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12:00
距離感を大事にしていきましょう!

ファンサービスというのは難しいものです。サインをしたり写真を撮ったり、いろいろな工夫をするわけですが、どうすれば正解というものはありません。サービスをもらう側の立場としても、何がどうなっていれば正解なのかはよくわかりません。

かつて落合博満氏は中日ドラゴンズ監督時代に「勝つことが最大のファンサービス」と言いました。確かにそれは大前提です。勝つこと、カッコいいこと、いいパフォーマンスをすることが、その人や物の価値を高めます。もともとの価値が高ければ、それを「見る」ことや「触れる」ことの価値も高まります。一般人を見ても何の価値もありませんが、スターなら姿を見るだけでも特別な体験になる。その意味で、「まず自分の価値を高める」ことは大前提です。

ただ、それだけだと物足りないのも事実。人間は与えられた環境にすぐ慣れ、図々しくなります。最初は遠くから見るだけでも大満足だったものが、近づきたくなり、触りたくなる。その欲望には際限がありません。やがてはサービスする側がその欲望に付き合い切れなくなり、疲れてしまいます。それは残念な末路だと思います。相手が求め、自分もやってあげたいと思うことが、疲れてできなくなってしまうのはお互いにとって本意ではないでしょう。

最近はファンサービスのあり様について考えさせられる事例が頻出しています。以前から同様の問題はあったのでしょうが、「する側」の方から「これはダメでしょう」と声を上げる事例が増えてきたというか、声を上げることが自然という感覚になってきたというか、もう一度考え直そうじゃないかという動きをよく見かけるようになりました。

↓サービスとしてサインを配っている選手たちから「もう止めるわ…」といった声が発信されることも!
<転売するヤツがおるから、サイン送るの止めるわ…という元選手の声>


<転売するヤツがおるから、サインするのイヤんなってきたわ…という球団の声>


<「武藤選手のカードにサイン入れて送り返してください」はさすがに違うやろ…という選手の声>


<呼び掛けるときは呼び捨てにするな気をつけろよ…という選手の声>



<ちなみに転売に悩む選手のサインの、メルカリでの取引状況>
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本物かニセモノか調べてはいませんが、「槙野選手&ハリルホジッチ監督のサイン」と称するものが350円で売れていました!

サイン入り著書も「500円に値下げしてくれるなら」と交渉の末にでお買い上げです!


↓そして、ファンサービスの結果、一番大事な「本来の価値」を損ねてしまうケースも!

ファンに腕を引っ張られたことで肩に違和感が出てしまった!

せっかく去年はイイ感じだったのに、また違和感!



中日ドラゴンズなどは「勝つことが最大の…」時代からは一変して、昨今は集客とファンサービスにチカラを入れてきています。「勝てなくなったから…」「勝てなくてもできることしか今はできないから…」「勝ってればやってないと思う…」という心ないインターネットの声もありますが、そうした姿勢自体はファンの側としても嬉しいものでしょう。

しかし、行き過ぎる昨今の風潮を鑑みて、サイン規制の可能性を中日ドラゴンズは公式サイトで警告もしていました。そのなかにあって「僕が考えても仕方ない」と変わりなくサインに応じていたのが松坂さん。その松坂さんがファンとの接触で、一番大事な肩に違和感が出てしまう。これでは何のためのファンサービスかわかりませんし、その反動で「ファンサービス全面禁止」という意見が出るのも仕方ないと思います。

特に「触れ合い」という部分では、「ブーマーとのハイタッチで肩を痛めた門田」の逸話よろしく、無用な怪我を生みかねないことは確か。相撲取りのような「何をどうしても平気そう」な手合いでさえ、叩けばやっぱり痛い顔をするのです。アイドルと握手するのには3000円ずつかかるわけですし、目の前にいるからといって気軽にバンバン叩いたりしてはいけない。

ただ、すべてのファンサービスを止めてしまうというのは、それはそれで行き過ぎというか、本末転倒であろうと思います。自分自身を振り返っても、いろいろなエピソードを見聞きしても、ひとつのファンサービスがキッカケとなって生涯のファンになるようなことは多いもの。もらった帽子やもらったサイン、気軽に応じてくれた握手、そうしたサービスが生涯のファンを生み、お金や愛情をもたらすのであればやらない手はありません。

悪いことをするヤツはどうしたって出てくるわけで、それを恐れて本来やりたいことまで中止してしまうのは無意味でしょう。悪いヤツを遠ざけるために、生涯のファンを生むかもしれない機会を遠ざけるというのは「チケット転売を避けるためにライブ開催を止める」ような話。マイナスもないけれどプラスもありません。

ここはひとつ「ファンサービス」というものの本質を改めて考え直してもいいのではないでしょうか。ファンサービスというと短絡的に「サイン」とか「握手」とか「写真」とかを考えてしまいますが、それは結果としてそういう物品や行為になっているだけで、もっと本質的なものがあるはずです。

たとえばジャニーズ界隈で「ファンサービス」と呼ばれる代表的なものは「目線」だそうです。自分が持っているウチワを見てくれた。推しのアイドルがコッチを見てくれた。その一瞬がファンサになりうる世界もあるのです。相撲取りなんてバンバン叩かれているのに、だいぶ話が違います。

そこにある本質的なものを考えたとき、僕は「距離感」なのかなと思います。

普段はテレビで見ているスターを、今日は試合会場で見た。普段は遠い世界にいるアイドルが私を見てくれた。普段はパレードの山車から出てこないミッキーマウスに会えて、握手ができた。そうした行為を通じて、本来あるべき相互の距離が、特別に縮まった瞬間にこそプレミアムな喜びがあるのかなと。

