2006年04月22日

ガープの世界

c058a041.jpg知人に看護婦さんと
結婚した男性がいる。
それもかなり腕のいい看護婦と。

誰から見ても人生に対する意気込みに
欠ける彼は“大甘男”。

選んだ理由は“病気になったら、
かいがいしく看病してもらえる”。

現実。

かいがいしく看病などしてもらえない。

“風邪をひいたので仕事休む”と彼が朝、
布団にくるまってると、表情ひとつ変えず奥さんは
さっと布団をはぐり、脈を見、体温計を脇にブッ挟み、
ノドチンコを点検し、時計をにらみ、寝ている彼の上空から、
冷ややかに一瞥し「熱は微熱、のどは腫れてない、
下痢も無いんでしょ?ま、一日、寝てれば、治るよ!

私はきょう夜勤だから。じゃ、行ってきま〜す!」・・・・と、
彼は置き去りにされるのが常だそうだ。

だ・か・ら・・・自立してない男は困るんだわねー。(笑)

看護婦の彼女は・・・“知っている”のである。

知っているから、たじろがないし、的確な予測もできる。

あいも変わらず長い前置きで失礼。
1982年の傑作「ガープの世界」での
グレン・クローズ扮するジェニー・フィールズ
(ガープのお母さん)は、まさにあくなき探究心と
確固たる知識で、ガープ(ロビン・ウィリアムズ)の
生き方を位置づけた女性。

彼女の職業は、“看・護・婦”。

映画ではジェニーの台詞で短く語られる、
息子ガープの“父親”の一件。
いや、ガープを“身ごもった一件”といったほうが・・・。

特殊ですよ。
かなり、特殊です。

こういう“身ごもり方”をする作品は後にも先にも、
この映画だけではなかろうか。

ガープのお母さんは“徹底”しております!

命名もユニーク、T・S・ガープ・・・T・Sは3等軍曹の略。
“身ごもりの一件”は原作のほうが、リアル!
(ぜひ、お読みになって下さい)

前半部は女手ひとりで息子ガープを
育てあげる母親ジェニーに主眼が置かれています。

グレン・クローズは本当にうまい女優さん!
“静”と“動”の使い分けが巧みな演技で思わず、唸る。

どこの世界に街角に立ってる女のそばに
つかつか寄って行き

「あなたは売春婦さんですか?
お値段は、おいくら?肉欲ってどう思います?」

こんなこと、直に息子の面前で訪ねる母親って、いる?

ジェニー・フィールズという女性は、こういう生き方なのです。

世間で言う“常識やモラル”を完全にトッパラッて、
果敢に前向きに、「人生は冒険よ!」と言い切っております。

作家をめざす息子に触発されて
「じゃ、お母さんも、書く!」とか言って
本当に書いて、それがものすごいベストセラーに!
本の題名は「性の容疑者」。
女性問題のパイオニアとして一躍、超有名人に!
辛い過去を背負って生きている女性たちを代弁し擁護する
コロニーまで作ってしまう。

このような母親に多少は辟易しながら、
ガープの青春も結婚生活も一筋縄では行かない、
かなりストレンジな展開に・・・。
そりゃもう、原作ジョン・アービングですから、
何でもあり〜です。(笑)

人間やってりゃ、いろんなことがあるさ。

さっきまで幸せそうに笑っていた人が
次の瞬間、どん底に落とされる。

信じていた人に裏切られるなんて日常茶飯事だろ?

自分だって、意図しなくても他人を傷つけたり裏切ったり・・・

きのうまで不幸だと思っていた人が
きょう、ベリー・ハッピーな人に。

かけがえのない人が突然亡くなったり、
予期せぬ事故にあったり。

「ホテル・ニューハンプシャー」('84)
「サイモン・バーチ」('98)
「サイダーハウス・ルール」(’99)
「ドア・イン・ザ・フロア」('04)

アービングの世界観は一見、特異に見えるかも知れない。
若い頃はとくにそう思うかも知れない。

今はちがう。

・・・人間は複雑怪奇なもの、人生も同じ。
   混沌としている。
   その時はショックだったけれど
   時間を経てながめてみると
   景色がちがって見える。

   わからなかったことが見えてくる。

   感じられなかったことが、
   きちんと“実感”できる。

母親ジェニー・フィールズが息子ガープに言う。

「人間は、いつかは、みんな、死ぬわ。私も死ぬわ。
そして、あなたも。でも、大事なこと、忘れないで!

