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09:00
かおちゃん、やったったで!おめでとう!

去年も凄かった、けれど今年はもっと凄かった。ときに起きる「神試合」、2018年の全日本フィギュア女子シングルは間違いなくそれでした。相手に挑むため、自分を超えていく美しい戦い。誰かのミスで決まるのではなく、どちらがより上回ったかで決まる戦い。厳しく、残酷だけれど、清々しい。後悔の余地のない決着に拍手と喝采を贈りたい。素晴らしかった。

それはやはり全日本という舞台の尊さなのかなと思います。この舞台は必ずしも勝ち負けを競うことを重んじたものではありません。もちろん順位はつけますが、それぞれにまったく違う目標を抱いた選手がここには集っています。ある者は日本一を目指し、ある者は世界選手権を目指し、ある者は世界ジュニアやユニバーシアードを目指し、ある者は来季の強化指定を目指し、ある者はここに競技生活の集大成を求める。

それぞれに違う目標に共通するのは、自分の最高を引き出すという意識だけ。得点だけを争えば比較にならないほどのレベル差がある選手もいますが、緊張感やここに懸ける想いは変わりません。多くの選手の同じ気持ちが重なることで、全日本は人間の真価を引き出していく場となるように思います。取り返しのつかない結果も生むぶん、やり直しの効かないこの日だからこそ生まれる奇跡もある。そういう舞台、そういう日なのだと。いい大会だなと。改めてそう思います。

↓誰に勝つとか、何を獲るとかではなく、頑張った先に何かが起こる魔法のような日!それは順位だけによるものではなく!

細田采花さん、全日本でショート・フリー合わせて3本のトリプルアクセル成功!

「引退する(一昨年)」「全日本でトリプルアクセル決めたら引退する(今年)」からの全日本8位!

強化指定A選手になる順位だけど、どうしよう!?

人生ってわからないものですね!


ベストを尽くした演技を束ねた結晶のように、キラキラと輝いた最終決戦。日本一と世界選手権代表とを争う選手たちが最後の5人にキッチリと並ぶさまは壮観です。強いだろう選手がちゃんとその順位で集まっていることの美しさ。そして、そのなかで今季大きく飛躍した紀平梨花さんが最初に登場するという展開の面白さ。何もかもが盛り上がりを加速させていく舞台装置のよう。

ショートでは靴の調整に失敗した紀平さんですが、この日は調整も上手くいったでしょうか、冒頭のトリプルアクセルは出来栄えも素晴らしく、さらにセカンドジャンプも3回転としてきました。つづけざまの2本目も美しく決めて、美しい嵐が吹き荒れます。ジャンプ、スピン、ステップ、技術点の速報値を見るまでもなく凄い演技です。

そして何よりも驚異的だったのがやや着氷の乱れたトリプルルッツからの3連続。予定ではトリプルルッツにダブルトゥループをつけるはずだった場面ですが、着氷乱れてステップアウトになったところで、ステップアウトを「つなぎのオイラージャンプ(※アンダーローテーション)」としてごまかし、そこにサルコウをつける3連続とした。咄嗟にリカバーする発想も素晴らしいし、それをできる技術的な余裕も素晴らしいし、考えが至っていたかはわかりませんが「トリプルサルコウをつけたら回数制限に引っ掛かる」場面をしっかりとダブルに抑えてきたのも素晴らしい。何という懐の深さか。

↓フリー155.01点、総合223.76点!これを抜ける選手、世界に何人いるんだ!?

この総合得点を出すには残る全員自己ベストが必要!

150点が求められるぞ!


すごいものを見せられた直後となった樋口新葉さんの演技。順番としてはやや苦しい部分もありましたが、それ以上に負傷明けというところが影響したような演技。サルコウやループはともかく、ルッツ・フリップには非常に苦しみます。さらに、構成面で混乱でもあったか、3連続ジャンプの3つめに演技中3度目となるダブルトゥループを入れてしまいました。ダブルのジャンプも繰り返せるのは2回までという決まりですので、このダブルトゥループはノーカウントに。順位に致命的な影響を与えるミスではないものの、もったいないロスとなりました。

とは言え、怪我という壁を乗り越えて、この全日本にこれたというだけで「自分」には勝利できたのかなと思います。新しいスターの登場で世間はワーワー言うとりますが、樋口新葉はここにいるんだぞと示すことは十二分にできましたし、最後は立派にキス&スマイルで引き上げました。代表争いという意味では後退しましたが、まずはしっかりと怪我を治して次のステップに向かってほしいもの。今季の枠は新葉さんが獲ってきたのだから、来季の枠は誰かに獲らせて、あとでそれをいただきましょう!

