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12:00
仏像を作る人の気持ちがわかりました!

昨夜、僕は絵を描いていました。今日から始まるコミケに参加するため…ではありません。羽生結弦氏の絵を描いていたのです、柄にもなく。「やっぱりコミケだな?」「ついにコイツ、自給自足し始めたか」「共演者はハビエルですか?プルシェンコですか?それともブライアン・オーサーですか?」などと改めての疑惑が持ち上がるかもしれませんが、もちろんコミケ出展のためではありません。

ツイッター上にて「#羽生結弦の絵描くの下手くそ選手権」なるタグで羽生氏のイラストを投稿する動きがプチ盛り上がりを見せていたので参加してみたのです。流れてくるイラストの下手くそさ加減……他人様の絵にどうこう言えるような腕前ではもちろんないのですが、まぁ率直に言ってエブリバディ下手くそではあったと思います。コミケで売れない部類のヤツばかりが流れていました。ダメダメでした。

しかし、すごく気楽でもありました。とかく何のジャンルでも熱量が高まるごとにヒエラルキーというものが生まれ、投じた時間でマウントを取る古参的な人や、知識量でマウントを取るオタク的な人、声の大きさと来店回数でマウントを取るコールリーダー的な人が現れるもの。もちろんこうしたイラストを描くという行為においても、巧みな絵師の絵ハガキのようなイラストを見ては、自然と自分を下に置いてしまうような気持ちは避けられません。「みんなうまいなー」の裏には「自分下手だなー」があるのです。

そんな気持ちを「下手くそ選手権」のタグをつけることで反転させることができる。もともとは羽生氏の仙台パレードで一瞬の撮影チャンスを逃した人たちの無念を、ポジティブに解消するためのタグであったものが、今度は自然と下に置いてしまっていた気持ちを堂々と外に出す作用となってリニューアルされた。発明だなと思いました。どんなものにでも「下手くそ選手権」とつければ、恥ずかしいとか、程度が低いとか考えずに、自分の気持ちを外に出せるのですから。まさに「愛があれば大丈夫」の精神で。

↓ということで、僕も参加してみましたよ!見てわかるように、平昌五輪からフリープログラム「SEIMEI」の開始ポーズです!見てわかると思いますけど!
1

声:「表情がすごくいいですね!」
声:「お上手です!」
声:「内面を感じられます」
声:「不思議と似ています」
声:「どことなくちゃんと結弦くん」
声:「私には結弦さんにみえます!」
声:「羽生くんの気迫感じます!」
声:「羽生味有ります!!」
声:「特徴をしっかり捉えていて◎」
声:「TOPゆづオタ」

ひえー、まるでインスタのような温かさ!

罵倒のないインターネットは実在していた!


↓自分のなかでまだやれると思ったので、つづけざまに二度参加してみましたよ!見てわかると思いますが、平昌五輪から「演技に臨む前のコーチとの会話」です!見てわかると思いますけど、右が羽生氏です!

3

声:「感じ出てて凄い!」
声:「傑作なのでは?」
声:「この絵欲しいです!」
声:「う、うまい!」
声:「可愛い」
声:「そっくり〜〜」
声:「これ好きwww」
声:「初回の作品の方が旨味がある気がします!」
声:「先程のピカソかと思わせる方の絵が良いな!」

あれ、何か頑張ったわりに最後のほう微妙だな…。

そうか、下手くそ選手権だから頑張っちゃダメなのか…。

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いつもなら絵ハガキのような美麗イラストが並んでいるタイムラインは、こんな感じの下手くそ画像で埋め尽くされていました。他人様の絵を紹介するのは避けますが、言っちゃなんですが僕はそこそこ上手いと客観的に思えるくらい、そこは下手くそ空間でした。大画伯様の集いでした。しかし、今まで溜めこんできた愛があふれ出てきているようで、とても好感を抱きました。自己実現のためでもマウントのためでもなく、描かずにはいられない衝動と、描く楽しみに満たされていました。だから僕も思わず参加してみたくなったのです。

「そうか、みんな渇いとるんやな…」

お籠りでの新プログラム作成に臨む御本尊が姿を見せないことに耐えかねるように、ついに自分で描き始めた。僕は仏像とか仏画が生まれた理由がようやくわかったような気がします。本人の姿がないなら描くしかないじゃない的な、会えない人を想って絵を描く的な気持ちが。別ジャンルに置き換えると「今日の試合にはイニエスタ出ないのか…」「寂しいよ…」「そうだ、イニエスタの絵を描こう!」という、率直に言ってレッツゴークレイジーな発想という感じもありますが、これもまたよいものだなと思います。何もナイからこそ、小さな喜びやありがたみを感じられる、適度な渇きがあって。

イベントで見るお衣装とマネキンの腰回りの細さに震える人々。展覧会でグッズを端から端まで買う人々。自分で描いた絵で自給自足する人々。乾いたノドにはぬるい水道水さえも最高の美味さとなるように、本人と周辺が「出ないときは出ない」を徹底していることで、飽きずに、上手に楽しむことができる効果が生まれているのかなと思います。もしも毎日が怒涛の新着情報の日々であったなら、下手くそな自作イラストを愛でるなんて発明は生まれなかったでしょう。適度な距離感があればこそ、新しい発想も生まれる。好循環だなと思います。

界隈の方はご存じでしょうが、そうでない方にご説明をしますと、今まさに「この辺」の人は眠れぬ日々を過ごしています。昨年なら8月8日から始まっていた、お籠り終了の報せ…羽生氏の練習公開日がそろそろあるはずなのです。その日、注目の新プログラムについて何らかの発表がされ、今季の展望であったり意気込みが明かされる「始まりの日」がもうすぐそこまできているはずなのです。

その日を待って、ネットにかじりつきながら、カナダ時間で待機している人たちが、ああいうイラストを描いて時間を埋めていたりします。「私、待ってるだけのオトコじゃないから!」からの「描けましたー!」には、肩を抱き締めながら「大人しく待ってろ」もしくは「寝ろ」と言うべきなのかもしれませんが、そういう人がたくさんいるのです。

↓カナダ時間で寝ずの番をつづける人に向けて、羽生結弦ほぼ公式インスタグラムからは「中国に行くよ!」という優しいお知らせが!

Off to China. #quicktrip #aircanada #beijing #figureskating #beijing2022

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声:「オーサーは中国に行くのか」
声:「ということは練習公開はオーサーが帰国するまでないな」
声:「今日は寝られるぞ!」

どんな使い方だwwwww

コーチのインスタで本人のスケジュールを発表するという新しいインターネットwwwww

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こうした「待ち」も、とても充実したよい時間だと思います。待っている間にこそ楽しみは膨らみます。いや、自分の楽しみを自分が膨らませることができる時間は、「待ち」の間だけです。待ってないときは受け止めるのに忙しいわけですから。待っているときだけ、受け止めたものをこねくり回せるのですから。ファンと本人の適度な距離感が生み出したムーブメント、「下手くそ」すらも愛を表現せずにはいられなくなるような「待ち」の時間があることが、とても幸せなことのように僕には思えるのです。ぜひほかのジャンルでもご活用いただけるとよいと思います。特に「待ち」の長いジャンルには。

ちょっとでも忙しかったら絶対イラスト描いてないですからね。下手くそなんだから。

新しいことにチャレンジする機会、新鮮でした。

いい「待ち」を過ごせたと思います!


でも、仙台の七夕も終わったので、そろそろ本人降臨をお待ちしています!