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08:00
これが貴乃花のシュモー道!

東方より、横綱・貴乃花土俵入りであります。横綱、貴乃花。露払い、横綱・若乃花…は卒兄につき、横綱・北の湖…は逝去につき、大関・貴ノ浪…も逝去につき、元フジテレビアナウンサー・河野景子…は卒婚につき、ナシ。太刀持ち、益荒雄…は卒門につき、寺尾…も卒門につき、貴闘力…は破門につき、ナシ。先導は、辻本公俊祭主代行であります。

26日に突如として離婚が明かされた元貴乃花親方。世間からは「あぁやっぱり」「正直、無理だと思う」「相撲部屋にこもっててくれるならまだしも、一日中アレが家にいるのかと思ったら付き合い切れない」などの声もあがるなか、あっけなく景子さんとの結婚は終わりを迎えました。親方曰く「卒婚」。景子さんに自分の道を歩んでいってほしいという話です。

もしかしたらこれは少年漫画でよくある「意識を敵に乗っ取られて殺戮マシーンと化した主人公の仲間が、主人公の呼びかけによって一瞬だけ自我を取り戻し、『俺がこの身体を抑えている間に、俺を討て!』『で、できない、俺にはできない!』『何をためらっている!今しかチャンスはないぞ!』『だが、俺には…』『も、もう抑えきれん…頼む…俺を親友のまま死なせてくれ…う…ガ…ガ…』『うあああああああああ!ザシュッ』『ア…リ…ガ…ト…う』みたいな感じで主人公によって討たれる」という場面よろしく、元貴乃花親方なりの優しさだったのかもしれません。自分と一緒にいても辛かろう、自由におなりという。それが本当の優しさなのかどうかはわかりませんが、それは夫婦が決めることです。

↓これで景子さんは「元元貴乃花親方夫人の元フジテレビアナウンサー河野景子さん」になるのか…!

貴乃花の四股名利用に相撲協会が難癖つけていたら、「元花田光司元親方(元貴乃花)夫人」になるところだった…!

何もなくなったけれど、名前だけでも残ってよかった…!


貴乃花親方(※面倒なので敬称としての架空の役職名までを通名扱いとします/デーモン小暮閣下みたいなもの)はこの報道が世間に衝撃を与えたことを知り、自ら翌朝のワイドショーにご出演。あの元日本ボクシング連盟終身名誉会長である終身漢・山根も「生出演するならコレやな」と選んだことで知られる日本テレビ「スッキリ」にて、離婚のこと、貴景勝優勝のことなどを誠実に、淡々と語りました。親方本人の言葉が聞けたことで、世間もスッキリしたに違いありません。

ただ、そのなかで親方が残した言葉尻が、またも世間のおもちゃとして扱われています。親方曰く「相撲はヘブライ語のシュモー」。この発言をもって「ヤベェやつだぞ…」「コレを今まで飼っていた相撲協会ってあったかい組織だなぁ」「ムー愛読者かよ」などと親方に対する風当たりは一層強まっています。これは僕も太刀持ちから刀をひったくって親方を擁護しにいかねばなりません。

まず、その話にいたる前段において、親方と各出演者とのやり取りは、しっかりと行なわれており、意思疎通の問題などは一切ありませんでした。「…などと支離滅裂なことを申しており」的な前後不覚の人物ではないのです。表現に癖があるため、ときおり伝わりづらい部分はありますが、ちゃんと会話のキャッチボールができる人です(※こっちが捕れないだけで、親方はこちらのボールをちゃんとキャッチしてから投げ返してくる)。

「相撲はヘブライ語」についても、共演者から「著書でもどうですか」と持ちかけられたところの返しで、自分の人生には本にするほどの深みはないが、相撲というものには古代からつづく伝統があり文化があり思想があるので、そういったことを広めていく活動をしたい…という趣旨の話をするとっかかりとして、「相撲は古い時代にはほかの国、ほかの世界ともつながっていたんですよ」ということの傍証として「諸説のひとつ」を挙げたにすぎません。

