このエントリーをはてなブックマークに追加
Clip to Evernote
08:00
山根終身会長の鉄のガードを崩せるか!?

東京五輪・パラリンピックを前に蠢く闇みたいなものがまた出てきました。今度のおもちゃは日本ボクシング連盟、いわゆるアマチュアボクシングです。何でも「日本ボクシングを再興する会」なる団体が、日本ボクシング連盟の不透明な運営を告発し、ボクシング界を再興しようとしているのだとか。これには「日大アメフト部の話も飽きたのぉ」と思っている世間がガッチリと食いつきました。新しいおもちゃで遊べて、最高です!

↓「おおっ!いかにも悪人!」と世間ウケする見た目!コチラが日本ボクシング連盟終身会長・山根明氏です!

顔が悪そう!

メガネが悪そう!

時計と指輪がめちゃめちゃ悪そう!

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

アウトレイジ 【DVD】
価格:3119円(税込、送料別) (2018/8/3時点)



とまぁ、第1ラウンドは「日本ボクシングを再興する会」がイイ感じで立ち上がったように見える本件ですが、戦況は極めて厳しいものであろうと推察します。よほどの風が吹かないかぎり、この戦いに勝利することはできないでしょう。あるいはどれだけの暴風が吹いたとしても勝てないかもしれません。山根終身会長曰く「告発者が3000人でも無視だよ」とのことですが、それは脅しでもハッタリでもなくほぼほぼ現実であろうと思います。

まず前段として、この山根終身会長は仕事ができるタイプです。いわゆる「辣腕」。特にボクシング界においては大変よく働かれる部類の御仁で、ボクサーにありがちな「拳ひとつ」のタイプではありません。長らく断絶状態にあったプロ・アマの垣根を一旦刈り込んで練習における相互の交流を実現したり、新たな大会の創設や国際試合への派遣を通じて連盟を挙げて選手強化に乗り出したり、「去年と同じでいいや…」になりがちなマイナースポーツ界において、金も労力もかけて動きを仕掛けてきました。南海キャンディーズのしずちゃんを起用して、女子ボクシングの存在をアピールしたこともありました。そうした手腕がロンドン大会での金・銅2個のメダル獲得に、まったく無縁だったとは言えません。当時は終身会長を讃える記事もたくさん出たものです。

国際連盟への進出を通じての人脈作りや、プロボクシング界と一定の関係改善(※握手した手を思いっきり握る的な)を行なうなど、「政治家」としての山根氏の働きがあり、その手腕こそがやがて「終身会長」に自分を選出するほどの絶大な権力を築いていった要因でもあります。単に権力があるわけではなく、動き回って「権力を根こそぎ持っていった」のであり、その意味ではそうやすやすと落とせる敵将ではないのです。現状のバトルは、すごいちっちゃい規模ではありますが、F1の世界で「バーニー・エクレストンを倒すぞ!」と息巻くような、難しい話なのです。

↓村田諒太さんに「山根会長のおかげで金が獲れました」と言わせることも忘れないぞ!(※20秒頃から)


言わされているかどうかはともかく、言っているのは間違いない!

「ダライ・ラマと一緒に写真撮る」みたいな小さな積み重ねが、権力を作るための秘訣です!


もちろん「仕事ができる」ことには功罪両面があります。俗に「村田ルール」と呼ばれるアマ選手のプロ転向に関わるルール作りでは、選手の自由を過大に縛りつけるルール整備を断行しました。この「村田ルール」では、アマ側の事前承認ない状態でのプロによるスカウト活動を禁じ、プロ転向の際には「アマの大事な選手を引き抜くのであるから今後のアマ育成のため、選手強化寄付金を払うべし」という事実上の移籍金を設定しました(※村田諒太選手の場合は2000万円と公表済)。さらにプロジムの練習環境や活動計画もアマ側で事前に精査・承認するものとし、不適切な活動を行なった場合には転向の承認を取り消すと定めたのです。

