スポーツ見るもの語る者〜フモフモコラム

ラグビー

ジャパンラグビー・トップリーグ開幕戦は「質」「高揚感」「緩さ」が奇跡的バランスで共存する、あのお祭りのつづきだった件。

08:00
ラグビーのお祭りはまだまだつづく!

12日、ジャパンラグビー・トップリーグが開幕しました。2015年ワールドカップ後には「企業向けのチケットを確保しすぎたことにより、一般客を入れ損ねて空席祭り」という大失敗(アチャー)をやらかしてしまったラグビー界ですが、今回は見事に雪辱に成功。聖地・秩父宮ラグビー場には2万大観衆が集い、華やかに開幕を迎えました。

各チームにイイ感じに散らばった日本代表たちと、ほかの競技では考えられないほど「世界のトップ」がシレッと混ざっているチーム編成。野球やサッカーには「マジモンの現在の世界トップ」はなかなかやってきませんが、ラグビーはついこないだワールドカップで優勝したメンバーさえもシレッと混ざっています。国内リーグとは言っても、ここには「世界」があります。

↓僕が行った試合でも、シレッと南アフリカ代表で世界一になったマルコム・マークスとかが出てましたよ!
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世界最強フッカーともいわれる掛け値なしのワールドクラス!

もちろん日本代表戦でも活躍した選手です!


↓ほかにもオーストラリア代表サム・ケレビのキャリーに驚愕するなど!
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「新外国人を見たらワールドクラスと思え」くらいにシレッと大量に混ざっています!

神戸製鋼、トヨタ、パナソニックあたりは「世界選抜かな?」みたいな顔ぶれです!


↓「現役の、こないだのワールドカップにも出ていた、オールブラックス」と「現役の、こないだのワールドカップにも出ていた、日本代表」の激突なども!
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「スターを探せクイズ」みたいなのができそうなくらい、います!

大体どの組み合わせでもひとりくらいはスターがいますよ!

大体!



試合内容も大変充実しており、何よりもまず選手の意欲が高い。あの熱狂を終わらせないぞという意気込みが、試合展開によらずに最後まで奮闘をつづける姿勢によく表れていました。ワールドカップはよかったけれど、戦いはすでに新しいラウンドに入り、そこで頑張らなければいけないのは自分たちひとりひとりなのだという「自覚」。今度は自分たちがやってやるという熱量。ワールドカップを見たあとの目で見ても、熱さ、楽しさ、十二分です。

そして、やはりというか日本代表選手たちは輝いていました。各地から届く「日本代表大活躍」の報せ。日本代表がお目当てでやってきた観衆がたくさんいるという状況で、その期待に応えるプレーを見せるあたりはさすがの千両役者ぶりです。僕が観戦した試合でも、松島幸太朗さんのスピード・センスに「それぐらいできる選手だと知っていた」はずなのに、また改めて驚かされました。

松島さんが所属するサントリーは前半途中でひとりを退場で欠き、ずっと人数不足で戦っている状態でした。当然、大外での数的不利が生まれ、役割上フルバックである松島さんに負担が掛かる展開でした。そこを狙って相手も攻撃してくるわけですが、「パスを出すヤツ」「外で受けて、さらに大外に渡すヤツ」「大外で受けるヤツ」という3人をひとりで睨みつけ、2人目にチェックに行きながら、「ボールと同じスピードで大外まで走っていき本命の3人目を捕まえる」という守備を見せたときには、ワールドカップばりの声が出たほど。「速ぇえ!」「何これ!」「ヤバい!」でした。

さらに攻撃面でも「股抜きパス」でのトライを演出。身体を内側に向けて、どう考えても内に切れ込んできそうな素振りを見せながら、まるでアメフトのスナップのように「股抜き」で後方へパス。相手守備も虚を突かれる格好で、一気にトライまでつながるという「新聞1面級」のプレーでした。

↓サム・ケレビの中央突破から外へ展開し、松島の股抜きパスでトライへ!


ただ、サントリーは試合には負けてしまったので、1面はパナソニックの福岡堅樹さんが決めた独走トライかもしれませんが!

とにかく面白かったし、盛り上がりました!



開幕戦を観戦して思ったのは、あのお祭りはまだつづいているなということ。試合自体も満足できるものでしたが、とにかく選手も運営も観衆も燃えていました。心にあのワールドカップを残したまま、「アレに負けないように」と奮闘する選手、「アレを求める期待にできるだけ応えよう」とする運営、そして「アレが見られるんですよね!」というワクワクした気持ちの観衆。すべてが「アレ」を基準にして高まっていました。

いわゆる「にわかファン」と呼ばれるような人たちの多さ。僕もそういうひとりなわけですが、「楽しもう」という気持ちがそこかしこで感じられます。ルールを知っている仲間を頼りに食い気味で試合を見守る若者たちであったり(※すごい飲んでる)、熱い声援を送る少年少女ファン(※ニンテンドースイッチとかで遊ばない)、『リーチ!』っていうヤツをやってみたくてたまらなくて何でも『リーチ!』しちゃう兄さんたち(※『ゲッツ!』みたいになってきた)。そのワクワクした感じだったり、慣れきっていない感じだったりが、まるでワールドカップのような高揚感を生み出しているように思いました。

この高揚感は慣れきった観衆だけではなかなか生まれないものでしょう。去年の繰り返し、大体知っている出来事、そういう感覚からは生まれない何かが「初めての日」にはあるものです。その意味では、今のラグビー・トップリーグというのは奇跡的なバランスの上にある観戦環境だと思います。質に関しては「世界トップが集う」十二分に素晴らしいものであるのに、多数の「にわかファン」による高揚感に満ちていますし、雰囲気はよくも悪くも国内マイナースポーツ基準で緩い。隣の席に座った「選手の同僚や家族」が話す裏話を聞きながら有名選手のプレーを見守るなんて、なかなかあるものじゃありません。お客さんも関係者もごちゃ混ぜのカオスです。

もう少しリーグが発達して「プロ化」などされると、ちゃんと導線をわけましょうねとか、ちゃんとセキュリティを確保しましょうねとか整っていくわけですが、今はまだ「奇跡的に」それが追いついていません。さっきまで試合をしていた日本代表のスターが、観客席を突っ切って帰ったりするような場です。マイナーの環境でメジャーが見られる、稀有なる状態が今のトップリーグにはあります。すべてがきちんと整う前に見ておくことで、「今はまだ可能な」体験もできるでしょうし、のちのち「今はよくなったよね」と感じる進化も生まれるでしょう。

↓ラグビー恒例、選手たちとのグリーティングは「各チーム3名ずつ」「指定場所」で、となった模様!
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以前は選手が周回しながらハイタッチしてくれたり、広場で写真撮影してくれたりしたものだが…!