そりゃあ「相撲はヘブライ語!」「相撲はヘブライ語!」「相撲はヘブライ語!」と連呼でもしながら住宅情報サイトSUUMOのメロディで「シュモシュモシュモシュモ相撲はシュモー」とか白目で歌っていたなら、ヤベーやつ説も真実味を増すかもしれませんが、親方の話にオカシイところはひとつもありません。採り上げた諸説のひとつがドマイナーだった、というだけ。

↓前後のやり取りを含めて聞けば、親方の言いたいことはわかるはず!
共演者:「語れない歴史や相撲道で一冊できませんか?」

親方:「まぁ、そうですね…本にできる内容の人生を歩んでいたらよかったんですけどね」

親方:「ただ、相撲って当て字で、もともと日本語じゃないんですね」

親方:「すごくふるーーーい世界でつながってるっていうのが、この日本国・大相撲にはあるので」

親方:「そんなところを子どもたちにわかる範囲で教えていきたいですね」

親方:「相撲はシュモーって言うんですね」

親方:「ヘブライ語ですね」

親方:「だから、ものすごくつながりが深いですね」

親方:「世界をまたにかけてのことですから」

親方:「世界の思想に役立てればいいなと思いますね」

親方が言いたいのは「私の人生は大したものじゃないけれど、相撲は奥深いものなんです」ということ、それだけです!

「オブラートに包んだ悪口」があるように、「目玉とかピラミッドとかヤベー模様の包装紙にくるまれた善意」だってあるはずです!



僕はあまり存じ上げないのですが、こうした説は「日ユ同祖論」などと言うそうです。日本人の祖先は古代ユダヤ人で、彼らが伝えた文化がうんたらかんたらみたいな話だそうです。学研の『ムー』とかに載ってる系の話と言えばわかるでしょうか。それ自体は都市伝説の類なのかなと思います。親方がどこかで読んだありがたい本とかに書いてあったりしたのでしょう。

相撲の語源については「すまふ(争う)」が転じたものであるとか諸説あるそうですが、「ヘブライ語wwww」と笑っている人のほぼほぼ全員が結局は「誰かの言っていたことを聞きかじった」に過ぎません。古事記から日本書紀から順番に文献をあたり、自分で「相撲」の発祥を探るなんてことほぼほぼ誰もしていないでしょう。誰かから聞いた話が「すまふ(争う)が転じた」なのか、「ヘブライ語のシュモー」なのかという差でしかないのです。

「ヘブライ語はないやろー」となんとなーく思うから笑っているだけで、「すまふ(争う)」だって腹落ちする話ではないでしょうに。その言葉、今ではまったくと言っていいほど使われていないわけですから。僕らは下賤なる世間の垢にまみれているから「ヘブライは嘘やろー」と直感的に思うというだけで、相撲に打ち込んできた親方が「嘘やろー」と思わなかったからといって、何の問題がありましょう。

↓「銀ブラ」の語源だって「銀座でブラジルコーヒーを飲むことだよ」という話を聞いたら、ヘーって思う人もいるでしょうに!

普通に考えたら「銀座をブラつく」以外なさそうな言葉でも、人間は面白そうな話に飛びつくものです!

親方が「相撲はシュモー」に飛びついたらダメなんですか?


さらに親方は四股の語源についても「土踏まずに4つの骨があるからシコ」とする自説を披露しました。これも諸説あるなかでは「強く恐ろしい」の意味を持つ「醜(しこ)」が語源であるとするものが広く知られているというだけで、有り体に言えば「四股の語源はよくわからん」のです。

よくわからんなかで、親方は極めてマイナーな「四骨」説を採用しているというだけのこと。親方がどこで四骨説を知ったのかはわかりませんが、これを否定しようとするならば古事記から日本書紀から順番に文献をあたって「しこ」の初出を見つけてこないといけないでしょう。面倒だからやらないと言うのなら、諸説のどれを親方が個人的に信じていたっていいじゃないですか。

↓有名スポーツ誌「Number」のサイトでも四骨説は採り上げられているんだぞ!

