2007年02月12日

グッバイガール

すでに三十路をとっくに過ぎた、どこにでもいそうな子持ちの売れない
ダンサーの女と、これまた売れない新劇の貧乏役者の、ひょんな出逢いと
けっしてカッコ良くない日常を描いているだけなのに、なんでこんなに
この映画は観た後、“あったかい気持ち”になるんだろ〜・・・・


「グッバイガール」 THE GOODBYE GIRL 1977年 アメリカ映画






















監督:ハーバート・ロス
製作:レイ・スターク
脚本:ニール・サイモン
撮影:デヴィッド・M・ウォルシュ
音楽:デイヴ・グルーシン

出演
リチャード・ドレイファス エリオット
マーシャ・メイスン ポーラ
クィン・カミングス ルーシー
・・・・
他にもいますが、ほとんどこの3人ですね。


  〜役者なんて素敵なのは舞台の上でのお話。
   実生活での彼らなんて人類の敵よ〜


ずっと演劇畑で大成功してきたN・サイモンが当時、彼の奥さまだった
本作のヒロイン・ポーラを演じたマーシャ・メイスンに言わせた
辛らつなセリフです。

うふふ。
わが息子も役者の端くれをしておりますが、
はてさて、ヤツも“人類の敵”なるか?(笑)

運が悪いときは次々に良くないことばかりが起きる・・・
10歳の娘(ルーシー)を育てながら惚れた男に逃げられ続けている
ポーラ(メイスン)はまたきょうも同じ轍を踏んでしまって
彼女は完全にクサッていた。

お天気までも彼女に冷たく、夜が更けるごとに雨足は強まるばかり。
そんな失意の女ふたり所帯に大きなズダ袋とギターを持ち、ずぶ濡れに
なったヒゲの小男が乗り込んできた・・・

夜逃げ同然に逃げた男の友人というその男、エリオットに扮する
リチャード・ドレイファス。
当時29歳。
“29歳!?”見えませんな〜〜。
オデコもかなり“いって”ますし、
後頭部のF・ザビエル化も私、見逃しませんでしたわ。(笑)

彼の写真、あまり見つけられませんでしたので
今に近いのを1枚だけ。


















「アメリカン・グラフィティ」「未知との遭遇」「スタンド・バイ・ミー」
「ジョーズ」「オールウェイズ」「陽の当たる教室」最近では「ポセイドン」
で久々にお会いしましたが、彼の芝居の真骨頂はやはり本作だと思います。

大雨、夜中の12時過ぎに飛び込んできてからの、ドレイファスとメイスンの
自己主張全開のセリフの応酬シーンは見もの、聞きもの!!

一部、ご紹介ね。


   いま、ルーシーに会ってきたよ。

  ー それで?

   隣に来たよ、って言ったけど平気だった。

  ー 環境ね。・・・トイレは、そこよ。

  (ポーラはどんどん自分たちの衣服を別な部屋へ移してゆく)

  (エリオットは改まった調子で)

   歯ぎしりは、やめてくれ。頭がおかしくなる。

  ー ずぶ濡れのヒゲ男にいきなり侵入されて
    愛想良く迎えろとでも言うの?

   いいセリフだ。
   付き合いにくいが、会話は一流だ。

  (意を決したようにポーラは言い放つ)

  ー さ、ここがあなたの部屋よ。掃除も何もしませんから。
    台所やトイレの使用は私たちが使っていない時だけに。
    食費、洗濯代、電話代はすべて自己負担。
    6時から9時までは静かに、ルーシーが宿題をします。
    飲酒・喫煙はご自由に。ルーシーの前でマリファナは禁止。
    (これは時代ですね〜、今なら全部ダメですわね)(笑)
    いいですね?

   ノー!!

  ー ノー???

  (さて、今度はエリオットの番)

   ちっとも良くないね。
   規則は借主の、ボクが作る。
   ボクは毎朝シャワーを使う。
   浴室にパンティを干すな。
   料理はやりたい時にやる。
   ボクの高級な調味料に手を出すな。
   眠れない時はギターを鳴らす。
   毎朝、お香をたいて読経する。
   足音を立てないでくれ。

   ボクは全裸で寝る主義だ。
   夏も冬も窓は開けっ放し。
   夜中にもトイレや台所に行くがパジャマなど持っていないから
   娘さんの性教育以外には立ち入り禁止に願う。
   以上が規則だ。

  ー 断ったら?

   友人の・・・・(弁護士に)

  ー わかったわ!

   頭が、いい!

  ー あなた、嫌いよ!

   役者だから?

