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宿はあるから「寝られればいい」人は安心してください!

五輪チケットの第一次抽選も終わり、そろそろ当選者が旅行の計画を始める頃。当然、この話も出てくると思っていました。東京五輪期間の「宿ある?」問題。結論から言えば、あります。そりゃあまぁ全世界から6億人とか観光客がきたら当然ナイですが、逆説的に言って「東京で足りないなら全世界で足りる場所などどこにもナイ」わけですから、宿は足りるのです。

↓見出しで印象操作していますが、危機感を煽って遊んでいるだけですよ!


条件付きのご希望を持ったお客様1名の悲鳴を、主にお届けする記事です!

有料記事のためネットでは全部読めませんが、紙面を読めば印象は変わります!



当該の記事は体操競技のチケットが当選したという千葉県内の女性の声を採り上げたものです。その女性は体操男子団体決勝のチケットが当選し(おめでとうございます!)、午後7時からの競技開始ということで、競技終了後に周辺地域で一泊して帰る計画だったとのこと。女性は足が不自由で車いすを使用しており、宿泊にあたってはバリアフリー設備の整ったホテルを求めていたという事情もあるそうです。

そこで周辺地域から条件に合うホテルを見繕って電話をしたところ、組織委員会によって部屋が押さえられており、予約が取れなかったというのです。記事では「組織委員会によると、期間中、国際オリンピック委員会や各国の五輪委員会、競技団体などの関係者向けに、会場周辺のホテル計約4万6千室を仮押さえしている」との情報が添えられています。なるほど、組織委員会も部屋がたくさん必要でしょうから、いち早く仮押さえには走るのでしょうね。

しかし、この話だけで「組織委員会がホテル独占かよ!」と憤るのは早すぎます。

そもそも東京にはどれぐらいホテルがあるのでしょうか。僕も知りませんが、厚生労働省では衛生行政報告例として「ホテル−旅館営業の施設数・客室数」のデータを公開しています。公開されている最新版は2017年度のものですので若干古いですが、まずはそれを見ていきましょう。

<ホテル−旅館営業の施設数・客室数(2017年度版/厚生労働省調べ)>

【東京都】
●ホテル客室数:110641
●旅館客室数:58583
⇒合計16万9224室

【東京・神奈川・千葉・埼玉合計】
●ホテル客室数:194607
●旅館客室数:102809
⇒合計29万7416室

※ちなみに、このほかに簡易宿所(カプセルホテル等)は東京・神奈川・千葉・埼玉合計で2757施設ある。



なんだ、約30万室もあるじゃないですか。もちろん、この全部が観戦に適したものではないでしょう。八丈島のホテルから10時間船に揺られて試合を見に行くのは現実的ではありません。ただ、組織委員会が4万6千室を押さえたら首都圏のホテルが尽きるなんてことはあり得ないのです。ご存じのように東京・神奈川・埼玉・千葉は通勤圏であり、それがひとつの大都市のようなもの。あと25万室、首都圏には宿があるのです。

幕張メッセに行くのも、横浜スタジアムに行くのも、さいたまスーパーアリーナに行くのも、首都圏からなら基本的には日帰りです。それは世界最高峰の公共交通網を誇るTOKYOの強みです。25万室の多くは「東京五輪観戦に使える」宿です。「できるできない」まで敷居を下げれば、群馬・静岡・茨城あたりも視野に入るでしょう。それらは僕自身が「東京から日帰りで競技観戦をしているエリア」です。新幹線で仙台や名古屋への移動を視野に入れれば宿数はさらに増えます。平昌五輪では「ソウルに宿を取って高速鉄道で2時間かけて江陵に移動」が当たり前だったことを考えればラクなものです。

そりゃあ「競技終了後、会場の隣のホテルでゆったりしたい」という希望があれば、部屋数は限定されますし、バリアフリー設備が必要となれば予約は取りづらいかもしれません。ディズニーランドの帰りに泊まろうと思ったらディズニーホテルが満室だったりするように。ただ、その一事例をもって「五輪、今度は『ホテルがない』 組織委が大量に仮押さえ」と、あたかも宿泊客全体にホテル不足の影響があるかのように煽るのは不適切でしょう。当該の記事は「寝られればどこでもいい」人の話ではないのです。

ちなみに有明周辺、バリアフリーとなると筆頭の候補に上がるのは、東京ベイ有明ワシントンホテルでしょうが、運営する藤田観光グループは公式サイトで「当社グループは、2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う関係機関からの準備・開催期間中における関係者宿泊先の優先販売要請を受け、本件について協力する方針でございます。最終的なご利用内容につきましては2019年秋頃に関係機関から頂戴する予定ですが、それまでの間、2020年7月10日〜2020年8月11日における以下ホテルの宿泊予約受付を11月頃まで休止いたします」としています。秋頃から予約を受ける予定だよ、ということですね。関係者にもバリアフリー設備を求めている人が必ずいるはずです。近くて条件のいいところを外国からのお客様に優先的に譲ってあげるのも「お・も・て・な・し」ではないでしょうか。外国からのお客様に「有明なんて立川からでも余裕で通えますよ!」とか言うのは、若干心苦しいですからね。

↓豪華客船をホテルにするという計画もあるので余裕のある方はご利用ください!


