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12:00
あなたは星、私たちは夜!

今年もこの季節がやってまいりました。24時間テレビ恒例の羽生結弦氏アイスショーの時間が。今回で5年連続5回目の登場となる羽生氏のアイスショーは、もはや24時間テレビの看板と言ってもいい存在です。羽生氏、マラソン、サライ。2019年の企画書にも「ここで羽生ショーで…」「ここで丸山桂里奈の1000キロマラソンがゴールで…」「ここで引き揚げた光進丸の残骸をバックにサライ…」と書き込まれていることでしょう。

「ひとりで滑っているんじゃない。何千人、何万人の方々の想いが自分の身体を動かしている」

そんなインタビューの言葉から始まったアイスショー企画は、平昌後の長い「お礼参り」の余韻のよう。この半年、ずっと羽生氏はお礼を言うためのサーキットをつづけていたように思います。故郷・仙台でのパレードであったり、全国各都市をめぐった羽生結弦展であったり、できる範囲で全力の滑りを見せたアイスショー公演であったり、学校へのサプライズメッセージであったり、なるべく顔を見せ、言葉を発する機会を設けてきたように感じます。

出会った人々の想いが自分を動かし、出会った人々の願いが自分の身体を通じて叶っていく。自分はまるで触媒のように、依代のように、人々の想いによって動かされている。それは「欲」という個人の理由や、「才能」や「頑張り」という個人の努力だけでは届かない領域での戦いを知る人ならではの感覚なのかもしれません。滑っているのではなく滑らせてもらっている、そんな感謝の気持ち、感謝のエネルギーが自身の身体を動かしてきたからこそ、このお礼参りにも熱心に臨むのでしょう。

↓それはたとえばモザイクアートのように、たくさんの人々の想いが集まってようやく「羽生結弦」ができあがるような気持ち!

数が増えれば増えるほど、解像度が上がっていくモザイクアート!

想いが集まれば集まるほど、理想に近づいていく羽生結弦氏!



今回の企画で採り上げたのは、故郷仙台でスケートを学ぶ子どもたちと、ソチ五輪後に羽生氏が訪問していた福島県楢葉町の人々。羽生氏と縁のありそうな人たちを番組側であらかじめ選んでいた感じでしょうか。平昌五輪の男子フリーのその時間にもカメラは人々に密着し、まさに金メダルの瞬間を見守る姿をも記録していました。お茶に金粉を浮かべて羽生氏を見守る姿には、「ワシらと一緒やん……」という「わかりみ」しかありません。緊張と笑顔、そして涙。まるで自分のことのように喜んでいる。それはスポーツのひとつの素晴らしさかもしれません。共感であったり、感情移入であったり、我が事として喜べる素晴らしさがスポーツにはあります。映画の主人公が勝とうが負けようが所詮は他人事ですが、スポーツには我が事として感じられる何かがあります。

その喜びが、前を向くチカラとなって人々を支えている。

今回の企画にあたり、羽生氏が楢葉町の裁縫教室の人々のもとをサプライズ再訪問したとき、楢葉町の人々は3年前の訪問時以上の笑顔で迎えてくれていました。サプライズ訪問だという話でしたが、机には何故かスケートの雑誌が置いてあるという準備万端ぶり。おそらくは「今日くる」とは知らなかったものの、「明日自分たちが見に行く」ことは知っていたのでしょう。ショーに出演する子どもたち用にシュシュも作っていたそうですし。

それはもう裁縫にも身が入ったであろう…自分自身の人生にも熱がこもる時間を過ごしてもらえたに違いありません。誰かのために、何かのために頑張ってこそやりがいというものも生まれます。羽生氏を通じてそんな時間を過ごすことができたのだとしたら、とても喜ばしく、とても共感できます。まさに「ワシらと一緒やん」の「わかりみ」です。

↓ちなみに、裁縫教室では「ゆず太郎」なる公式キャラクターのぬいぐるみを熱心に制作していました!

羽生氏には被せてないですから!

羽生氏が生まれる前からいるヤツですから!

偶然、偶然、偶然です!

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迎えたアイスショー本番。「寒いから上着を」という羽生氏の気遣いアドバイスによって、観覧席の人々はまるで冬の出で立ちでアイスショーを見守ります。仙台でスケートを頑張る子どもたちの演技、そこに加わったミッキー・ミニー・ドナルド・グーフィーらディズニーキャラクターたちの演技には、ほっこりとした笑顔がこぼれます。

そして待望の羽生氏登場にはエンタメの王様・ミッキーたちにも「ハハッ」という笑顔が宿ります(※最初から笑顔で製作した着ぐるみではあるが…)。ミート・ミッキーでは何時間客が並ぼうが決して外に出てこない受け一辺倒のミッキーが、羽生氏のリンクインでは自ら手を差し出してハイタッチの構え。ミニーもミッキーのことを忘れて羽生氏に艶っぽい視線を送っています。これぞ主役という存在感です。