試合終了後に最前列まで焦って行かなくて済むのはいいことですかね!


↓と言いつつ、個人の判断で近づいてきたりするパターンも!
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実際の距離も近いし、距離感が近い!

「多少ヘンな輩がいても、ワシらを傷つけることはできまい…」「ワシら190センチ100キロだから…」「ナイフと拳銃以外なら大丈夫やろ…」という絶対的自信を感じる!



大変大きな希望、未来を感じるような2020年の開幕でした。ラグビー界が見据えているというプロリーグ構想、2024年頃とされている秩父宮に変わる新ラグビー場整備計画、日本代表が南半球の強豪国との対抗戦に加わるのではないかという噂。何か新しいことが起こりそうなトピックがラグビー界にはまだまだたくさん待っています。「ワールドカップにわか」の先にも「プロにわか」「新スタジアムにわか」「ワールドカップにわか(再)」などを楽しんでいけたら、ずっとこの祭りをつづけられるのではないでしょうか。夢は始まったばかり、まだ終わりません!

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2015年は失敗しちゃった開幕戦、今日は大入り。

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メインもバックもビッシリです。

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貴賓席には嵐の櫻井クンもいたそうです!(※見えないが…)

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椅子の色をランダムにする必要もないほど、本当に隙間がない!

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ちなみに2015年は空席祭り+悪天候でこんなんでした。2020年とは天地の差。

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最終的には「一番奥」で「モニターが頭上で見えない」北スタンドにもたくさんの人が。

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選手入場では頑張って炎を出してみました。

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「にわかファン」が映える記念撮影スポット。

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試合中は場内解説とルール表示で「にわか」でも何が起きたかわかる仕組み。

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「自分、トライとる仕事ちゃうやろ!」「ベッドで跳ぶな!」「持たせるなら枕だろ!」とツッコミどころだけで作られたビデオ判定用の画像。

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観戦マナーのご案内もラグビーらしさアリ。

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まずは開幕戦お疲れ様でした!讃え合ってお別れです!


大相撲のようなほっこりエンタメになれる素地がラグビーにはあります!

男たちが笑顔と涙でいっぱいになったラグビー日本代表「ONE TEAM」パレードに行き損ね、逆にONE TEAMへの熱気高まるの巻。

12:00
ONE TEAMになりそこねました!

12日、東京ド真ん中は丸の内仲通り。2019年の日本を興奮と感動に包んだ男たちが再び集結していました。ラグビー日本代表の凱旋パレード。流行語大賞も獲得した「ONE TEAM」が感謝をこめて、今後のますますのご発展を祈るパレードを行なったのです。

「平日の昼間か…」丸の内周辺のサラリーマンに配慮された時間設定は逆に僕個人には都合が悪く、残念ながら参加することはできなかったのですが、それでも5万人という大観衆が沿道には集いました。わずか800メートルの道は人で埋め尽くされ、周辺のビルで働く人も桜のジャージを身にまとう。すでに大会閉幕から1ヶ月以上が経っているわけですが、2次会、3次会、4次会、5次会…くらいつづく長いお祝いのような気分です。

現れた男たちは揃いのダークスーツで決めています。身体もデカいし、顔もいい。浮ついたところも多少あるのかもしれませんが、それを重厚な身体と振る舞いがしっかりと押さえ込んでいるその感じ。まさに「丸の内」が似合う風貌。「プロ」という扱いとはまた違う、どこか「実業団」然とした姿に改めて好感を覚えます。

挨拶に立つのはもちろんキャプテン・リーチマイケル。ラグビー日本代表が話題になるたびに「何故外人」という疑問・違和感などを表明されるのが常でしたが、今大会を経てそうした声は鎮まるでしょうし、とりわけリーチに対してはそういった疑問や違和感を抱いている人はもはやいないでしょう。ボールを持てば「リーチ!」と声があがる日本代表の大黒柱。生まれた国がどこであろうと「ONE TEAM」になったなら仲間である。その統合の象徴のような、立派なキャプテンでした。

↓リーチマイケルは銅像も建立されました!

中島イシレリ像はいらないと思います!

本当に、心から、普通にいらないと思います!


↓っておーーーい!!後ろの「ONE TEAM」がリーチの挨拶を全然聞いてないぞ!


マフィ、そのスマホをポケットにしまえwww

ラブスカフニ、面白い客を探すんじゃないwww

まぁ、いつもと同じ話だからいいけど!




田中史朗はパレードが始まる前から泣いています。「また泣いているんか!」と突っ込まれながら、スマホで撮影されまくっています。「2011年のときは誰もいなかった」と少し前の、遠い時代を振り返る田中の涙。自らの手で歴史を変え、それを目の当たりにした達成感・感慨はどれほどのものか。その横を通過する稲垣啓太がいつも通りの無表情なのを見ると「笑わない男ってより、顔の表面が動かない男だな…」と新たな気づきも生まれます。図らずも「絶対に笑ってはいけないゲーム」を24時間365日やる運命を背負ってしまった男はこの日も無表情スタイルを頑張って貫いています。そして、ときどきちょっとだけ笑っています。

歩き出したラグビー日本代表は列を作り、牛歩の動きです。パレードというとオープンカーに乗ったりトラックに乗ったりするものですが、「背も高いしエエやろ…」ということで全員普通に歩いています。途中には撮影がしやすくなるお立ち台スポットが設けられ、長い時間をかけて御礼を伝える選手たち。その間も田中の涙が止まりません。あまりに涙が止まらないので、完全に別のイベントのようです!