優勝するには自己ベストが要求されるトップのスコア、後続の選手の苦しみながらの演技、やや空気も重くなるかのような流れになってきた試合。その空気を魔法のように変えてくれたのは三原舞依さんでした。いつも少し惜しい、いつも少し届かない、つらい位置におさまることが多い三原さんですが、そのぶん三原さんの演技や笑顔は場をあたたかく包み込んでくれます。柔らかさ、あたたかさを誰よりも表現できています。

最終演技者が滑り終えたあと、三原さんはまたもつらい位置におさまることになるわけですが、そのときも三原さんは笑っていてくれた。自分のつらさはもちろんあるのでしょうが、ベストを尽くしたことへの納得や、親友の素晴らしい演技と結果を「それはそれ」として笑顔で迎えられるあたたかさを示してくれた。そればかりか、自分も今まさにつらい順位におさまったばかりなのに、「優勝をさらわれた」ライバルを気遣うようにそっと触れた。天使のような振る舞いでした。

今季のフリーで演じた「ガブリエルのオーボエ」、三原さんが使った曲の歌詞にはこうつづられています。「When all has come to pass/The storm has breathed its last/And the rain has washed our fears away/Love will fall/On us all/The world will smile again」。すべてがここから過ぎ去ったとき、嵐は絶え、雨が恐れを洗い流し、私たちに愛が降り注ぎ、そして世界は再び微笑むでしょう…と。美しい嵐によるざわめきを鎮め、あたたかい場へと吹き戻してくれた三原さんの演技を象徴するかのような情景です。もし、この神試合を司る天使がいるとすれば、それは三原さんなのかなと思います。心に残る演技でした!

↓空気を変えたことであとにつづくふたりのチカラを引き出す仕事をしてしまったかもしれないけれど、それはきっといいことです!


あとで滑る友だちに「ころべーころべー」って祈る選手より、自分のつらさを隠して喜べる選手を応援したい!

いつか一緒に世界に行けますように!



つづいて登場したのは4連覇中の女王・宮原知子さん。ショート1位ではありますが、優勝には自己ベストに相当する高いスコアが必要となる苦しい展開です。そんな重苦しさのなかでも自分から崩れないのがエースの頼もしさ。この日も安定した滑りは健在です。ただ、この日の演技が「宮原知子のベスト」だったかというと、そこまでではないのかなと。終盤には抜けたジャンプもありましたし、「+5」の出来栄えで決めたラストのレイバックスピンもこれ以上のものを今季すでに演じてきたでしょう。わずかにトップに及ばなかった点差は、仕方ないのかなと思います。

↓悔しい気持ちはあるでしょうが、世界選手権にぶつけてきてください!

あと少し高く跳び、あと少し鋭く回る!

しっかりと決めれば何の問題もありません!


さぁ、そして最終演技者・坂本花織さん。「最後までわからない」と誰もが口を揃えた試合ではありましたが、宮原さんが演技を終えたところで半ば決まったかのような空気はなかったでしょうか。4連覇中の女王とトリプルアクセルを操る新星、そのふたりの決着こそが試合の決着であるかのような空気は。確かにトップに出るには148.11点という自己ベストを大幅に超える高いスコアが要求されますが、一発があるとすれば坂本さんでしょう。要素、構成、すべてを世界基準で装備したうえで、まだ底を見せていない大物感を彼女は持っています。そして、ここ一番に最高の自分を出せる勝負強さを。それが昨年この舞台で、坂本さんを大逆転での五輪代表へと導きました。

昨年につづく「全日本の最終滑走」。ひとつのミスも許されない状況で、坂本さんはまたもやってのけます。ISUの認定するスコアであろうがなかろうが「これが今までで最高の坂本花織だ」と言い切れる滑り。坂本さんの特長であるジャンプの幅・流れはもちろんのこと、前後に組み込まれた入りと出の工夫、つなぎの細やかさ、ピアノレッスンの楽曲にハメこまれた小さな振り付けのひとつひとつといった総合力が発揮され、全方位での高い加点を生み出していきます。

紀平さんのフリーはものすごい演技でしたが、ショートでは転倒という大きなミスがありました。そのミスのぶんの差を、坂本さんはショート・フリー2本とも最高の演技を揃えることで詰め切らせなかった。こういう試合を見たかった。相手の素晴らしい演技を、最高の演技でひっくり返していくような試合を。すごいぞ日本の女子!

↓みんなそれなりに驚いているけれど、やった本人が一番驚いていた!


やっぱり試合は終わってみないとわからない!

持ってるな、かおちゃんは!

実力も、運命も!


↓ちょっと書き足したらやり投げのチャンピオンになりそうな大きなガッツポーズ!

素晴らしかった!

納得の新女王誕生です!


↓ちなみに表彰式では花束のなかに仕込んであったマカロンが本物なんじゃないかと思って、みんなでにおったりしてたそうです!

本物ですってよ!そういう商品あるんですって!

次回は表彰式中に食べちゃってください!



本当に素晴らしい試合、心に残る試合でした。こんなにいいものを見せてくれた選手たちに改めて感謝したい。そして、これだけの激しい戦いのあとでも、互いを祝福し、楽しく並んでマカロンをにおっていられる選手たちであることを本当にうれしく思います。ライバルは敵ではなく、自分を高めてくれる味方です。悔しさを持ち帰った選手も、次は自分が相手を上回れるように、悔しさを活かしてもらえればと思います。

そして、来年もさ来年も、こんな試合を見せてほしい。お正月には箱根駅伝があり、夏休みには甲子園があるように、クリスマスという特別な日が「フィギュアスケートの日」と国民的に受け止められるような結びつきを育てていってほしい。これまでの歴史と、今大会のような試合の積み重ねがあれば、決して無理な話ではないと思います。これが見られるなら、デートの約束もキャンセルです!いやむしろ「この人、妙にフィギュアの話しているから、クリスマスに誘ってみようかな」と思われる感じであるとありがたいです!

イブの男子シングルも頑張っていきましょう!


表彰台の3人!世界選手権では来季の枠を4つ獲ってきてくださいね!