・・・死ぬまでは、人生を“しっかり”生きること!」

これです。

アービングの言いたいことは、これです。


193cmの巨漢オカマのジョン・リスゴー。
名優同士のご夫婦、ジェシカ・タンディとヒューム・クローニン。
これが映画デビューのアマンダ・プラマー、
(「パルプ・フィクション」の
ハニーバニーが忘れられない!大好き!)

監督はワクワク娯楽作品の名手、
「明日に向かって撃て!」
「スティング」「スラップ・ショット」の
ジョージ・ロイ・ヒル!

ポール・マッカートニーの「When I was 64」が、
のどかに流れ、青空に男の赤ちゃんが
フライ・フライしているオープニング!

あの愛くるしいベイビーが
ゆっくり飛んでるシーンだけで
私は・・・つかまれて・・・しまった、映画です。


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1. 「ガープの世界」  [ そして今夜も眠れない ]   2006年06月08日 23:48
ぁ、な、な・・・・・なんでだぁー!!! 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。 あ、つい、取り乱してしまって。 落ち着いて、と。 こういう映画、嫌いじゃな・・いや、??
2. ガープの世界  [ テアトル十瑠 ]   2008年11月20日 16:36
(1982/ジョージ・ロイ・ヒル監督/ロビン・ウィリアムズ、メアリー・ベス・ハート、グレン・クローズ、ジョン・リスゴー、ヒューム・クローニン、ジェシカ・タンディ/137分)
3. 映画評「ガープの世界」  [ プロフェッサー・オカピーの部屋[別館] ]   2017年03月20日 16:17
☆☆☆☆(8点/10点満点中) 1982年アメリカ映画 監督ジョージ・ロイ・ヒル ネタバレあり

この記事へのコメント

1. Posted by ブノワ。   2006年04月22日 07:37
viva jijiさんへ。
おはようございます。この映画好きです。僕の生涯のベストは「サンセット大通り」と「ソフィーの選択」そして、この「ガープの世界」が入って来るかも……。アーヴィングは原作も映画も好きで、特に映画化がどれも高水準だと思いませんか?この「ガープ〜」は、僕が初めて知った「微妙に変な世界」(笑)……ご存知の通り、かなり変人の僕は「こんな世界もあるんだぁ」と、変に納得、励まされ、大きく頷き一人ごちた覚えがあります(笑)多分、俳優全員のキャリアの一番いい時期が丁度ぶつかった作品かと……俳優たるもの、助演から主演になったからって言い訳ではないですもんね。G・クローズは、これと「ナチュラル」「危険な関係」が一番いいかな。関係無いけど、僕の友人に、顔も変人ぶりもアマンダ・プラマーにソックリな奴がいます!男です(笑)
2. Posted by viva jiji   2006年04月22日 08:08
おはようございます。ブノワ。さん!

「どれも高水準」「微妙に変な世界」・・・そうです、そうです!
理不尽なアクシデントの連発で完全に落ち込みそうなのに、つぎのシーンでは「さっき泣いたカラス」がもうご飯食べて笑ってる!
アーヴィングはこれがいい!
“人生はいろいろあるけど捨てたもんじゃない”!ってね。
>俳優全員のキャリアの一番いい時期が丁度ぶつかった作品・・・
「ホテル・ニューハンプシャー」はその最たる作品と思います。

G・クローズはブノワ。さんの挙げた他にローレンス・カズダンの「再会の時」、これも好きです。あと「運命の逆転」「彼女を見ればわかること」なども。
彼女、2月に3度目の結婚したんですね。58歳ですと。
バイタリティのある女性ですね。
3. Posted by 有閑マダム   2006年04月22日 12:07
ジョン・アーヴィング、いいですね!
私も始めて読んだ若い頃は、結構びっくりしたのですが、「微妙に変な世界」を大げさな口調でなく淡々と描くところが好きです。
ドア・イン・ザ・フロアを読もうと手元に置きながら、なかなか今手をつけられないままでいますが。
4. Posted by viva jiji   2006年04月22日 12:34
マダムさんへ。

