当該チーム間の対戦における得失点差」⇒「当該チーム間の対戦における得点数」⇒「グループリーグ全試合における得失点差」⇒「グループリーグ全試合における総得点」……と見ていって順位を決めることになっていました。

先に済んでいる日本VS韓国戦、オーストラリアVS韓国戦はそれぞれスコアレスドローでした。もしも日本とオーストラリアが引き分けて3チームが1勝2分の勝点5で並んだ場合、「当該チーム間の勝点は同じ」「当該チーム間の得失点差も同じ」となります。そこで、日本VSオーストラリアがスコアレスドローなら「当該チーム間の総得点」も同じとなって、グループ内得失点差の争いに。しかし、日本VSオーストラリアが得点を取り合ってのドローなら、韓国がどれだけ大量得点で勝とうが「日本とオーストラリアが勝ち抜け」ということになります。

そのルールに照らして、自然な流れで「1-1の状態」になったところで、両チームはゲームを止めたのです。

何もしないほうが得ならそれでいいじゃない、それはわかります。とにかく切符を獲るべきだ、それはわかります。ルール上問題ないのだから問題ない、それはわかります。引き分けならどちらが上も下もなく決勝で改めてやっつければいい、それはわかります。下手に攻めて負けたらただのバカだろう、それはそうかもしれない。「結果」だけを求めるなら、何もしないことが圧倒的に「正しい」のでしょう。

↓素晴らしい先制点、ひと悶着したくなるような相手の同点弾、そして最後のボール回し!


正しい、正しいよ!

なでしこは間違っていないよ!

だけど……


状況はそうすることを後押ししていました。そもそもアジアカップでありつつワールドカップ予選でもあるという舞台設定は、負けが許されない戦いにさせていました。リオ五輪の出場を逃したことで、なでしこJAPAN・なでしこリーグひいては女子サッカーを取り巻く環境が冷え込んでいることも、是が非でも「結果」を取りにいかざるを得なくさせていました。わかります。「セカイデハアタリマエー」「コレガサッカー」「セメテマケタラバカー」の声がたくさん上がるのだろうなと思います。わかります。

でも、僕は思うのです。それって本当に「面白い」のかなぁと。SNSなどを見ていると自分の意見は少数派なんだなぁとつくづく思いますが、「勝ち」よりも「面白い」ほうがよっぽど大事だと思うのです。だって、「面白い」からボールを蹴って枠に蹴り込む遊びが流行っているのでしょう。ボールを蹴って枠に蹴り込もうとしないなら、それって何のためにやっているのでしょう。

たかだか最後の5分とは言っても、「私たちもうなにもしませーん」が成立してしまう場面を、日本代表の試合では見たくないものだなと思います。アフリカとかヨーロッパとか遠い国で知らん選手同士が勝手にやっていることなら、「いろいろな考え方があるものだ」と思ってスルーしますが、日本代表にはもっと違う考え方で試合に臨んでほしかったなと思います。

スポーツをお金に変換するためには観客が必要です。観客は、懸命に戦う選手たちの生き様や何が起きるかわからないドラマを見て、楽しんだり、苦しんだり、感動したりすることにお金を払っているのだと僕は思います。「何が起きるかわからない」という不都合さ不透明さと、その先にある結末。それを見届けるから面白いんじゃないですか。だからライブで見たいんじゃないですか。だからスタジアムで見たいんじゃないですか。

「何もしなければ結末を固定できるとわかりましたので、もうお互い何もしません」ってのは、エンターテインメントとしてのスポーツを否定する行為だと思います。なら、もう事前に協議して本日のシナリオをお決めいただいたほうがいいじゃないですか。契約書でもキッチリ取り交わして。そのほうがラクだし。疲れないし。展開としても、成り行き任せでやるよりも盛り上がる試合になるでしょう。それはそれで別種のエンタメになるでしょう。プロレスくらいにしっかりやれるのならば。

こう言うと、「日本がワールドカップに行ったほうが面白いだろ!」と言われるのでしょうが、それは自分たちの都合だけを考えた話。韓国を応援しながら見ている人たちは、あのボール回しはまったくもって面白くなかったでしょう。敗退するのはルールだから仕方ないとしても、せめて最後までやり合えと思ったでしょう。「これがサッカーだなぁ!正しい!」とはなかなか言わないでしょう。

