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埼玉西武ライオンズは怪我し放題球団です!

「球場周辺にはラブホテルと墓場しかない」と評される、ゆりかごから墓場までの中間がすべて過疎の球団・埼玉西武ライオンズ。たった1軒のファミリーマートに3万人の餓鬼が来襲するなど「カイジ」の地下売店みたいな状況を生み出している我らが本拠地に、意外な、しかし合理的な新店舗が誕生することになりました。

2024年春に開業するという新店舗の名は「ライオンズ整形外科クリニック」。まさかの病院だと言うではありませんか。周辺環境をよく知る者としては「それより先にドラッグストアをですね…」と一言いいたくなってしまいますが、その背景を探るとこれは非常に合理的かつ戦略的な出店であることが見えてまいりました。「ははーん、言いくるめられたな」と思わずヒザを打ち、このプランを提案してきた相手方に「やりますなぁ」と唸りました。断言します、このクリニックは成功すると!

↓みんなにメリットがあるウィンウィンウィンウィンな出店です!

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まず野球民として西武のことを考えていきますと、球場そばに整形外科があることはとてもありがたいことです。最近はいなくなったとも聞きますが、野球選手は勝負師だけあって頭に血がのぼりやすく、試合中にムカムカするとロッカールームでキャッチャーマスクを投げつけたり、その勢いで骨折したりすることもあると言います。これを「バカだなぁ」とか「若手が委縮しそう」とか「金返せ」と揶揄するのは簡単ですが、大事な大事な選手の身体ですから、しっかり治してあげたいのは人情です。

そのとき球場から徒歩1分のところに整形外科があったら、すぐさま診断を受けて「折れてますなぁ」「ハイ、わかってます」と診断してもらうことができますよね。即時診断即時治療は早期回復のカギ。他球団なら病院へ移動中のタクシー車内でムカついてもう一発運転席を殴って骨にトドメを刺してしまいかねませんが、我が方はすぐさま折れていることがわかるのです。これは球団全体のコンディションづくりにとって非常に有益です。

実際に治療を始める段階では「職場の近くのクリニック」と「自宅の近くのクリニック」のどちらがいいかは悩みどころですが、まぁ寮生活の若手なども多数いますし、職場に近いと面倒ということもないでしょうから、選手たちにとっても利用しやすい施設でしょう。このクリニックの設立が軸となり、そこに勤務するお医者さんたちが西武のコンディション作りにも関わってくれるそうで、その結果として球団で丸抱えするよりも多くのスタッフを得ることもできました。まさに我々は「怪我し放題球団」と名乗るにふさわしい環境を手にしたのです。これまでも「カレー食べ放題球団」「ゴルフやり放題球団」「移籍し放題球団」などと数々のホーダイ群を誇ってきましたが、そこに新たな勲章を書き加えたわけです。

↓怪我したらココに放り込み、直ったら寮に放り込む一気通貫の体制!


このクリニックの開業は地域住民にとってもありがたいことでしょう。「ナイよりはマシ」というだけの話ではなく、整形外科クリニックは地域を支える重要なインフラです。一般的には交通事故でグルグル巻きの人が通う場所というイメージがあるかもしれませんが、整形外科が担う治療はとても幅広く、特に今回のクリニックのようにリハビリテーション施設と理学療法士を多数抱えるクリニックでは、地域住民の暮らしを支えるサービスを提供しているのです。

いわゆる捻挫・骨折の治療・リハビリテーションであるとか、関節痛やリウマチの検査・治療であるとか、骨粗しょう症の診断や予防・体質改善のアドバイスなど、年を重ねれば誰もがお世話になるであろう内容を全般的に対応してくれるのが整形外科。特に運動器リハビリテーションと呼ばれる、足をやっちゃった選手がドキュメンタリー番組でやっているアレは治療の期間も長く、通いやすいクリニックであることが重要です。ガンの治療なら名医を頼って九州でも北海道でも行きますが、整形外科と整骨院は近くにあってナンボなのです。

スポーツ選手の治療を通じて得た高度な知見と経験が地域住民のみなさまに還元されるというのは、球団と地域との共存共栄という意味でも素晴らしいことです。そういうインフラも含めて地域に運んできてくれるのであれば、平日夜と休日終日に渡って大音量で松崎しげるさんと広瀬香美さんを流しまくる騒音問題に関しても目をつぶろうかなという気にもなっていただけることでしょう(※なお実際には目をつぶるのではなく耳を塞ぐのかもしれないが)。

↓地域の皆様に最先端の医療をお届けします!