この村田ルールはアマ引退後も「最終登録から2年間」は選手を縛りつけるものとされており、いわゆる「職業選択の自由」を大いに制限する規程です。たとえば「高校でボクシング部に入り、インターハイ・国体を目指す」というようなごく普通の部活動をしているだけの選手でも、卒業後プロボクサーを目指す際にはこの「村田ルール」が出張ってくるのです。無視すればどんな不利益があるのかはよくわかりませんが、何だかとてもイヤなことになりそうです。

そんなプロ・アマ間での選手の奪い合いは小中学生の年代にも波及しており、プロ側が「プロ主導でジュニア世代の大会やるわ」と言えば、「何?じゃあアマもジュニアの大会やるわ」「もしプロ側の大会に出たヤツはアマの大会には出させないからな」とバッチバチの戦いに発展するような具合。オリンピックを目指すのか、プロでチャンピオンを目指すのか、ジュニア年代で将来の二択を突きつけるような状態となっています。

↓勝負は拳でつけるんじゃない、政治力でつけるんだ!

オリンピックに出たければ、アマにきなさい!

裏切り者はどうなるか、わかるよね!


このような政治力は、自身の足場固めにも遺憾なく発揮されています。まずもっとも大きな点は、日本ボクシング連盟という団体が「一般社団法人」であることです。多くのスポーツ団体が公益法人として活動するなか、アマボクシングは「一般社団法人」での活動をつづけています。

どこが違うかと言うと、公益法人になれば「公益性がある」と認められた事業に関して税制上の優遇を受けられます。たとえば、日本相撲協会で言えばあれだけ満員御礼の興行をつづけながらおさめる法人税は15万円ほどだと言います。それはもうメチャクチャに優遇されるのです。「公益」とつくと何となく立派そうだし、うっかり目指してしまいそうじゃないですか。

しかし、公益となることにはデメリットもあります。公益性が失われたとして認可を取り消されると、財産の一部を没収されたりしますし、何より「お上の監督下におかれる」というのが面倒です。現行法では最終的には行政庁である内閣府が公益法人を認定することになりますが、大相撲で揉めた際に貴乃花親方が内閣府に告発状を提出したのも、そういう背景があるからです。内閣府が怒れば公益認定が取り消されるから、告発の効果もあるだろう、という。

しかし、日本ボクシング連盟の場合は「一般社団法人」であり、登記さえすれば開設できるものです。叱りつける監督がそもそもいないのです。税制上の優遇がないと言っても、もともとアマボクシング興行で大儲けができるはずもなく、主だった収入は選手・関係者からの会費徴収と、スポーツ振興にまつわる助成金。会費収入は「非営利の活動をする法人」としての一定の基準を満たせば、法人税を免除されるものであり、何も面倒な首輪をつける意味などありません。日本ボクシング連盟に対して「上から怒ってくれるもっとエライ人」はいないのです。

唯一「外圧」の可能性があるとすれば、JOCあたりが怒って「日本ボクシング連盟の選手はオリンピックに派遣しない」とドヤしつけることでしょうが、それもまた難しい話。現状指摘されていることは一発で致命傷にいたるようなものではなく、「周りが勝手に忖度した」で押し切られるような話ばかり。ここでJOCがどちらかを斬りにくるのは、難しいでしょう。「揉め事は止めろ」とは言うでしょうが、「お前が悪い」を決めるのは困難です。ましてや、山根終身会長自身にとっては痛くも何ともない「五輪派遣停止」で選手を苦しめることなど。

↓ちなみに、この面白いイス画像については「岐阜県連に所属する敵が、パフォーマンスのためにワザと豪華なイスを置いた」と山根終身会長はおっしゃっています!
<めちゃめちゃ豪華なイス>


<インターハイの開会式で退陣要求をする岐阜県連の幹部>


<たまにパイプイスに座ることもあるぞ!>


基本、どこでも豪華なイスが置いてある!

でも、パイプイスを見たら即キレるわけではない!

僕だって「豪華なイスを用意しました」って言われたら、お礼言って座るわ!



