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08:00
日本代表は、日本のサッカーは、素晴らしい!

ためらいなく言います。2018年ワールドカップ・ロシア大会、日本代表の幕切れは「美しい負け」であったと。プレミアリーグを席巻するスターを集め、それぞれが熟練の境地に達した優勝候補の一角・ベルギーを相手に、日本代表は2-3の激闘を演じました。ワールドカップベスト8を争うにふさわしい、世界のどこに出しても誇れる試合でした。結果は負けと出ましたが、それはそれは美しいものでした。大いに讃えていい、讃えられるべき試合だったと思います。誇らしかった!



そりゃあもちろん、勝っていれば最高です。ただ、どちらかは負けるのが試合。勝つには相応の力量が必要であり、苦境を跳ね返していく底力が必要です。その点において、ベルギーはさすがでした。休養十分、9人を休養させて臨んだベスト16でも、まだフェライニのような主力をベンチに置く余裕がありました。ベンチに座るメンバーの格ですら日本代表を余裕で上回る、そんな分厚さ。日本が先に2点を取ってから繰り出された反撃の手立ては強烈でした。そして最後に日本を仕留めた9秒台の高速カウンターは、途中にひとつのミスもなく、日本には体当たりで止めるチャンスすらありませんでした。隠しているチカラには大きな差があった。

しかし、この敗戦については「ベルギーのほうが強かった」という以外の理由はありません。日本もチカラを発揮し、ベルギーもチカラを発揮し、雌雄を決した結果としてベルギーのほうが強かったのです。そして、ベルギーをそこまで追い詰めた日本というのもまた、その場に立つにふさわしいチカラを持っていたのです。「日本は弱い」「弱小国」といった自虐でどこどこまでも自分たちを下に見る必要はなく、「2-3」くらいの差で強豪に迫れる位置にはいるのだと胸を張っていいでしょう。

親善試合では結果が残せず、監督交代という大きな出来事もあり、短い準備期間で本大会に臨んだ日本代表。そんな状況のなかでも、ベスト16に残ることは十分にできると示し、ベスト8に進む可能性もゼロではないことを見せられたのです。しかもドン引きでのミス待ちという相手を受けてのサッカーではなく、自分たちの強みを活かしたスタイルと意図を持ったサッカーで。それは紛れもない「実力」でした。ここまで勝ち進んだことも、ベスト16で敗れたことも、「実力」だと胸を張っていいし、「実力」だとうなだれていい。そんな戦いでした。

判断を先送りにする「たられば」は、今回の戦いにはありません。ベルギーは本気でした。当たり前です、負けたら終わりなのですから。日本も万全でした。スタメン6人が休養をとってのグループ突破という、これ以上はそうそう望めない状態で、ベスト16の戦いに臨みました。取り得る策にも見落としはなかったと言っていいでしょう。2-0とリードしたファーストチョイスは大成功でしたし、その後に投入すべき適切なカードはそもそも手元になかったのですから。手元にあるのはポーランド戦で「守りながら得点のチャンスをうかがうのは無理」と一度結論づけたカードのみです。切らなかったのではなく、切れなかった。柴崎が疲れ切るまで、何も切れなかった。だから、この戦いに「たられば」はないのです。今は、これが精一杯。

それでもベルギーとの試合は、これがグループリーグであれば間違いなく「勝点1」を持って帰れるものでした。延長を耐えきるよりも時間切れ寸前の勝ち逃げを狙ったからこそ最後のコーナーキックで勝負に行っただけで、これが90分の試合ならボールキープで終わりだった時間です。本気のベルギーを相手に「たられば」ナシで勝点1を取れるのなら、どんな相手とのグループリーグであったとしても、そこに可能性はあると断言できます。掛け値なしの大本番で、世界屈指の強豪から勝点1を取ることは現実の範囲内である。それができるならグループ突破は現実の範囲内である。そう言い切れます。

日本代表と日本サッカーが見せた史上最高の戦いは、未来に向けて大いなる自信となるものでした。「ここまではあり得る」とさまざまな立場の人が納得できるラインを引けたはずです。だって、実際に、現実に、それは起こったのですから。「物議」に揺れた今大会の日本代表でしたが、最後にようやくひとつの収束を見た、そう言えるのではないでしょうか。

「ベスト16は可能、ベスト8が目標」というリアルへ。

ということで、全体総括に先立ってまずは美しいベルギー戦を記録すべく、2018年ワールドカップ「日本VSベルギー戦」をチェックしていきましょう。


◆山口蛍とカゼミーロを足して山口蛍を引いたような選手がいればなぁ!

