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12:00
ルールとは、理想のプレーを目指す後押し!

次シーズンから適用されるフィギュアスケートの新ルールが、国際スケート連盟の総会にて決まりました。かねてよりそういう方向性での改定が検討されると言われていたものではありますが、「4回転ジャンプの繰り返しは1回(3回転ジャンプを含めると2回の繰り返しが可能)」「演技後半に組み込んだジャンプへの1.1倍の加点は、ショートでは最後のひとつ、フリーでは最後の3つに適用」などジャンプ偏重を是正しようとするかのような改定となっています。

すでに決定済であるところの男子シングルおよびペアでのフリーの時間を4分30秒⇒4分に短縮すること、それにともなって男子シングルでのフリーのジャンプ回数を8回⇒7回に減らすこと、さらにジャンプの基礎点自体についても現行よりも下がる傾向となっており、いわゆる「ジャンパー」にとっては不利な改定かもしれません。




ただ、僕はルール改定に翻弄されるというのは、順番が違うかなと思います。ルールとは理想のプレーを後押しするために、危険行為や卑怯技を禁じ、「こういうものが見たい」というプレーに対して適切な見返り…得点や優位を与えるためのもの。ルールによって理想のプレーが変わるのではなく、理想のプレーの移ろいによってルールもまた少しずつ変化していくべきものです。

フィギュアスケートで言えば、美しくて正確で高難度な演技を見たいという気持ちは、大筋で全員合意できるところなわけです。「なんとなく」としか言いようがなく、わりと何でもできてしまった6.0点採点時代。こういう演技がよいですという基準と得点を定め、その結果として難度よりも出来栄えが勝ってしまった時代。その揺り戻しとして、ある程度の出来栄えを備えつつ、高難度ジャンプの本数が大きく勝敗を左右するようになった真・4回転時代。難度と出来栄えを振り子のように行き来しながら、その調和を目指す。

今回の改定は、現実が理想に近づき、理想がさらに先に進んだからこその改定でもあるように思うのです。4回転跳ぶ跳ばない、出来栄えいい悪いの段階の先にある、「美しいフィギュア」を目指すための一歩なのかなと。4回転を本数多く跳べばすべてねじ伏せられるようなバランスは好まず、今よりもさらに細かく出来栄えを見つめ、さらにはキラッと光る印象を人々に残していくようなフィギュアスケート。これまでも理想のスケーターとはそういうものであったものを、よりキッチリとルールとして理想像と定義しようとしているのかなと思います。

「男子シングルおよびペアでの演技時間の短縮」「男子シングルでのジャンプ本数の減少」というのは、中継への配慮かな?という点で若干ネガティブな部分もありますが、よりコンパクトで密度の濃い演技を促すという意味ではポジティブでもあります。茶の間は得てして短い時間のほうが見てくれるものですし、長ければ偉いというものでもありません。歌だって長ければ名曲なわけではないですし。

4回転ジャンプの繰り返し回数の減少は、「難度」面では後退を促す恐れもありますが、そこは考えかた次第でもあります。結局、4回転の種類が多い選手が大きく優位であることは変わらないわけで、十分に4回転へのチャレンジを後押しするだけの下地はあるでしょう。かつてのように「よっしゃ4回転やめて3回転だけやるわ」となるのではなく、すでにトップ選手は4種類もの4回転を習得しており、やがては6種類制覇もできるのではないかと思い始めている現代。現実がそこまで進んだからこそ、舵を切れた改定でもあろうと思います。

出来栄えを判定するGOEは現在の7段階評価から11段階評価へとより細かくなりましたが、これはまさに「ただ跳べばいいというわけではない」ことをハッキリと打ち出すもの。ジャンプの基礎点自体は減少方向での改定でありながら、最高評価を得た場合は「現在の最高評価で得る得点よりも上になる」というのは、理想の美に対しては今まで以上に評価をするという宣言です。同時に、そんなに美しくないものに対しては、それなりの評価になりますよ、ということでもありますが。

たとえばトリプルアクセルで言えば、最高評価を得た際には加点を含めて12.00点(※現行では11.50点)を得られることになりますが、これは新基準では4回転ルッツの基礎点(※現行の13.60点から11.50点に減少)と同じ得点です。最高に美しいトリプルアクセルは、普通の4回転ルッツと同等に評価されるのです。もちろん最高評価を得るためには、「高さと幅があること」「踏み切りと着氷の美しさ」「ジャンプ全体で無駄なチカラが入らない」ということは必ず満たさなければならず、誰もができるものではありません。が、誰もができないことをできる人は、それなりの見返りを得られるようなバランスにした。