全部、全部がつながっているのです。

自分の勝ちは誰かの負けであり、総和はゼロなのです。

総和がゼロのなかで後世に残るのは「面白さ」なのです。

勝ちと負けがセットでゼロになり、その過程で生まれた「面白さ」が残るのです。

自分だけで面白さは作れないのです。

だから、誰しもが納得できる戦いにしなければならない。

勝つにせよ、負けるにせよ。

日本では「ドーハの悲劇」と呼ばれる事件だって、どこかの国では「ドーハの奇跡」なのですから、それはそれでいいのです。

相手のコーナー付近での時間稼ぎなんてプレーもありますが、あれは「徹底的に守る」と「何とか点を取りたい」の勝負をやっているわけです。「プレー」をしているのです。「4番を敬遠」なんて行為もありますが、それも「プレー」をしているのです。しかし、結末が見えたから何もしないでボール回しは「何もしていない」のです。これを認めると「0-0の引き分けなら両チーム勝ち抜け」という状況で、90分ボール回しをすることを認めなくてはならなくなる。それはやっぱり、つまらないと僕は思うのです。どれだけたくさんの人が「それでいい」と言ったとしても。

↓選手は若干微妙な空気を漂わせつつも、最後は監督の指示に合わせてボール回し!それが大人の作戦!

正しい、正しいよ!

これが大人の作戦だよ!

だけど……

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やはり、こういった状況を生み出すルールはよろしくないと思います。「得」があればそうするのは当たり前です。ロンドン五輪の女子バドミントンでは「中国ペア同士の対戦を避けるため」にワザと負けるという試合もありました。結果的に、敗退行為に及んだ選手たちは失格になりましたが、そこに「得」があればそうしたくなるのが人情なのです。その大会ではなでしこJAPANがグループステージ最終戦でやはりボール回しを見せ、ボヤを起こしていました。僕はあの引き分け狙いは「準々決勝でブラジルをやっつけるため」と前向きに解釈していますが、つまらんことをしたのは確かです。何もしないことやわざと負けることに「得」があるのは、試合や競技そのものをつまらなくさせてしまうのです。

だから、つまらんことが「得」にならないようにルールを決めなければならない。グループステージの3試合目が同時刻開催になっているのも、他会場の結果を見てから「得」を狙ってつまらんことをしないように、なるべくそうなりづらくしているわけでしょう。今大会のように自分たちだけで結果をすべてコントロールできるような状況にしてしまうルールは、なるべく避けたいものだと思います。相手を落とすこともできないのに、攻めてただただリスクを負うだけなら、あんなこともするのでしょう。その意味では、なでしこJAPANもオーストラリアもルールに翻弄された被害者なのかもしれません。いい試合だっただけに残念です!

↓後半41分50秒頃から始まったボール回しを見て、いつも陽気な松木安太郎解説者も言葉を濁した!
実況:「このまま試合終了となれば、日本はワールドカップ出場が決まります!」

実況:「オーストラリアも日本もこれ…」

実況:「どうでしょう、松木さん」

松木:「……。」

実況:「相手の情報入ってますかね」

実況:「無理にいきませんね」

大竹:「うーん……」

大竹:「もしかして監督からの指示なのかもしれないですね」

実況:「高倉監督も阪口と話をするシーンがあったんですね。そのとき情報を伝えたかもしれないですね」

実況:「オーストラリアもまたボールを取りにきません」

松木:「ちゃんと前にボール運んでいきたいですね…」

実況:「これ松木さん、ひょっとして引き分け狙い、なでしこそういう思惑もあるんでしょうか」

松木:「……まぁ」

実況:「2位でもワールドカップ出場が決まります!」

実況:「そして決勝トーナメント進出も決まります!」

実況:「松木さん、決勝トーナメントの組み合わせを考えますと、日本はおそらく中国と戦うことになります」

松木:「そうですね」

実況:「オーストラリアもまったくボールを取りにきませんから」

松木:「こないね」

実況:「ベンチに情報入ったかもしれないですね」

松木:「ベンチはわかってるでしょうね。どういう状況でいるのか」

(中略)

松木:「これでも…」

松木:「少し前行って、ねぇ、少しプレーをしないと」

(中略)

実況:「松木さん!これは駆け引きという意味では、ワールドカップ出場を決めるという意味では選択肢のひとつだと思いますが!」

松木:「うーん」

松木:「まぁそうですけどね」

(中略)

松木:「まぁでももうちょっと相手の陣内でパスを回すとか、そういうアクションがほしいですけどね…」

何か、せっかくのワールドカップ出場決定なのに、選手も解説も僕もモヤモヤする決着になってしまった!

こんなに歯切れの悪い松木さんは珍しい!

「もっと上手くやれよ」という気持ちが奥歯に引っ掛かっている!

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まぁ、終わったことは仕方ありません。ワールドカップ出場権は獲りましたし、アジア制覇も目の前です。ここで出し損ねた笑顔はアジア制覇で出してもらいましょう。人生で何度もない大舞台をモヤった感じで終わるのはもったいない。最高の笑顔で終われる名場面を勝ち取ってほしい。ここから先は「勝つ」ことにしか得はありません。もうこんな状況にはならないでしょう。

頑張れ、なでしこJAPAN!アジア制覇を目指して!

最後の最後の1秒まで!


諸手を挙げてアレに賛同できない僕は、サッカーリテラシーが低いのです!