そして、外だけでなく内部にもエライ人はいません。定款によれば、この法人の決定機関は「全正会員をもって構成される総会」です。総会で決議が通れば「会員の除名」を含めて、いかようにも敵を粛清することはできます。できますが、総会で会員を除名するには「総正会員の過半数が出席した会議で、3分の2を取る」という憲法改定並みの高いハードルが設けられています。「理事の解任」でも過半数が必要です。

その正会員というのは、「日本ボクシング連盟の理事および監事」「各都道府県連盟の代表」です。2016年度の事業報告を見ると正会員からの会費収入は312万円あり、正会員の年会費が4万円と定められていますので、人数は78名。もちろん役員はガッチリとイエスマンで固めているだろうことを想定すると(※自分自身もいるし、息子もいるぞ)、役員による28票+αは山根終身会長側にガッチリと終身固定されているでしょう。残る都道府県連の代表をほぼほぼ全員抑えないと、この体制を転覆させることはできません。が、そんなにガッチリ抑えられるはずもなく、現実問題として大半は抑えられていないはずです。

何故そう推察されるかと言うと、日本ボクシング連盟の総会は毎年5月に開催されると定められているからです。会長のクビを獲れる可能性がある会議は、ついこないだ終わったばかりであり、そこで獲れていないということは、必要な人数は集まっていないということです。再興する会の算段としては、総会で各都道府県に訴え、メディアを通じて拡散し、「正会員の票」を集めようということなのでしょう。

しかし、再興する会の公式サイトには「退会要求書を送ってください!(リマインド)」の記事が上がっています。一向に陣営に加わらない武将に催促の手紙を出すような動きは、票数が足りないことの何よりの証。「臨時総会の開催を請求する」には「総正会員の議決権の5分の1以上」が必要とされていますので、現時点で集まっている数は15〜20票くらいなのではないでしょうか。5分の1には届くことが見えたので、「8月7日まで募集受付、8月8日に記者会見」というスケジュールを組んで、臨時総会の開催を請求する……そんな見込みなのかなと。

↓最初は「6月24日までに退会要求書を提出してね!」って言ったけど、特別に期間を延長して8月7日まで受け付けることにしたよ!

特別だよ!

特別に募集期間延長したよ!

やったね!出し忘れてた人も安心!



先ほどの終身会長の「3000人でも無視」発言はハッタリでも何でもなく、何人反対しようが数だけ集まっても終身会長をクビにする効力はないことを知っているのです。そういう体制を築いてきたのです。しっかりと審査をして、「これは正会員にしてもよい」という人物を承認してきた。そのなかでも際立つ人物を理事にしてきた。精鋭を切り崩して過半数あるいは3分の2を獲るには、相当な風が必要です。

ここからはお互いに証拠と反論の応酬になるのでしょうが、日大アメフト部のあの衝撃的なタックルと選手本人による秀でた会見をもってしても、真のトップまでは追及が届かなかったのが現実です。「もらった240万円を80万円ずつに分けた」とか「自分の身内の会社で用具を専売した」とか「奈良判定」とか「豪華なイスを出させた」程度で、あのときほど世間が「風」を吹かせることができるのかというと、正直難しいのではないかと思います。

あとは終身会長が出ると言っている生出演で、自ら逆風を吹かせるかどうか。「この人、やっぱ悪そう!」と世間がカチンときたところに、「再興する会」から判定操作を指示する音声データなどで畳みかけることができれば、「風」によって情勢はひっくり返るかもしれません。しかし、畳みかけることができなければ、事業報告のための臨時総会が開かれる来年2月頃までに「風」は飽きて止むでしょう。

なお、2016年度の事業報告から見る正会員以外の人数は、普通会員が1300名ほど、選手が3000人から4000人といったところです。このうちの333名が反旗を翻したそうですから、「何かあるんだろうな」とは思いますが、まだまだ権力の牙城は堅牢であるとも言えます。会見するする詐欺で半年くらい入院されたら、追い詰めるのは難しいかもしれませんね。ガードの上からいくら叩いても効かないみたいな感じで。早いラウンドで強烈な有効打が出ないと、このガードは崩せそうにありません!


第1ラウンドはどちらも決めてなく10-10!第2ラウンドの猛攻に期待!