2006年08月16日

ユナイテッド93

30a2d034.jpgこの世の中、何が起きても不思議では
ないといつも思っている私でも
「あの映像」には思考が停止した。

何人かの叫び声と悲鳴が聞こえるだけの
衝撃音の全く無いあの映像。

事を成した彼らにとっては
合理的かつ必然の死に向かって、
まったくの偶然に巻き添えになった
多くの乗客にとっては不合理以外の
なにものでもない突発的な死に向かって
あれだけの巨体が飛んでいるのにも
かかわらず、

ひらすら突き進むあの機体の発する轟きの飛行音も
建築力学の粋を集めた高層ビルに超激突した爆裂音も
一切、聞こえないあの異様な静か過ぎる地獄絵図・・・・

晴天の空に煙を上げながらまだ立っている建物のそばを
吹き抜ける風の音だけをその映像とともに私は聞いたような気がする。


その運命の日の4機をあえてここに記します。

7:59 ボストン発ロサンゼルス行き
「アメリカン航空11便」 乗員乗客数 92人
・・・・・・・WTC北棟 8:46

8:14 ボストン発ロサンゼルス行き
「ユナイテッド航空175便」 乗員乗客数 65人
・・・・・・・WTC南棟 9:03

8:30 ワシントン発ロサンゼルス行き
「アメリカン航空77便」  乗員乗客数 64人
・・・・・・・国防総省ペンタゴン本庁舎 9:37

そして、本作に登場する

8:42 ニューアーク発サンフランシスコ行き
「ユナイテッド航空93便」 乗員乗客数 44人
・・・・・・・ペンシルベニア州シャンクスヴィル 10:03
(目標はホワイトハウスだったと言われているが)


スピーディーでクールな映像センスが注目を集めた「ボーン・スプレマシー」の
ポール・グリーングラス監督が卓越したドキュメンタリータッチで映画化した。


「ユナイテッド93便」(ボーイング755)はその日、朝の発着渋滞のため
当初の予定よりかなりの遅れをとってニュー・アーク空港から飛び立った・・・・・

アメリカ国内の上空には常に5000機近くの飛行機が
行き来しているそうだ。まさに空もラッシュ・アワーである。

いつもの朝の騒がしい管制塔風景から一変して次々に
不審な飛行パターンをとる旅客機の情報。
ベテランの管制官の危惧が最大に膨れ上がったとき
「あの映像」が管制室のすべてのスクリーンに映し出される・・・

切れ味抜群のグリーングラス監督のお手並みはすでに前作で
実証済みだが、本作はそれを完全に凌駕した、と私は感じた。


ユナイテッド93が飛び立ったニューアークの管制室

ユナイテッド93の機内や乗客と犯人たちの様子

異常事態を悲鳴のように発信し続ける各飛行場の管制室

攻撃に備えて上層部から指令を待つ軍司令部


これらの場所を時間の経過に忠実に添って、まるで私たちが
それらの様子をその現場に居合わせているかのように、
繰り返し、繰り返し、何度も、何度も、行きつ戻りつつしながら
最悪の事態へなだれこむその描写には真実だけを映し撮りたい!
という真摯な姿勢が見えて、とても好感が持てる。

ひとりひとりの対応を、表情を、発言を
そばで直に聞いているような臨場感である。

実際、リアルタイムにその場で指揮をとった管制官も
おおぜい“出演”しているので、なおのこと真実味が迫ってくる。

特に日本ではほとんど馴染みのない俳優たちの演技が
リアルな緊迫感を増幅して効果的と思う。
知名度の高い俳優がひとりでも入れば
別物作品になってしまったに違いない!

――――――― 

本作でテロリストたちが持っていたのはただ粘土の四角い
固まりを寄せ集めて粘着テープで巻きコードを垂らした
「偽物爆弾」であった。

あとの3機も同じように偽物で乗客たちを騙したのだろうか・・・・

今となっては本物でも偽物でもたいして重要なことではないが
あんな果物ナイフ程度の刃物とにせ粘土爆弾で「武装」し
「アラーよ、賛美します!」で突っ込んで行ったのよね・・・・・・

なんか、こう、哀しいなあ〜。

60年ちょっと前には我が国もナントカ万歳!とか叫んで
ひとり乗りボートに爆弾くっつけて敵戦艦に体当たりしたんですよね。

たしか、日本はあの当時「神国」とか言っていたんでしょう?