  ー 最低だわ。


ドレイファスとメイスン、このふたりはこの丁々発止な掛け合いセリフを
あの狭い部屋を行ったり来たりしながら、寸時も淀みなく絶妙なテンポと
タイミングを駆使して(え〜と、時計、時計)約7分近くにわたって
やり合うんです。

当初、居丈高なメイスン、目を白黒させながらそれを聞くドレイファス。
彼女が言い切ったその後を受けて、即、反撃に出るドレイファス。
実に、上手い!

イヤミな男だな〜〜と最初思えるんですが、この小男で
毛むくじゃらで風変わりな、まるで捨てられた“ムク犬”のような
ドレイファスがなんとなく可愛くて、だんだん“セクシー”にまで
見えてくるのは、私だけ?


演技することが好きで好きで、若い時にソレが認められ、怒涛の如く、
出演作にも恵まれた役者が、ある時点を境に考えられないほどの鋭角で
“落ちてゆく”・・

俗に言う、“才気走っちゃった”ですかしら。

ドレイファスも本作でのアカデミー賞主演男優賞獲得から
一気にヤク漬けになって破滅一歩手前まで落ち込みましたね。
幾多の傑材を生み出した陰に狂乱の時代でもあったあの“70年代”。
ドレイファスもその栄光の70年代にキッパリと別れを告げるためには
かなりの辛酸を舐めねばならなかった、ということでしょうか。

ちなみに調べましたら、この年(77年)の第50回アカデミー賞は
キラ星☆のごとく素晴らしい作品がノミネート、受賞していました。

作品賞 「アニー・ホール」 
監督賞 ウッディ・アレン
主演男優賞 リチャード・ドレイファス
主演女優賞 ダイアン・キートン
助演男優賞 ジェイソン・ロバーツ
助演女優賞 バネッサ・レッドグレイヴ
オリジナル脚本賞 「アニー・ホール」
脚色賞 「ジュリア」
(監督のハーバート・ロスも「愛と喝采の日々」と本作でD・ノミネート)


雨の夜のアクシデントから雨の夜に愛を確かめ合い、
そしてホンワカ・ラストも雨の夜・・・・

元「ブレッド」のデヴィッド・ゲイツの歌う
エンディングの曲がまた良いのよ〜、これが。


  ♪生まれてからずっと君は
   いつもいっしょにいてくれる恋人を待っていたんだね
   そんな君がボクと出逢ったんだから
   もう逃げちゃだめだよ

   前にも聞いた言葉だったら
   そりゃ、信じられないかも知れないね
   でも、君はもう一度だけ信じなくちゃいけない

   なぜって
   さよならは、永遠という意味じゃないからさ
   さよならしても二度といっしょになれないということじゃない

   君がだまされたことがあるのは知っている
   また傷つくのが怖いのもわかる
   だからボクの愛に素直になれないんだよね

   でも君にわかってもらえるんなら
   ボクはいつまでも待っていてもいい
   
   ボクは君にお似合いで

   君はボクにお似合いなんだから♪


おミュージックは抜群のセンスの都会人、デイヴ・グルーシンね。

そして本作で忘れてはならないのは子役のクィン・カミングス(ルーシー)!
揺れ動く大人たちの中での微妙な立場の、多感でありながらクレバーな
娘さんをリラックスした芝居で演じ切りました。


 「あなたは生まれた時から“26歳よ!”」って言うセリフ、大好き!



  
   


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この記事へのコメント

1. Posted by 優一郎   2007年02月13日 07:47
おはようございます!
あれ・・・本作って、人気薄?^^;
なぜか、コメントが空欄だったので、私が・・・

土砂降りの雨の中、電話ボックスからアパートに電話するエリオット。自分勝手な理屈でアパートに居座ろうとするポーラ。
私は冒頭から物語にズッポリ嵌った記憶があります。古き良きハリウッドの恋愛コメディの味わいが残っていて、何度観ても面白いと思える佳作だと思います。

ってことで、拙宅では打って変わって「ダーウィンの悪夢」をレビューしております^^;
ご期待にそえるかどうか^^;
2. Posted by viva jiji   2007年02月13日 11:15

優一郎さん。

>古き良きハリウッドの恋愛コメディの味わいが残っていて、何度観ても面白いと思える佳作だと思います。

です、です!