おー、「ドア・イン・ザ・フロア」!マダムさんに同じ!
私の場合、手をつけて投げてあります(笑)
思い起こせば「ピアニスト」も「めぐりあう時間たち」もそうだったわ。
5冊ぐらい同時進行で読むから、どうしても読みやすいのに行く(笑)

お話変わって、「萌える男」談義は少々“暖簾に腕おし”気分で
後味悪いです。(笑)
マダムさんの言葉がアタマに蘇ります・・・世界観が違う・・・これに尽きる・・・いいえ、いいんです!尽きることにしましょうよ!(笑)
でもプロテニウスさんの言ったこと気になるなあ・・・
「社会現象」までなっているって。おいおい、ホントにそうなの???
5. Posted by 有閑マダム   2006年04月24日 10:08
平行読みは、私もしますけれど、5冊同時進行はすごいです。
viva jiji さんがそうなら、私も読み始めるまでにしばらく時間を要し、読み始めてからがまた果てしない時間がかかるかもしれません。

暖簾に腕押し、糠に釘。
きっと、ホンダさんのような方とお話したとしたらお互いがそう感じたまま平行線をたどるのだろうなあ・・・と思います。
これは、共感できなくても(世界観が違うので、お互い共感のしようがない)「そのように考える人もいるのだ」とわかっただけで良しとしようと思います。 
それにしても・・・ここまで被害者意識を強くしてしまうものって何なんでしょう??
6. Posted by viva jiji   2006年04月24日 15:34
マダムさんへ。
さっき「アイスエイジ2」を観た帰り本屋さんに立ち寄り(いつものコースです)、例の「萌える男」、手にとって少し斜め読みしましたよ!
ホンダさまのお顔もジーッと拝見。(笑)購入には至りませんでした。(笑)やあやあ、きょうも買ったね、3冊ばかり・・・「他人を見下す若者たち」「食品の裏側(添加物の話)」「ベスト・オブ・ジャズ・ピアノ」。
ちなみに今同時読書中なのは・・・「信仰が人を〜」「徒然草・方丈記」(嵐山光三郎・三木卓)」「ガラクタを捨てれば未来が見える(風水の)」「人はいつから殺人者になるのか」(佐木隆三」「壊れる男たち」(読了)「がんから始まる」(岸本葉子)」「ちびまる子ちゃんの音読暗誦教室」。
マダムさ〜ん、「信仰が〜」を私は読み終えることができるのでしょうかあ〜!(苦笑)
7. Posted by 有閑マダム   2006年04月25日 08:54
viva jiji さん、私も昨日家に帰る途中で紀伊国屋に立ち寄り、「他人を見下す若者たち」を手にとってパラパラ見ていたところです!
興味があったけれど、買わずに帰ってしまいました。
表紙の漫画?でも、いかにもありえそうな若者の姿が描かれていますよね。
しかし、「萌える男」を読んで「他人を見下す若者」を読んだら、まさに「世も末じゃあー!!」って天を仰ぎたくなったりして!
平行読書の内訳、多岐に渡ってますねー!!
8. Posted by viva jiji   2006年04月25日 10:14
マダムさんへ。

「他人を見下す〜」の著者は速水敏彦(教育心理学者)。
60歳です。読みすすんでます。面白いです。
私は書き方、語り口が合わない、好みでないと(悪文や稚拙な文章などは論外)、イヤになるのです。読みたい本が山ほど私を呼んでいる(笑)のに、そんなにモタモタして読んでいられないのです。
特に新書などに書かれている方々は「題名」で「惹いておいて」、中身は「エライ固い!」のによくブチ当ってますからね。
速水さんのは読みやすい。

マダムさん、私はもう“世も末じゃー!!”って「とっくに!」天を仰ぎまくってこの道、幾星霜・・・・脱力しながら・・怒ってます(笑)
9. Posted by ヨッシー   2006年06月08日 23:48
感想(・・・・?)を書きましたのでTBさせてくださ〜い☆
10. Posted by ヨッシー   2006年06月08日 23:54
あ、あれ・・?コメントが送られませんでした。。。
コチラの映画、先日観ましたのでTBさせていただきま〜す☆
11. Posted by viva jiji   2006年06月09日 07:47
ヨッシーさんへ。