似てるなあ〜。

(日本は二度とあのような戦いをしないでしょうけど
ほら、何やってるんだかわからない国がすぐ近くにいるからね)

―――――――――――――

2001年9月11日同時多発テロでの犠牲者の方々、
また今この時にも起こっているかも知れないテロの犠牲になられた方々、
そして過去のテロから波及した様々な事件に巻き込まれて命を亡くされた
方々のご冥福を私はただただ祈るばかりです。合掌





vivajiji at 06:35│Comments(20)TrackBack(8)clip!や行 

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1. ユナイテッド93  [ 活動写真評論家人生 ]   2006年08月20日 22:29
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2. 追悼9.11 ユナイテッド93 06年180本目  [ 猫姫じゃ ]   2006年09月12日 10:16
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5. ユナイテッド93  [ UkiUkiれいんぼーデイ ]   2007年01月31日 16:56
これを観て改めて 彼らの勇気と、最後まで希望を捨てなかった行動に 拍手を贈りたい あの日、4機の旅客機がハイジャックされた内の一機がこの「ユナイテッド93便」だった。 次々と ハイジャックされた機体が 犯人の目標である建物へ向けて墜落して...
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7. 映画評「ユナイテッド93」  [ プロフェッサー・オカピーの部屋[別館] ]   2007年09月12日 19:39
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3 「ユナイテッド93」 (UNITED 93) 2006年アメリカ 監督 ポール・グリーングラス 出演 ハリド・アブダラ    ポリー・アダムス あらすじ  2001年9月11日、アメリカ国内の空港を飛び立った旅客機4機が、ほぼ同時にハイジャックされる。

この記事へのコメント

1. Posted by 豆酢   2006年08月16日 10:50
姐さん、このとき私最初の子供を出産間近でございました。
音もなく、なすすべもなく亡くなっていった方々のことを思いながら、お腹の子供をさすってました。消えていく“命”と生まれてくる“命”の対比を、これほど強烈に感じたことはありません。
このあと、テロの犠牲になった方々の遺族から新たに生まれた赤ちゃんたちを掲げた写真が、アメリカの雑誌の表紙を飾ったことがあったそうです。それを見たときも、どうしようもなく胸を締め付けられました…。
本当に合掌するしかありません。
2. Posted by viva jiji   2006年08月16日 14:42

豆酢さん。

おー、おー、感動的なエピソードですね。

あの行動を成したテロリストたちの思想のルーツを辿ればたった一人の人間の考えに行き着きます。彼らを過激派と呼ぶのはいかにも簡単ですが9:11が残した傷痕の怖さはもう「過激」ではなくなったということです。だって実績を作ってしまったのですから。あのような形で世界中に前代未聞の「宣戦布告」をしたことと同じです。小国をあなどってはいけないですね。ヒットラーもそうでした。かつての日本も。隣にもいますでしょ、メガネかけたチッチャイのが・・・。
3. Posted by しゅぺる&こぼる   2006年08月17日 10:04
この映画、わたしの町では唯一の単観劇場でひっそり上映するタイプの作品に思います。しかし、大きなシネコンでかかってる!やはり9.11の衝撃は大きいですね。たくさんの人に見てもらいたいということでしょうか。
昨日水曜日映画館へ行った時、この映画に吸い寄せられそうでした。(お子様たちへのご奉仕映画を観てきました!!)
いくらボウケンジャーと仮面ライダーでも二人ほっといてこれ見に行くわけにはいかなかったけど、そうしたい心情でしたね。まだ終わらないで〜
これは劇場で観たいです。
4. Posted by viva jiji   2006年08月17日 12:56

しゅべる&こぼるさん。

こういう映画こそシネコンで上映されるべきなんですよね。すごい緊迫感がずーーっと持続してやり切れないエンディングまで一気に行きます。声高に何かを主張することはあえた避けた描写がなお一層危機感を感じさせるいい映画でした。ぜひご覧になって!
5. Posted by バルカローレ   2006年08月17日 21:40
あの飛行機内での出来事もそうでしたが、各管制センターでの息詰まる応酬に我を忘れて釘付けになりました。
場面変換も見事だったと思います。