↓なんか「お通夜にきた親友」みたいになってるぞ!

お焼香の列かよwww

数珠、数珠、数珠を持たせて!




「よく考えたら800メートルって短くないか…?」と傍目には思うようなコンパクトなパレードですが、男たちはゆっくりと噛み締めるように40分をかけて歩いていきます。本大会を中継した日本テレビはもちろん、TBSまでもその模様を生中継でお届けしています。むしろTBSのほうが最後のインタビューまでしつっこくお届けしています。

思えば大会前にドラマ「ノーサイド・ゲーム」でラグビーを盛り上げたのはTBSでした。「馬と鹿」という新たなラグビーソングの誕生、俳優・廣瀬俊朗の発掘、大会が終わってからやればもっと「回収」できただろうコンテンツを、大会前にあえてやった本大会と関係のない局のやる気。そういった部分も含めて「ONE TEAM」だったなと思います。

とかく自分の利益を最大化することだけに注力しているような社会の風潮のなかで、「自己犠牲」「献身」でつながるチームは美しい。決めたひとりだけでなく、潰れながらそこにつないだ人たちに等しくスポットライトが当たるチームは美しい。そこまでしないと届かないような遠い目標だったこと、そんな目標を達成したこと、まっこと素晴らしい。よくやってくれた、ありがとう、と何度も胸が熱くなる想い。おのれ…何故平日昼間にやるかね…行きそびれてONE TEAMになり損ねた感じではないか…!もう1回休日にもやってくれんか…!改めて熱気と愚痴が高まるパレードでした!

↓おめでとう、ありがとう、ラグビー日本代表!


田中フミは最後までお通夜スタイルでしたが、動画の53分30秒くらいでちょっとだけ笑顔でした!

個人のご成功をお祈りするとともに、つつしんでお祝い申し上げます!




さぁ、そんなONE TEAMのみなさまに朗報です。インタビューで選手たちが繰り返した「次はトップリーグに」の言葉。すでにチケット完売試合も発生し、盛り上がったにわか熱が行き場を失っていたトップリーグのチケット追加販売が本日12日18時より行なわれます。機材席や競技運営席等の見直しにより、一部の試合のチケットが追加販売されることになったという希少な機会。完売していた聖地・秩父宮での開幕戦もしっかりと含まれています。これは見逃す手はありません。ぜひゲットしていきたいもの。

まぁ、せっかく歩いてパレードするなら選手がサイン入りチケットでも売って歩けば将来の試合までガツガツ売れたような気もしますが(※何故か東京の人が福岡のチケット買っちゃったりとか…)、それはまた今後の追い込み策として検討していきたいもの。そのうち「すっかりブームも落ち着いたな…」と思う瞬間はくるのでしょうが、このお祝いができるだけ長くつづくよう、「ワシら頑張ったな…」と泣きつづけられるようONE TEAMで集っていきたい。僕もパレードで高まった熱気をトップリーグにぶつけるべく、もう一度開幕戦の争奪にトライしようと思います。どうぞみなさんもお見逃しなく!

↓完売済みだった開幕戦、東京近郊の2会場も追加販売です!

2015年は「スポンサー分を取り過ぎて一般チケット完売なのにスカスカ」だったトップリーグ!

今回はしっかり選手を泣かせていきましょう!


なお、現時点で売り切れの試合は「一部の開幕戦だけ」なことは内緒です!

15年の長い大会準備期間を経て「終わりの44日間」を駆け抜けた2019ラグビーワールドカップ日本大会、大大大成功で閉幕の巻。

08:00
ラグビーワールドカップ、ありがとうございました!!

15年です。この大会の招致を目指して動き始めてから。世間でよく言う「44日間の大会」なんてものではありません。長くて、険しくて、先の見えない道でした。たくさんのことがありました。ワールドカップの招致を目指してからでさえも、4回のワールドカップがありました。2007、2011、2015、2019。全部がつながっていました。全部がひとつでした。ほとんどが辛く、ほとんどが絶望のなかにありました。

2007年カナダ戦、日本が13年つづいた連敗をようやくドローで止めたトライは、中継局が挟み込んだCMによって消し飛ばされました。2011年同じくカナダ戦、残り6分8点リード、やっと勝利を手にすることができると思った試合はまさかの失速によって再びドローに終わりました。1991年大会以来「ひとつも勝っていない国」は、そのときすでにワールドカップを2019年に開催することが決まっていました。どうなるんだよ、どうする気だよ。言えない言葉がたくさん浮かびました。

2015年南アフリカ戦、あのブライトンの奇跡。それは試合中盤までズタボロにやられていたチームが猛反撃に転じる乾坤一擲のトライのようなものでした。ことの始まりから11年を経て、もしかしたらワールドカップを成功させることができるかもしれないと、初めて思いました。いや「この勝利に報いるために成功させなければならない」と思いました。何ができるわけでもありませんが、伝える、買う、楽しむ、この3つをやり切ろうと思いました。

2019年何もかもが素晴らしかった。我慢と苦労を重ねて、台風にも負けずにやっと実ったコメが炊き上がったときのような気持ち。ホカホカと上がる「熱気」と、噛み締めるその一口の甘さ、あたたかさ。美味いなぁ。これは本当に美味いなぁと涙がこぼれました。たくさんの苦労があって、最後に実った44日間。それは始まりなんかではありませんでした。15年の物語がひとつの収束を迎える「終わりの44日間」でした。

そして2019年11月2日、15年のすべてが報われるようにしてこの物語はグランドフィナーレを迎えました。2019ラグビーワールドカップ決勝戦。横浜国際総合競技場には史上最多となる70103人が集いました。2002年サッカーワールドカップ決勝をも上回る「緩衝帯を必要としない」大観衆。本当に佳き日でした。贔屓目が過ぎるかもしれませんが、もしかしたら今大会が史上最高のラグビーワールドカップだったかもしれないなと思うくらいには、胸を張っています。この大会は大大大成功でした!

↓日本にラグビーワールドカップを呼んで、本当によかった!


よく呼んだね!よく決断したね!よく頑張ったね!

長かったね、ここまで!

あっという間だったね、この大会は!




