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08:00
結果を見て作ったからそうなっちゃったか!

「いくら放送するコンテンツがないと言っても、山村美紗サスペンスの棚卸しをゴールデンタイムにするわけにはいかない…」というプライドによって、特に放送するもののない時間のライブ中継ではなく、ゴールデンタイムの録画中継番組として選出されたフィギュアスケート四大陸選手権。速報の試合結果を山村美紗サスペンス視聴の傍らで見守りながら、僕は中継を楽しみにしていました。

「この中継はきっと感動的なものになる」、そんな確信がありました。だって、結果知ってるから。それは脚本を読んで「泣けるわ…」と思ってから見に行く映画作品のよう。話としては間違いなく泣けるヤツになっているのだから、失敗のしようがありません。話はもう決まっているというか、先に終わっているのですから。

しかし、何やら不穏な空気は中継冒頭から漂っていました。開始直後に表示されたテロップ、まずドンと表示された「逆転へ!紀平梨花&坂本花織」の字幕の1行下に60%くらいのサイズの小文字で「三原舞依も出陣」と添えてあるではないですか。関羽・張飛のビッグネームの下に趙雲子龍が添えてある感じとでも言えばよいでしょうか。「結果見てるはずなのにな…?」と若干の違和感を覚えずにはいられません。何故、関羽・張飛・趙雲子龍の横並びではないのか、と。

中継としては基本的に紀平さん推しとなります。そこはまぁ普通というか、今季の実績はもちろんのこと「結果を知ってから編集している」わけですから、なるほどそうなるであろうと。結果がわかっていなくてもそうなるかなと思いますし、まして「期待の新鋭がトリプルアクセルを操って逆転優勝」なんて結果がわかっているならば、その物語を描くような編集になるのは自然でしょう。

冒頭の煽りVTRでは有力選手の名を挙げつつ「坂本花織、紀平梨花」「開催国のアメリカンガールズ」「日米の争いに割って入ったのはベールを脱いだキム・ヨナ二世」「トップから5位紀平まではわずか5点差」と、最終グループを見据えていく構え。なるほど、これがライブ中継ならばこうだろうな、と思います。全員紹介するというのは無理があるのですから、どこかで区切りはつけるだろうと。しかし、結果を見てから作ったら、はたしてこうなるだろうかと意図をつかみかねるような構成であることは否めません。

「あれかな、伏兵登場でビックリさせる系の構成かな?」

中継はショート9位、韓国のキム・イェリムから始まります。実際の滑走順からはひとり飛ばして中継されたのが日本の三原舞依さん。ショート8位と出遅れたことで、勝負の最終グループには加われませんでした。それはまぁ本人の責任でもあるので、ある程度駆け足での紹介になるのはしょうがないでしょう。しかし、3人しかいない日本代表で煽りVTRも特になくフリーに送り出されるとは、煽りたいんだか煽りたくないんだか、対応がチグハグな気もします。

しかも、紹介字幕には「弱い自分に打ち勝つ演技で最終Gにいいバトンを渡したい」と記されています。結果を知っていますし、これまでの戦歴や、かねてからの持病で体調を崩していたという近況などを振り返ると、「キミはこの状況でもそんな天使のようなことを言うのか」とウルッときてしまうわけです。十二分なチカラを持ちながら、昨季はあと少しで五輪、今季はあと少しで世界選手権に届かずに「惜しい」三原さんのキャリア。今季の集大成となる四大陸選手権でもショートで出遅れて泣いた三原さんが、なお「最終グループにいいバトンを渡したい」と言っている。何故、その発言を煽りVTRにしないのだと思うわけです。煽りたいんだか煽りたくないんだかさっぱりわからない。

「キミはマザー・テレサか…」
「僕なら『ワシ以外全員コケろ…』と呪う場面」
「そこまでハッキリ言わないにしても」
「後続にプレッシャーをかけたい、とか」
「そのぐらいの自己主張があってもいい」
「それなのにキミは…」
「グワシッ!」(※抱きしめる音)

ウルウルしながら見ずにはいられない演技。モナリザのように静かで薄い微笑みを浮かべ、流れる「ガブリエルのオーボエ」の調べ。ショートではミスとなったトリプルルッツからトリプルトゥループのコンボを決めると、ニッコリと笑顔を見せました。笑顔の音ハメ、笑顔のつなぎ。笑顔は得点とは無関係だけれど、演技をとてもを魅力的にしてくれます。

ショートの失敗は吹っ切れたか、動きは軽やか。ジャンプはよく伸び、流れが途切れるところがありません。演技後半のルッツからの3連続ジャンプを決めた際には、自国の人気選手のいい演技くらいしか沸かないアナハイムの静かなファンたちからも、歓声が上がりました。指先を羽根のように広げて踏むステップは、天使の舞そのもの。力強いガッツポーズで締めくくると、日本からのファンはもちろん現地のファンも立ち上がって拍手を送ります。

↓素晴らしい演技、素晴らしい立て直し!天使が舞依降りた!

「人柄」とか「振る舞い」とかの加点があったなら、もっと点数をあげたいくらい!