久々に観客席からも緊迫した空気を感じた作品でした。
6. Posted by viva jiji   2006年08月18日 07:28

バルカローレさん。

非常にうまい脚本と演出でしたね。
おまけにこのグリーングラス監督の腰の座った視点がとても気にいりました。どんづまりの乗客たちの反撃をハリウッド的だ、と指摘される向きもあったようですが「あのくらい」は許されていいと私は思いましたが。出演者もよく選ばれていて管制官のトップの方など俳優さんかと思ったくらいでした。
7. Posted by 冨田弘嗣   2006年08月20日 22:49
書いたのだけど、消えたみたい・・・トラックバック、コメントありがとうございます。最近は仕事ばかりしていていけません(仕事一番の人が読んだら怒られそうですが)。仕事を終えて映画を観て帰宅すると夜中の0時半、1時。お風呂に入って晩御飯を食べたら2時半。評を書き終えたら4時。晩御飯や洗濯より映画を選ぶ常識人です。
 まったく新しい映画を観た気がしました。これまでにも似たような作りはあるのですが、ここまでエンターテイメントに仕上げた作品は他にはないでしょう。惨劇を知らない人でも楽しめる。楽しめると言っては不謹慎でしょうが、楽しめるものは楽しめる。50年経っても色あせずに秀作の地位にあると私は思っています。  冨田弘嗣
8. Posted by viva jiji   2006年08月21日 06:38

冨田さん。

TB&コメントありがとうございます。
身の引き締まる思いで鑑賞いたしました。キチンとしたスタンスで作れる監督がまだ存在していることも少し安心した作品でした。

livedoorの不手際をお許し下さい。(ダブっていましたので1つ削除させて頂きました)投稿者自身(私)のコメントも最近、消えます。(笑)しばらく経つとボワッと反映されたり全く気まぐれです。その内、投稿記事まで・・・消えたら困るわ〜。
9. Posted by 猫姫少佐現品限り   2006年09月13日 01:16
5 こんばんは!echo&コメ、ありがとうございました!
昔の日本と、同じですよね、あたしもそう思います。
だからこの問題も、どちらかが悪として、徹底的にやられなければ、終わらないのかなぁ、、
とも思います。
またよろしくおねがいしますね。
10. Posted by viva jiji   2006年09月13日 07:20

猫姫少佐さん、いらっしゃいませ!

TB&コメント、ありがとうございます。

>だからこの問題も、どちらかが悪として、徹底的にやられなければ、終わらないのかなぁ・・・・おーー!大胆なご発言ですね。
あの頃の日本には後ろ盾がなかったので原爆で「はい二度と戦争は致しません!」になりましたがアチラには裏で暗躍する強力なナニカがあるというのは周知の事実。そのナニカに全世界が絡んでいるというカラクリも・・・。
戦争のなかった時代は、無いのです、残念なことに。
11. Posted by しゅぺる&こぼる   2006年09月14日 07:09
やっと観ることができました。
乗客の方々の想像を絶する恐怖、生きようとする気持ち、何が起こってるかを知ろうとする行動力など、作品を通して「体感」するかのような映画だったと思います。
もっと探ろうとすればたくさんの思惑が渦巻くだろう題材。
わたしは乗客や残された遺族のための映画として胸に刻みます。
12. Posted by viva jiji   2006年09月14日 07:54

しゅべる&こぼるさん。

おはようございます。
さきほどTB&コメントさせていただきました。
>わたしは乗客や残された遺族のための映画として胸に刻みます。
まさにその通り!
観たくない人は観なくてけっこう。
(遺族の哀しみを逆なですると怒っています)
あの地獄はあってはならないことです。
1人でも多くの人にあの事実が風化しないように留めるための役割も本作は充分果たせていると思います。
13. Posted by なぎさ   2007年01月31日 16:56
viva jijiさんTBとコメントありがとうございました!