並び立つ両チーム、イングランド代表「レッドローズ」と南アフリカ代表「スプリングボクス」。イングランドを率いるのは2015年は日本代表でともに戦ったエディー・ジョーンズ。対するは2015年に倒し、2019年に倒された日本と因縁深いチーム南アフリカ。グランドフィナーレにふさわしく、どちらが勝っても喜べるし、どちらにも心を乗せて応援できる顔合わせ。出来過ぎだと思いますが、この程度の「出来過ぎ」なら起こるだろうと自然に思います。もっとすごい、怒涛の「出来過ぎ」がつながってこの日を迎えた大会なのですから。

↓南アフリカ・ポラードのキックオフで試合開始!

あーーー、あと80分で終わっちゃう!

終わらないでくれーーーー!!


やや浮足立っているかイングランド。開始早々のミスとペナルティでわずか55秒で相手にペナルティゴールのチャンスを与えてしまいます。これはやや遠かったことで外れますが、つづけざまに凶兆が。プロップのシンクラーがタックル時の味方との接触で頭を打って倒れ込んでしまいます。開始わずか3分で交代を余儀なくされたイングランド。スクラムでも押し負けている感触。やはり鶴翼の陣を敷くべきであったでしょうか。南アフリカが押し気味に試合を進めていきます。

先制点は南アフリカ。イングランドが苦しめのつなぎを選択したところからの反則によるペナルティゴールでした。この場面もそうですし、ほかの場面でも「本当に見てからパスしているのか?」と思うほど、あらぬところにパスが飛んでいきます。少し「難しいこと」をやり過ぎに見えるイングランド。これが優勝へのプレッシャーなのでしょうか。

反則級の高さと安定感を誇る南アフリカのラインアウト。「絶対ラインアウトで勝てる」自信があるからこそ仕掛けられる南アフリカのドライビングモール。日本代表がやられたのと同じようなことをイングランドもやられ、苦しんでいます。敵陣に攻め込んでも決定的なゲインを取る場面はなく、反則でペナルティゴールを奪うのが精一杯。

前半32分頃からイングランドが連続攻撃でインゴール50センチまで迫った場面も、結局「ペナルティゴールどまり」でした。南アフリカのタックルが強くて早くてしつこい。どうしてもあと一歩が届かない。しかも、イングランドがペナルティゴールを1本決めれば南アフリカは2本決めるというペースで、ジリッ、ジリッと点差が広がっていきます。まるで日本VS南アフリカ戦の再現のような前半戦でした。点差以上に南アフリカが強いぞ、という。

↓スクラムからのペナルティで得点を重ねる南アフリカのゴリ押しラグビー!

デカいのと重いのと速いのを集めやがってーーー!

こんなんキツいわ!!




後半開始を待つオーウェン・ファレル主将の顔は鶴翼の陣で見せた不敵な笑顔ではなく、不安のようなひきつった顔。オールブラックス戦は「2年半準備した」という自信がみなぎっていたのに、いつもと同じ南アフリカのラグビーに「思ったより強いっすね…」となっているのはどういうことか。まさか「アッチの山で日本が南アフリカに勝つだろ…」と計算でもしていたのか。このまま押されっぱなしでは終われない。イングランド、勝負の残り40分です。

45分にまたもスクラム⇒ペナルティのコンボで南アフリカがPGを決めて3点追加。51分、イングランドはようやくスクラムでひとついい押しを見せて相手の反則を誘い、ペナルティゴールを決めて3点返します。南アフリカ・ポラードとイングランド・ファレルのPG合戦。角度がどうだろうが、距離が50メートルあろうが、狙えるチャンスは全部狙っていく両者。1本ずつをさらに決め合って、イングランド12-18南アフリカとまだまだ1トライ1ゴールで逆転可能な精神戦です。

どちらが先にトライを奪うのか。

試合を大きく動かすのか。

そして――

それはまさに「楕円球」の気まぐれのようなプレーでした。66分、センターライン付近での揉み合いから南アフリカ・マピンピが裏に蹴ったボールは、ポーンと跳ねて、ポーンとバックして、走り込んでいた南アフリカ・アムの手にスッポリとおさまります。そのボールは後ろから追ってきたマピンピに送られ、この試合初めてのトライ!!大きな大きなトラーーーーイ!!

↓膠着破れてイングランドもガックリくるトライ!


いやーーーーポッキリいったな!

イングランドの心が!


イングランドの守備はいかにトライが決定的だとは言っても、反則のアピールをしていたとは言っても、その後のコンバージョンを少しでも悪い状況から蹴らせるために、マピンピを追いかけて端へと押さなければいけませんでした。しかし、それすらできずにトボトボと見送ってしまう。6点差から11点差になっただけではあるのですが、それだけ「現場」には効いたのでしょう。このトライが。

残り12分、13点差。早い時間帯にトライを返せればまだ勇気も出るのでしょうが、イングランドには自分から流れを手放すような反則も多く、前進できません。南アフリカは時間を使うプレーで時計を進めていきます。そして、次にスコアを動かしたのはまたも南アフリカ。解説席からも「決まった…」と大会の決着についてのコメントがこぼれた73分の南アフリカ・コルビのトライ。速くて強いディフェンスで相手のミスを生み、奪ってから一気にインゴールまで駆け抜けた。トライを決めたコルビの小さな身体と細い足、跳ねるようなステップ、まさしく「スプリングボック」でした!

↓決着!2019ラグビーワールドカップは南アフリカが優勝です!!


あーーーーー終わってしまったーーーー!

終わらないでくれーーーー!


↓「よし、南ア勝ったな!トロフィーに名前彫っておこう」と動き出す職人!

彫っちゃだめーーーーーーーーー!!

彫らないでくれーーーーー!!

「絶対決まった」と思っててもーーーー!!