真新しいロストフアリーナの煌びやかな光。光に誘われるように、たくさんの人々がスタジアムに集います。「日本のチカラを信じてる」「大迫半端ないって」おなじみのメッセージが躍り、日本代表を鼓舞します。対戦相手は世界屈指の強豪ベルギー。FIFAランク3位という格付け以上に、並び立つ名前の威圧感たるや。マンチェスターナントカだらけです。

もちろん我らが日本代表も怯むものではありません。マンチェスターナントカこそいませんが、向こうの選手と同じく欧州の主要リーグで戦っているスターティングメンバー。談合してまで生き残ったのは、ここで全力の戦いをするため。十分な状態で本当の戦いをするためです。おそらく次の試合に余力は残らないでしょう。「この一戦」にすべてを出し切るのです。ベルギーならば相手に不足はありません。全力で挑む甲斐があります。

日本のスタメン、GKは批判をパンチングで短く弾き返す男・メス川島(オス)。DFラインは4バックの形。敵の攻撃も味方の情報漏洩もシャットアウトする最強デュエリスト長友。Jリーグを背負ってここにきた未来への布石・昌子。今大会ひとつもやらかさず替え玉疑惑も高まる・吉田。酒井と言ったらもう宏樹、特記がなければもう宏樹、頼れる右サイドバック酒井宏樹と並びます。

中盤の底には不動のキャプテン長谷部と、日本の心臓・柴崎岳。前めには芸術的なシュートで日本を救った乾、マンチェスターナントカを知るワールドクラス・香川、死ぬまで走れ死んだらゾンビ化して走れ・原口と入ります。そして1トップには大迫“半端ないって”。コロンビア戦、セネガル戦で美しく勇敢なサッカーを展開したスタメンそのままです。

↓中国のえらい拳法家の先生の還暦の祝いに集った弟子たちみたいヤツが戻ってきた!

いけ日本!

ベルギーには何となく勝てるイメージがある!


↓この拳法家は元気玉まで習得しているのか!界王のもとで修業をつんだな!


ひょっとしてこの先生はサムライブルーではなく、スーパーサイヤ人ゴッドスーパーサイヤ人(スーパーサイヤ人ブルー)なのでは!?

ちなみに、スーパーサイヤ人ゴッドスーパーサイヤ人(スーパーサイヤ人ブルー)とは、サイヤ人がスーパーサイヤ人ゴッドを体得した状態でスーパーサイヤ人に変身した形態のことだ!

わからんだろう!?わからなくていい!

僕もわからん!



序盤、日本は前線からのプレスで相手ボールにプレッシャーをかけます。開始1分を待たずに香川が放ったオープニングシュート。それは決して退くものではなく、立ち向かうのだという意志を宣言するかのよう。大迫はコンパニを背中で強く跳ねのけ、香川は人間ひとりぶんのスペースでさえも自由を謳歌し、乾と長友で作る左サイドは相手陣内を深くえぐります。

守備でもフェアに身体を張ってインターセプトを連発。何かを起こすアザールにはとりわけ警戒を見せ、複数ではさんで抑え込みます。ルカクとマッチアップする昌子ははじめこそ「俊敏な巨体」に戸惑いも見せますが、早くボールにアプローチするようやり方を変えて上手く対応。攻守ともに悪くない立ち上がりです。

↓日本の伝統技法・相撲でルカクに対応する長谷部!

何だか運動会のボール運びゲームみたいになってきたな!

まぁ、まさに「運動会のボール運びゲーム」の世界最高峰のヤツなんだけど!


ルカクを抑えるのに難義するものの、ルカクがターゲットとして「機能している」ぶんには、向こうも狙いたくなるというもの。「最後はルカク」というところをしっかり意識していれば、日本としても対応は覚悟ができます。際どいプレーを重ねながらも、ルカクのシュートも枠を外れることが多く、日本はゴールを割らせません。

↓セットプレーでは川島が身体を壁にしてコンパニキックを防ぐ!

おおっ、中国の拳法家の弟子が道場破りと対峙した場面かのよう!

この弟子、蹴られる前に目ぇつぶってるから、ぶっちゃけ弱そうだぞ!

この弟子、何かが自分にむかって飛んでくると、ちょいちょい目ぇつぶるから弱そうだぞ!



結局前半は0-0のまま静かに折り返します。日本はよく守り、よく耐えた前半でした。しかも、ただ耐えるばかりではなく前半31分の乾のヘッドや、前半44分の大迫のタッチを相手GKがKAWASHIMAった場面(※トンネル)など、得点の可能性もゼロではありません。ガードの上から殴られて手は痛いが、たまにローキックで蹴ってる…くらいにはやり合えたでしょうか。プレーが止まる時間も、不要なファウルも、抗議もVARもなく、アディショナルタイムも1分掲示。前半はスムーズに流れて行きました。さぁ、勝負は後半です。

迎えた後半、前半同様の布陣で始まった試合は急激に動きます。前半3分、日本のカウンターの場面。中央でボールを持った柴崎は、フェルトンゲンの裏にスルーパスを送ります。あえてフェルトンゲンの前を通したボールは、逆足での処理となったことでミスを誘い、裏を走る原口のもとにこぼれます。一度フェイントを入れた原口は、強く右足を振り抜くと逆サイドのネットへズドン!名手クルトワの手も及ばない、会心の先制弾!