それも盛りを過ぎた男女の“大人のね”(笑)

>「ダーウィンの悪夢」をレビューしております

さきほど拝読させていただきましてコメントを残させていただきました。

観たい映画の1番に上げられていたという奥様のほうが
さぞかし“ガッカリ”の呈かしら?
と、推察しておりますが・・・。
ドキュメンタリー作品にはたまさかこういう“落とし穴”があります。
優一郎さんも言及なさっていましたが、日本のTVドキュメンタリーの
完成度には私も以前から注目・感嘆しております。
TVを観なくなって久しいのですがN○Kの海外ドキュメンタリーで観た
「氷の回廊」という単発番組は今でも思い出すだに感動が胸にこみ上げます。
3. Posted by 大庭綺有   2007年02月13日 13:52
はじめまして。
うーん、この映画。音楽に思い出があるんですよ。歌詞を追いながら懐かしくなりました。
ある人がこの音楽がいいと言って、それでこの映画をビデオで見たのでした。見ながら、気が合うってどういうことかなぁ、カッコいいからとか頭がいいからとかじゃなくて、自分に合うってことって・・・とスターが出ているワケじゃない、ある意味で地味なこの映画の良さを考えたものです。そして彼が勧めてくれた意味も。
でも見たと言っても目に映っただけで、きっと分かってなかったんだなぁと今は思います。
あ〜、ちょっと切ない気持ちになっちゃいました(笑)。
4. Posted by EmilyNZ   2007年02月13日 18:19
>なんとなく可愛くて、だんだん“セクシー”にまで見えてくるのは、私だけ?

いいえ!Viva Jijiさんだけじゃありません!
私ティーンエージャーでしたが、かなり夢中になりました、この俳優に。この映画で。
一番下の映画のポスターで彼が着ているジャケットにマフラーまいてる姿が印象的でした。彼の血のつながらない娘役で私が出演する映画のストーリーなんかも考えたりしてたなあ・・・。
この映画、10数年前、レンタルビデオ屋で借りた物のコピーをとったテープを持ってるんですが、その1本に、「グッバイ・ガール」「ファール・プレイ」「アトランティック・シティ」が入ってるんです。この3本、なぜか、何回も、何回も観てしまう映画です。
5. Posted by 優一郎   2007年02月13日 19:13
こんばんは^^
そういえば、これってスコセッシの「アリスの恋」をちょっと思わせるような設定ですよねえ。

リチャード・ドレイファスというと、ハリウッドの堕落と時期を同じくして凋落していった感のある、昔かたぎのハリウッド人といったイメージ。
イリア・カザンがオスカーで名誉賞を受け取った折、例のレッドパージの密告に関して激しくカザンやアカデミー会員を非難していた姿を思い出してしまいます。

「ダーウィンの悪夢」でガッカリしたのは私よりも妻なのは間違いないところ。本人は眠くてしょうがなかったようです(笑)
6. Posted by viva jiji   2007年02月14日 01:28

大庭綺有さん。

はじめまして!
いらっしゃいませ。

コメント、ありがとうございます。

>あ〜、ちょっと切ない気持ちになっちゃいました(笑)。

うふふ〜、淡いラヴ・ロマンスがあったのかしらん??
この曲の歌詞ってモロ、愛の告白じゃありません?

むむむっ、
映画そっちのけで綺有さんのその“ある人”との、その後とか、
私、想像たくましくしてますわ〜。(笑)
7. Posted by viva jiji   2007年02月14日 01:36

EmilyNZさん。

>私が出演する映画のストーリーなんかも考えたりしてたなあ・・・。

素敵、素敵!
いいねえ〜、ふむふむ、そういう観方もいいよね〜。

私も今度そういうシチュエーション、考えてみよ!

ま、さしずめ本作でしたらポーラの通うダンス教室の掃除のオバサン??
ナハハハ・・・(笑)

>、「グッバイ・ガール」「ファール・プレイ」「アトランティック・シティ」が入ってるんです。

うっれしいなあ〜!
ぜんぶ、私の好きな作品ばかりじゃないですか!
特に「アトランティック〜」が
入っているとこなんか、おシャレーーー!!
8. Posted by viva jiji   2007年02月14日 01:49

優一郎さん。

>これってスコセッシの「アリスの恋」をちょっと

すごい!
優一郎さんて、こわい!!(笑)

PCがおかしくなる前「アリスの恋」を記事UPしようと思って
写真を先に集めていたところだったのよ〜〜。
「アリスの恋」を再見しながら本作を思い出して観たわけなの。

ドレイファスは小作品ですけどティム・アレン、C・スレーターの
「クライム・アンド・ダイアモンド」が面白かったわ。

>本人は眠くてしょうがなかったようです(笑)

パッと気分を変えて来週公開の「ドリーム・ガールズ」に期待しましょう!
(笑)
9. Posted by    2007年02月19日 20:37
これもまたイイ作品ですよね!!
公開当時、劇場鑑賞しました・・・
今思うと中学生でこの作品を?と思うけれど、とても好きな作品でした。
(ませた子供です・・汗)

TBさせていただきます!
10. Posted by viva jiji   2007年02月20日 08:29

Dさん。

>今思うと中学生でこの作品を

ふむふむ、中学生でこの作品とチョイスするとは・・・・

(・・・・)のとおりですね?

いんにゃ、そのチョイスは

「正解」です!(笑)

TB、ありがとうございます。

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