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20年ぶりの金ならず!

これが自然との戦いかとうなだれ、勝つことの難しさを改めて感じるような戦いでした。ノルディック世界選手権スキージャンプ男子ノーマルヒル、20年ぶりとなる日本勢の金が一瞬すぐ近くに見え、すり抜けていきました。1本目を終えてトップに立ったのは今季ワールドカップで22戦して表彰台16度、11勝を挙げた日本ジャンプ界の新エース・小林陵侑。圧巻のジャンプでトップに立ったことが、まさか逆に金奪還を阻むことになろうとは。

雪が降りつづき追い風が吹くなかでの1回目、時間を追うごとに状況は悪化していきました。ワールドカップのランク上位者が後半に飛ぶという順番であり、本来なら「あとから飛ぶ選手がどんどんトップに出る」展開になるはずが、前半に飛んだ選手の飛距離に遠く及ばず、ゲートを上げても上げても飛距離が伸びてきません。二度・三度と上げたゲートも、積もる雪と風のせいで、上がった気がしないほど。

ソチ・平昌で合わせて金3つのストッフが、2017年世界選手権個人2冠のクラフトが、悪コンディションから90メートル台前半の不本意なジャンプにとどまります。そんななか、ランク1位として最後に飛んだ小林陵侑はトップの目安となるグリーンのラインを軽々と超えていきました。テレマーク姿勢もしっかり入れたジャンプは、K点超えの101.5メートル。全体で2人しかK点に届かなかった1本目で最長となる大ジャンプは、風・ゲートを加味したポイントでももちろんトップです。

↓一本目、K点を超えたのがふたりだけ!ヒルサイズには遠く届かない厳しい戦い!

早めの順番で飛んだ選手が上位に食い込んでる!

「あとほど不利」という逆ザヤ発生中!



上々の折り返しに「表彰台という意味では大きなアドバンテージ」と興奮気味の実況席。2回目はさらにゲートを上げてスタートしますが、雪はさらに強くなっていきます。スローで見る映像では、飛んでいる途中の選手のスーツに雪が積もるんじゃないかと思うほどのドカ降り。アプローチの雪をどれだけ吹き飛ばそうと積もる量には勝てません。選手たちは少しでも雪が少ないうちにと、間隔を空けず、急くようにスタートしていきます。

ゲートを挙げたことでテイクオフ時のスピードは89キロ弱まで出てはいますが、それでもK点付近まで伸ばしてくるのがやっと。1本目16位のストッフのジャンプがK点付近にとどまったとき、実況席からは「これではメダルには届かない」とする見方も示されました。

しかし、条件の悪化のほうが1本目での差よりも大きくなっていきます。気がつけば1回目は27位となり、2回目を早い順番で飛んだ今季世界ランク5位・ポーランドのクバツキがずっと1位に居座っています。そして、2回目中盤で「メダルには届かない」と見られたストッフが2位に残っています。さらに1回目10位にとどまったクラフトが「表彰台は極めて難しい」と言われたジャンプで3位に食い込んできました。差がつきにくいはずのノーマルヒルで、大逆転が起きつつありました。

↓いやー、豪快に降ってますなぁ!


雪の粒がデカい!

雪の重みで落ちそう!


終盤にかけてさらに悪化するコンディションのなか、世界の選手たちが90メートルにも届かずに落下していきます。最終盤にはテイクオフのスピードも86キロ台へと落ちてきました。通例なら1キロ程度の差におさまるように順次ゲートを上げて調整するところなのでしょうが、この日のジュリーは「それよりも、とっととやっちゃおう!」という方向に傾いています。1回目は「条件の悪化を二度三度とゲートを上げて対応」したものが、2回目は「とっととやっちゃおう!」になった。これにより、1回目の不公平よりも、2回目の不幸が大きくなってしまったことは否めません。

「『とっとと』よりも雪のほうが早いのだが…」

そして、最後のひとり、ワールドカップランク1位から1本目をトップで折り返した小林陵侑のジャンプ。テイクオフのスピード86.7キロは2回目全体のなかでもっとも低い速度。暫定トップのクバツキがもらっていた速度が89.4キロでしたので、その差2.7キロ。いかに技術があろうとも、鳥のように自力で飛ぶわけではないのですから限界があります。打ち出す速度が一番遅いボールは、一番手前に落ちるのが自然の法則。技術によるカバーも及ばず、小林陵侑のジャンプは92.5メートルに留まり、最終順位14位への失速となりました。

↓あああああああああああ届かない!

解説の原田雅彦さんの、「こういうこともあるよなー」という気持ちを根っこに据えたため息が重い!

これがスキージャンプ!




2本そろえる難しさ、自然と戦う難しさ、船木・原田の時代に比べれば風や助走の影響も加味するように仕組みも変わってはいますが、やはり「自然」というのはどこまでも不公平なものだなと思います。ただ、その不公平を承知で、なお勝つのが真の王者でもあります。真の王者はときに自然に翻弄されつつも、大体は自然に勝ってきた。今回表彰台に立った顔ぶれも、展開は波乱でしたが、結果は順当な範囲です。強い選手はやっぱり強い。

原田雅彦さんは「2本の合計なんです」と語り、運も不運も公平も不公平も「2本でならして」いるのだからと今日もすべてを受け入れていきます。それでも最後に、この厳しいコンディションに翻弄された小林陵侑に「(次の混合団体に)怒りをぶつけてほしい」と言葉を送りました。笑いながら、「怒り」と選んだ言葉には少しだけ不公平への反発が込められているようでした。風への怒り、雪への怒り、そして「とっとと」のまま押し切った運営への怒りが。

これは無念の14位ではなく、怒りの14位。

この悔しい負けをしっかりと刻んで、雪辱の機会を楽しみにしたいと思います。

次は!必ず!自然にも!運営にも!そして自分にも勝つ!



何かすごい悔しくて、すごく応援したい気持ち!混合団体で勝とう!