昨日の涙から、よく頑張った!


↓自己ベスト更新の141.97点!今日は「自分の演技で笑う」舞依ちゃんだった!


いつも笑ってくれるけれど、今日は自分のことでよかった!

何か食べたいものがあったら言って!お祝いに連れてくから!

新しく高田馬場にできたアイスクリーム屋とかどうかな!



「さぁ、舞依ちゃんの声を!」「喜びの声を!」と待ち受けるものの、まずは最終グループの紹介を優先する中継。「録画なんだから最終グループの紹介はどこにでも挿入できるやろ…」と思いつつ待機していると、CMをまたいでインタビューは急に始まりました。昨日の演技から切り替えられた、でもショートから決めていきたい、喜びと反省を交えつつ答える舞依ちゃんの姿を見ながら僕は思います。「ワシ結果を知ってるけど、今日はとってもいい日やで…」「頑張ったことが形になって手元に残る日やで…」「最終グループのあとで、もう一回会おう」と。「もう一回会おう」と。

迎えた最終グループ。ロシアに拠点を移したトゥルシンバエワは4回転サルコウに挑む意欲的な演技。4回転は転倒となりますが、ひとつ4回転を入れたことでコンボを含めてダブルアクセル以外の2回転ジャンプを入れなくて済むようになり、基礎点としても非常に高い構成となりました。トリプルアクセルを含む紀平さんよりも基礎点では上というあたり、新時代はなかなかすごい世界だなと、楽しみでもあり、怖くもあります。

つづく韓国のイム・ウンスは中継としても推しの選手のようで、煽りVTRのほか無良さんの注目コメントなどもあり、存在感を発揮しています。演技においてはコンボがうまくつけられず、レベルもポツポツと取りこぼすなど苦しみ、本人も浮かない表情。上位勢はもともと僅差だけに、フリーでミスが出ると大きく順位は沈んでいきます。三原さんは残り4人でまだ首位に留まっています。うむ、メダルが見えてきました。結果知ってますけど、見えてきました!

そして登場するはビューティフルストーム・紀平梨花さん。今季何度も繰り返してきた「ショートで出遅れたけれど、圧倒的なフリーで全員を抜き去る」という嵐が、この日も吹き荒れます。冒頭のトリプルアクセルを美しく決めると、予定どおりなのかその場での対応なのかトリプルアクセルのコンボを予定していた場面をダブルアクセルからのコンボへと変更します。

トリプルアクセルからでもトリプルルッツからでも3回転3回転のコンボを決められる技術の高さが、「今日はココを2回転にして…」という現場での自在な構成パズルを可能にしています。頑張って頑張って何とかこなしているのではなく、いつでもできることをルールにおさまるように調整しているからこその自在性。

以前の試合で即興的に見せたオイラージャンプからサルコウをつなぐ3連続なども含めて、選択肢が大量にあるなかで「その日の調子に見合ったものを選べる」からこそのこの余裕、この構成パズル。単にトリプルアクセルを跳べるから強いという選手ではないことが、こうした自在性からも感じられます。

↓抑え目の構成にしても153.14点!最後の決めポーズでコケそうになったところ以外、完璧です!


どこにも弱点がない!

ホント、怪我だけは気をつけてくださいね!

指でも大変なんだから!


↓キス&クライには大量のスタッフ的な何かが集結!左から振付師、選手、トレーナー、栄養士、編曲担当、コーチとかかな?


持ってきすぎやwww

さんざんちっちゃいの拾ったうえで何故その巨大熊にいったwww

「ちっちゃいつづらと大きいつづら、どっちが欲しいですか?」って聞かれて、両方担いで帰るタイプwww




さぁ、いつものことですが紀平さんは他選手に「私に勝つには自己ベスト大幅更新でどうぞ」という強烈なプレッシャーをかけていきます。影響がどこまであるかはわかりませんが、つづくマライア・ベルは転倒やジャンプの抜けがつづいて点数を伸ばせず。ショート首位発進のブレイディ・テネルもコンボが抜け、次々に回転不足が連鎖するという演技に。これで紀平さんのメダルは確定、三原さんもまだ3位にとどまっています。

「ケオリ・サカモトー」というアナウンスで送り出された最終滑走・坂本花織さん。四大陸選手権連覇を狙っての演技です。冒頭のトリプルフリップからのコンボは、しっかり決まっているものの本人比ではやや硬い感じ。キレイに決まったトリプルルッツにもエッジへのアテンションがつきます。3連続ジャンプを予定していた箇所も、抜けて1回転となりました。

フジテレビ中継自慢のアイスコープでも、この日のダブルアクセルはキレイに決まったものでありながら「飛距離2.48メートル、高さ0.45メートル、着氷時速18.2キロ」となっており、ショートでの「飛距離3.01メートル、高さ0.42メートル、着氷時速21.1キロ」と比較するとだいぶ勢いがなかったことがうかがえます。全日本で見せた会心の演技とは、雰囲気も含めてまったく異なる演技です。