心からの喜びの声をあげる南アフリカと、次こそはとすかさず誓いを立てるイングランド。マイクを向けられた人々は、国と人と家族に感謝し、対戦相手に感謝し、日本にも感謝と労いを忘れず、そしてラグビーに感謝を捧げました。繰り返される「ありがとう」が「さようなら」に聞こえて仕方がありません。

開幕戦にも登場した前回大会優勝時のオールブラックスのキャプテン、リッチー・マコウが携えてきたウェブ・エリス・カップ(※職人がバッチリ南アフリカの名前を彫っておいたぞ)。リッチー・マコウが乗るクルマをリーチマイケルが運転するという粋な演出もありました。キャンドルの炎を吹き消すようなセレモニーが進んでいきます。このカップを手渡し、最後の花火が消えたら大会が終わる。終わってしまう。

始まる前から気づいていた大会が。

ずっと案じていた大会が。

大成功で幕を下ろす。

とても嬉しいのにとても寂しい。

一生に一度なんてイヤだなぁと思います。

また、この人たちと会いたい。

いつか会えるんじゃないか、また。

そう思って、次へと向かいたいなと思います。

日本のラグビーが今より大きくなれば、もう一度くらいは生きてる間にワールドカップがくることもあるでしょう。ここは「日本」ですから。どの国にも分け隔てない態度で接し、ちょっと触れ合うとすぐに相手を好きになっちゃう人々が住む、安全で、快適で、メシが美味い、世界最高のホスト国ですから。

そう信じて「ありがとうございました!!」

↓おめでとう南アフリカ代表スプリングボクス!いつかまた勝ちます!


↓って、おーーーーーーい!!それはいつか日本も獲るから、酒盛りに使うなや!!

洗え…いや傷がつきそうだし、洗剤が大丈夫か不安だから…水で洗え!!

そして乾いた柔らかい布を優しく乗せて水気を取れ!!

4年後もらいにいくから、カップを洗って待っておけ!!




「4年に一度の大きなお楽しみ」がまた増えましたよね!最高ですよね!

何という結末!最後まで魅力的な攻撃ラグビーで魅せたオールブラックスが、最終的に全部を上書きしていった決定的記憶。

08:00
尻上がりの展開!

「日本で2番目に人気があるチーム」とイングランド代表エディー・ジョーンズHコーチは評したそうですが、この大会期間はまさにオールブラックスとともにある時間でした。ラグビーを知らない人にすらその名を知られたスターチーム。黒光りする男たち。そそり立つ漆黒の肉体。まさに日本のアイドルでした。

あらゆる場所に呼ばれ、あらゆる場所で「わたしたちのぜんりょくのはか」を披露され、ときに砂に埋められ、ときにテレビで朝っぱらからラインアウトで芸能人を持ち上げ、そしてすべての試合で大観衆に大満足を与えてきました。「ワールドカップでオールブラックスを見た」という一生の宝。僕もそれを手にしたひとりです。カパ・オ・パンゴは右隣の席にいたアイルランド応援団のライアン(仮名)にかき消されましたが、この記憶は一生ものです。

彼らにとって3位決定戦というのは心から望んだ舞台ではないかもしれません。しかし、オールブラックスが最後の最後までこの大会に居てくれたことは開催国としてもこの上ない悦びです。そして、まさか最後の最後まで尻上がりに盛り上げていただけるなんて。お尻はふたつに割れているけれど、ラガーマンはノーサイド。お尻は左右でONE TEAM。素晴らしい戦いへの感謝と敬意をもって、最後の試合を堪能します。

今大会最後のハカ。すでに優勝はないということで、平常時仕様の「カ・マテ」となりますが、その勇壮さはなんら変わりません。舌出しでおなじみのスクラムハーフ・ペレナラがメンバーから外れたことで、この日のリードはこの試合でオールブラックスを去ることを決めているキャプテンのキーラン・リード。これからは日本のトップリーグで見られる世界のレジェンドが、最後のハカをこの舞台に捧げます。



このクラスのチームにとって「3位」で極限のモチベーションを発揮するのは至難でしょうし、極限の戦いのなかで離脱するメンバーも増えています。厳しく辛い戦いです。しかし、オールブラックスは「いつだって」オールブラックスです。つなぐ、走る、攻める。ともすればフィジカルをベースに守備的な戦いが優位に傾いてもおかしくないこのスポーツを、オールブラックスは「魅力的な攻撃」で守ってきました。伝統国の報道で日本代表が「オールブラックスのようだ」と評されたとき、何とも言えない誇らしい気持ちになりました。夢、憧れ、そのものです。

立ち上がりから攻めるオールブラックスは、前半5分に早速のトライ。最後はフォワード陣がオフロードパスでつないで飛び込みました。どこからでもつなぐぞ。どこからでも走るぞ。高い基本技術は全員がバックスのようでさえあります。何となく日本代表・稲垣のトライを思い出します。つづく前半13分にもアーロン・スミスからボウデン・バレットのゴールデンコンビが、ウェールズラインを一発で切り裂くスイッチからトライ。「トライはこんなに簡単なのか」と魔法でも見ているかのよう。美しい。

↓スローで見ていても逆を突かれる魔法のスイッチ!


キレイに抜けてそのままトライ!

いやー、このオールブラックスを止め切ったイングランド、改めて凄すぎる!




しかし、ウェールズもオールブラックスの守備が一瞬乱れたところを突いて前半19分に反撃のトライ。さらに前半27分にもペナルティゴールを決めて4点差まで追い上げます。南アフリカとの準決勝ではガマンと忍耐のキック合戦のような試合を演じましたが、この日は互いに攻撃的。パスで人を飛ばして外に持っていくような場面もしばしば作り、とにかくトライを狙い、勝つんだという姿勢です。

それでもオールブラックスは、「攻撃」でその上をいきます。前半33分にはベン・スミスが鋭い身のこなしからウェールズDFの密集地帯を稲妻のようなラインで走り抜けていき「5人抜き」のトライ。さらに前半終了のホーンのあとのラストプレーでは、アーロン・スミスから「相手DF3人の間を通す」というスルーパスがベン・スミスに通って前半で4つめのトライ。ベン&ベンの美しいトライ。「狭い門をモリモリ抜けていった!」「何というパスのお通じ!」という素晴らしいプレーの連続で、さらなる感謝の念が沸いてきます。あぁ、何とすごい決定力!

↓なお、この試合は上皇上皇后両陛下もご観戦なされました!