↓うおおおおおおおおおおおおお決めたぁっ!原口元気!


これがホントの元気玉ってか!

拳法家の先生も大満足の一撃!


さらに日本の攻勢はつづきます。つづけざまの後半7分、相手CBが弾き返したボールを香川が拾うと、相手をひきつけてコースをあけてから、寄ってきた乾にスイッチ。ここから撃つのかというやや遠目からのミドルは、これぞ乾のコースという右サイド側のポストへ無回転で一直線!

↓テニスボールくらいなら入りそうな雄叫び!2ヶ月前はここにくるかこないかもわからなかった選手が、日本を押し上げる大活躍!

バルセロナから2点を取った男の、ワールドカップ2点目!

大会屈指のビューティフルゴールだ!


尻に火がついたのはベルギー。まさかの2点ビハインドには格上と言えども落ち着いてはいられません。アザールのシュートがポストを叩くなど、運も日本に味方しています。ベルギーは4バックにシステムを変えて打開を図りますが、日本もすかさず察知して対応。献身的な寄せと香川を中心とするヌルヌルしたボール保持で試合の流れをキープします。ここまでは通用しています、日本のサッカーが。

この2点を守り抜くのか、3点目を取ってトドメを刺すのか。日本が「守り切るカードがない」というジレンマでもたついているなか、先に動いたのはベルギー。ベルギーは長身のアフロ・フェライニと、スピードとテクニックで鋭い突破を見せるシャドリを入れてきます。ひえー、誰が出てきても何かすごそうです。日本は引きつづきスタメンをキープ。ベルギーの打った手を、受け止めるという道を選びます。

心ないインターネットでは「ボール回しの時間だああああ!」といった声もあがりますが、ベルギーの圧力を前にノンビリまわせるはずもなく、日本は受け止めて蹴り返す作業を黙々とつづけます。しかし、試合は日本の祈りよりもずっと早く動いてしまいます。後半24分、コーナーキックを高く蹴り込んだベルギーは、シャドリがさらに高く浮かして「空中戦」を意図した攻撃を繰り出します。

ルカクに合わせたボールを川島が一旦はパンチングで弾きますが、距離は短くペナルティエリア内に落下します。カバーした乾がクリアを狙いますが、これもまた高く浮いてペナルティエリアに残る軌道に。待っていたフェルトンゲンはジャンプもせず再び折り返す構えを見せます。ここに寄せた酒井宏はボールを見失ったか、折り返しには競り合えず。川島もニアを警戒したままのポジショニング。するとそのボールは、高く弧を描いてそのまま逆サイドのゴールへ。川島の戻りは間に合わず、思わぬ形で1点を失いました。

↓ダメだぞ!そんな目でKAWASHIMAを見ては!今のはKAWASHIMAでなくても取れない!と思う!

4試合で3回目だぞ…とか言ってはいけない!

そもそも最初の競り合いでキャッチングしてほしいし、パンチングいっつも短すぎない?…とか言ってはいけない!

「みんな違って、みんないい」んだ!



この1点はベルギーにも大いに勇気を与えたでしょう。そして、ゴール前でポンポン浮かしておけば取られないことと、枠にさえ入れておけばまぁまぁどこでも入るぞということを悟ったはずです。日本は引きつづき「外してくれー」のお祈りを捧げますが、直後の29分に今度はフェライニに高い打点のヘッドを叩き込まれます。長谷部が身体を寄せてはみますが、抑えるどころか逆に弾き返されてしまいました。高い塔の本数が増えたとき、日本には跳ね返す地力がありませんでした。無念の、しかし日本あるあるの、いつかどこかで見たような連続失点でした。

日本はここでようやく動きます。というか、スタメンが疲れたときに仕方なく切るような手札しかなかったと言うべきでしょうか。4試合目で疲労の色が見える柴崎に代えて山口蛍を、同じく走り詰めの原口に代えて本田△を。役割はほぼ同じで、戦術的な意味は薄い交代です。フレッシュな動きで何とかしてこらえろ山口蛍、そして本田△の天運に祈ろう。そんな現状維持の交代。

それはある意味で90分での決着を目指す交代でした。ベンチに残る手札はポーランド戦で「守りながら攻めることはできない」とみなされたメンバーと、ワールドカップに出場したことのないメンバーたち。スタメンを代える理由がありません。スタメンを代えて、試合を動かす手札の準備は、日本にはできていませんでした。だから、ここで1点を取って、そのまま勝つ。それだけが勝ち筋なのである…そんな背水の陣です。