これね、ほんとに・・・
>知名度の高い俳優がひとりでも入れば
>別物作品になってしまったに違いない!
でしたよね!
無名の俳優だったからこそ、映像にリアル感が出て釘付けになってしまいました。

確かに、何が起きても不思議ではない時代ではありますね。
国内を見ても年明けそうそう残忍な事件の多いこと!
そうかと思えば「崖っぷち」にへばりついてた犬の里親に400人も集まるなんて・・・。
変な世の中です。
14. Posted by viva jiji   2007年01月31日 19:39

なぎささん。

早速のお越しありがとうございます。

>「崖っぷち」にへばりついてた犬の里親に400人も

TV見ない私にはとても新鮮な話題ですね。
すっかり脳内幻想して勝手に私“映画化”してますけどね。(笑)

閑話休題。

前代見聞のこの9:11も「のど元過ぎれば」になるのでしょうか。
元を辿れば「たった一人の」考えから始まったことですよね。
アメリカにとっては「悪」でも、あちらの国では「善」を成した、
と言って快哉を叫んでいるのですから・・・。
ほんとに、難しいし、哀しい。
15. Posted by 真紅   2007年02月14日 14:12
viva jijiさま、こんにちは。今日はTBが飛びませんでした(泣)。
劇場でご覧になったのですね。
スピーディでクールな映像センス、そうです、その通りでした。
2時間近くありましたが、エンドロールまで緊張感が持続しましたね。
力作でした。
16. Posted by viva jiji   2007年02月14日 20:58

真紅さん。

こんばんは。

かなりハードな緊張を強いられる映像でしたね。
短かったけれど深いドラマを観せてもらったような気が今はしています。

ここに改めてお亡くなりになった方々のご冥福をお祈りしたいと
思います。

私のほうからTB送らせていただきますね。

ちょっと待っててね。
17. Posted by オカピー(プロフェッサー)   2007年09月13日 15:48
TBした後書き込むのをすっかり忘れて今頃です。

実際の悲劇をベースに作られた作品ですから「星を付けたくない」なんてコメントもよくお見かけ致しますが、実際の映像でも何でもなく商業映画として公開された以上は、そういうものとして観て語れば宜しいですね。
文化映画だって訴求力において評価されねばらならないのが実際。

実は、肝心要の後半より管制塔を中心に描いた前半のほうが緊張感が高いくらい。その点若干の物足りなさを感じましたが、あくまで相対的なもので、私の嫌いな手持ちカメラが実に効果的に使われていました。臨場感という表現がぴったりです。

「思い出のグリーングラス」にかけて何か洒落を言おうと思いましたが、さすがにそれは不謹慎だろうということで、彼の次回作までお預けです(笑)。
18. Posted by viva jiji   2007年09月14日 08:52
プロフェッサーさま。

先日観たM・ベイの「トランスフォーマー」で、あのビルを彷彿と
させる高層ビルの真ん中を横一文字にCG合成ロボットがリアルに
突っ切るシーンがありましたの。
それも総ガラス!丸見え!プラス!スローモーションで!!

これは〜正直、心が痛くて、参りました。

・・・・想像させる、という余地を残すことに映画的余韻があると
いうことをどうしてお勉強しないんでしょう。

   観せればいいってもんじゃないでしょうに。

グリーングラスはそのサジ加減を終始、緊迫感という命題に維持し、
わかっている監督と私は思いました。
19. Posted by カカト   2007年11月10日 18:05
大変ご無沙汰しております。カカトです。

上記の豆酢さんのコメントを拝見しまして、まったく自分と同じ境遇と心情であったことを知り(臨月と、生と死の神秘)、この事件を通してシンクロした事をとても不思議に感じました。

テロリストたちの行為は果たして彼らの「大儀」のために行われた事なのか?と考えると、なにか世の中が無機質というか、無常なものに感じてしまいます。

この映画は、観るのはとても辛いけど、思い出さずにいられない一本になりました。
20. Posted by viva jiji   2007年11月12日 06:31
カカトさん。

おひさしぶりで〜〜〜す!
お元気でしたぁ?^^

お返事大幅におくれてしまってごめんなさいね、何せ
初のジャズ・ライヴでアタマッコいっぱいでどうにも
こうにも心臓がバックラめきましてね〜^^;
一晩寝てやっとナントカ落ち着き始めたところです。

>まったく自分と同じ境遇と心情であったことを知り

そうでしたか〜。
こういうことが起きると私いつも思い出す言葉がありますの・・

・・・光のあるところ必ず影がある・・でも

・・・陽はのぼり、陽はまた沈む・・・

>なにか世の中が無機質というか、無常なものに

カカトさん、私、世の中は“そう”だと常に思って
おりますよ。
世界及び人間界は“無機質”“無常”から発生しているんじゃ
ないかと思っているんです。
ですから「生」に執着する心を求めるし、またその逆も
あるのかもと。

TBありがとうございます。(感謝)

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