「やっぱり陛下もオールブラックスですか?」
「オールブラックス見たいですよね!」
「どれか1試合と言われたら」
「オールブラックス!」
「日本戦も見たいけれど」
「日本戦に行くと、いろいろざわつくし」
「存在自体がプレッシャー説もあるし」
「何のざわつきもない試合から」
「どれか1試合選ぶなら」
「オールブラックス!」
「もう言うなれば隠居だし」
「何なら毎試合きてもいいんだけど」
「行くこと自体が現場の負担説もあるから」
「ケッ定版の1試合をチョイスするなら」
「オールブラックス!」

陛下ドミーハーでございますなwww

「朕はオールブラックスを希望します」のお気持ち表明www




「後半にどちらが先制パンチを喰らわすか」という五郎丸解説者のハーフタイム解説を受けての後半戦。オールブラックスのキックで始まったかと思えば、すぐさまオールブラックスのパンチが飛び出します。ウェールズのキックミスもあって相手陣内に深く攻め入ると、間の空いたところを的確に突き、崩れたラインの裏に走り込む味方へオフロードパス。「上から神の視点で見ていればそこに穴があるのはわかるが」という穴を的確に突いていく崩しのお手本のような攻撃で、わずか2分であっさりトライ。35-10とかなり大きな点差になりました。

意地のウェールズ、レッドドラゴン。オールブラックスより速く鋭くというのは難しそうですが、自慢の「堅守」を攻撃に転換するように赤い壁がジワジワとインゴールに迫っていく攻撃で食い下がります。59分には20フェーズの連続攻撃からチカラで押し切って反撃のトライ。トライを決めたアダムスはトライランキング首位に立つ7トライ目で35-15とします。さらに人気のダン・ビガーのキックも決まって35-17。まだ点差は大きいけれど、最後まで懸命に戦います。

時間が進み、若干余裕も出てきたオールブラックスは、ベンチで国際映像に抜かれた選手がカメラに笑顔で手を振る場面も。試合中に早くも靴を飛ばしてみたり、決着の時へと確実に近づいていきます。迎えた73分、モウンガが自ら蹴ったボールを追いかけ、ウェールズにキャリーバックを強いる形とすると、敵陣5メートルでのスクラムから最後は先ほど玉を蹴ったモウンガが持ち込んでトライ。勝利を決定づけました!



素晴らしい戦い、素晴らしい大会。ケッ勝戦という最高のデザートを残し、一足先にこの舞台を去るオールブラックス。3連覇は逃すも、最後までオールブラックスはオールブラックスでした。ホーンが鳴ったあともなお、トライを目指すキャリー、そしてオフロードパスでつなぐ技巧。たとえパンツをつかまれようとインゴールを目指す超攻撃的軍団は、かけがえのない記憶を日本に遺してくれました。この結末はきっと忘れられないものとなるでしょう。そのほかのことを大半忘れてしまいそうですが……!

↓世界のSNSで「バナナと桃をエッチな意味で使うの禁止な」という話題が出た日に尻上がりのプレーが出た!

ダメだ、舌出してるオールブラックスとこのオールブラックスしか思い出せない!

素晴らしいプレーを最後に上書きしていった決定的記憶!




さぁ、残すはただ1試合の決勝戦。日本を育てたエディーが率いるイングランドと、日本代表を破って勝ち上がった南アフリカ。どっちに転んでも悦べることは間違いない戦いです。招致、ブライトンの奇跡、チケット争奪戦、本大会、歓喜のベスト8、さまざまな記憶を締めくくるグランドフィナーレです。最後まで楽しんで、心に刻んでいきたいもの。素晴らしい時間への感謝を込めて!


ありがとうABs、次回は日本とも戦いましょう!145点を雪辱します!


ラグビー日本代表は今大会をベスト8で終えるも、倒れた場所でボールを拾い、前へと運ぶ歩みはつづく。ラグビーの前進のように。

07:00
日本ラグビー、カンパイです!

幸せな気持ちでいっぱいです。こう言うと選手はあまりよく思わないかもしれないですが、本当に幸せな気持ちです。ラグビーワールドカップ、日本は準々決勝の南アフリカ戦に臨み、負けました。率直に言って完敗でした。「南アフリカは強いなぁ」と思いましたし、試合途中に「負けるのだろうなぁ」と思いました。いろいろな縁が重なった自国開催の舞台でも、これほどまでに届かないものなのかと思いました。

でも、試合が終わったときの心はどう考えても「負けた」という色ではなかったのです。うなだれて、悔しさを噛み殺す時間ではなく、目に入るすべての人に「ありがとう!」と伝えたくなる喝采の時間でした。輝かしくて、鮮やかでした。そして、そんな気持ちでいた人が、たくさんいたことも感じました。

試合終了後も僕はスタジアムにいました。帰りたくなかったのです。余韻に浸っていたかったのです。たくさんの人がそうやって過ごしていました。写真を撮り、ハイタッチをして笑顔でした。負けたんですよ、日本は。でも喜びがあふれ返っていました。すれ違うスプリングボクスのジャージを着た人に、ごく自然に「Congratulations!」と声をかけていました。手を叩いていました。負け惜しみでも格好つけでもなく、相手には心から「おめでとう」だし、自分たちには心から「ありがとう」だったのです。

日本の代表が僕がいた面に挨拶にきたとき、拍手と喝采が響き渡りました。その直後にスプリングボクスが挨拶にきたとき、彼らは同じくらいの拍手と喝采で迎えられていました。僕が手を振ると、彼らも手を振り返してくれました。「こんなに清々しく負けられるのか」と思いました。後悔もたらればもありません。そんな差ではなかった。でも、こんなにも気持ちいい。「負けたぞー!」と空に向かって叫びたいくらい。最高の気分だったのです。嘘偽りなく。

↓日本代表に心からのありがとうよ届け!よかったよ、本当によかったよ!



