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08:00
羽生結弦氏、2回転問題を鮮やかに解決!

昼はCSフジテレビで西日本選手権、夜はテレビ朝日でGPシリーズ・フィンランド大会、そして深夜にはBSテレビ朝日でフィンランド大会のエキシビション。フィギュアスケートが主要3電波をジャックするフィギュアデー。そのなかで一番注目度が高そうなとこだけ録画でやるという中継の姿勢には「意味がわからん…」という不満もあふれます。あふれますが、最終的には超気持ちいい!僕は今まさにその気持ちよさにひたりながら、ポテロングとスパークリングワインで祝杯をあげています。

羽生結弦氏が想いをこめて作り上げた新プログラム「Origin」。敬愛するエフゲニー・プルシェンコ氏の代表作「ニジンスキーに捧ぐ」と同じ楽曲を使用した新プログラムは、羽生氏が追いかけてきた夢そのものです。「僕もいつかプルシェンコさんみたいに滑りたい!」と憧れた少年が、今はその伝説を継ぐ者となってリンクにいる。その充実感やデュフフ感は外野にうかがい知れるものではありません。あえて言うならば「絶頂」、すんんんんんごい楽しいんだろうなぁ、ただそう察するばかりです。

↓「めちゃくちゃ気合い入ってる人のハロウィン」みたいですが、世界一のアスリートが新シーズンに臨む用具制作の感想です!

ちゃんと「自分のために」やってる!

羽生少年が「ぼくのかんがえたさいこうにたのしいすけーと」をやっている!

イベント前にウキウキしているコスプレ兄さんではないです!

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直前の公式練習に登場した羽生氏は、熱唱していました。僕がカラオケボックスでやる以上の熱唱を、リンクサイドでやっています。集中しています。気迫がみなぎっています。黒と金を基調としたプルシェンコカラーの衣装が、羽生氏の目のように強く輝いています。いよいよ「Origin」をやるのだ、そして一日遅れだけどプル様に誕プレとしてコレを捧げるのだという純粋な自分のための演技。誰の期待を背負っているとか、誰にお返しするとかではなく、やりたいようにやらせていただく所存。解き放たれています。自由な翼で羽ばたいています。笑顔がいっぱいです。

↓これだけ熱唱されたら読唇術するまでもないって感じに!

ていうか、声出てるんじゃないの、これだけクチ開けたらwww

松岡修造さんの小声の気遣い、無意味やんwww




後半グループ1番手は同じクラブで研鑽を積む同僚のチャ・ジュンファン。4回転サルコウでの転倒などもあって得点は伸びず。テレ朝中継の「この選手とこの選手は見なくてええやろ」という判断によって2選手ぶんほどの時間が消し飛ばされたのち、中国のボーヤン・ジンも3度の転倒で精彩を欠く演技。少し壁に近づきすぎてしまうようなところもあり、ちょっと合わない日だったかもしれません。ただ、金のブレードはとってもオシャレ。姓が金だけに金、「魅せる」という部分では大きく伸ばしてきている、そんな試合ぶりでした。

そして登場した羽生氏。勝ち負けという意味では、ショートを終えた時点で大勢は決まっています。2位に13点差をつけ、演技構成でも上回るという状況です。コンボを丸ごと吹っ飛ばすくらいの大過失があっても、まだ横並びまでいかないだろうくらいに余裕があります。しかし、この演技は「捧げもの」。前日は「プル様の誕生日」でネットニュースをにぎわせたトッププルオタが「推しの生誕祭」の踊りを担当するのです。我が身に置き換えれば「仕事では絶対に出せないやる気」が出まくっているはず。美しく、かつ勝って、オリジナルを加える。やりたいことは無限大です。

嵐のなかから鳥、あるいは堕天使が飛び立つような滑り出し。ドラの音に合わせて跳ぶ4回転ループは、着氷でやや乱れ、回転不足の判定もあって出来栄えではマイナスの評価に。しかし、つづく4回転サルコウは前日のショートで見せたものに近い美しい出来栄え。嵐のなかの静寂のように、ポツリポツリと繰り出す単独ジャンプが、静かに、じょじょに、期待を高ぶらせていきます。