あれれ、どうしたんだろう?ヨッシーさんちへも行けないよ〜!せっかくTB入れて下さったのに・・・・(泣)すこし時間を置いてから、拝見しに伺いますね。livedoor、アクシデント続きですなあ〜。
申し訳ないです、ヨッシーさん。

「ガープの世界」、気に入ってくれたかなあ〜〜、(ミジモジ)・・・
12. Posted by 十瑠   2008年11月20日 16:49
MY記事中に姐さん宅へのリンクが張ってないとTBは出来ないので、今回はコメントを待ってTB致しました。

これね、ロイ・ヒル作品なのにいわゆる娯楽系でないので後回しにしてたんです。ハルストレムに通じる文学の匂いがしましたね。
あと、「スローターハウス5」。これがねぇ、なかなか見つからないんです、観れないんです。

姐さんは観られましたか?
13. Posted by vivajiji   2008年11月20日 19:15

十瑠さん。

「スローターハウス5」は題名だけ。(--)^^
たしかSFっぽい作品でしょ。
SF&ファンタジー系はほんとウトイ私〜。

きっとそろそろ電気コタツのお世話に
なり始めたであろう(笑)山奥の映画博士
なら得意分野でありますでしょう。^^
14. Posted by オカピー(プロフェッサー)   2008年11月21日 03:58
色々なところで吾輩の名前が出てくるので
嬉しいなあ(泣笑)。

>「スローターハウス5」
はっきり言ってめちゃめちゃ面白いです。
余り話題にしたことはないけれど
実はご贔屓のジョージ・ロイ・ヒルでは
「スティング」の次くらいに。
本当に。
でも、姐さん好みではないかもなあ。^^;
十瑠さんに気に入られる可能性70%。

>電気コタツのお世話になり始めたであろう
大正解!
昨日11月20日が今年度の炬燵開きでございました。
15. Posted by vivajiji   2008年11月21日 19:24

プロフェッサーさま。

>でも、姐さん好みではないかもなあ。^^;

っと言うことは〜ウニュウニュ・・ですね〜
なんとなくわかりますです、はい。(笑)

ところでプロフェッサーのお宅で
「か行」にあると信じて疑わなかった
「ガープの世界」・・・ううう、ない・・
2回続けて探したけれど(目おかしくなった)
ないのね、プロフェッサー?
「ガープの世界」レヴューありましたっけ?
もしかして私の見落としかしらん?(--)

もしもまだでしたら・・・
私が“64歳”になるまでに
記事UPしてくださいね、アハハハ〜(笑)

プロフェッサーは電気コタツ
私は就寝時の電気シーツ^^
今年の冬もお互いにがんばりましょうね♪
16. Posted by 十瑠   2008年11月21日 22:52
姐さま。

>2回続けて探したけれど(目おかしくなった)

マイブログの右サイド、「ブックマーク」の中に「Google サイト検索」というのがあります。ここをポチッとしてもらえば、博士のブログの中が検索できる手はずになっておりやす。ついでに、最近「映画と暮らす、日々に暮らす。」の検索君も調子が悪いので、コチラも検索できるようにしましたです。
確かに、博士んチにはガープのレビューはまだ無いですな。
17. Posted by vivajiji   2008年11月22日 10:07

十瑠さん。

>検索できる手はずになっておりやす

あっは〜〜〜ん、これで納得!
だいぶ以前にこの検索窓作りましたって
十瑠さん、おっしゃっていましたよね〜。
これのことだったのね〜〜(わかるの遅すぎ・爆!)
私、プロフェッサーんチの検索窓で
最初やってみたら、あらら、なに、これの世界(笑)
今度、わかりました〜♪
いつもいつも十瑠さんにはお世話になります〜
(感謝&ぺこり)

マイ・ブログの検索も“修理”(笑)して
下さったようで重ね重ねありがとうございます!

>博士んチにはガープのレビューはまだ無いですな。

あったら、とっくにとうに
十瑠さん、TBしてるはずですもんね〜〜^^;

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