「四股って、四つの股と書きます。足の土踏まずが、二足歩行のバランスを司っていますが、その後ろのかかとの骨が1つ、それと土踏まずの前の親指の付け根の骨で2個。それが両足でかける2で、4つの股の四股なんです」

「ええっ、そうなんですか! 確かに何故四つの股なのかと思っていたんです」



グーグル検索で出てくる「四骨」説は親方本人が言っているヤツしかないが、Numberも採り上げているんだから諸説として扱っていいでしょう!

文句があるなら風土記でも何でも持ってこい!




親方は白黒をハッキリつける勝負の人であるだけなのです。諸説あるとか、醜足説が有力とか、グレーゾーンに留まってはいられない人なのです。諸説あると言っても、大概は自分のなかに「コレだろう」とピンとくる説があるもの。「まったくわからん」ということなら親方も「まったくわからん」と言うでしょうが、親方にもピンとくるものがあったのです。親方はシュモー説や四骨説にピンときたのです。

「諸説ありますが…」などと前置きしてから語れば、もう少し世間もマイルドに反応したかもしれません。テレビの情報バラエティでもアヤしい学説を紹介するとき「諸説あります」とか小さい文字で書いてますよね。言い訳がましく。しかし、世間の反論を恐れて「諸説ありますが」などと前置きをせず、自分が信じる「ピンときたもの」ひとつに不惜身命な男、それが「貴乃花」なのです。それが「貴乃花の生き様」なのです。

それはときに意固地で身勝手にも映るでしょう。不器用に過ぎるとは思います。ただ、それが貴乃花親方という人物なのだからしょうがないでしょう。孤高の親方は、そんな自分に寄り添えない人を無理に引き止めたり、巧みにとりなしたりはしません。曲がった筒に真っ直ぐな棒は入らないのです。それでもなお、その1本しかない棒を大事にしてほしかった。「曲がれ」と念じるのではなく、真っ直ぐなまま筒におさめる術を用意してほしかった。それぐらい大事にされてもいい棒だったと思うのです。「貴乃花」は。

↓企業のリリースのように「現時点で決断していることは何もございません」とか言えるオトナだったら、貴乃花はもっと生きやすかっただろうけれど!

生きやすければ愛されるというわけではないが!

もし親方が野球選手ならば、FA宣言と同時に「阪神!」って言っちゃって「まだ何の話もしてないのに向こうから名前出してきたぞオイ」って相手球団を困惑させたんだろうな…。

生きづらい人だ…。


↓このニュースにしても親方がトチ狂って自衛隊のクルマを乗り回したわけではない!


イベントで促されて自衛隊車両に乗った親方が、それを実際に運転してはいけないと知らなかっただけのことでしょうが!

「土足で土俵に上がったら怒られた」みたいな話で、「ダメだとは思いませんでした」というだけのこと!

「頭のてっぺんに旭日旗立てて勝手に戦車乗り回してるヤベーやつ」みたいなイメージで見ないでください!




『ムー』っぽい話を信じている人、まぁまぁいるでしょう。青森には何故かキリストの墓がありますし、源義経は大陸に渡ってジンギスカンになった説とか、アポロは月に行ってない説とか、貴景勝は「貴乃花、景子、勝氏から一文字ずつ取った」とか、アヤしい話はどこにでもあるものです。親方はそうしたアヤしい話を分け隔てすることなく聞き、態度保留などせず、ピンときたひとつに全力になってしまうだけのこと。ドマイナーなところにピンときているから目立つだけで、何らおかしいところはありません。

今の親方はただ、自分が身体で学んだ相撲というものを、広く子どもたちに知ってもらいたいと願う、ひとりの男なのです。

どうぞ、これまで見知った「貴乃花」をこれからも愛してあげてください。

親方が「相撲はヘブライ語のシュモー」説を適当に聞き流せない人であるぶんは、僕らのほうが「相撲はヘブライ語のシュモーなんですか、へー、すごいですねー!」と聞き流せば済むことじゃないですか。

親方がヘンなほうにボール投げたら、コッチが拾いに行けばいいだけのことじゃないですか。


サンタクロースを信じるのと、シュモーを信じるのは大差ないでしょう?