シットツイズルからではなくフライングから入るように変更され、構成にも手が加わった足換えのコンビネーションスピン。プル様に捧ぐステップ。気配すらなくスッと跳ぶトリプルループ。オータムクラシックでは転倒した4回転トゥループも、この日は粘ってこらえて「捧げもの」に味噌はつけません。

そして、この演技のハイライトとなる「4T+3A+SEQ」へ。4回転トゥループのあとに、蹴りを入れずにつづけるトリプルアクセル。そこに加速という概念はありません。あらかじめもっていたスピードと勢いをジャンプと着氷でまったく失わず、さらにアクセルへのつなぎのために方向転換する場面でもそれを殺さずにつなげていく。羽生氏の上手さが凝縮されています。跳ぶように滑り、一足で氷に大きなチカラを加える。誰にでもできることではありません。全員転倒したリンクコンディションでも転ばない、それは圧倒的な基礎の土台の上に技が乗っていればこそ。羽生氏は滑るのが上手い。だからこそできる超絶技巧。

そんな超絶技巧によって実現された技でありながら、得点計算で言えば、このコンボはシークエンス扱いとなり、それぞれを単独で実施した場合の合計よりも低い「80%」の掛け率となる組み合わせです。ココだけを見れば「損」とも言えます。「80%の簡単さでできるものならやってみろ!」と言いたいところですが、それはあらかじめ決まっているルールですから、仕方ありません。

しかし、それでもあえてこれをやることにこそ「Origin」の「捧げもの」としての意味があります。

ひとつはプルシェンコさんのように、より高みを目指す意志を継ぐ者としての誓い。ルール改定があろうが、それによって高難度ジャンプを実施することへのデメリットが生じようが、「より高みを目指す者」として4回転に挑みつづけたプルシェンコさんのように、自分もできうる最高のことをやりつづける。そして新世界を拓く。「これが現時点での僕の最高の技だ」と言えるものを入れてこそ、このプログラムは「プルシェンコに捧ぐ」と言えるものとなります。

そしてもうひとつ、捧げものだからこそ、負けを受け入れるわけにはいかない。そのための「セカンドジャンプでのトリプルアクセル」。「損して得とれ」じゃありませんが、この技は勝利へ近づくためのアップデートでもあります。理想を追うために「損」を許容したわけではないのです。

羽生氏は「ループ、サルコウ、トゥループ」の3種類の4回転を今季の演技に組み入れています。4回転のルッツも技としては持っていますが、それは昨季の痛恨の怪我を生んだ技でもあり、少し散歩に行ってもらっているところ。4回転3種類での技構成を考えたとき、普通にやると4回転が単独3度・コンボ1度で「4Lo、4S、4T、4T+3T」などとなり、残る3本をトリプルアクセルを2回やる「3A、3A+2T、3Lz+2T」などの構成となるところ。4回転とトリプルアクセルを繰り返しているので、セカンドジャンプにはどうしても2回転以下のジャンプが入ってきます。

セカンドジャンプにトリプルループを跳んでみたり、今季からオイラーと呼ぶことになったハーフループを挟んで「3A+1Eu+3S」などとして2回転以下のジャンプを減らすことは可能ですが、それも机上の計算ほど簡単なことではありません。「男子の身体をトリプルループで跳ばす」ことのできる・できないという問題もあります。セカンドジャンプにトリプルループをつけておくと、4回転のループが抜けて3回転となったときにリカバリーがまた複雑となり、トゥループでも常に発生する「計算問題」がもうひとつ増えるという難点もあります。それはなかなか大変なことです。

結果として、五輪でもそうでしたし、この大会でも羽生氏以外の全選手が「意図的な2回転」をプログラムに組み入れています。3種類の4回転を組み入れているボーヤン・ジンでも、2Tを入れないとコンボを埋められません。それは「誰にとっても普通にそう」である現象です。普通にやれば「コンボにするために仕方なく、簡単な2回転を入れざるを得ない」ということになってしまうわけです。

そこに羽生氏は解決策を見い出した。それが「シークエンスでのトリプルアクセル」という超絶ド変態技巧です。セカンドジャンプにトリプルアクセルを持ってくるという異次元の発想と誰も真似のできないド変態技巧があることによって、羽生氏のセカンドジャンプは「3T、オイラーを挟んだ3S、シークエンスでの3A」の3本となりました。