これは体格の問題などで、回転数は伸ばせないような選手にとってもやりがいを生む改定でしょう。最高の出来栄えを追求すれば、高難度のジャンパーとも競り合うことができるようになるのですから。最高のトリプルアクセルを持っている選手は、4回転2種でも十分に戦える…そんな現実的なバランスとなっていくと、より面白い勝負も生まれるように思います。そして、特に女子における煮詰まり感…もう全員GOE+3を獲るのは当たり前となってしまい、差がつかなくなってきた状態を緩和するものでもあろうと。

総じて言えば、何となく力技で跳んできたジャンパーに対しては厳しい改定ですが、ジャンプはもとよりほかの要素も含めて理想を追求してきたフィギュアスケーターにとっては、そこまで大きな影響はないのかなと思います。得点配分や加点の仕組みこそ違えど、採点にあたっての基準はほぼ変わらないのですから。むしろ、現行の評価基準では差をつけられなくなった天井付近の選手たちは、より大きな加点・より明確な差を得られるぶん、自己記録の更新を狙える有利な改定となったとさえ言えるのではないでしょうか。無理に手を挙げて跳ぶ必要もなくなりましたしね!(※ジャンプの加点基準から、姿勢変化の項目がなくなったため/タノジャンプは趣味の技に)



また、今回の改定ではジャンプに関するものが大きく取り上げられていますが、出来栄えの判定についてはスピンやステップも11段階という幅広い評価に変わるわけで、これまでよりもより明確な差がつくことになります。すべてを疎かにしない演技というのが、これまで以上に求められ、今までは見えづらかったスピン名人やステップ名人が評価として浮き上がることにもつながるでしょう。

構成の部分でも、「全体」のバランスが求められることになります。演技後半のジャンプに対する加点が抑制されたのは、特定の選手を狙い撃ちするというものではなく、もともとは「みんな最初にジャンプ跳ぶの、つまらんなぁ」という気持ちで「後半に跳んだら見返りあるよ」とやったら、今度はみんな後ろのほうで跳ぶようになってきたので、「待て待て、前半も跳ぶとこ見たい」「ていうか全体でバランスよく跳んでほしい」「コンサートでも前半にヒット曲固めたり、後半にヒット曲固めたりしないだろ」という当たり前の揺り戻しが起きただけ。得点のために、バランスを偏らせなくてもいい(※もちろん偏らせてもいい)というのは、演技を考えるうえでの自由度を取り戻せるはずです。

コレオシークエンスという自由演技部分は基礎点で1.00点上昇し、加点も含めると5.50点を得られる大きな得点源としたのも、「すっごいウケるイナバウアー」とかを決めた選手に相応の見返りを与えるため。今までは得点としては評価しづらかったけれど、「すっごいウケるイナバウアー」とかをやる選手は理想のフィギュアスケーターに近いのだという気持ちがあればこその改定です。つまりは、体力、技術、印象、すべてを兼ね備えた選手を一番上に評価したい、そんな気持ちの改定であろうと。

こうしたルールでの後押しを斟酌して、選手たちにはこれからの新時代を作っていってほしいもの。

特に「すっごいウケるイナバウアー」みたいなものは、個人的にも追求していってほしい部分です。

荒川静香さんのモノマネをするとき、必ずあの「すっごいウケるイナバウアー」をやるわけじゃないですか。体力・技術的には全員できるようなことでも、一生のインパクトを生み出す使いかたはあるのです。それを考えることは、自分自身のためにもなることです。茶の間は「ジャンプでコケたかどうか」と「すっごいウケるイナバウアー」しか見ていないので、逆に言えばそこを頑張ったら人気や知名度となって跳ね返ってくるのです。

大衆に迎合すると言うと誤解を生みそうですが、そこも含めてやってね、そのぶん高難度ジャンプたくさん跳べない選手にも門戸を広げたよ…というのが今回のルール改定での後押し。高い技術、正確な実施、そしてキラッと光る見せ場がある、そんな理想像を目指していってほしいもの。推し選手のモノマネをするとき、このポーズならみんながわかってくれる…そういう場面があるほうがやっぱり楽しいですからね!(※ハイドロブレーディングの体勢で)

↓ちなみに男子選手のタイツ着用も認められた(※今まではズボン限定)ということで、より多様性あふれる演技が期待されます!


普通に考えればバレエ方向へ!

邪悪に考えればピチピチの全身タイツ方向へ!

どっちに転んでも損はナイ!



宇宙を表現する銀ピカ全身タイツとかは、陰影クッキリでアリだと思います!