↓自国のファンの元に向かうスプリングボクスにも、たくさんのありがとうよ届け!
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僕はこの大会が成功するとはずっと思えずにいました。招致が決まったとき、ほぼチケット代だけで賄わないといけない収支を計算したときに、内心では絶望していました。独自のスポンサーを集めることはできず、140億円という大会補償料…つまり上納金を納めることが先に決まっていたこの大会。運営費用を賄うには、48試合約180万枚のチケットを平均2万6000円で売らなければいけなかったのです。ラグビーのチケットに1000円すら出したことがない人たちに、それを売らないといけなかった。

言葉にはできませんでした。心では「いや、無理だろ」と思いましたが、それを僕が言ったらダメだと思いました。ラグビーは面白い。ワールドカップが日本に来るとは何て素晴らしいんだ。自分の中には確かな「価値」があった。その価値を感じている人間まで先に諦めてしまったらいけないと思いました。「いや、無理だろ」という現実に抗わなければいけないと思いました。その時点では日本代表はワールドカップで1勝しかしたことがない、オールブラックスに「17-145」で粉砕されたチームだったとしても。

準々決勝の東京スタジアム、壮観でした。収容可能人数4万9970人という箱に4万8831人が集いました。日本戦なのだから当然と思われるかもしれませんが、その前日の試合も4万8656人が集っていました。そして、この先の試合のチケットは(リセールで出品されるものがあるかもしれないけれど)もうナイのです。日本の戦いだけでなく、ラグビーが盛大な祝祭となって日本を盛り上げ、世界を盛り上げていたのです。

南アフリカ戦、赤と白に染まったスタンド。選手たちがロッカールームに戻る際に肩を組むと、それだけで大きな歓声が上がりました。入場してくるときひとりひとりへの声が上がりました。君が代を歌うとき、流大が泣いていました。僕も泣いていました。姫野和樹も稲垣啓太も田村優も汗と言い張るには無理がある滴でした。見ろよみんな、この光景をと思いました。見ているか五郎丸、この光景をと思いました。見てますか小野澤さん、大西さん、大畑さん、平尾さん、松尾さん…記憶に残る選手たちの顔を思い浮かべては「にわかファン」なりの涙を流すのです。日本は作ったぞと。日本代表は牽引したぞと。世界に誇れる舞台をここに生み出したぞと。

「この国にはラグビーがある」

伝統国との格差、腹の底では「舐めやがって畜生」と感じることもあったけれども、「17-145」の国ならばそれも仕方ないと思いながら卑屈な笑いでごまかしていたことを、もうそれはしなくてもいいんだと思いました。強い選手がいる。熱いファンがいる。このスタンドにいるファンは、密集のなかのジャッカルを見分けるのです。ひとつのキックがワンバウンドするかどうかの天地の差を理解して拍手するのです。4年ごとのチャンスに「さてどうやって説明したものか」と考えてきた難解なルールを、もう言う必要もないのです。

↓ワールドカップを呼んだ人たちに、ありがとうよ届け!
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よく呼んでくれた!

よく信じてくれた!

よく応えてくれた!


始まった試合。日本は立ち上がりから押されていました。フォワード戦では徹底的に押されました。自信を持って臨んだスクラムでも優位を作れず、モールではそれのみでトライまで持っていかれるほど完全に押し負けました。ブレイクダウンの攻防では、日本はほぼゲインを取れず、逆に相手を止めるのにはダブルタックルでもまだ不足を感じるほどでした。

日本代表の戦いを突き詰めると、最終的には「バックスによる高速展開ラグビー」に行きつきます。スクラムを鍛えた、フィジカルを鍛えた、それは確かにそうですが、それは「それのみで負けない」ために鍛えたのであって、懐に隠している本当の刀はそれではありません。最後はお家芸の「高速展開」を繰り出すのです。タイプ的にはオールブラックスに近いでしょう。スケールはともかくとして。

南アフリカはそれをわかっています。わかっているからこそ徹底的にフィジカルで当たってきます。何も彼らにとって目新しいことではありません。スプリングボクスは「オールブラックスを倒すため」に、そういう戦い方を備えているのです。まず接点で負けない。接点で負けなければ相手は展開した翼を閉じないといけなくなる。翼を閉じさせれば、「それなりの速さで、強いフィジカルを備えたウィング」によるフィジカル強襲ができる。

サッカーで言う「守ってカウンター」のような戦い。南アフリカは徹底的に陣地を取り、徹底的にペナルティを避け、徹底的に手堅くきました。試合途中の計測で南アフリカのオフロードパスはゼロでした。前半、フォワードによるパスすらもゼロだったといいます。素早くつなぐことなど一切考えず、当たって潰れて陣地を保持することを考えていました。日本の攻撃に対してはとにかく一発で大きく抜かれないことを考えていました。日本はボールを「持たされて」いました。

ある意味で噛み合う戦いでした。矛と盾のように。日本は攻めるチームなのです。トライを数多く許すけれど、それ以上に取るチームなのです。本質的には。しかし、序盤に試みたキックでの裏への展開は、「それはさせないよ」と待っている相手によって逆にピンチを生み出しました。高速展開のつなぎはターンオーバーを狙う相手にとっては美味しいチャンスでした。相手のミスで救われたものの「あわや」の場面がいくつもありました。

前半の折り返しは3-5というもの。ワールドカップのベスト8以降にありがちな「ペナルティゴールを取り合う小差の精神戦」のような戦いでした。それを日本の代表がスプリングボクスを相手に演じている。誇らしかった。ただ、厳しさも感じていました。ガラスにヒビが入るように、いつか破綻を迎えるという気配を感じていました。日本が取った3点は相手が一時退場で14人だった時間帯のもの。「15人対14人でようやく互角か…」という想いは先行きの険しさを告げていました。ここぞと繰り出した「スクラムで福岡がボールを入れ、自分で拾ってダッシュする」というスペシャルプレーも防がれました。後半、僕は「頑張れ」としか言えませんでした。どうしろなんてないのです。頑張れ、ただそれだけでした。

↓それでも前半18分にはスクラムで押し勝ってペナルティを取った!


ここで得たPGを田村が決めて3-5に!

日本のスクラムは世界でも戦える!


↓しかし、得意の高速展開ではウィングが勝負をかけてからインゴールまでが遠い!