演目はノッテ・ステラータ、星降る夜。震災による停電のなかでも輝いていた希望の光を、祈りをこめて滑ります。リンクの傍らには子どもたち、楢葉町の人々、そして番組がしっかりと置いておいたプーさんのぬいぐるみ。いつにも増して美しいノッテ・ステラータは、ブレードが氷を削る音さえも演技の一部であるかのように、厳かに演じられます。

ツイズルの驚くべき速さと長さ。レイバックイナバウアーのゆったりと長く保たれた姿勢。コンビネーションスピンでシット姿勢から大きく高く挙げる両腕は、まるで飛び立つ瞬間の白鳥の翼のよう。試合用のプログラムではなかなか見られないシット姿勢でのツイズルや、ディレイドアクセルなどノッテ・ステラータならではの魅力が、いつも以上に表現されています。

演技終盤、世界一のトリプルアクセルからツイズルへと速やかにつなぐジャンプや、キャメル姿勢からねじり下ろすようにして繰り出す柔軟なコンビネーションスピン。ごく限られた人々しかいないリンクでの演技であることが、普段の試合では拍手でかき消される氷を削る音の余韻までしっかりと届けてくれます。

「あぁ、この音も含めてこの演技は完成するんだな」と改めて気づかされるような、静寂を表現する音。蛙飛び込む水の音がむしろ静寂を引き立たせるように、氷を削る音が星空の静寂を浮き上がらせ、飛び散った氷の粒が星のひとつひとつになる。カットの切り替えや角度など、24時間テレビならではの事情によって遠目になる箇所はあるものの、「羽生氏比」でも見事な出来栄えのノッテ・ステラータだったと思います。気持ちがこもっていました!

↓ありがとう羽生氏、今年もいい演技を見せてくれて!

一般には開放されない舞台だったからこその静寂の表現!

テレビで見守るのもイイものだなと思いました!

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素晴らしい演技を見せてくれた羽生氏に、楢葉町の人々から嬉しい言葉……プレゼントが贈られました。「6年間の避難生活を思い出しながら、『素敵な日もあったなぁ』と思いながら、衣装に重ね合わせて見てました」という言葉は、きっと羽生氏を喜ばせたことでしょう。崩れた家や失った人を取り戻すチカラはスケートにはないけれど、辛い日々のなかに光を灯すことはできる。ただただ衣食住が事足りただけでは得られない、「素敵な日」をスケートは生み出すことができる。

それは自身が何をもってあの震災に立ち向かうべきか、迷いながら進んできた羽生氏にとって、歩んだ道が間違っていなかったことを裏打ちしてくれるような言葉だったろうと思います。ガレキをどかすのとは別のやり方で、自分も何かをできたのだと、改めて教えてもらえたのですから。「こちらこそありがとうございます」の気持ちだったのではないか、そんな風に思います。

今回の番組テーマは「人生を変えてくれた人」でしたが、羽生氏はそういう存在となって人々を支えてきました。羽生氏の活躍を我が事として感じ、その喜びによって人生を少しでも前向きに変えられた人々がいます。と同時に、羽生氏にとっても、そうした人々が「人生を変えてくれた人」だったのだろうと今さらながらに思います。

自分が何故スケートを滑るのか、キレイに滑れた、新しい技ができたという自分自身の喜びだけでなく、滑る意味を悟らせてくれたのは、喜んでくれる人の存在や、自分のスケートを見て前向きになってくれた人々の存在だったと思うのです。自分がスケートで頑張ることは、自分だけがいい想いをするということでも厳しい被災の現場から逃げたという話でもなく、意味のあることだったのだと実感させてくれた。「やりがい」を感じさせてくれた。

羽生氏が演じたノッテ・ステラータは暗い夜を照らす満天の星を表現するものです。その光が誰かの夜を照らすものです。星よ照らしてくれてありがとう、と暗い夜を過ごす誰かが感謝するものです。しかし、星も暗い夜を過ごす誰かがいなければ、自分の光には気づかないのです。そこに誰かがいて、自分の光で照らされて、薄く小さく照り返しの光が生まれる。そのときようやく星は「あ、僕は光っていたんだ」と理解できるはずです。夜がなければ星は自分の光に気づかない。それはまさに、静寂がなければ気づかない音のように、満ち足りない世界にも意味があるのだという気づきです。

そうやって、互いが互いの人生を変えていく。

誰にとってもそうなのでしょうが、そのことに気づけた人は、とても幸せな人生だなと思います。

夜に過ごした人も、自分の光に気づいた人も。

僕は夜の側からこのショーを見守り、改めてまた「ありがとう」を届けたくなる、そんな素敵な時間でした。

ありがとう羽生氏、来年もまた期待しています!




羽生氏の大きな光をピンク色に反射する夜でありたい…僕もそう思います!