そしてもうひとつ、整形外科というのは「儲かる」らしいのです。「開業医、一番儲かる」というキーワードでグールグル検索をしてみてください。出てくるのは整形外科ですよね。提示された資料によればその年収は3400万円ともされています。何故そうなるかと言うと、その診療体系にカギがあるのだそうです。整形外科においては医師の指示のもと理学療法士さんにより行なわれる治療も診療報酬の対象となり、端的に言えばマッサージ的なものも含めて診療報酬が入ってくるのです。さらに介護保険法における医療系サービスの事業者として、多人数に対してのリハビリーテションを提供することも可能であるとも。

整形外科での治療は長期に渡り(※くっつけば終わりではないので)、かつ治療そのものには大きな費用はかかりません。理学療法士さんへの人件費と治療を行なうための広い物件の賃料を賄えば治療は成立しますし、むしろそういう人の手によるクリニックのほうが喜ばれます。「薬飲んで自力で治せ」より「一緒にリハビリ頑張りましょう!」のほうが断然直りそうですからね。問題は高額な薬を使ったり難しい検査を何度もするわけではないことでの単価の低さですが、それは広い治療スペースで多くの患者さんを回すことができれば解決できます。つまり「薄利多売」ができる環境が整えば、整形外科ビジネスは成功するのです。

その薄利多売に必要なものをプロスポーツチームは最初から持っているわけです。

日本中に知られるブランド力。有名な選手が患者となって広告塔的な働きをする告知力。野球やサッカーができるくらいの広大な敷地と、そこにやってくるお客をさばけるだけの交通機関と駐車場(※怪我した人はクルマで来るので多少僻地でも問題ない)。チーム側にとってもメリットがあることで、物件や土地の賃料については「ご相談」ができて有利でしょうし、選手が実際に怪我をして治ってくるのを見たら受診時の不安も生まれません。「選ばれるクリニック」になるのは請け合いです。

この構造は、西武側が思いついたものではないだろうと思います。「プロ野球では初」と限定的な強調を繰り返しているように、今回パートナーとしてクリニック運営を手掛けるアスリートメッド株式会社さんは、すでに他競技において同様の先行事例を手掛けています。Jリーグ鹿島アントラーズと手掛けたアントラーズスポーツクリニック。リーグワンの埼玉パナソニックワイルドナイツと手掛けたワイルドナイツクリニック。そして社会人ラグビーの横河武蔵野アトラスターズと手掛けた武蔵野アトラスターズ整形外科スポーツクリニック。今回はさらなる拡大の一手として、いよいよプロ野球との協業に乗り出した、ということなのでしょう。

ちなみに、この武蔵野アトラスターズ整形外科スポーツクリニックはウチの近所のクリニックなので、個人的にも近くを通ることがあります(※診療は受けていないが)。横河電機の保険組合の診療センターの一角に居を構えており、資本関係から見ても「ご相談」が効いていそうな物件だなぁとは思っていましたが、何でこんなところにと思ったものです。しかし、改めてビジネスという観点から見ると非常に先見性があり、伸びそうなジャンルだなということを感じました。あれは新ビジネスの実験店舗だったのだなぁと感心しました。

超高齢化社会を迎え、日本人の半分以上がヒジ・ヒザ・腰が痛むようになったら、カフェ通いを止めて、整形外科で通所リハビリテーションを受けるようになるでしょう。そのときプロスポーツという金看板を掲げていれば、地域の整骨院や鍼灸マッサージ店との競争にも容易に勝ち抜いていけるはず。知らない整骨院よりはライオンズクリニックに行きますからね。怪我した選手もいそうだし。いやー、何ならちょっと株を売っていただきたいくらいに魅力的な事業です。

↓トップ選手を診ている先生が自分のリハビリを助けてくれるという圧倒的な魅力!

痛いところなくても行ってみたくなりますね!

ちなみにアントラーズスポーツクリニックは大盛況だそうです!



どうでしょうこのチームよし、地域よし、ビジネスよし、ファンよしのウィンウィンウィンウィンな仕組みは。この取り組みが成功するように、埼玉西武ライオンズはしっかりと怪我人を送り込んでいかなくてはならないと、改めて奮い立ちますよね。もちろん望んで怪我をするわけではないので確約は難しいですが、怪我をすることも辞さないくらいの熱量でプレーしてくれれば、ある程度は自然に出てしまうでしょう。まずは熱いプレーに期待していきたいものです。

ドキュメンタリー的な絵面としては手の治療より足の治療がいいなと思いますので、走って、走って、走り抜いていくのがよいのではないでしょうか。野球界では初となる「怪我し放題球団」として、どこよりも熱いプレーと、どこよりも早い回復で他球団を圧倒していきましょう。2024年の開業を待ち切れずに、2023年に怪我しちゃわないよう、そこだけは気をつけてくださいね!

↓ということで、我らが埼玉西武ライオンズの2023年スローガンは「走魂」です!

走る⇒怪我する⇒治るのサイクルを高速でぶん回せ!

我らにはライオンズ整形外科クリニックがついている!


「怪我人はクルマで来るから立地より駐車場が大事」は目から鱗でした!