そこまで追い詰められることはないと思いますけどね!

あと、船に乗るより新幹線に乗る方が安いと思いますし!


そもそも「1年ちょっと先の予約」を取るのは仕組みとしても困難でしょう。ホテルのサイトでの予約なども1年先までですし、トラベルサイトなどでもそうでしょう。じゃらんでは2020年6月までしか選べませんし、JTB・日本旅行・るるぶでは半年先の2020年1月までしか選べません。「まだ東京五輪期間の宿は予約できない」がデフォルトです。それでも比較的先の期間まで予約できるサイトで検索すれば、「体操男子団体決勝の日に会場周辺のホテルを予約する」ことは可能です。

↓たとえば楽天トラベルでは汐留のヴィラフォンテーヌ東京汐留が体操男子団体決勝の日に予約できます!家賃みたいな値段ですけど!
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バリアフリーで探すのは大変ですが、「部屋がない」というのは違います!

つまり問題は「ホテルの室数ではなくバリアフリー対応の遅れ」のほうです!




最近は野球でもサッカーでもコンサートでも、車いすの方でも来場できるような席を設けるのが普通になっています。少数派だとは思いますが、そういうお客様は必ずいますし、そういう人でも不自由なくいろんなことを楽しめる世の中のほうが絶対にイイと僕は思います。誰もがそうなることはあり得るし、そのときに野球やサッカーやコンサートに行けないのはイヤですもの。

今すぐ完璧にはできないかもしれないけれど、東京五輪に向けて「変わっていく」ことも五輪のもたらすレガシーです。「車いすの方が泊まれるホテルが少ない」という課題があるなら、東京五輪をきっかけに変えていけたら、それは未来に誇れるレガシーでしょう。何でも五輪批判のネタにするのではなく、五輪という大きなきっかけで世の中を動かしていく、そういう機会だととらえていきたいもの。

新しく施設を作ったり改築するときは、最初から使いやすい設計にすればいいじゃないですか。すべてのホテルに1部屋くらいはバリアフリールームを用意することにしようよ、みたいな世の中になったら今よりイイ感じの街になりそうじゃないですか。デパートやファッションビルで多目的トイレが当たり前に設置してあると「ちゃんとしてるな」と思うみたいに。東京都も「建築物バリアフリー条例」を3月に改定して、そういう街を目指しています。こうした変化も「東京五輪の一部」なのです。跳んだり走ったりだけじゃなく、五輪という大目標に向かっていくすべてが「東京五輪」なのです。

↓「金もないし、面倒臭い」という気持ちを吹き飛ばしてくれるのが「五輪・パラリンピック」という大目標なのです!

「ホテルのサイトに情報がない」
「日本語でしか書いてない」
「グレードの低い部屋しかバリアフリーでない」
「エレベーターが小さくて1台ずつしか乗れない」
「通路や出入り口が狭くて通れない」

東京そして日本にはいっぱい課題があるとのお話です!

こういうのを変えていくチャンス!

一度変えればそれが「当たり前」になる!

未来に遺る財産になる!




五輪があってもなくても、その課題は存在しているものです。五輪があったからクローズアップされただけで、「東京にバリアフリーの宿が足りない」ことは五輪を中止したとしても変わらないのです。ならば、これをキッカケに変えていくほうが素晴らしい。「金もないし、面倒臭い」を五輪パワーで吹き飛ばしていくほうが素晴らしい。僕は心からそう思います。

そして、元気で余力のある人は夜深くに競技が終わっても自宅に帰ってください。東京圏の鉄道19社60路線は五輪期間中の終電時間を繰り下げることを決めており、山手線は午前2時まで走る見通しだそうです。元気な人は頑張って帰っていただいて、少しでも「本当に宿が必要な人」に限りある部屋をあけていきたいもの。男子サッカーの決勝(横浜国際総合競技場)は表彰式まで見ると23時30分終了予定となかなか厳しい時間ですが、頑張って埼玉とか千葉まで帰ってください!


「寝られればいい」人は宿じゃなくチケットの心配をしててください!