最後のループにコンボをつけて何とかリカバリーする根性は見せたものの、ジャンプを繰り返せる回数も使い切ることなく、演技後は顔を覆ってしまうような悔しい出来となりました。そして、「何点以上なら勝てると思ってしまった」と語った坂本さんは、試合に臨む心持ちだったり姿勢への後悔がそうさせたのか、キス&クライでは涙が止まらなくなりました。

自分に合った精神状態とは違っていたのでしょう。「何点で勝てる」と思うことで僅差を制するチカラが出せる選手もいれば、「いっちゃえーーーーー!!」でこそ爆発的なチカラが出る選手もいる。今回の「何点で勝てる」は坂本さんには合っていなかった。普段の振る舞いからの印象でも、そうだろうと思います。「もっと計算しろ!」って周囲に言われるくらいでいいのです。守るのではなく攻める、必要以上の限界まで跳ぶ、そういうアプローチで次回は臨んでみてはどうでしょうか。世界選手権に向けて、いい経験としていきましょう!

↓世界選手権の前にこの悔しさを経験できてよかった!すぐに挽回の機会がある今でよかった!

相手のことを考えてどうする!

世界のライバルに「ケオリ・サカモトマジヤバイ」と思わせて、相手に考えさせないと!


同門の親友、少しライバル。そんな間柄の三原舞依さんと坂本花織さんが争うことになったメダル。坂本さんが上回って終わる試合が多かった昨今、今回は三原さんが8位からのジャンプアップで3位に食いこんで決着しました。「最終グループにいいバトンを渡したい」と言って臨んだ三原さん、気持ちは全員に対してかもしれませんが、実際に1本のバトンを渡すならそれは坂本さんに対してだったはず。「頑張って」「私も頑張ったよ」、その気持ち。

負かしたい敵ではなく、一緒に喜びたいライバルが同じ試合で頑張っている…それはとてもチカラが出るシチュエーションではないかと思います。それだけに、坂本さんの悔しい想いもひとしおでしょう。いいバトンを受け取れなかったのですから。世界選手権ではバトンを渡してくれる親友はいませんが、今回受け取れなかったぶんを、ぜひ世界選手権で拾いあげてほしいもの。競い合って手にした枠です。託されたバトンです。しっかり受け取って笑顔で帰ってほしい。

表彰式では紀平さんと三原さん、日本の2選手が表彰台にあがりました。僕はワクワクしていました。優勝者の喜びの声ももちろんですが、三原さんが悔しい想いを乗り越えて手にしたメダルをどんな言葉で喜ぶのか、そして涙を流した坂本さんをどんな笑顔で包むのか。これまで何度も見てきた、「自分が悔しい想いをしているのに、自分よりも他人のために微笑む」舞依ちゃんの姿とは、逆の光景が広がるはずだ。それを見たい、と。

しかし、最後の最後まで想いは録画に反映されませんでした。「三原舞依は3位です!」と付け足しのように実況がリンクからの映像を締めくくったあと、三原さんの声が中継に乗ることはありませんでした。銅メダルを獲った自国選手の喜びの声がないっていうのは、僕のなかの常識では到底考えられないのですが、それがフジテレビが「結果を見てから考えた」中継ということなのでしょう。舞台裏がないのは百歩譲るとして、メダルを獲った自国選手の声をバッサリ削れるのは、逆にスゴイなと思います。

なるほど、ライブ中継ができる時間に山村美紗サスペンスの棚卸しをするだけのことはあります。この四大陸選手権自体が「世界選手権の番宣」ということなのでしょう。世界選手権につながらない情報はバッサリとカットしていきたい。全体的に興味のあるかたにはYouTubeをご用意したのでそちらを勝手にご覧ください。そんな編集方針というものがクッキリと浮かび上がってきます。

「日本(の世界選手権に出る選手)VS世界」を事前の盛り上げとして見せたかったのである、と。

そこに関係ない選手で尺を使うのは避けたいし、そっちに目がいっても困るのである、と。

何も考えずにライブで垂れ流しておけば「勝手に素晴らしいドラマ」になったはずのものを、いじってしまうもったいなさ。素晴らしい食材をヘンな感じにアレンジしちゃった人を見るようで、すごく残念でした。「いいから刺身で出せ!」という気持ちで一杯です!

↓最後にリンクサイドアナはこんな言葉で締めくくった!
ハッハッハッ ホホホホヘー(※ボレロです)

ハッハッハッ ホホホホヘー(※ボレロです)

ホホホホーホホホホホ(※ボレロです)

アナ:「紀平選手の優勝と坂本選手の悔しさ」

アナ:「それぞれが来月につながることを祈っています」

ハッハッハッハッハッ ハッハッハッハッハッ(※ボレロです)

フアーーーーーーーフアーーーーーーフアーーーーー(※ボレロです)

ファァァァァァーーーーーーーー ホホホホホホッ!(※ボレロです)

っておーーーーーーい、触れて触れて!

銅の選手も何かにつながっていくから!

どうしても地上波では思う存分着色・変形・加工した自慢のカマボコを出すということなら、せめてYouTubeでは刺身を出してください!




なお、夜のスポーツニュースでは銅の選手の演技全カットでした!