もっと前から走らせてやれれば…。

インゴールが遠い…。


やがて日本には綻びが生まれてきました。これは当然のことではありますが、日本には余力というものがありませんでした。ボーナスポイントを取り逃がすまいと一番格下であっただろうロシア戦にも全力を尽くし、格上のアイルランドには最高の状態をぶつけ、休みなく戦ってきました。強豪国はどこかでひとつ「メンバーの大半を入れ替えてもラクにボーナスポイントを取る」ような楽勝があるものです。そこで一度リフレッシュしてくるのです。しかし日本はひとつも手を抜いていい試合がなく、アイルランド戦をピークにじょじょに状態は落ちてきていました。

アイルランドやスコットランドを相手に浮沈艦としてゲインを取ってきた姫野和樹も、南アフリカを押し込む強さはありませんでした。ブレイクダウンを制してきたフォワード陣は、ラックでボールを守ろうとしているのに「相手に押されて剥がされる」場面がつづきました。ボールを守れず、逆に奪われる。それはほぼ「力技」という内容でしたが、それに抗することができませんでした。

さらにラインアウトはむしろ「ピンチ」とさえ言える内容。サインを読まれているのかと思うほど、次々にボールを奪われました。競ってきたときの相手は高く、スライドする動きも早い。コッチが投げるボールなので相手は「見てから跳んでいる」はずなのに、コチラより高いのです。ペナルティを得る⇒キックで前進⇒マイボールラインアウト⇒ボールを取られる、という形でチャンスになりかけた場面がチャンスにならずに終わってしまうのです。ペナルティをもらってもチャンスにすらつなげられない壁の高さを感じました。

ジワリジワリとペナルティゴールで離されながら、後半26分にラインアウトからのモールで大きく押し込まれトライにまで至ったとき、「これがワールドカップの準々決勝か」と思いました。この先には全世界で8ヶ国しか進んだことがないんだと思い返しました。そして、全部で4ヶ国しか優勝したことがない、そのうちのひとつが南アフリカなのだと思い返しました。強かった。あまりにも。

↓最後まで戦った、けれどトライを奪えずに3-26で日本は負けた……。


手は尽くしたけれど、向こうが上だった…。

そうだ、ラグビーは番狂わせがほとんどないスポーツだったな…。




トライすらない完敗ですが、この試合は立派な準々決勝でした。かつてこの舞台で見てきた試合のような、特筆すべき負けでも勝ちでもない、これまで見てきたような準々決勝でした。ここまで勝ち上がり、この戦いを演じた日本は、ひとつ上のステージに上がりました。あなどれない相手、敬意を持って叩き潰すべき相手、またベスト8に進出したとしても「ありえる」と思われるチームになった。「奇跡」ではなく「ありえる」になった。

その手応えが、今日のこの1試合の勝ち負け以上に大きいのかなと思います。試合に勝っていないので「勝った」とは言いませんが、長い屈辱の歴史を振り払って、過去の日本を乗り越えることはできました。壁を超えることができました。その意味では、この完敗のなかでも「勝った」と思える部分が確かにあったのです。

日本代表たちは晴れやかでした。

少しの悔しさ、けれど後悔のない笑顔。

ピッチを足早に去る者はなく、むしろ少しでもそこに長くいたいと、座り、笑い、写真を撮り、スタンドの家族を招き入れていました。それを観衆は名残惜しく見守り、立ち去れずにいました。この大会が決まったとき、こんなハッピーエンドを誰が想像できたことか。僕はできなかった。したかったけれど、あまりにも遠く思えた。恥ずかしながら、信じる気持ちはか細かった。けれど、やってくれた。素晴らしい試合、素晴らしい大会、誇り高い日本代表。ラグビーの「美しさ」の部分を、今大会で初めてラグビーに出会ったたくさんの人に刻み込んで大会を終えられるなんて。

あまりの嬉しさで、僕は今大会初めてハイネケンを飲みました。家に帰れば自分なりの記録も書かねばならないので、飲んで眠くなったりするのは避けていたのですが、この夜は飲まずにはいられませんでした。美味かった!この日のハイネケンは一生ものの味でした。カップを手にコンコースを歩けば、たくさんの人が祝杯をあげ、「Cheers!」と声を掛けてきます。南アフリカのジャージを着た知らない人や日本のジャージを着た異国の人との乾杯は、スタジアムを去る寂しさを紛らわせてくれました。

ラグビーの魅力。

僕は「思い通りにならず、何度も倒れるけれど、少しずつ前に進んでいく」ことだと思います。

一歩ずつしか進めず、ラクな道はどこにもありません。時間がかかります。手間が掛かります。ジワリジワリとしか動きません。ひとたびボールを蹴れば、どこに転がるかわかりません。前に進むどころか、落とし穴に落ちることさえある。だから、頑張れと思うし、声よ届けと思うのです。諦めたり、決めつけたりしていい瞬間はラグビーにはないのだから。頑張れば頑張ったぶん、ほんの少しずつだけ勝利に近づくのだから。目指す先が、たとえ絶望的に遠いハッピーエンドであったとしても。

ラガーマンたちが好んで使う「楕円球」という言葉。そこには自分たちが扱っているものは、「真球」ではない、思い通りにならない不都合なものなんだという自負が込められていると思います。投げづらく、取りづらい。蹴ったときにどう転がるかわからない。でも、その不都合に向き合って、挑みつづけている者なのだ自分たちは、という自負が。それは誰しもが挑む「人生」と同じ質のものです。人生に勇敢に立ち向かいたいと思う僕たちが、どうして共感せずにいられましょう。

2019年日本代表は前進しました。

一歩、あるいはもっと大きなゲインで。

今はベスト8で止められました。ただ、ボールはまだ保持しています。潰れた味方の元で拾われるのを待っています。スクラムハーフよ拾え。スタンドオフよ捌け。フォワードよ潰れろ。バックスよ駆け上がれ。止められたら一度ボールを置けばいい。進んだ一歩は無駄にはならず、また次なる男たちが楕円球を拾い、未来へ運んでいくはずだから。ラグビーのような歩み、ラガーマンにできないはずがありません。いつかきっと、この先へ。

ありがとうラグビー日本代表。

おめでとうラグビー日本代表。

ラグビー日本代表に乾杯!!

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忘れられない大会になりました!この試合に立ち会えて感無量です!!
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