「今日、誰それに会った」という距離感の特別な縮まりを形として残すものがサインだったり、写真だったりするのでしょうし、「触った」というより大きな詰まり方の象徴として「握手」だったり「相撲取りをバンバン叩く」行為があるのだろうと。

その意味では必ずしも「サイン」という物品が大事なわけではないと思うのです。転売してまでサインを買おうという人の気持ちが正直僕自身わからないのも、そこに「距離感の縮まり」をまったく感じないからなのかなと思うのです(※槙野のサインはもらっても邪魔だし別にいらんし…ということではありません/目の前にいたらマキノサン!と呼びかけてサインくらいもらうんじゃないでしょうか/わざわざ会いには行かないけど…)

「距離感」の問題だとすれば、もっと上手い調整はあるはずです。ジャニーズは「もともとが遠い世界の存在で決して触れ合うことはできない」ものだから、目線でも喜んでもらえるし、写真も売れるのでしょう。目が合っただけでもドキッとするのは、片思いのとき。気軽に触れ合える存在になったら目線ごときで喜んだりしません。

もともとの距離をある程度遠くに置いておくこと(気軽に触れ合わない/基本は見てるだけにする)。

そのうえで練習場や試合会場では「一歩だけ」前進させること(目の前を歩く/こっちを向く)。

特別な距離感の縮まりさえあれば、十分にサービスは感じられると思うのです。普段は外国にいるスーパースターとかであれば、目の前を通って、手を振ってくれて、その様子を写真に撮るだけでも泣くほど嬉しいってこともあるでしょう。ミッキーマウスと並んで写真を撮るために、2時間くらいミート・ミッキーに並ぶのも、普段は出てこないミッキーが出てくる特別な場所だからでしょう。

その調整をしっかりせず際限ない接近を許すと、人間の際限ない図々しさに疲れてしまいます。「基本の距離」「どれだけ距離が縮まっているか」を常に意識し、言葉は悪いですが「値付け」をしながらこなしていくことが肝要です。そこをしっかり意識することで、適切にファンサービスができ、満足度も上がるのですから。たとえば「サイン」と「握手」でどっちが値段が高いものかを常に意識しておき、場面場面で使い分けること。それもまたプロの仕事なのかなと思います。そうした行為には価値があり、その価値はとりもなおさずエンターテナーが売る商品そのものの価値なのですから。

↓「ワイが思う距離感のイーメジ」はこんな序列です!
【対象と自分の物理的な距離感】

▲距離感が遠い

・テレビで見る

・試合会場やライブ会場など「対象の本業の場」で見る

・イベント出演など「対象の副業の場」で見る

・練習場やキャンプなど「対象の準備の場」で見る

・学校訪問や職場訪問など「自分の本業の場」で見る

・食事や散歩など「対象のプライベートの場」で見る

・我が家など「自分のプライベートの場」で見る

・我が家の寝室など「自分の秘密のプライベートの場」で見る

▼距離感が近い


【行為の距離感】

▲距離感が遠い

・見る(近いほど価値アップ)

・反応される(コッチを見る、手を振る等)

・大量生産品をもらう(ボール、カード等)

・限定品をもらう(サイン、写真等)

・触れる(握手、ハグ等/近いほど価値アップ)

・大事なところに触れる(大事なほど価値アップ)

・認識される(名前を覚えてもらう等/相手のなかに残る)

・好意を持たれる(覚えてもらったうえに感謝されたり好かれたりする)

・好意を持ってくれたうえに接近してきて、お互いの大事なところで触れ合う(大事なほど価値アップ)

・好意を持ってくれたうえに接近してきて、お互いの大事なところが触れ合った結果として、特別な何かを授かったりする(新しい命等)

▼距離感が近い


選手や球団のもつ「もともとの価値」を鑑み、どのラインからファンが特別な価値を認めて行動を起こすかというのを読んで、ファンサービスを展開していく。「普段外国に住んでいるスーパースター」なら、「テレビで見る」以外のことは何もできないのが基本ラインとなるので、「目の前で見る」だけでもファンサービスが成立する。大概の選手は「大量生産品をもらう」だけでも十分では?

一歩近づくも二歩近づくも、接近という意味では同じ!

一歩で十分なところを二歩近づかせるのは「安売り」です!

そして「女装してコント」は僕の認識ではファンサではありません!珍しいだけ!




すでにサインするのが当たり前になっているような状態では、サインしないと価値を感じてもらえなかったり、より接近していかないと特別感が生まれなかったりするでしょう。ただ、これから先の展開において、一歩でいい前進を二歩進めてしまうことがないように意識することはできます。

そして、「これ以上は進ませたくないな」と思うラインがあるなら、許容できるラインのクオリティを上げて、ファンが積極的にそれを望むように導いていくことも重要でしょう。「写真はいいけど、接触はイヤだ」というパターンの場合、ファンが「接触よりも写真がいい」と思うように導くのです。たとえば「決めポーズ」を作るとか。

元横浜ベイスターズの三浦大輔さんと会ったら、「例の構図で写真を撮りたい」と思ったりしないでしょうか。相撲取りから何かもらうとき「やっぱり手形だな」と思ったりしないでしょうか。この人と言えばコレ、というものを積極的に自分で作っていけば、ファンもそこに自然とおさまっていくように思います。握手の写真より、例の決めポーズの写真がいい、的な。上手にファンサービスをして、お互いにハッピーになれるようにしていきたいもの。槙野さんあたりは、基本ラインが近すぎて安っぽいから、本人的にもいろいろ困る事態になってるんじゃないかなーと思います!


許せる範囲から逆算して普段の距離感を作っていくといいと思います!