川島の好セーブ連発。吉田も無やらかし記録を360分近くまでのばし、一瞬の勝機をうかがいます。本田△と香川が相手DFを切り裂いて放った惜しいシュートは、ブラジルで夢見たような場面でした。延長にもつれれば、相手の投入できるカードはさらに増えます。一方、日本が投入できる有効な手立てはありません。PKになればKAWASHIMAとクルトワの勝負という側面も生まれます。いずれにせよ厳しい。だから、ここで1点取りたいのである、と。

アディショナルタイムに突入しても攻める日本。あわやオウンゴールというクリアはクルトワがナイスセーブ。敵陣で獲得したフリーキックは、本田△が「直接」とクチで言いながら無回転ブレ球を枠に蹴り込みますが、こちらもクルトワがナイスセーブ。そして獲得した日本のコーナーキック、本田△が蹴ったボールはクルトワにキャッチされると、すかさずベルギーはカウンターを繰り出します。

日本が攻撃失敗で「あぁ」と思った一瞬。ベルギーは5人が猛ダッシュで駆け上がります。日本は3人。デ・ブルイネはトップスピードに乗りながらミスタッチのないドリブルで中央を進みます。山口蛍が応対するも、このままリトリートしても危険ですし、かと言って飛び込む隙もなく、パスコースは4本。ひとりで全部を潰すのは無理筋でした。一度サイドにはたいたところで、中央にはルカクと長谷部が入り、逆サイドにはシャドリとアザールがいます。折り返しのクロスをルカクがスルーしたところで勝負アリでした。仮にシャドリのシュートを弾いても、アザールに押し込まれていただろう…そんな完璧なカウンターアタックでした。

↓ベルギーのほうが体力も気力も試合運びも上回っていた!日本、立ち上がることもできない3失点目!(1分30秒頃から)


走って追いかけたけど、全然追いつかない!

そしてゴール後は立ち上がれない!


昌子が倒れ、吉田がうずくまり、長友はポストを叩き、乾は大の字で天を仰ぎました。まだ数秒、時計は残り時間を示していましたが、それすらもベルギーが最後の交代で消費して終了。場に出したスタメン同士では決してヒケをとらない戦いでしたが、残していた手札には差がありました。相手が繰り出す手を、返せるメンコが日本にはなかった。それは総合力の差であり、地力の差であり、実力でした。ミスしたから負けたのではなく、チカラを出せなかったから負けたのではなく、相手が上でした。それは仕方のないことです。

素晴らしい攻撃と、世界のなかでも際立った個性と、危うい守備を見せた劇場型チーム。決して盛り上がっていたとは言えない日本国内を、監督解任から動き出したドラマの連続で、大いに盛り立てました。たくさんの物議を生み、そのたびに結果で生き残るというギャンブルの連続。最後はパッと散りましたが、手元にはしっかりと払い戻しが残ったと思います。日本サッカーの財産となる払い戻しが。すなわち、このチームこそが日本サッカーのモデルとなる、これまで模索して模索して見つからなかったものが。それをようやくつかんだような気がします。「正々堂々と勝利を目指す」、そのスピリットとともに。

リードしてからの時間、足が痛いフリをして転げまわったり、相手をイラつかせて共倒れを狙ったり、狡猾な狐ならばいろいろな手段で時間をやり過ごしたのでしょう。しかし、日本はそうしなかった。できなかったという側面もありますが、しなかった。クリーンなプレーを最後まで維持し、ゆえに美しいゲームをワールドカップの舞台に遺しました。それを弱さ、幼さと言われるならそれでもいいと思います。その姿勢こそが日本のカラーとなるよう、育てていけばいいと思います。

今大会はVARも導入され、これまで以上に狡猾なファウルや演技に対して厳しい視線が注がれています。そうしたやり口はサッカーの文化だったかもしれませんが、サッカー界も自らそれを変えようとしているのです。日本は欧州や南米が見せる伝統的な狡猾さに今から「追いつこう」とするのではなく、変化の先へと進んでいけばいいのです。もう「神の手」でヒーローになる時代ではありません。狡猾さをスーパープレーで帳尻合わせするのではなく、相手の全力をコチラの全力で乗り越えるようなサッカーを目指していくことが日本の道なのではないか…僕はそういう日本代表に1票を投じるものなのです。

美しく、強かった、このチームのように。

↓立つ鳥、跡を濁さず!日本代表は美しく大会を去る!

お疲れ様、ありがとう!

僕は今大会が日本のベストワールドカップだと思います!


ベルギー優勝しろ!そうしたらこの試合が永遠に語り継がれるから!