コンボのことだけを考えたとき「4T+3T、3A+2T、3A+1Eu+3S」という標準的な構成と、今回フィンランド大会で実施した「4T+3A+SEQ、3F+3T、3A+1Eu+3S」では基礎点で言えば後者の方が「上」です。前者は「4T+3T=13.70点、3A+2T=9.30点、3A+1Eu+3S=12.80点」で合計が35.80点。後者は「4T+3A+SEQ=14.00点、3F+3T=9.50点、3A+1Eu+3S=12.80点」で合計が36.30点。4Tと3Aで20%ずつを失っても損は「3.50点」であり、その損よりも「2T(1.30点)を跳ばず、3回転フリップ(5.30点)を跳ぶ」ことでの得である「4.00点」のほうが大きい。

要するに「4T+3A+SEQ」は憧れの人の意志を継ぐ「理想」でもあり、点数計算上でも伸ばすことができる「勝利」でもあるのです。

理想と勝利を両方鮮やかに実現してみせた。

これぞ誰も真似できないアクセルキングの技でしょう。

山場を超えての演技終盤は、王者が見せた新時代の新演技に対する祝祭のよう。ひとつの動作ごとに歓声が上がり、拍手が起こり、待ち切れずに立ち上がる世界の観衆たち。五輪を終えたあとのシーズンでまだ貴方は高みを目指すのか。しかも楽しみながら。本人の自己評価としてはステップでのレベル3や、回転不足を指摘される場面もあり「あとちょっと」というところでしょうが、そのちょっとを目指す姿を見られることがなおうれしくなってくる素晴らしい演技でした!

↓フリー190.43点は新ルールでの世界最高記録!ショートと合わせて総合297.12点ももちろん世界最高記録!


まだまだ伸びしろはある!

明らかなロスやミスがある!

つまりフリーでの200点と総合300点は射程圏内!

ルールが変わっても、羽生結弦は変わらない!




キス&クライで「スパシーバ、ジェーニャさん」とプルシェンコさんへの感謝を述べた羽生氏。まだまだ発展途上の演技ではありますが、捧げものに「世界最高」ののし紙がつけられました。胸を張って捧げられるものになりました。自身初のGPシリーズ初戦勝利という点も含めて、喜べる大会となったに違いありません。もっと練習して、もっと磨き上げて、最高の「Origin」を作り上げてほしいものです!

チェコのブレジナが今季の好調さを維持した演技で2位表彰台に入り、歴史的な大会は締めくくられました。GPシリーズとしては初のフィンランド開催となった今大会は、多くの歴史が刻まれ、たくさんの好演技が生まれました。いい大会だったのではないでしょうか。羽生氏にとっても縁起のいい大会となりそうですし、来季以降の開催にも期待ですね!

↓表彰台にもアクセルジャンプで乗る王者!公式からの情報大量投下にも感謝です!

ライブストリームも見せてくれるし!

インスタのストーリーズはアホほど多いし!

公式も「楽しんで」やってるのがいいですね!


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僕は今季の新ルール、よかったなと思います。ジャッジのバラつきや、疑問はたくさんありますが、新ルールがあったことで羽生氏を含めた選手たちの意欲は増しているなと思います。五輪を終えたあと何にモチベーションを見い出すのか、それは全競技通じて見られる悩みです。負けた者は次こそはという雪辱に燃えるのでしょうが、勝った者・満足した者は燃え尽きてしまいがちです。

しかし、ガラリとルールが変わったことで難しさもあると同時に新鮮な意欲というものもわいてきます。遊びつくしたゲームでも、HD画質でリメイク版が出たら急にモチベ上がるみたいな感じで、リセットされたことでフレッシュに競技に臨むことができているのではないかと思うのです。ルールを攻略する喜び、もう一度ランキングに名前を載せていく喜び、新たな気持ちで「また始められる」。

試合ごとに「祝・世界最高記録更新!」ってワイン空けられるなんて最高じゃないですか!

全部を初めての気持ちで迎えられるなんて楽しいじゃないですか!

新ルールでの初の五輪王者が誰になるのか、考えたくなるじゃないですか!

「祝・世界最高記録樹立」ですでに一本空けているので、僕はとってもゴキゲンなのです!


試合ごとに「4S+3A+SEQ」系の世界初披露をやってくれてもOKです!